続きです。

一方、アキ子は、篠田と連れ立って店を出ると、篠田の運転する車でしばらく走った後、歩道橋の上で二人きりで話をする。
そう、二人は恋人同士だったのだ。
アキ子「私、パパが復讐されるのは当然だと思うわ。だって今まで随分色んな人を泣かせてきたんだもの」
篠田「私の父は毛利さんのために倒産して死んでしまった。前社長(速水のこと)はその埋め合わせに僕の面倒を見てくださったのに……今では毛利社長の秘書になってしまった」
アキ子「どうして辞めないの? パパに仕返しするチャンスを狙ってるんじゃないの?」
篠田「……」
アキ子「じゃあ、駒代さんを殺したのは?」
篠田「いや、僕が恨んでいるのはあなたのお父さんだけだ」
アキ子「でも、私と付き合いだしたのはパパに復讐する為だったんでしょ?」

篠田「最初はね……でも今は違う、愛してるよ」

アキ子「私も」
毛利と美与子などの、ドロドロした大人の愛欲とは無縁の、清々しいカップルであった。
一応、この二人は、原作で何度も危ない目に遭う若いカップル、篠田と美与子に該当するのだろうが、ドラマにおける美与子(金沢碧)も、原作の美与子の設定を一部引き継いでいるようだ。
その夜、明智は、百合江と鮎沢に相談があるからと仮面城に招かれ、二人にそれぞれ送られた切り貼り文字の脅迫状を見せられる。

明智「毛利は死刑だ。奴と取引するとお前を殺す、影男」
百合江「ホテルの部屋に投げ込まれてあったの」
鮎沢「私のところにも、これが……」
明智「全く同じものですね」
鮎沢「明らかに脅迫状でしょ?」
百合江「気持ちが悪くって……明智さんに守って貰いたいの」
が、明智は、「お守りすると言うより、犯人を必ず突き止めて見せます」と、引き受けているんだか、断ってるんだか良く分からない、曖昧な返事をする。

百合江「うまいこといって、明智さん、美与子さんのことで精一杯なんでしょ? あの方にだいぶ関心をお持ちのようだから」
百合江、気分を害した様子もなく、からかうように明智の心を読んで見せる。
明智「いやぁ、お気の毒な方だと思ってるだけですよ」
百合江「Pity's akin to love……かわいそうだと言う気持ちは恋に近い」

ピアノの前に座り、情熱的に「運命」を弾いてみせる百合江。

明智「お上手ですね」
百合江「私もこれから色々な手を使って明智さんの気持ちを奪うつもり……いいわね?」
見事な指捌きを披露しつつ、あけすけにモーションをかけてくる。

鮎沢「狙われましたね明智さん、百合江さんはボーイハントにかけては有名な人ですから」
鮎沢の言葉に、
「やったぁーっ! 今度こそ童貞卒業だぁーっ!」と、心の中でガッツポーズを取る明智さん。
と、突然、ピーピー電子音が鳴り出したので驚いたが、それは明智の持っているポケベルが鳴っているのだった。
明智「あ、失礼、オフィスからの連絡です。ちょっと電話を拝借……」
明智さん、ポケベル持ってたのか。サラリーマンみたいで、なんか幻滅だな。
会話のタイミング的にも、いかにも不粋である。
とにかく、明智が事務所の文代に電話すると、毛利と美与子の行方が分からないと言う波越からの伝言だった。
その二人は既に葉山の別荘に到着していた。

毛利は、影男の復讐宣言に何か心当たりがあるのか、銃まで持ち出して異様に警戒していた。
美与子「そんな猟銃、なんにお使いになるの?」
毛利「万一、影男が現れたら」
毛利、さっきの再婚話を蒸し返し、

毛利「本心を言うとね、速水の使い込みの穴埋めを引き受けたのも、あんたが欲しかったからなんだよ」
美与子「いけませんわっ」
毛利「いいじゃないか、減るもんじゃなし」
と、半ば強引に美与子を抱く。
表面的には抗ってみせる美与子だが、所詮、毛利に逆らうことは出来ないのだった。

情事の後、体を強くこすって、染み付いた男の臭いを洗い落としている美与子。

一応、おっぱいが映し出されるものの、明らかに別人のおっぱいである。
それも、脱ぎ女優さんにしてもイマイチなおっぱいで、なんとなく悲しくなる。
ま、かと言って金沢碧さんのおっぱい見せられてもね……

だが、入浴中、再び現れた影男に襲われて、毛利ともども気絶させられてしまう。

そして気がつくと、二人して別荘の裏庭で、首から下を地面に埋められていた。
目の前には影男がいて、呪いの言葉を吐きながら巨大なカマを振り回し、二人を殺そうとする。
これは、最初に書いたように、原作にもある印象的なシーンを再現しているのだ。

影男「死ね、二人で仲良く」
毛利「うっ」
原作の、弱いものをいたぶるサディスティックな感じは薄いが、それでも、鎌が顔のすぐ横に突き刺さるのはなかなかの怖さである。
しかし、駆けつけた明智や波越たちに妨害されて、間一髪で二人は助かる。
ちなみに原作では二人の男女(篠田と美与子)を殺そうとしていたのは影男ではない別の男で、逆に影男によって二人は助けられるんだけどね。
大した怪我はなかったが、一応病院に収容されている二人。
波越が、勝手に店を抜け出た毛利たちに文句を言ってると、鮎沢と百合江が、クソでかいフルーツかごをもって見舞いに来る。

鮎沢「どうも、どうも」
アキ子「どうもありがとうございます」
どれくらいでかいかと言うと、受け取ったアキ子の背丈の半分ほどもあり、昔はこんな非常識なサイズのフルーツかごが普通に売られてたんだなぁと驚かされる。

鮎沢「どうも大変でしたねえ」
百合江「びっくりなさったでしょう、美与子さん……で、犯人の目星は?」
毛利「例の影男です」
二人はいささか大袈裟に驚いてみせると、自分たちも影男から脅迫状を受け取ったと明かし、

鮎沢「影男と面と向かわれたわけでしょう、速水でしたか?」
毛利「確かに背格好と声は似ていた……」
明智「美与子さんはどうですか」
美与子「わかりません」
波越「しかし目の前で見てご主人かどうか分からない訳はないでしょう」
美与子「似てるようにも思えました。でも、あんな恐ろしいことするような人じゃありません」
美与子はきっぱり否定するが、波越は、影男の正体が速水だとほとんど確信していた。
だが、ここで明智は、速水は実は宝石の密輸には関係なく、本物の密輸犯人によって濡れ衣を着せられ殺されたのではないかと言う新しい可能性を指摘する。

明智「その仕掛け人が香港の殺し屋を使って、ボールを爆弾に摩り替え、速水氏に打たせた」
波越「だが、速水は死ななかった。生き延びて復讐に現れたって言うのかね?」

鮎沢「しかし、速水さんだとすると、どうして毛利さんを狙うんですか?」
明智と波越の会話を聞いていた鮎沢が、当然の疑問を口にする。
百合江「自分を陥れたのが、毛利さんだと思ってるのよ」
毛利「ばかなっ、私は感謝されこそすれ、恨まれる覚えはない!」
毛利は声を荒げて否定すると、波越に重ねて警護を依頼する。
その後、屋敷に戻った美与子は、自分の部屋の鏡台にルージュで書かれた影男からの呼び出し状を見、指定された教会へタクシーで行き、鐘楼に登る。

彼女を待っていたのは、当然、影男。
美与子「あなたなの?」
影男「そばに来るな。さがって話を聞け」
彼は自分が速水だと認め、毛利こそが、宝石密輸と彼の殺害を企てた犯人だと言う。
影男「その毛利にお前は身を任せた!」
美与子「許して……無一文で放り出されて、他にどうすればいいのよ? 生きてたなら何故知らせなかったの? 罠だって分かったら、警察にすぐ訴えれば良いじゃないの!」
夫に「不貞」を責められた美与子は、逆になじるように夫の不可解な行動を問い質す。
影男「毛利が黒幕だと言う証拠がない、だから復讐するしかなかったんだ。まず毛利、そして毛利の娘、次がお前だっ」
美与子「やめてっ、アキ子さんは良い人よ、お願い、やめて」
美与子の嘆願に、影男はアキ子を見逃す代わりに、美与子に復讐の手助けをしろと強要する。
どうでもいいが、最初の犠牲者なのに、当の犯人にさえカウントされない駒代夫人が哀れである……
美与子「そんな恐ろしいこと……ほんとにあなたなの?
そのかほ見せて」
美与子は再び疑惑に襲われ、妙に篭った声で素顔を見せてくれと頼む。

影男「よし、見せてやろう、無残なこの俺の顔をな」
影男、割りとあっさりリクエストにこたえて、自ら包帯を解いていく。

だが、その下から現れたのは、火傷で焼け爛れてはいたが、紛れもなく速水の顔だった。
影男「いいな、二人で毛利に罪を告白させ、殺すんだ。お前が協力するならあいつの娘は殺さない」
美与子「……」
影男、美与子の沈黙を承諾と受け取ったのか、

影男「美与子、いいじゃないか、減るもんじゃなし」
美与子「あなた……」
ついでにその場で一発やっちゃうのでした。
鐘楼の大きな音がすぐそばで鳴り響き、さらに情事をマリア様に見られていると言う背徳的な状況が美与子を燃え上がらせるのか、美与子は我を忘れて夫に体をゆだね、強烈なエクスタシーに達してしまう。
美与子「ああっ……」
だが、その瞬間、美与子はある重大なことに気付いてしまう……
「これ、夫のチ○コと違う!」と言うことに。
……
すいません! もう言いません! スパムコメントを山のように送らないで下さい!
でも、要するに、そう言うことなのだ。影男に抱かれて、初めて美与子は、それが夫でないことに気付いてしまったのだ。
ま、後の楽しみが減るので、先走るのはそのくらいにしておこう。
ただ、この場面で、影男が美与子を抱くのは、ちょっと変じゃないかと思う。何故なら……
しばらく後、やっと美与子の所在を突き止めた明智と波越が鐘楼に上がって、放心状態で横たわっていた美与子を保護する。
翌日、美与子が自室で休んでいると、アキ子がジュースを載せた盆を持って入ってくる。

美与子「ありがとう」
アキ子「ごめんなさいね、パパったら美与子さんを苦しめてばかりいて……でも、本気で結婚するつもりらしいわ」
美与子「アキ子さんは反対なんでしょ?」
アキ子「ううん、美与子さんが幸せになれるんだったら、反対はしないわ」

美与子「優しいのね、アキ子さんは……」
改めてアキ子の心根に触れ、感動にも似た温かさを感じる美与子。
実際、美女シリーズの中でも、これだけ純真で性格の良い女の子は、他には「浴室の美女」の高橋洋子さんくらいではないだろうか。
だが、そのアキ子を守る為に、美与子が影男に協力しなくてはならなくなったのだから、皮肉である。
と、そこへ、毛利、明智、波越の三人が入ってきて、アキ子を下がらせると、美与子から昨日の事情を詳しく聞きたいと言う。
美与子は、影男とは一目会っただけだと偽りを言い、

美与子「でも……あの包帯の男は、夫です」
と、何かを決意したような眼差しで断言する。

明智「え、ほんの一目お会いになっただけで、良く分かりましたね」
美与子「短い時間でも会ったのはこれで三度目です。直感で夫と分かりました」
毛利「やはり速水は生きていたんだな」
美与子「今度現れたとき、良く話して誤解を解きますわ、ですから明智さん、もうどうか特別な警戒はやめて頂きたいんです」
毛利「何を言うんだ? 我々は狙われてるんだよ」
美与子「だって、夫を捕まえる手助けはしたくはありません」
美与子、伏し拝まんばかりに、明智に事件から手を引いてくれと頼むが、明智がこんな中途半端な形で事件を放り出す筈もなく、それどころか、もう一度香港へ行き、速水の生死を確認してくると言い出す。
と言う訳で、今回は豪華なことに、物語終盤になって、もう一度香港が舞台となるのだ。
ま、別に、二回ロケしてるわけじゃなく、同時に撮ってるだけなんだけど、見てる方としては結構「おおっ」となってしまう。

船に乗って優雅に川下りを楽しむ明智さん。当然、周りはガン見する。
あのキャディーをしていた陳と言う男の行方を追い求めて、住宅街を歩く明智さん。当然、通行人はガン見する。

そのうち、明智は、怪しい男につけられていることに気付く。ついでに通行人は、その男もガン見する。
明智、その男を待ち伏せして捕まえ、胸倉を掴んで問い詰めるが、

それは単なるエロ写真売りのおやじでした。
筆者はこういうことをされた経験はないけど、なんとなく、じわっと懐かしい感じがする。昭和の温泉街の、ひそかな楽しみと言う奴ですか。
しかし、一瞬とは言え、こういう写真が堂々と茶の間に届くおおらかさが素敵である。
「とてもいい写真あるよ、安くしておくよ」などと、肝付兼太みたいな声のおっさんに言われて、思わず大人買いてしまう明智さんであった。
そして、ホテルに戻ってワクワクしながら見たら、全部修正済みだったので椅子を振り回して大暴れしたと言う。
嘘はさておき、収穫なくホテルに戻ってきた明智さんを、他ならぬあの陳が不気味な笑みを浮かべて見詰めていた。
そう、明智の香港行きを知った毛利が、既に陳に明智の暗殺を命じていたのだ。

それはさておき、フロントで鍵を受け取った明智さんを嬉しいサプライズが待っていた。
明智「あ、百合江さん」

百合江「宝石の取引に来たの、明智さんは?」
明智「ええ、影男事件の追跡調査ですよ」
百合江「どうかしら、私とデートは?」
しかもストレートにデートしませう、と誘ってくれる。この時の、明智さんの嬉しそうな顔といったら……
慌ててポケットに入れていたさっきの写真をゴミ箱に投げ捨てたのは言うまでない。

で、今度は二人連れでごみごみした市場や観光地を練り歩くのであった。
当然、店の人や通行人は全員ガン見である。
道中、百合江は、

百合江「恐ろしい事件だけど、明智さんに会えたのはこの事件のお陰だわ。ねえ、このまま私と一緒に旅行しない? スペインかメキシコか、うんと情熱的なところへ」
と、実にストレートに誘ってくれるのだが、例によって明智さん、ここぞという踏ん張りどころで意気地なしになってしまい、
明智「ありがたい話ですが……事件はまだ解決してないんでね」
と、あっさり断ってしまう。もう明智さんのバカ、バカ!
百合江「ほんとに陳って男は犯人なの?」
明智「随分事件に関心をお持ちのようですね」
百合江「明智探偵の恋人は事件でしょ、私、その事件から早くあなたを奪いたいの、本気よ」
明智「私にはなんだか、事件の進展を探りにわざわざ香港まで私を追ってこられたように思えますね」
百合江「あら、私が何の為にそんなことをする必要があるの?」
明智「あなたが影男か、それとも影男の協力者か」
百合江「うっふっふ、さすがは探偵さんね、奇抜で独創的な発想をなさるのね」
その後も、明智はひたすら事件の話しかしない。これじゃ一生結婚できんなぁ(お前もな)

すげなく断られたものの、百合江、本気で明智が好きになったようで、大胆に明智の腕にからみつく。
文代さんが見たら「キーッ!」となること請け合いである。

ハト料理のおいしい店に行こうと、百合江は明智を誘ってタクシーに乗る。
百合江「明智さん、美与子さんが好きでしょ」
明智「はっはっ、そんな」
百合江「うふっ、隠しても駄目、香港でなら美与子さんに勝てると思って追いかけて来たの、うっふ、私って悪い女でしょ?」
そんなことを言いながら、明智の肩にもたれる百合江。
うーん、中島ゆたかさんが実に色っぽい。
別に香港に来なくても、十分美与子に勝てると思うけどね。
このまま行けば、ほんとに百合江が明智さんの童貞を奪うことになっていたかもしれないが、童貞の神の思し召しか、結局、今回もお預けとなる。
何故なら、そのタクシーの運転手は、他ならぬ陳の息のかかった悪人で、勝手に目的地を変え、人気のない船着場に二人を連れて行ってしまうからだ。

そこで待ち受けていた陳たちにピストルを突きつけられ、車から降りろと命じられる。
百合江「私たちをどうする気?」
陳「私、用あるのは明智だ。でも、あなた帰す訳に行かない」

百合江、隙を見て逃げ出そうとするが、陳にピストルで背中を撃たれてしまう。
さすがの明智も手も足も出ず、係留してあるジャンク船の中に、瀕死の百合江も一緒にぶち込まれる。

明智「しっかりするんだ!」
百合江「明智さん」
明智「私の為にとばっちりを受けて申し訳ない。きっと助け出すからしっかりするんだ!」
百合江「優しいのね、明智さんって……ほんとに二人で遠くの国に行きたかった」
なかなか痛切な愁嘆場である。
でも「美女シリーズ」で、「美女」以外の女性ゲストが、こんな風に明智さんに抱かれながら死ぬというのは珍しいよね。
いっそのこと、最初から中島さんをヒロインにしとけば良かったのに。
明智「しっかりするんだ」
百合江「私は駄目、本当のことを言うわ、私、明智さんの言うとおり、あなたを監視に来たの、場合によっては殺せって言われて……」
明智「影男にだね? 誰なんだ、影男と言うのは?」
百合江、死を悟ったのか、何もかも打ち明ける。だが、明智に影男の正体を告げる前に、

明智「言ってくれ! ゆ……百合江さん!」
百合江は、明智の胸に抱かれながら、異郷の地で儚くも美しくその生涯を閉じるのだった。合掌。
それにしても明智さんもどうしようもない朴念仁だね。影男の正体なんか聞くより、キスのひとつでもしてやればいいのに。
そこへ陳たちがどやどや入ってくる。彼らはピストルを持っているのに使おうとせず、明智さんを柱に縛り付け、ダイナマイトに点火すると言う、ショッカーのようにまわりくどい方法を採る。

近くから陳たちが見張る中、船は大爆発を起こす。
しかし、今回は新聞の見出しも失踪とあるだけで、文代さんたちが明智の死を嘆き悲しむ姿も割愛されている。
ま、さすがに明智が死ぬのに飽きたのだろう。
いちいちそのたびに喪服を引っ張り出さねばならず、いい加減うんざりしていたと思われる。
でも、今回、殺人犯の陳は野放しのままなんだよね。そこがちょっと釈然としない。
あるいは、後日、きっちり香港警察に逮捕されたのだろうか?
その3へ続く。
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