第1話「消えた死体の謎~トップモデル殺人事件~」(2002年10月6日)
と言う訳で、「ケータイ刑事」シリーズ第1弾「銭形愛」の厳選レビューの始まりなのである。
もっとも、最初は小橋めぐみさんがゲスト出演している21話だけを書くつもりだったのだが、せっかくだからということで、全話をチェックしてレビューする価値のあるエピソードを厳選したところ、結局、全部で5本の記事を書くことになったわけである。
まあ、実は1年ほど前に書いた記事なのだが、あれやこれやで公開が遅くなってしまった。
で、今日紹介するのは記念すべき第1話である。

初回と言うことで、色々と興味深い点があるのだが、まず、「遅刻だ遅刻だ」と叫びながら自転車をすっ飛ばしている愛と、それを驚きの目で見る、今となっては割りと恥ずかしいコギャルたち。

女子高生「愛ーっ!」
そして、たぶん、シリーズで唯一と思われる、ケータイ刑事の同級生と思しき女子高生三人が愛の名を呼ぶ。
また、だいぶ後に佐藤二朗さんとかがギャグで着ることはあるが、同世代の女の子が、ヒロインと同じ制服を着ているシーンと言うのも、これだけじゃないかなぁ。
愛、ブレーキをかけると、「ごめん、バイト!」
そして、道いっぱいに広がってぞろぞろと歩いている高校生たちの間を抜群のテクニックですり抜けて行くのだった。無論、スタントが演じているのだが。
それはさておき、驚いたことに、愛は第1話では、バイトをしていたことが判明する。
しかし、高校生活にバイトに加えて、刑事までやると言うのは、いくらなんでも忙しすぎて身が持たないだろう。
もっとも、愛が本格的に捜査に携わるようになるのは今回が初めてのようで、それをしおにバイトも辞めてしまったらしく、2話以降ではバイトをしているところは見られなくなる。
とにかく、愛がバイト先のドミノピザに到着すると、配達の仕事が待っていた。3時までに有名なモデル原田佳奈のマンションに届けて欲しいということで、愛は高校の制服のまま、自転車で走り出す。

歩道橋の階段を、ガガガッと自転車で一気に駆け下りる愛。無論、これもスタント。
ちょうど歩道橋の下では、年輩の巡査が、お年寄りの女性に道案内をしていた。
愛「ごくろうさまです」

巡査「おーいっ、こらーっ、歩道橋は自転車を降りなさい!」
挨拶をして走り抜ける愛に気付いて大声で注意する巡査。
そう、演じているのは下川辰平さん!
あまり大物ゲストの出てこないこのシリーズにおいては、恐らく最高クラスの名優だろう。
ちなみに「トリック3」にゲスト出演されるのはこの翌年で、亡くなられるのはこの1年半後である。
さて、愛、午後3時ぴったりに原田佳奈の部屋の前に辿り着く。
ケータイで時間を確認して、会心の笑みを浮かべ、チャイムを押すが、反応がない。

愛「3時って言ったの、そっちじゃん」
早くも性格の悪さを剥き出しにして、ぶーたれながらチャイムを連打する愛。

ノブを掴んで引いてみると、ドアには鍵が掛かっていなかった。
ただし、チェーンがあるので15センチ程度しか開かない。
開けた途端、隙間から誰かの右手が落ちてきて、愛の目の前にだらりと垂れる。
思わず飛びのいてから、おそるおそる近付き、

愛「もしもし、だいじょぶですか? もしもし……」
声を掛けるが反応はなく、女性の体は反対側にどさりと倒れてしまう。
おまけに、女性のそばに、血に染まったナイフが落ちていた。
愛「嘘でしょお……」
ケータイ刑事が、いきなり殺人事件の第一発見者になってしまうと言う、スリリングな幕開けである。

で、いきなりこんな画面が出てくる。
ミステリードラマだから、なるべく視聴者に丁寧に説明しようと言うことなのだろうが、邪魔である。

巡査「ああ、スニーカー……」
五代「本日、警視庁捜査一課の刑事を拝命いたしました」
同じころ、五代がさっきの巡査の前に立ち、しゃちほこばって敬礼していた。
ちなみにケータイ刑事のヒロインや相棒が、こうやってはっきり「捜査一課の~」と所属を名乗るのは、極めて珍しいことである。

五代「ここまで来れたのも、長さんのご指導のお陰です。ありがとうございました」
巡査「いやいや、もうそろそろ来る頃だろうと思ってな」
五代、その巡査の後輩だったらしく、感激の面持ちでその手を握る。
無論、「太陽にほえろ」つながりのやりとりなのは言うまでもない。
ただ、以前見たときは「スクールウォーズ」も「太陽をほえろ」も知らなかったので、特に何の感慨も浮かばなかったのだが、「スクール~」の全話レビューまでやってしまった今になって見ると、「滝沢と山城校長の再会だぁ」と、胸が熱くなるのを押さえられない管理人であった。
それはともかく、「長さん」は用意していた真新しいスニーカーを取り出し、「栄転祝いだ」と言って五代にプレゼントする。

巡査「
デカの価値は履き潰した靴の数によって決まる。くたばるんじゃねえぞ、五代刑事」
五代「ありがとうございます!」
五代が折に触れて口にする「デカの価値」うんぬんは、もともと、この「長さん」から言われた言葉だったのだ。
……って、まあ、もともと「太陽にほえろ」で言われていたフレーズなのかもしれないが、自分は良く知らないので何とも言えない。
そこへ愛がやってきて、殺人事件発生を告げる。
本来なら、その巡査も現場に同行すると思うのだが、都合により、下川さんの出番はこれにて終了。
代わりに五代が愛と共にマンションに駆けつけると、ちょうど、若い女性があの部屋のドアを開けようとしているところだった。

愛「あ、ちょっと待って、開けないで」
五代「おたくは?」
悦子「友人ですけど、何かあったんですか?」
五代「いや、ちょっと失礼」
愛「ちょっと失礼」
五代と同じことを言って続く愛が可愛いのである。

五代「おいっ」
愛「えっ、えっ、なんで?」
が、入ったと思ったら、すぐに五代が愛の襟首を猫のように掴んで通路へ引っ張り出す。
五代「舌出せ」
愛「舌?」
五代「ベロだよ、ベロ」
愛「ベロぉ?」
五代「早く出せ」

何がなんだか分からぬまま、目をつぶって思いっきり舌を出す愛。

五代「学校で習わなかったのか、嘘ついたら舌抜かれるって」
愛「むっ、むっ」
その可愛らしい舌を引っ張り出そうと、セクハラ気味に愛の顔をぐしゃぐしゃにする五代。
そう言えば、8話のメイキングの中でもかなり分かりやすいセクハラしてガハハと笑ってたな、山下さん。
愛「ちょっと! 嘘ぉ?」
五代「何処が密室なんだ、何処に死体があるんだ?」
悦子「死体?」

五代の言うとおり、玄関から、愛の見た死体が忽然と消えていた。
ここでも、こんなテロップがいちいち入るのだが、邪魔である。
愛「確かにここにあったんです、ナイフに刺された女の人の死体が」
愛、「失礼します」と断ってから、五代が止めるのも聞かず部屋に上がり、勝手にあちこちを調べ出す。
が、どの部屋にも死体はなく、住人の姿もなかった。
五代が愛と寝室で口論していると、後ろから怖々付いて来ていたさっきの女性が、

悦子「あの……ベッドの下に」
五代「ベッドの下ぁ?」
五代が腹這いになって覗いてみると、血まみれのナイフが落ちていた。
悦子「きゃああーっ」
愛「血痕ですよね」
五代「うるさい、向こう行ってろ」

愛「わかった、運び出したんですよ、私がおまわりさんを呼びに行ってる間に」
五代「運び出した?」
愛「死体を見られたから、慌てて」
なんだかんだで、宮崎さんは可愛いね。
愛「五代刑事、至急各地に緊急配備をお願いします。犯人はまだ遠くには行ってない筈です」
五代「了解……って言いたいけどなぁ、なんで俺がお前の言うこと聞かなきゃいけないんだ? お前、なんなんだ?」

愛「……」
愛、五代の問い掛けに、振り向きざまに警察手帳を取り出すが、

五代「青葉台学園?」
愛「間違った」
学生証の方を出してしまい、相手が怪訝な顔をするという、ヒロインと相棒の初対面のお約束ギャグの、これが嚆矢となる訳である。
が、初回と言うことで、どちらも妙に淡々としていて、愛は落ち着き払って警察の方の身分証を出す。
五代「警視正?」
愛「銭形愛、以後、お見知りおきを」
凛々しく敬礼を施す愛だったが、

五代「公文書偽造で逮捕する!」
愛「えっ、えっ、えっ、本物だってばっ!」
いきなり五代に手錠をかけられて、しょっぴかれる羽目になる。
目を白黒させて訴える愛が可愛いのである!
それにしても、当時は、公文書偽造すると逮捕されてたんだなぁ……
五代「お見知りおきをな、お仕置きに変えてやるから、来い!」
愛「ちょっと、五代さん……」
続けて、これも定番の台詞が五代の口から飛び出す。
「舞」以降では、その女子高生が警視総監の孫であり、本物の警視正であることはその場で分かる段取りだったと思うが、ここでは、愛はそのまま警察に連れて行かれることになる。
もっとも、その後、愛は自由に警視庁内を動き回っているので、身分証が本物だと分かったのか、あるいは、説教だけで解放してやったのか?
でも、女子高生が警視正だなんてことを熱血刑事の五代が信じる筈もないし、信じずに解放してやったのなら、愛が警視庁内をうろうろしているのを許すのはおかしいので、どうも、このシーンにおける五代の態度は変である。
話が前後したが、ここでサイレンを鳴らして走る覆面パトカーの映像と共に、

ようやく、サブタイトルがバンと表示される。
実にOP開始から(CM抜きで)8分18秒後のことであった。
ちなみに、普通はパトカーを走らせるところだが、多分、車両を用意できなかったのだろう、今回出てくるのは覆面パトカーとミニパトだけである。
さて、警視庁に戻った五代、だだっぴろい会議室のような部屋で、さっきの女性・皆川悦子から事情を聞いている。
被害者・原田佳奈の友人で、同じくモデルだと言う悦子によれば、被害者は最近、ストーカーに悩まされており、本人が「殺されるかもしれない」と不安を口にしていたと言う。

五代「原田さん、そんなこと言ってたんですか」
悦子「はい」
答えながら、部屋のデジタル時計に目をやる悦子。
悦子を演じるのは、矢部美穂さん。

その頃、愛は、前述のように五代から解放されたのか、警視庁の喫煙所のようなところでぼんやり座っていた。
周囲にはエキストラの刑事っぽい男性や婦警がいて、とても「ケータイ刑事」シリーズとは思えぬ豪華さであった。
愛、自動販売機で飲み物を買おうとして人とぶつかり、硬貨を落としてしまう。

公衆電話を載せた台の下に転がりこんだ硬貨を取ろうと、しゃがんで手を伸ばしていた愛、ふと、さっき、悦子がナイフを発見した時のことを思い出し、矛盾に気付く。
愛「微妙に変……」
愛、テーブルに戻ると、愛用のPDAを取り出して、悦子のプロフィールなどを検索する。
ちょうどドコモがPDAを売り込んでいた時期だったのか、愛では、やたらこのPDAを使うシーンが多い。
佳奈や悦子が表紙モデルをつとめることの多いNANAと言うファッション雑誌のバックナンバーを調べていた愛、あることに気付いて、

愛「におう、悪の香り」
と、これまた定番の台詞を初めて口にする。
CM後、午後4時になると、愛が「差し入れ」と称してジュースなどを持って五代たちのいるところへやってくる。
愛、五代に向けて手を出すと、

愛「ジュース代、経費で落ちますよね。太陽にほえろのカツ丼も経費だって聞いたことあるし」
五代「お前、何処でそんなくだらない情報仕入れてきたんだ、ええ、そんなくだらねえこと言ってると、手錠かけてしょっぴくぞ!」
愛「自腹にします……」
五代の剣幕に、弱々しい声で応じる愛が可愛いのである!
しかし、蒸し返すようだが、五代の愛に対する態度・処分については、やはり疑問だらけだ。
仮にも警視正だと認めているなら、巡査部長に過ぎない五代がそんな乱暴な口を利く筈もないし、認めていないのなら、そもそも警視庁に留まっていることを許す筈がないからである。
ここで悦子がさりげなく帰ろうとすると、

愛「まだあなたを帰す訳には行かないから」
悦子「……」
愛、にこやかに悦子を呼び止め、

愛「あなたが犯人ですよね?」
いきなり犯人だと指摘する。

愛「あなたはあのマンションで原田佳奈さんを殺害した。そこにたまたま私がやってきた。だからあなたは私がおまわりさんを呼びに行ってる間に死体を運び出し、隠した。そして何食わぬ顔で私たちが来るのを待ったんです」
画面が左右に分割され、愛の目のアップと、悦子の目のアップが向かい合う形で映し出されると言う、「ケータイ刑事」では珍しい演出。

五代「動機はなんだ、動機は」
愛「NANAの表紙を原田さんに取られたから。このファッション雑誌は創刊号からずっとあなたが表紙だった。ですよね? だけどあなたはひとつだけミスを犯しました」
愛は、その場で実際に硬貨をキャビネットの下に入れて見せ、悦子の立っていた場所からでは、ベッドの下のナイフが見えた筈がないと言うことを実証する。
愛「私が死体を見たのが3時ジャスト、戻ってきたのが3時5分、死体は必ずマンションから5分で移動できる場所に隠してあります」
と、愛は自信たっぷりに断言するのだが、だったら、そもそも部屋の前で愛たちに姿を見せる必要もないよね。
だいたい、簡単に言うけど、たったの5分で、大人の女性の死体を移動するなんて、か弱い女性ひとりに出来る仕事だろうか?
いずれにしても、愛の推理は間違っていた。
その時、愛のケータイに警視庁から緊急入電が入り、八王子の雑木林で佳奈の死体が発見されたと告げる。

愛「八王子って……」
五代「なんだ、このメカ、なんで警視庁から情報が入ってくんだよ?」
当てが外れて愕然とする愛と、死体発見より愛のケータイの方が気になる五代。
悦子「あの……失礼します」

五代と愛は、直ちに現場に急行する。

五代「何がマンションから5分のところに死体が隠してある、だ? 1時間だ、車飛ばして1時間だぞ!」

五代「よく見てみろ!」
愛「ちょっとお、そんな近付けなくても見えてます」
五代があてつけがましく顔の前に持ってきた腕を不機嫌そうにどける愛。
ちなみに、メイキングによると、実にこのシーンが「ケータイ刑事」の最初の撮影だったのである。
だから、山下さんも、ほとんど普通の刑事ドラマみたいに必要以上に気合の入ったキャラになっている。
愛「って言うか、なんでミニパトなんですか?」
五代「んなこたぁどうでもいいんだよ」
カメラが引くと、何故か二人がミニパトに乗っていたことが分かる。
つまり、番組側が、ミニパトしか用意できなかったのだ。
後年の「ケータイ刑事」なら、それをしっかりギャグに利用するところだが、最初の最初なのでとてもそんな余裕はなく、こともなげに処理している。
五代「危うく善良な市民を誤認逮捕するところだった」
愛「犯人は彼女です。絶対間違いない」
五代「お前、バカか?」 我々の良く知る「ケータイ刑事」や五代のキャラからは、想像も出来ないきついことを言う五代。

五代「どうやって(悦子が)1時間も離れたこの場所に死体を運ぶことが出来るんだ?」
愛「それでも、犯人は彼女なんですよ」
自説を曲げようとしない愛を持て余したように、
五代「お前、冷え性だろう?」
愛「どうしてですか」
五代「頑固な女には冷え性が多いんだよ!」
これまた、若干セクハラ気味の、お約束の台詞が炸裂する。

ふと立ち止まった五代、悦子に共犯者がいて、その共犯者が死体を運んだのだと言い出すが、

愛「違う」
五代「違う?」
愛「そんなのトリックでもなんでもないじゃん」 仮にも刑事ドラマの中の刑事が絶対言ってはいけない台詞を口にする愛。
要するに、そんなつまらないトリックでは、視聴者が納得しないと言ってるのだ。
愛「共犯者なんていません」
五代「どうして?」
愛「彼女笑ったんですよ、原田さんの死体が見付かった時……普通笑いますか? 友達の死体が見付かったのに……あの笑いは私たちに対する挑戦です、私は一人でやったのよ、だけど、あなたたちにこの事件の謎は解けないって」
愛は鋭い観察眼を披露してそう断定するのだが、だからって、悦子の単独犯だとは決め付けられないよね。

愛「私、必ずこの事件の謎を解いて見せます。おじいちゃまの名にかけて」
それでも堂々と某金田一マンガをパクッたような言い回しで宣言する愛。
しかし、名探偵ならともかく、警視総監の名にかけて事件を解いてもらっても、見てるこっちが反応に困る「決め台詞」であることは間違いない。

現場に女子高生が入ってきたのを見て、「お、おい、何をやっているのか?」と、初登場となる鑑識柴田が慌てて注意する。
柴田「勝手に入ってはいかん」
五代「第一発見者だ。確認させてくれ」
最初だからか、柴田の台詞もなんか時代がかった感じで、違和感ありあり。
あ、でも、五代が言うように、あくまで第一発見者、参考人として愛と行動を共にしているのなら、さっきからの疑問はすべて氷解……しないか、やっぱり。
普通は、まず、愛の学校や自宅に電話して、身元を確認するよね。
さて、二人が死体の前に膝をついて確認していると、

柴田「死因はナイフで刺されたことによる失血死、死亡推定時刻は午後2時だね、死体は真実を語っている」
柴田が二人の間に顔を突き出して簡潔に説明する。
ここでは、既に、いつもの柴田の口調になっている。
ただ、柴田は、最初はあくまで準レギュラー扱いだったので、初回だと言うのに名前も出ず、五代たちとの絡みもほとんどないままフェードアウト。
この後、死体が靴を履いているのに気付いた愛、やっと真相に辿り着く。

愛「わかった、謎は解けたよ、ワトソン君!」
そして、またまたまた定番の台詞を放つ。
長くなったので後は簡単に。
満月の夜、あのマンションに忍び込んだ悦子が、屋上で何かやっていると、どこからかストラップにつけた一文銭が飛んできて、その腕に巻きつく。

愛「愛の力で闇を撃つ、あんたが悪事を隠しても尻尾とあんよが見えてるよ」

愛「その名もケータイ刑事、銭形愛、そこら辺のギャルと一緒にすると火傷するよ」
いつもの決め台詞を放つ愛だが、悦子の腕を引っ張った拍子に、肝心の証拠を入れたバッグが路上に落ちてしまう。
それを、たまたま通りがかった五代が拾ったから良いようなものの、誰かに持ち去られていたら悦子を逮捕することも出来なくなっていた訳で、この辺はまだまだ未熟である。

愛「やっぱり犯人はあなたしか考えられないんです」
悦子「だって、死体はここから1時間も離れた場所にあったんでしょう? そしたら、どうして私が死体を運べるの?」
愛「逆だったんですよ、死体は移動なんかしてなかった、最初からずっと殺害現場にあったんです。殺害現場はあの雑木林ですよね」
悦子「……」
愛は、悦子が午後2時、あの雑木林で佳奈を殺し、マンションに戻って自ら佳奈の死体に化け、ピザの宅配、すなわち愛が来るのを待っていたのだ。
愛「3時に死体を見せて、その1時間後に八王子の雑木林で死体が見付かれば完全にあなたのアリバイは成立する」
要するに、今回は、犯人自身が被害者に化けてアリバイを作ると言う、ミステリーマニアならすぐピンと来る、割りと古典的なトリックだったのである。
まぁ、「ケータイ刑事」シリーズの中では比較的マシなトリックではある。
ただ、どうやって悦子が佳奈をあんなところまで連れて行けたのか、割りと肝心な点が等閑されているのが難点である。
それに、再現映像では、普通に悦子が逃げる佳奈を追いかけてぶっ殺しているが、同じ女性同士で、そんな簡単に一方が一方を殺せるものだろうか?
よって、事前に睡眠薬で眠らせておき、現場まで運んでから刺した、と言うほうがより確実だったろう。

悦子「もし4時(3時?)前に死体が発見されたら、私のアリバイは成立しない。それどころか、かえって怪しまれる。死体が発見されてるのに、その死体に成りすましてるんだもの」
諦め悪く、悦子は反論するのだが、この反論、あまり反論になってないような……
いや、怪しまれるも何も、実際に殺された女性の死体に成りすましてる時点で、そいつが犯人だと言うことは丸分かりだと思うんですが。
愛「あの場所に人が来ることはありません、毎日午前5時と午後4時の2回、新聞配達の男の人が通る以外は……あなたはそれも計算に入れてたんですよね」
愛はそれに対する答えも用意していた。
この辺、説明が曖昧なのだが、普段はその道は通行禁止になっていて、その配達員だけがそれを無視して行き来していることを、悦子があらかじめ知っていたということか。
ま、そもそも、警察がきっちり調べれば、被害者がその場で殺されたものか、別の場所から運ばれてきたものか、すぐ分かると思うんだけどね。
と、ここでやっと五代が現れる。

五代「いい加減に観念したらどうですか、これなら5分もあれば十分に隠せますもんね」
五代がバッグから出して見せたのは、血の付いた、佳奈の死体が着ていたのと同じ服だった。
遂に悦子も罪を認めるが、その動機は、モデルとして自分を追い抜いた佳奈が憎かったからと言う、初回から
「そほんなことで殺すなよぉ、ジュン~」みたいなトホホなものだった。
ラスト、愛がひとりでバスケをしていると、五代がやってくる。

五代「おい、女子高生」
愛「お疲れ様でした」
五代「いや、まだ事件は終わっちゃいないぞ、ひとつだけ謎が残ってる。お前、一体なにもんだ?」
と、愛のケータイの着信が鳴る。
愛「ちょうど良いや、出ます?」
五代「誰だ?」
愛「私の一番好きな男性」
五代「はっ、お前にそんな男がいるのか」
愛「どうぞ」

五代「もしもし……なんだ、随分ジジ臭い声だな」
何の気なしに電話に出た五代だが、これが、相棒と銭形警視総監がじかに会話を交わした、最初にして最後のシーンになると思われる。
五代「ああ、お前、援交か?」
またセクハラ気味の台詞を口にする五代。
愛「顔、映ってますよ」
愛、ボタンを押してケータイをテレビ電話モードにすると、悪戯っぽく笑う。

五代「うん?」
銭形警視総監「はくしゅっ、はくしゅっ」
モニターの中の男性、くしゃみをしながら振り向くが、これが、銭形警視総監の姿が、(何度も同じことを言うようだが)最初にして最後に劇中に映し出された貴重な瞬間なのである。

五代「うっ、銭形警視総監? まさか、おじいちゃん?」
五代、さすがに警視総監の顔は知っていたので、やっとそのことに思い当たる。
しかし、銭形なんてかなり珍しい苗字なのに、今の今まで全然気付きもしなかったというのは、いくらなんでも鈍過ぎるよね。

五代の問いに軽く頷いて、もう一度敬礼をしてにっこり微笑む愛がめっちゃ可愛いのである!
五代「悪夢だ、絶対悪夢だーっ!」
ひとりでとぼとぼ歩きながら、頭を抱えてしゃがみこむ五代。
と、五代のケータイに、愛からハートマーク付きの挨拶メールが届く。

愛「憎めないオヤジ!」
で、最後、普通は「○○事件~済」と、サブタイトルの上にハンコが押されるのだが、初回は、このように処理されている。
以上、あまりの長さに途中で死ぬかと思ったが、記念すべき第1話でした。
ミステリーとしては及第点だが、「これがほんとにケータイ刑事?」と疑いたくなるほど、ギャグのないエピソードであった。
なお、続く第2話、あんまり面白くないのでスルーしたのだが、

定食屋の出前持ちに変装した愛が、ほとんど2次元から抜け出てきたような可愛らしさだったので、これだけ貼っておくことにする。
ああ、疲れた……
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