第22話「恐怖! ホラ穴の悪魔」(1972年2月27日)
今回は、あの(どの?)島田真之さんの脚本である(山崎久氏との合作)。
よっぽどスルーしようかと思ったのだが……

今回も、管理人が世界で一番嫌いな悪役クモンデスの、ひとり語りから始まる。
クモンデス「血が欲しい、血が欲しい……人間の子供の血が欲しい……」
わかったっちゅうねん! あっ、思わずコーフンして大きな声を出してしまいました。面目ない。
ただ、以前にも書いた気がするが、実際、クモンデスの目的が子供たちの血を吸うという、極めてシンプルかつ即物的な内容なのが、路線変更後の「魔女先生」を一層つまらなくしている原因のひとつだと思うのである。
つまり、ショッカーなどの世界征服を旗印に掲げている組織の場合、それを達成するための方法はそれこそ千差万別、数え切れないほど考えられる訳で、それが個々のストーリーをバラエティーに富んだものにしている訳だ。
ところが、それが上記のような単純な目的だと、クモンデスの取る作戦もだいたいいつもと変わり映えのないもの(要するに、子供をどうやって自分のところにおびき寄せるか……)になりがちで、ヒーロー路線に変更して無味乾燥になったストーリーの退屈さにますます拍車が掛かる結果となっている。

クモンデス「だが、俺の欲望を邪魔する奴がいる。それは、月ひかる……今に見ておれ、お前に吠え面をかかせてやる」
水晶玉にひかるの姿を映し出し、今度こそ成功を期すクモンデスであった。
いや、だったら、ひかるのいないところで活動すれば良いのに……
ひかるが邪魔することは分かっているのに、毎回ひかるの働いている学校の生徒ばかり狙って失敗しているのだから、クモンデスの学習能力のなさは、ショッカー顔負けである。
まぁ、ひかるに何度も邪魔されたので、意地になっている可能性はある。
さて、その正夫たちが放課後、サッカーボールを蹴りながらいつもの空き地にやってくると、いつの間にか、立ち入り禁止の看板が立てられていた。
正夫「何だ、この空き地も使えねえのか。あーあー」
進「駄目だよ」
三人がしょげていると、後ろからひかるがやってきて、

ひかる「道草は良くありませんねえ」
正夫「なんだ、先生か」
ひかる、そそくさと行こうとする正夫と進の耳をつまむと、
ひかる「あんたたちでしょ、用務員さんにボールぶつけたのは?」
正夫「おい、やばい、消えよう」

三人「さっ、さっ、さっ……」
正夫の合図で、三人は一歩ごとに声を出しながら、同じ動きでひかるのもとから逃げ出す。
当時、こういうのが流行っていたのだろうか?
もっとも、ひかるも別に本気で怒ったわけではなく、

ひかる「うっふふふふっ」
耳をつまんでいた両手をそのままにして、可笑しそうに吹き出すと、

ひかる「早く帰るのよー」
朗らかに声を掛けると、来た道を引き返して行く。
こんな先生が担任だったら、学校に行くのが楽しくて楽しくて仕方がなかっただろうなぁ。

正夫「なんだ、馬鹿らしいなぁ、ほんと面白くねえのよう」
タケシ「くそう、今日こそ思いっきりボールを蹴っ飛ばそうと思っていたのに」
三人は、ぶつぶつ文句を言いながら長い坂道の上まで来る。
ちなみに、前回は川口さん本人の声だったが、今回は再び高野さんの吹き替えに戻っている。
タケシ、ボールを宙に投げて、落ちてくるところを蹴ろうとするが、何故かボールが空中で止まったため、足が思いっきり空を切り、正夫と一緒に地面に転がる。
ボールはそのまま坂道を下っていき、正夫たちは慌てて追いかけるが、ボールはまるで意思を持つかのように正夫たちを翻弄すると、最後は裏山の小さな洞穴の中に消えていく。
三人も洞穴の中に入り、ボールを追って進むが、その先は、何故か大きな遊園地につながっていた。正夫たちは狐につままれたような顔をしていたが、

男「坊やたち、怖がることはない。ここで思い切り遊んでいいんだよ」
そこに、黒いマントを付けた見知らぬ男があらわれ、正夫たちににこやかに話しかける。
無論、それはクモンデスの変装のひとつであったが、演じているのは、クモンデスの声を担当している飯塚昭三さんである。
三人は半信半疑の様子であったが、近くにご馳走を載せたテーブルがあるのを見ると、いそいそと駆け寄り、席に着く。

進「ほんと食べていいのかな」
タケシ「魔法使いかもしれないぞ」
正夫「何言ってんだよ、タダより安いものはねえんだからよ、お、食っちゃおうゼ」
タケシたちはなおも躊躇していたが、子供らしからぬことを言う正夫に促されて、ナイフとフォークを手にご馳走に取り掛かる。
さすが、食い物に目が眩んで仲間を裏切ったことさえあるゴーグルイエローである。
一方、東西学園の校長室では、正夫たちがいつまで経っても帰らないというので、大騒ぎになっていた。
なんか、この光景も、路線変更後は毎回のように見させられているようで、飽き飽きである。

教頭「ひょっとしたら誘拐?」
母親「やっぱり、教頭先生も? それじゃ正夫は誘拐されたんでございましょうか?」
教頭の軽はずみな一言に、泣きそうな顔で叫ぶ正夫の母親。
確か、今回が初登場だったと思うが、15話の正夫の口ぶりでは、父ひとり子ひとりの家庭のようにも聞こえたので、ちょっと意外な感じがしたものである。
なお、既に気付いた人もおられるかもしれませんが、今回のストーリー、クソつまんないです。
ここまでレビューを書くだけでも、めちゃくちゃ苦痛です。
むしろ書くのが楽しかった前回とはえらい違いで、くどいようだが、シナリオは大事である。
前回は、高久進さんのシナリオだったので、ストーリーのみならず、ひかるの性格描写も路線変更前に近い感じだったのだが、ここでは、

ひかる「正夫くーん、進くーん、タケシくぅーん……うう、何処にいるの?」
夜の住宅街を、子供たちの名を呼びながらとぼとぼ歩いていたが、とうとう耐えられなくなったように階段の上に座り込んで涙ぐんでしまう……と言う、泣き虫のひかるに戻っているのが残念である。
生徒が一晩行方不明になったくらいでメソメソ泣くなんて、およそかぐや姫先生らしくない。

ひかる「先生はどうしたら良いの? ……おとうさまーっ、ひかるはどうしたら良いの?」
さらに、星空を見上げて、こともあろうに、あれだけ嫌っていた父・アンドロメダ帝王に救いを求めると言う、ひかるにあるまじき情けない行為に走る。
ここまで来ると、従来のひかるとはまるっきり別のキャラのようである。
声「ひかる、お前はいつそんな弱気な平和監視員になったのだ?」
ひかる「でも……お父様ぁ」
意外にも、ひかるの問い掛けに遥か彼方にいるはずの帝王からすぐ叱声が飛んでくる。
ひかるは膝の上に顔を埋めて、激しく泣き出すが、

ひかる「ああっ雨? しょっぱい雨!」
その頭上から、突然大量の塩水が降ってきて、ひかるの顔をびしゃびしゃにしてしまう。
この、シリアスから一転、コミカルなシーンに切り替わるところだけは、「魔女先生」本来の持ち味が微かに残っている。
ひかるが振り向けば、そこにバルが立って手放しでおんおん泣いていた。
今の塩水は、バルの流した涙だったのだ。

ひかる「なんだ、バル、今の声はバルがお父様の真似したのね?」
バル「姫が泣けば、バルも泣くのである」
怒ったひかるだったが、バルが貰い泣きしているのを見ると、自分も再び盛大に嗚咽を漏らす。
一方、正夫たちはひかるたちの気持ちも知らず、暢気に遊園地で遊んでいた。
クモンデス、ショッカーと同じく欲を出して、三人に催眠術をかけて一旦解放し、さらにたくさんの子供たちを誘拐しようと企む。
もっとも、その前のシーンでは「血を吸うか」と言っていたので、既に三人の血を少しは吸ったのかもしれない。
翌朝、ひかると旗野先生が川のそばを歩いている。
ひかるは結局、夜通し三人を探し回ったらしい。
……
いや、なんでムーンライトリングを使わないの?
前回、ムーンライトリングの使用頻度が高いことを指摘したが、今回は、またしても、まるでリングがないかのように超能力を使おうとしない。
ここで、路線変更前と後の特徴を比べてみよう。
・ストーリー 前→複雑で痛快 後→単調で退屈
・ひかるのキャラ 前→豪快で独立不羈 後→涙もろくて依存的
・ムーンライトリング 前→多用する 後→滅多に使わない
・ギャグ 前→切れ味鋭い 後→すべり気味
・子供の描き方 前→個性的 後→画一的
・敵 前→バラエティに富んで魅力的 後→マンネリで魅力に乏しい
それはさておき、

ひかる「私、一晩中探したのよ、でも、見付からなかったわ、三人とも……私、あの川ん中飛び込んで死んじゃいたい」
旗野「わかります、僕も同じ気持ちです」
ここでも、ぐずぐず鼻をつまらせながら、およそひかるらしからぬ弱気な発言をする。
また、
旗野「月先生が死ねと仰れば、僕も喜んで死にます」
ひかる「あら、私、いつ旗野先生に死ねなんて?」
旗野「う……」
旗野先生がひかるに対する誠意を見せようとして言った台詞に、ひかるが素朴なツッコミを入れるのだが、これも、ギャグとしてはいまひとつピリッとしない。

バル「クモンデス、バル様に恐れをなしたか? クモンデス、出て来い」
もっとも、次のシーンの、ひとりで怪しい洞穴を発見して力んでいるバルの後ろを、何食わぬ顔で正夫たちが通り過ぎているところは、ちょっと面白い。
ひかると旗野先生は、すぐに正夫たちを発見し、慌てて駆け寄る。

旗野「バカモン、お前たちは一晩中、何処をほっつき歩いてたんだ?」
正夫「ええっ、一晩中?」
旗野先生の一喝を受けて、逆に正夫たちは目を白黒させる。

ひかる「そう、先生たち昨日からあんたたちを探して……」
正夫「嘘だぁ、俺たちほんの少し遊んだだけだよ」
タケシ「そうだよ」
旗野「何を寝惚け飛んだ、もうーっ!」
どうやら正夫たちは、まだ昨日の放課後だと思い込んでいるらしい。
あの異次元空間では時間の流れ方がおかしいのか、あるいはクモンデスの催眠術のせいだろう。
ともあれ、ひかるたちは安堵して、三人を学校へ連れて帰ろうとするが、その途中、クモンデスと戦ってピンチに陥ったバルから、SOSのテレパシーがひかるに届く。
ひかるはこっそり旗野先生たちから離れると、アンドロ仮面に変身してバルのところに飛んでいく。
CM後、クモンデスの前に颯爽と降り立つアンドロ仮面。

クモンデス「来たな、アンドロ仮面、月ひかる、貴様の命は貰った」
ひかる「地球を荒らす悪人は私が許さない」
ワキのひだひだを見せ付けつつ、ヒーローらしいタンカを切るアンドロ仮面。
しばし戦うが、結局クモンデスに逃げられてしまう。

ひかる「これでクモンデスが正夫君たちを狙ってることが分かったわ」
バル「そうじゃ」
……え、なんで? バルは、洞穴から正夫たちが出てきたのは見ていない筈だし、戦闘中、クモンデスがそれを匂わせるようなことは一言も言ってないと思うんだけどね。
もっとも、別に嘘は言ってないし、クモンデスが毎回のように正夫たちを拉致誘拐しているのは事実なので、ひかるたちがそう思ったとしても不思議はない。
その後、クモンデスは、自宅に戻った正夫に、ひかるの誕生会をやるのでひかるの下宿に来いと言うメッセージカードを書かせ、それをサッカーボールに貼り付けて他の子供たちにカードを配るという、面白くもなんともない方法で子供たちを誘拐しようとする。
ビンボーでビンボーで仕方のない子供たちは、
「月先生がご馳走してくれる」と言う一文に、鼻息を荒くしてひかるの下宿に押し掛けてくる。
待ち構えていたクモンデスは、彼らを文字通り一網打尽にしてあの洞窟の中に連れて行く。

ひかるが下宿に戻ると、既に子供たちは誘拐された後で、
ひかる「子供たちを助けたければ、洞窟に来い……クモンデス」
部屋には、大きなクモのオブジェとクモの巣と、ひかるへのメッセージが残されていた。
無論、この後、ひかるはこれらを全部ゴミに出さねばならず、割と迷惑したと言う。
※管理人、ここでだいぶ飽きてきたので、一旦中断してメシを食った(実話) その後、色々あって、ひかるはあの洞窟の中に入るが、落とし穴に引っ掛かって、クモンデスのねぐらに落とされて、クモの糸で縛られてしまう。

クモンデス「ふふふふ、とうとう俺の勝ちだな、月ひかる」
ひかる「ぐっ」
なかなか縛り甲斐のありそうなひかるの胸を軽くタッチしつつ、セクハラ気味に迫るクモンデス。
スタッフも、クモンデスにひかるの胸を思う存分揉みしだかせたいところだったろうが、なにしろ劇中で子供たちが見ている前なので、教育上よろしくないということで、見送られた(当たり前だ)

クモンデス「よくも今まで俺の邪魔をしてくれたな、いよいよお前の最後だ。たっぷりいじめながら殺してやる」
こうして見ると、つくづく
ブサイクだなぁ……
ヒラの怪人ならともかく、幹部や首領でここまでデザインセンスのない怪人も珍しい。
さて、絶体絶命のピンチに陥るひかるだったが、そこへバルが駆けつけ、なんとか危機を脱する。
そして、アンドロ仮面に変身してラス殺陣となるのだが、

今回は野外での本格的なアクションシーンを撮る余裕がなかったのか、地味な魔空空間のような黒一色のスタジオの中での戦いとなっている。
そのせいか、最後もマントブーメランではなく、変身コンパクトの光でクモンデスを退散させるという、珍しい方法が採られている。
子供たちも全員助け出され、バルの超能力で一瞬で地上に移動する。

ひかる「みんな、早くうち帰って頭でも冷やしてらっしゃい」
進「まだ4時だよー」
正夫「そうだよ、あそこであんまりに遊べなかったんだもんなぁー」
ひかるの言葉に口々に異議を唱える子供たち。

ひかる「わかりました」
それに対し、ひかる、傍らの切り株の上に上がるのだが、こんな時でも、パンツが見えないかなぁとコマ送りしてしまう管理人であった。
我ながら最低である。

ひかる「それでは、こないだの問題、明日までやってこないと全員廊下に立たせます」
正夫「ほんとぉ?」

ひかる「嫌なら……」

ひかる「学校中1000回!」
なおも文句を言う子供たちに、腕をぐるぐる回して宣告すると、

むくれたようにツンと横を向くひかる。
やっぱり、菊さんは可愛い!
しかし、この一連の台詞についても、
「こないだの問題」では漠然とし過ぎてどの問題だか分からないのではないかと思うし、
「学校中1000回」では、具体的に何をすれば良いのか分からず、こういう些細なところでも面白いシナリオとそうでないシナリオとの差がつくのである。
まぁ、学校の周囲を1000回走れという意味だったのだろう。
以上、ストーリーは死ぬほど退屈で、おまけにチラもなければハルコちゃんもおらず、見所は菊さんの表情豊かな演技だけという、実にお寒い内容のエピソードであった。
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