第39話「冬の怪奇シリーズ 20世紀の雪男」(1972年1月7日)
「冬の怪奇シリーズ」と銘打たれても、該当するのが39話と40話だけなのがいささか看板倒れの感じがする。
内容的には、43話「魔神 月に咆える」なんかも入れても良いと思うんだけどね。

冒頭、権現山と言う山を目指して、腰の辺りまでどっぷり雪に埋まった雪原を、津村秀男と片桐洋子と言うカップルが本格的な登山スタイルで踏みしめている。
津村「もうすぐ雪男の住んでる権現山だ」
洋子「ほんとに雪男がいてくれるかしら」
津村「絶対にいる。ヒマラヤの資料でも今年は12年ぶりに雪男が現れる年にあたってるんだ。このあたりに伝わる伝説や気象条件、それに万年雪の状態はヒマラヤと全く同じなんだ」
洋子「でも、ここ、ヒマラヤじゃねえし……」 津村「え?」
洋子「えっ?」
途中から嘘だが、そもそもヒマラヤでさえはっきり雪男が見付かったわけでもないのに、もろもろの条件が同じだからって、そこに雪男がいると信じ込むと言うのは、ただの妄想としか思えない。
洋子「あとは雪男の写真さえ撮ればすべてが分かるわけね」
津村「ああ、僕の論文も単なる雪男伝説をまとめたものではなく人類学的に価値のあることが研究室のみんなにも分かるはずだ」
……
管理人、今回レビューのためにこの話を頭から見返して、遅蒔きながら気付いたことがある。
特撮ファンの間では常識なのかもしれないが、この導入部が、「仮面ライダーV3」の第13話「恐怖の大幹部 ドクトル・ゲー!?」とそっくり同じだと言うことに。
雪男がイノシシ男に変わってるだけで、人物設定も台詞もびっくりするくらい似ているのだ。
論より証拠、以下、その13話の冒頭部分を見てみよう。

吉村「陽子さん、イノシシ男が住む牙ヶ岳はもうすぐですよ」
陽子「ほんとにイノシシ男がいてくれるかしら」
吉村「絶対にいる。江戸時代からの資料によると、今年の春は30年ぶりにイノシシ男が現れる年なんです」
陽子「あとは、イノシシ男の写真を撮れば、すべてが分かるわけね」
吉村「大学の研究室の連中をあっと言わせてやるぞ」
……
ね? 台詞だけじゃなく、カップルの名前まで似てる。
さらに、導入部のみならず、この後の展開も、途中までまったくと言っていいほど同じなのだ。
ちなみに39話の脚本は田口成光さんで、V3のほうは伊上さんである。
時期的にはこっちのほうが1年以上も先だから、伊上さんがこのシナリオをパク……いや、参考にしたとしか思えないのだが。
それはともかく話を続けよう。

洋子「そうなれば、私たちもやっと結婚できるのね」
津村「随分長いこと、苦労掛けたねえ」
二人は同じ研究室に在籍する学者らしいが、同時に将来を誓いあった恋人同士でもあった。

二人が再び歩き出すと、実にあっけないことに、前方の丘の向こうから、巨大なキャンタマのような頭と、鳥のような嘴を持った怪物があらわれる。

洋子「秀男さん、ほら」
津村「雪男だ!」 どこがだよ…… どうやら津村、長い間雪男の研究に没頭しているうちに、なんでもかんでも雪男に見えるようになってしまったらしい。
が、二人がグズグズしているうちに、雪男とやらは鼻歌を歌いながら丘の向こうへ行ってしまう。
津村はひとりで雪男の後を追いかけるが、その姿が吹雪に巻かれた直後、「あ、ああーっ!」と言う悲鳴が響き渡る。
先行した男が行方不明になり、女性だけ助かると言うのも、V3と全く同じ。

岸田「はい、MAT本部です。……え、雪山の遭難? あ、そういうのは警察の方へ……なんですって、雪男が現れた? あっははっ、新年早々冗談はやめてください」
続いて、雪男の出現を知らせる電話を、MATの岸田隊員が受けるのだが、ここも、ライダー隊本部で、イノシシ男が出たと言う知らせを受けて、露骨に眉をひそめる純子さんの姿と重なる。
しかし、そもそもその電話、誰が掛けて来たのか、その辺も良く分からないのである。
と、伊吹隊長が聞きとがめて、
伊吹「岸田、どうしたんだ?」

岸田「いや、長野県の権現山に雪男が現れたって言うんです」
南「それは怪奇小説の読み過ぎだよ」
伊吹「南、そう結論を急ぐんじゃない」
南「はあ」
二人が席に戻った後、丘隊員が来て、マイナス273度、すなわち絶対零度(劇中では絶対温度)の惑星が240年ぶりに地球に向かっているとの、天文台からの情報を報告する。
それに対し、
伊吹「そうか、よし」 の一言で片付けちゃう伊吹隊長。
いや、そんな惑星が地球に接近したら、結構やばくないですか?
なお、新年一発目の放送と言うことで、デスクの上に鏡餅が置いてあるが、どうせなら、丘隊員に晴れ着姿で仕事をして欲しかった。
何を思ったか、伊吹隊長は郷と岸田に、権現山に調査に行って、体を動かして来いと命じる。

岸田「なんですか、隊長、僕はこの通り、うっ、たっ、とっ、運動不足なんかじゃありません」
雪山になんか行きたくない岸田がこれ見よがしに体を動かして見せるが、それを後方でニヤニヤしながら見ている丘隊員が可愛いのである!
伊吹「そう、君は元気が余っているから行って貰おう」
岸田「は?」
岸田隊員の抵抗も空しく、二人は真冬の権現山に飛ぶ羽目になる。
だが、権現山に入ろうとすると、三人の村人に必死になって止められる。

村人「やめたほうがええ、これから山へ入るなんてそりゃ無茶だよ」
村人「あんたらはイエティの恐ろしさを知らんのだ」
郷「イエティ?」
村人「ああ、この辺では雪男のことをそう呼ぶんだ。毎年元気のいい若いモンが、雪男の探検にやってきては行方不明になる」
村人「それが春になると、高え木の枝に(若者の)死体が引っ掛かっておるだよ。ありゃイエティの仕業に違いねえんだ」
村人「あの洋子って子は運の良い娘だ。いつも行く筈のねえ炭焼き小屋で見付けたんだ」
村人「そう言えばイエティの声も聞いたってな」
郷「雪男を見た人がいるんですか?」 岸田「あれはヒマラヤの話でしょ?」
郷の質問、なんかピントがずれてるなぁ。
岸田が電話を受けた際、はっきり「雪男が現れた」って言ってるんだから。
とにかく、二人は村人に強く制止されて山には入れず、代わりに、救出された洋子のガードをすることになる。
で、このシーンが、またV3とそっくりなのだ。

団員「やめなせえって」
団員「やめたほうがいい、これから山に入るなんて、そりゃ無茶だ」
団員「あんた、イノシシ男の怖さを知らんからじゃ」
団員「そうだ、毎年元気のええ若いもんが来て、イノシシ男を探検に来ては行方不明になってるだ」
主人公を止めるのが、三人と言うのも全く同じである。
さて、郷と岸田は、村の診療所か何かで、眠っている洋子の警護を徹夜で行うが、

ふと目を覚ました洋子が、窓の外に立つ奇怪な影を見て悲鳴を上げる。
驚いて二人が駆けつけたときは、怪物は既に逃げ去った後だった。
これも、V3に同じようなシーンがある。

洋子「雪男があの窓の外に……」
岸田「あなたは夢を見てたんだ。雪男のことは忘れた方がいい」
洋子「夢なんかじゃありません」
郷「岸田隊員、見てください」
郷、その窓だけが凍り付いているのに気付いて注意を促すが、
岸田「いや、そら、冷たい風のせいだ」
とにかく一分一秒でも早く東京に帰りたい岸田隊員は、何が何でも自然現象で片付けようとする。
一方、洋子はあくまで雪男を見たと訴えるが、
津村「雪男なんてこの世に実在しない。あれは伝説の動物だ」 そこへふらりと入ってきて彼女の言葉を否定したのが、他ならぬ、行方不明になっていた津村だった。

洋子「秀男さん!」
津村「吹雪で道に迷って雪穴で休んでいるときにはっきりわかった。雪男なんていない。あれは人間がこしらえた伝説のものだ」
洋子「じゃあ、あれだけ苦労した論文はどうするつもりなの?」
津村「論文?」
洋子「雪男生存説の論文よ」
津村「あれは中止だ」
洋子「そんな……私たちの結婚は……」
津村「それは……東京へ帰ってからにしよう」
郷「待ってください」
即座に洋子を連れて帰ろうとする津村の体に触れた郷は、それが氷のように冷たいことに驚く。
郷たちは、まだ体力の回復していない洋子と一緒に、津村にもしばらく休んでいったらと勧めるが、津村はストーブの火を嫌忌の目で見ると、洋子を置いてひとりで出て行ってしまう。
慌てて追いかけた郷は、玄関のガラス戸の向こうを、不気味な影が移動するのを目にしてドキッとする。
岸田「雪男の先生もああ言ってるんだ、雪男なんていないんだよ。MATはな、個人的な感情で動いちゃいけないんだ」
だが、とにかく早く帰りたい岸田は、津村の言葉を持ち出して、郷に帰還を促す。
で、この、UMA実在説の信奉者だった男が、突然帰ってきて、まるで人が変わったように180度違う意見を述べる……と言うくだりも、V3とクリソツなのである。
釈然としない郷だったが、岸田と一緒に、ひとまずMAT本部に引き揚げる。
他の隊員も岸田と同じく、すべて洋子の幻覚で片付けようとするが、郷はあくまで洋子の言葉にこそ真実が含まれているのではないかと、自説を枉げようとしない。
それはそれとして、お正月と言うことで、郷のマンションの前の道路では子供たちが凧揚げをして遊んでいたり、女性がすべて着物を着ていたりと、昔ながらの正月ムードが画面に横溢していた。
郷が帰ってきたのは、今しも、新レギュラーの村野ルミ子がマンションの入り口に立ち、訪ねてきた二人の友人を見送っているところだった。

ルミ子「お帰りなさい、お正月からお仕事大変ですわね。次郎君、私のところにいますわ」
郷「いつもすいません。ルミ子さんのおかげで次郎君、以前の明るさを取り戻しましたよ。感謝してます」
ルミ子「あら、感謝してるのは私のほうですわ。父の航海中は次郎君に用心棒お願いしてるくらいですもの」
郷(乳の公開中?) 正月早々、エッチな妄想に耽る郷であったが、嘘である。
次郎は、勝手知ったる他人の家とばかり、ルミ子の部屋にふんぞり返って、きなこ餅にかぶりついていた。

次郎「おじさんは今、どの辺にいるんですか」
母親「ちょうど、インド洋じゃないかしら」
次郎「インドって、お正月も暑いんでしょ?」
世界地図を覗き込みながら、ルミ子の母親に質問している次郎。
ルミ子の父親は、息継ぎなしで世界を泳いで一周するという、アホにしか思い付かない偉業にチャレンジしているのである。
……嘘である。
外国航路の船長をしていて、家を空けていることが多いのである。
郷は、ふとしたことから、ルミ子が洋子の友人であることを知り、洋子に会わせてくれるよう頼む。
無論、洋子は既に東京に戻っていた。

郷「洋子さん、権現山の雪男についてもっと詳しく話して頂けませんか? 出来れば秀男君にも会わせてください」
ルミ子「郷さん、それは今の洋子さんにはつらいことですわ」
郷「すいません、何か事情がおありのようですね」
洋子「実は、東京にいるはずの彼が、あれだけ熱心に集めた雪男の資料と一緒にアパートから消えてしまったんです」
洋子によると、権現山の雪男の目撃情報は240年前から始まっているが、爾来、12年周期で雪男が定期的に出現しており、今年がその雪男イヤーに当たるのだと説明する。
郷「240年前からねえ……そう言えば、絶対温度0度の星が地球に大接近するのも、確か今日の筈だ」
郷がその星のことを聞きに天文台に行くと言うと、洋子が同行を申し出る。
一方、問題の秀男は、登山のときの服装のまま、高層ビル群の谷間の公園の東屋に立っていたが、

両手を突き上げ、その体をぐにゃぐにゃ軟体動物のように揺らめかしていたが、ばったりうつ伏せに倒れ、

その背後から、洋子の見た雪男、否、バルダック星人があらわれる。
そう、案の定、秀男は星人に憑依されていたのだ。
星人「もうすぐ我々の星が240年ぶりに、地球に大接近する。その時こそ、我々バルダック星人の地球侵略部隊がこの地球を征服するときなのだ。長い間、万年雪の中に隠れて、地球の資料は全部集めさせてもらった。津村君、君の雪男の資料は捨てた。我々の正体が知れては困るからな。バルダック、攻撃の地はここだ、早く来い」
星人はそう言うと、空に向かって特殊な電波を放ち、

既に地球に向かって飛んでいたバルダックの宇宙戦闘機に、攻撃地点を教える。
しかし、このバルダック星人は、240年も前から地球に来て、侵略のための準備をしてきたらしいのだが、いくらなんでもそんな気の長い侵略者はいないだろう。
つーか、240年前なら、まだ地球の軍事力も大したことはなかったのだから、その時にさっさと侵略してしまえば良かったのでは?
おまけに、わざわざウルトラマンが滞在中の時期を狙って攻撃を仕掛けてくるとは、はっきり言ってアホにしか見えない。
まぁ、バルダック星が地球に最接近する時期にタイミングを合わせたと言うことなのだろうが、宇宙戦闘機を所有しているのなら、星の移動など待たずにさっさと地球を襲撃すれば良いのである。
あと、津村の論文にしたところで、彼はあくまでバルダック星人を雪男だと思っていたのだから、そんな論文がバルダック星人の侵略計画の障害になるとは到底思えず、無駄なことをしているように思える。
と言うより、津村たちにちょっかいを出した為に、郷に疑いを持たれる事になったのだから、まさに薮蛇であったろう。
CM後、郷と洋子は天文台で所員から説明を受けている。

課長「確かに240年ぶりの大接近です。目下、貴重なデータを集めています」
郷「どうして最近まで星の存在に気付かなかったのですか」
課長「それはですね、あの星が冷た過ぎて物質が特殊な状態で透明になっているので、普通の望遠鏡では見ることが出来ないんです。もっとも、現在では電波望遠鏡で見ることが出来ますが」
所員「課長、間もなく星の大接近です。地球で星に一番近い地点は東京です」
課長「うむ、分かりますか、東京の真上に星が接近するんです。この星の前の大接近は江戸時代、それも真夏です。そのために冷害となり、大飢饉が起こっています」
郷「大変参考になりました」
しかし、他の惑星が「真上」などと表現されるほど地球に接近したのなら、互いの引力に引かれて激突しちゃうのでは?

郷「この空の何処かから、肉眼では見ることの出来ない星が近付いているんだ」
天文台から肩を並べて出てくる郷と洋子。
こうして並ぶと、いかに団さんの背が高いか良く分かる。まるっきり大人と子供のようである。

と、早くもバルダック星の宇宙船団が東京上空に進出し、それにあわせて地上のバルダック星人も巨大化して、東京を氷漬けにしようと冷凍ガスを撒き散らす。
今回の一番のみどころは、

冷凍ガスで徐々に街が凍結されていく、その素晴らしい特撮であろう。
フィルムの上では3秒ほどだが、実際の撮影には気の遠くなるほどの時間がかかっただろう。
おまけに、他に3カットも同様のシーンがあるのだから、スタッフの苦労が偲ばれる。

洋子「私が見たのはあれです、あれが雪男です」
郷「わかったぞぉ、雪男は宇宙人だったんだ! 雪男の名を借りて、地球に住んでたんだ!」
暴れまわるバルダック星人の姿を見上げて、漸く真相に辿り着く郷。
ま、冷静に考えたら、
「ネッシーの正体はツチノコだったんだ」的なトンデモな台詞である。
MATが空と陸から攻撃を仕掛けるが、相変わらず何の役にも立たず、

上野と南などは、冷凍ガスを浴びてカチカチにされてしまうのだった。
なお、管理人、この映像を見て、思わず吹き出してしまったことを告白するとともに、この場を借りてMATのみなさんに謝罪したい。
めんご。
この後、郷がウルトラマンに変身して戦うが、冷凍ガスを吐くバルダック星人に苦戦し、自らも冷凍されてしまうが、ここでMATが猛攻撃を仕掛け、

それによって起きた火災の熱によって、ウルトラマンの体も解凍される。
ウルトラマン、立ち上がるとウルトラブレスレットを投げて、赤い炎でバルダック星人の体を溶かし、返す刀で宇宙船団も屠ると、もののついでとばかり、接近中のバルダック星まで破壊してしまう。
いや、さすがに、ウルトラブレスレット一発で惑星を消滅させるのは無理だと思うんですが。
ともあれ、バルダック星人の240年に及ぶ遠大な計画はサクッと潰され、体を乗っ取られていた津村も元通りになって、一件落着。
ラスト、MAT本部で今度の事件についてあれこれ話している郷たち。
岸田「雪男は宇宙人だったのか。案外、伝説を作ってるのは宇宙人なのかもしれないな」 岸田隊員の、これほど中身のない締めの台詞があっただろうか? いや、ない! 的な台詞でおわり。
以上、はっきり言って死ぬほど退屈なエピソードで、V3との類似がなければ、喜んでスルーしていたところである。
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