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「帰ってきたウルトラマン」傑作選 第33話「怪獣使いと少年」



 第33話「怪獣使いと少年」(1971年11月19日)

 「新マン」のみならず、ウルトラシリーズ全体の中でも最高傑作と呼び名も高いエピソードである。

 が、個人的には、まぁ、確かに傑作だとは思うが、どっちかと言うと、セブンの「盗まれた街」や「第四惑星の悪夢」のような幻想的な話が好きなので、あまり思い入れはない。

 大体、見てあまり楽しい話じゃないからね。

 夜、叩き付けるような土砂降りの中、背丈ほどもある草むらの中を「助けてー、父ちゃん!」と、半狂乱になって逃げているひとりの少年。

 その背後から、ムルチと言う、銀色の魚に手足を生やしたようなデザインの怪獣が迫っている。

 
 少年、佐久間良は、恐怖のあまりその場にばったり倒れて気絶してしまうが、その前に現れたのが、悪性の皮膚病にかかったような不気味な顔をした、しかし、ちゃんとスーツを着た怪人物であった。

 
 怪人物……メイツ星人は、両手を空に突き出し、そこから特殊な光線を出して、ムルチを操り、地中に潜らせる。

 最初、メイツ星人がムルチを連れて来たのかと思ったのだが、別に両者には何の関係もなかったことが後に分かる。

 そういうドラマだから仕方ないのだが、今回に限って言えば、無理にムルチを出す必要はないストーリーなのだった。もしくは、メイツ星人が連れていたペットが、地球の汚れた空気を吸って凶暴化した……と言う風にすべきだったかもしれない。

 その後、休むことなく稼動している工場群が遠望できる、だだっ広い河原。

 
 そこに木造の廃屋があり、その前で、佐久間良少年がスコップで小石だらけの固い地面を汗みどろになって掘り返していた。

 
 ここで、物陰からその様子をじっと見詰めている、男とも女ともつかぬ老人のカットが入るのだが、管理人、迂闊にも、最近まで、それをメイツ星人こと金山老人かと思っていたのだが、良く見たら、全然違う人であった。

 かと言って、この後、別にストーリーに絡むこともなく、一体誰だったのか、分からぬじまいであった。

 近所の人?

 
 次郎「あれが宇宙人なのかな」
 男の子「子供に化けてるんだって……超能力使うらしいぜ」

 同じく、その様子を、少し離れた崩れかけた小屋の中から、次郎といつもの友人たちが興味深く見詰めていた。

 と、そこへ、三人組の、いかにも頭と素行の悪そうな中学生が自転車に乗ってやってくる。

 
 中学生「おい、お前、どっから来たんだよ」
 中学生「おい、お前、つんぼかよ?」
 中学生「おい、なんとか言えよ」
 中学生「なんで毎日毎日穴ばかり掘ってんだ?」
 良「仕事の邪魔なんだ、帰ってくれよ」

 いきなり差別用語が飛び出し、ハラハラする管理人。

 しかし、この真ん中の背の低いいじめっ子、どう見ても、いじめるよりいじめられる方のキャラだよね。

 で、そいつが、良のあばら家を調べようと言い出し、勝手に入ろうとするが、良も慌てて彼らを追いかけ、入り口で通せんぼする。

 良「やめろ、二階に行くな」
 中学生「うるせえ、どけっ」

 三人は良を押しのけて薄暗い屋内に踏み込むが、良が「えいっ、やあっ」と気合を発すると、一人の体がトランポリンの上で弾んでいるかのように、何度も何度も宙に持ち上げられる。

 これは別に良が超能力を使った訳ではなく、2階に隠れ住むメイツ星人の仕業であった。

 が、三人組はそれくらいでは逃げず、

 
 くぼみにたまった泥水を缶の蓋でたっぷりとすくうと、

 

 
 それを、穴に首から下を埋められた良の頭にそそぐという、ウルトラシリーズのみならず、特撮ドラマ史上、最悪のイジメを行う。

 今ではどう足掻いても無理だが、当時としても、かなり強烈なシーンだったのではないかと思う。

 中学生「おい、早く変身しろよ」
 次郎「かわいそうだよ、ひどいよ!」

 さすがに次郎が見兼ねて叫ぶが、

 
 中学生「バカヤロウ、宇宙人なんだぞ、こいつは。お前、頭からガリガリ食われても良いのかよーっ?」

 そう怒鳴り返しつつ、なおも汚水をどくどくと良の顔の上に流していくクソ野郎たち。

 しかし、いじめれる側もイヤだけど、いじめてる子役たちの親御さんたちも、いくら芝居とは言え、見るのがつらいシーンだったろうなぁ。

 
 中学生「お前たちもやれよ! こいつをほっとくなとな、今に俺たちがやられてしまうんだぞ」

 次郎たち、無論、いじめに加担することはなかったが、相手は中学生なので、力尽くでやめさせる勇気もなく、立ち尽くしていた。

 
 調子こいた三人は、今度は自転車を良の頭にぶつけようとするが、寸前で横から郷に押し倒される。

 
 次郎「郷さん!」
 郷「どうしてこんなひどいことをするんだ?」
 中学生「こいつ宇宙人なんだよ、だからやっつけてんのさ」

 郷、その場は穏便におさめ、中学生たちを帰らせる。

 郷「今出してやるからな……随分掘ったなぁ、一体何に使うんだい」
 良「そんなこと聞くために助けるのなら、ほっといてくれ」
 郷「君が答えなくても、よいしょっ、調査は続けるよ」
 良「ありがとう」

 穴から引き揚げられた良、郷に礼を言い、また、自分が江差出身の「れっきとした日本人」だと告げる。

 その後、次郎があの三人組に呼び出される。

 
 中学生「MATは何てったぁ? 宇宙人野郎のこと、なんか言ってただろう?」
 次郎「宇宙人じゃないかもしれないって……れっきとした日本人らしいよ。北海道まで調査に行ったよ、郷さん」
 中学生「我々人間様にはあの手の顔はねえよな」
 中学生「あんな顔はなー」
 中学生「どうやらMATも頼りならねえなー」(註・それは事実です)

 次郎がちゃんと説明するが、頑迷固陋でおまけに知能指数0の三人組は、いっかな信じようとしない。

 管理人、子供の頃はピンと来なかったが、今となって思えば、彼らの言う宇宙人が、在日朝鮮人などの日本におけるマイノリティーの寓意であることは明瞭である。

 
 良が、とても人が住めそうにない廃屋の奥で、それでも、ちゃんとかまどで火を熾して鍋を煮ていると、

 
 おまいら他にすることないんか? 暇なんか? 暇だったらラグビー部に入って青春を謳歌しろ! と言う感じだが、またあの三人組が今度はシェパードを連れてずかずか入り込んでくる。

 それにしても、廃墟としても素晴らしいロケーションである。

 元々、何の建物だったのだろう?

 
 中学生「なんだぁ、宇宙人もメシ食うのかよ」
 中学生「へへっ、なぁんだ、なんだ、お粥か」

 良のところに来て、勝手に鍋の蓋を取って中を見る傍若無人のクソ野郎ども。

 ま、ここで、「沈黙の戦艦」のゲイリー・ビジーのように、鍋の中にタンを吐いたら、それこそ日本テレビドラマ史上、最低最悪のイジメになっていたところだが、さすがにそこまではせず、鍋を蹴飛ばしてひっくり返すにとどまる。

 それでも、十分きついけどね。

 
 悲しそうな目で、床に散らばったお粥を見詰めている良。

 
 黙って、そのお粥を手で掻き集めようとする。

 中学生「拾って食うのかよ」
 中学生「そのメシうめえかよぉ、へへえっ?」

 
 彼らは、そんな良に謝るどころか、聞くに堪えない罵声とせせら笑いを浴びせた上、さらに、良の目の前で、お粥を下駄で踏みにじってしまう。

 ……

 てめえら、いい加減にしやがれっ!!

 思わず画面の中に飛び込んで、中学生たちをボコボコにしたくなる管理人であった。

 ま、それだけドラマとしてよく出来ていると言うことなのだが。

 もっとも、劇中の良も、さすがに堪忍袋の緒をお切りになって、燃えさしの木切れを掴んで中学生たちに反撃に出る。

 三人はとっとと逃げ出すが、代わりにシェパードがけしかけられ、良に飛び掛かる。

 
 三人が廃墟の外で腹這いになって様子を窺っていると、シェパードが頼りない鳴き声を上げながらトコトコ出て来て、

 
 木っ端微塵に吹っ飛ぶ!

 犬には罪はないのに、かわいそうなことである。

 恐れをなして逃げていく三人を、廃墟の中から悔しそうに見詰めている良。

 どこからか、風鈴のような懐かしい鈴の音が聞こえてくる。

 
 見れば、托鉢僧らしき男が、手にした鈴を鳴らしながら廃墟の前を通り過ぎていく。

 その後も、雨の日も風の日も、一心に地面に穴を掘り続けている良の姿に、郷の声が被さる。

 
 郷の声「少年の名は佐久間良、昭和33年4月2日、父・徳蔵、母・ヨネの長男として江差に生まれ、良が4歳の時に一家でミヤマ鉱山に移っています」

 
 郷の声「昭和38年、不運にも炭鉱は閉鎖されて、徳蔵は職を失い、東京に出稼ぎに出たまま蒸発……昭和40年、母・ヨネ死亡、その直後、佐久間良、行方不明……となっていますが、父親を追って東京に出て来たんでしょうねえ」

 
 伊吹「天涯孤独となった良君は、どんなに父を憎み、また慕ったことか……郷、確か君も?」

 郷の調査報告を、実相寺的アングルで聞いている伊吹隊長。

 
 郷「はい、でも私にはMATという家があり、隊長と言う父があります」

 同じく、伊吹隊長の問い掛けに、実相寺的アングルで応じる郷。

 しかし、この時点ではまだ坂田兄妹は健在なのだから、郷が、「MATが家で、隊長が父」だと言い切るのには若干違和感を覚える。

 
 伊吹「良君はあの廃墟の中に、父親に似た愛のぬくもりを発見したのではないだろうか? もしその父が宇宙人で、その為に良君が宇宙人呼ばわりされ乱暴されて情愛の絆を断たねばならないとしたらそれは絶対に許されん。日本人は美しい花を作る手を持ちながら、一旦その手に刃を握るとどんな残忍極まりない行為をすることか……

 実相寺的アングルで向かい合いながら、印象深い台詞を放つ伊吹隊長。

 再び良に会いに廃墟を訪れる郷。

 
 カメラの手前に、首吊りのようなロープがぶらさがり、その輪の向こうに郷の姿が見えると言う、ヤな映像。

 郷「良君! 良君!」

 郷、良の名前を呼びながら進むが、何の返事もなく、輪に結ばれたロープを見て、ギョッとする。

 
 その良、破れ傘を恥じることなく差して、珍しく商店街を歩いていた。

 それは良いのだが、

 
 その姿を見て、目引き袖引き指差して、「宇宙人の子供ですよ」「図々しいですねえ」などと、無責任な噂をヒソヒソ言い合うのが、日本人の嫌な所を集めて濾過して煮詰めて容器に流し込んで冷蔵庫で冷やし固めたような、実に醜い態度に感じられる。

 
 良が住人の冷たい視線と陰口を浴びながらパン屋の前に立つのだが、そばに、ミニスカの若い女性が立っていて、日本中、老いも若きも、スーブーも美人もミニスカでめでたいことですなぁと思ったけれど、良く見たら、その前のシーンの中にいた、エキストラの女の子の使い回しじゃねえかっ! と言うことに気付いて、やや興ざめした管理人であった。

 と言うか、お前は、テレポーテーションが出来るのか?

 ともあれ、元気良く「食パン下さい! タダで!」と言う良に対し、

 
 店主「あの、たまにはお金払ってくれない?」

 と、遠慮がちにお願いする女店主であったが、少しでもこの欝なシーンを明るくしようとした管理人の嘘である。

 良「食パン下さい」
 店主「悪いけど、よそのお店行ってよ」

 実際は、店主の冷たい一言で、追い払われてしまう良だった。

 うう、見るのがつらすぎる……

 だが、それを見ていた若い女店員が、とぼとぼと帰っていく良を、食パンを持って追いかけ、

 
 洋子「待って、はい」
 良「同情なんてして貰いたくないな」
 洋子「待ってよ、同情なんてしてないわ、売ってあげるだけよ、だってうち、パン屋だもん。はい、120万円!
 良「高っ!」

 じゃなくて、

 洋子「はい、120円」
 良「……」

 良、黙って金を払うが、洋子は親切にもパンを買い物袋の中に入れてくれる。

 それにしても、こんなでかいパンが120円(消費税なし)……このシーンに限らず、「気まぐれ本格派」で、山口いづみが石立鉄男に持っていったボールに山盛りのイチゴや、「熱中時代」で、校長先生の家に新年の挨拶に訪れた谷隼人が食べていた分厚いカマボコなど、70~80年代のドラマの食にまつわる風景を見ていて感じるのは、気が付けば、いつの間にか、5個入りの中華風蒸しパン(消費税8パーセント付き)が、どう考えてもめちゃくちゃ小さくなっているような現在の我々より、当時の日本人の方がよほど豊かな食生活を送っていたんじゃないかと言うことである。

 
 良「ありがとう」
 洋子「気をつけてね」

 この、女性店員の、ささやかな優しさだけが、このドラマにおける救いである。

 だが、意気揚々と良が廃墟に戻ると、既に郷が金山老人ことメイツ星人の存在を暴き出していた。

 推測だが、郷は(金山を信用させる為)自分がウルトラマンであることを金山に打ち明けたのではないだろうか。あるいは、郷が自分から言わずとも、超能力を持つ金山には、一目で相手が宇宙人だと言うことが分かったのかもしれない。

 
 良「どうして勝手に上がったんだ? 出て行け、出て行け」
 金山「やめなさい、郷隊員は知っている。私がメイツ星から来た、宇宙人であることもね」
 良「ええっ」
 郷「だが、全て疑問が解けたわけではない。良君、表の穴は何の為に掘ってるんだい?」
 金山「私から話そう。あれは一年前の雨の強い日だった。私は地球の風土気候を調べる為に表の河原に着陸した」

 メイツ星人は、自分の乗ってきた宇宙船を超能力で地中深く埋めるが、その際、気を失って倒れていた良を発見し、保護したのだと言う。

 金山「それ以来、良とはまるで親子のように暮らした。私はこのまま地球に住み着いても良いとさえ思えました。しかし、秋が来て枯葉が散るように、私の肉体も汚れた空気に蝕まれて朽ち果てていく」
 郷「早くしないとおじさんは死んでしまうんだ」

 事情を知った郷は、初めて晴々とした笑みを浮かべ、良と一緒に宇宙船を掘り出してやることにする。

 
 郷「お父さんは見付かったのかい?」
 良「父ちゃんなんか、要らないよ。僕、おじさんと行くんだ、メイツ星へ」
 郷「地球を捨てるつもりかい」
 良「地球は今に人間が住めなくなるんだ」
 郷「……」

 良の言葉に、険しい顔で遠くの工場群を見遣る郷。

 とめどなく煤煙を吐き出す工場や、排気ガスを撒き散らしながらひっきりなしに鉄橋の上を走る自動車の列を見ては、良の言葉を一概に笑い飛ばせない郷であった。

 本作には「差別」と言うメインテーマのほかにも、「公害」と言うサブテーマが織り込まれているのだ。

 しかし、郷も、場合が場合なんだから、ウルトラマンに変身するか、MATに応援を頼むかして、ちゃっちゃと宇宙船を掘り出してやれば良かったのに。そうすれば、この後の悲劇も起きなかっただろうに。

 良「あの高速道路の向こうに怪獣が閉じ込められているんだよ」
 郷「怪獣?」
 良「おじさんが念動力でやったんだ」

 郷に心を開いた良は、そんな秘密まで教えてくれる。

 
 だが、その時、向こうから大勢の人間が、手に手に物騒なものを持って駆けて来るのが見えた。しかも、その中には警官の姿さえあった。

 住民「呆れたもんだ」
 住民「宇宙人を退治すべきMATが、宇宙人と仲良くするなんてな」

 先頭に、あの三人組の姿があることから、郷の行為をわざわざ住民に告げ口して、彼らを煽動したのだと思われる。

 
 郷「大勢で何をしようと言うんですか?」
 警官「その子は宇宙人だということが分かった。MATが手を下さないのなら、警察がやる!」

 郷が必死に抵抗するが、まさに、洪水を戸板で防ぐようなもので、

 
 良はたちまち捕まって、問答無用で引っ立てられていく。

 このまま行けば、良が「善良な市民」に嬲り殺されるのは明らかだった。

 おそらく、関東大震災の際、デマをきっかけに住民が集団ヒステリー状態になって、大勢の朝鮮人および中国人が惨殺された悲劇を下敷きにしているのだろう。

 と、良の悲鳴を聞きつけて、金山がよろよろと廃墟から出てくる。

 
 金山「宇宙人は私だ」

 
 金山「良君は、ただ私を守ってくれただけだ。宇宙人じゃない」
 良君「おじさーん」
 金山「さあ、良君を自由にしてやってくれ」

 金山の気迫に押されたか、住民は良を掴む手を緩め、良は金山の胸に飛び込む。

 あ、言い忘れていたが、金山老人役は、チブル星人でお馴染み、植村謙二郎さんでした。

 
 良「おじさん、どうして出て来ちゃったんだよ」
 金山「もう良いんだよ」
 住民「みんな、こいつを生かしておくと何をしでかすかわかんねえぞ!」

 ちなみに、この定食屋のおやじを演じているのが梅津栄さんです。

 今度は、金山に目掛けて押し寄せる半ば狂った人々。

 極度の混乱の中、警官が撃った一発の弾丸が、良の希望を無残にも撃ち砕く。

 

 
 カーッ! と言う衝撃音と共に、止め絵で驚く良と郷。

 
 金山「殺すなら、私を殺せ」

 金山の言葉を待つまでもなく、二発目の銃弾が撃ち込まれる。

 
 郷「……」

 無言で地面を叩き、たとえようのない悔しさを滲ませる郷。

 良「おじさん、おじさん!」

 良、血まみれの手を握って叫ぶが、金山老人はあえなく息絶えてしまう。

 ……それにしても、暗い話だ。

 考えたのだが、もし宇宙人の名前がメイツ星人ではなく、スクールメイツ星人だったら、最後に廃墟から出てくるときに、金山老人がスクールメイツの格好をして、ついでに本物のスクールメイツを従えて踊りながら出て来る展開も考えられた訳で、そうしたら、こんな悲劇的な結末にはならなかったのではないかと……すいません、もう言いません! 許してください! 場を和ませようとしただけなんですぅ!

 その直後、鉄橋の向こうの地中から、勢い良く巨大な蒸気のようなものが噴き上がる。

 
 そう、メイツ星人が死んだ為、封印されていたムルチが復活したのである。

 
 郷「……」

 慌てて逃げ出す住民を尻目に、郷は鉄橋を破壊して暴れまくるムルチの姿を見詰めていた。

 
 住民「早く退治してくれよー」

 
 郷(勝手なことを言うな。怪獣をおびき出したのはあんたたちだ。まるで金山さんの怒りが乗り移ったようだ……)

 小屋に避難して郷に助けを求める住人たちを、心の中で冷たく突き放し、ムルチを攻撃しようともせず凝視しているだけの郷。

 人間の浅ましさ、醜さをその目でイヤと言うほど見せ付けられて、MAT隊員としての、いや、ウルトラマンとしての使命さえ放棄したくなったのだろう。

 なお、小屋はムルチの火炎弾で炎上するが、住民たちがそれで死んだのかどうかは不明である。

 ま、ねがわくば、せめてあの三バカ中学生だけでも焼き殺されたことを祈りたい。

 
 郷がなおも絶望して座り込んでいると、そこへあの托鉢僧があらわれ、

 伊吹「郷、町が大変なことになってるんだぞ」
 郷「……」
 伊吹「郷、分からんのか?」

 郷、無言でムルチと托鉢僧を見詰めていたが、やがて力強く走り出す。

 
 それを見送って、微笑む伊吹隊長。

 そう、托鉢僧は、伊吹隊長の変装だったのだ。

 防衛軍の隊長としては物凄く印象的な扮装だが、実際の登場シーンって二つだけなんだよね。

 そして、この伊吹隊長の言動から、伊吹隊長は郷がウルトラマンであることを知っているのでないかと言う説が生まれることになった(らしい)。

 ちなみに安永航一郎の「陸軍中野予備校」で、主人公の兄・酢堂玉金が托鉢僧姿で出てくるのは、この伊吹隊長の変装に由来しているのである。

 ついでに、同じ安永航一郎の「県立地球防衛軍」の「海中からの挑戦」は、33話のパロディとなっており、父親が巨大カジキと戦って行方不明になった良太と言う少年が悪ガキ三人組にいじめられるシーンなどが出てくる。

 ともあれ、郷はウルトラマンに変身し、ムルチを倒し、事件はひとまず落着する。

 
 なおも諦めず、ひとりで穴掘りを続けている良の姿に、郷たちの会話が重なる。

 上野「一体、いつまで掘り続けるつもりだろう」
 郷「宇宙船を見つけるまではやめないだろうな。彼は地球にさよならが言いたいんだ」

 良が蒸発した父親と再会する、などと言う甘っちょろい結末もなく、ひたすら地面を掘り返している良の孤独な姿を映しつつ、幕となる。

 以上、非常に重苦しく、後味は悪いが、特撮ドラマの中で「差別」の醜さ・恐ろしさを見事に描いた傑作であった。また、MATが全く出動しないと言う、異色作でもある。

 それにしても、今ではまず放送できないような重いテーマを扱ったこの作品が、セブンの12話のような不運な目に遭うことなく、現在まで語り継がれていることは素晴らしいことだと思う。

 ちなみに、はるか後年の「ウルトラマンメビウス」において、このエピソードの続編を作ると言う無謀な試みが行われている。

 管理人の好きな斉藤とも子さんがゲスト出演しているので自分も見たが、確か、メイツ星人の息子が父親の復讐の為に地球に来てどーのこーのと言う、「差別」と言う大きなテーマを、単なる家族の復讐や個人的な感情問題に矮小化した、お涙頂戴風の、いかにも現代的なストーリーになっていたように記憶している。
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コメント

後味が悪い

どうも後味が悪い作品でしたね。確かに名作ではありますが、差別の色が濃い要素が盛り沢山の作品ですね😢女の子の“だって私🍞屋だもん"の台詞が印象深かったですね。最初に観た時は(再放送でしたが😊)意味が良く分からなかったですね

いじめが酷い

傑作と言われている話ですけど、中学生のいじめが酷すぎますね。この描写がもう少しマイルドだったらさほど不快感もなく見られたのですが。中学生が焼かれてほしいというのは同感です。

問題作

今回のレビューを拝読してこのエピソードを振りかえると,静止画像を見ているだけでも胸がつまり,涙がにじむほどでした。やはりこの回は,問題作中の問題作と言えると思います。
それでも,何だかこの回ばかりが特別な傑作のように扱われ,学校で教材として使われる事例もあるなどという話を耳にすると,神格化がすぎるのではないかと,ちょっと引いてしまいます。
新マンなら,これと並んで,「悪魔と天使の間に」のような傑作もあるのに,などと思ったりもして。
あのパン屋の娘さんの「ささやかな優しさだけが,このドラマにおける救い」というのが本当にそうですね。
何かで読んだのですが,たしかこのシーンは,最初に円谷プロからTBSに納品したバージョンが,あまりにも重苦しいと局側からクレームがついて撮り足したものだとか。時間がないなかでの急な撮影で,あの雨もたまたまその日に降っていたそうですが,結果として奇跡的な名シーンになっていると思います。

>「公害」と言うサブテーマが織り込まれているのだ。

第1話のザザーンは「ヘドロ怪獣」だし、先行の「スペクトルマン」は公害怪獣メイン。
1970年の万博の「夢の跡」の1971年は公害という「現実に向き合う」ことに・・・

群衆の恐ろしさがじわじわくる

>しかも、その中には警官の姿さえあった。
上原先生追悼の配信を1月初旬に観た時は「警官まで出るかな」と思ってしまいましたが

3月初旬に「デマに踊らされ」て「開店前にトイレットペーパーを買う」ための行列
約30名!を観て「上原先生、ごめんなさい」に・・・
一昨日普通に売ってました(同じ店)・・・

ただただ救いが無い

>郷「宇宙船を見つけるまではやめないだろうな。彼は地球にさよならが言いたいんだ」

よく並び称されるジャミラやノンマルトは「宣戦布告なしで人類を攻撃」している
(真市は警告しただけ)ので倒すのはやむなしですが

今話は人間が悪いだけ・・・後味の悪さは先行2作を超越してますね。

1971年(昭和46年)11月

翌日の「仮面ライダー」34話の方が視聴率は上でした・・・
「ドラマの質」ではこちらの方が「あ、圧倒的じゃないか!」ですが・・・

「シリアス」よりも「軽快」が「時代を造って」いました・・・

Re: 後味が悪い

なんか凹みますよね。

Re: いじめが酷い

確かにちょっとやり過ぎですよね。

Re: 問題作

> 今回のレビューを拝読してこのエピソードを振りかえると,静止画像を見ているだけでも胸がつまり,涙がにじむほどでした。やはりこの回は,問題作中の問題作と言えると思います。

自分も、書いててこれだけストレスの溜まる作品はありませんでした。

> それでも,何だかこの回ばかりが特別な傑作のように扱われ,学校で教材として使われる事例もあるなどという話を耳にすると,神格化がすぎるのではないかと,ちょっと引いてしまいます。

そうなんですか。ま、自分もちょっと褒め過ぎたような気がしています。

> 何かで読んだのですが,たしかこのシーンは,最初に円谷プロからTBSに納品したバージョンが,あまりにも重苦しいと局側からクレームがついて撮り足したものだとか。時間がないなかでの急な撮影で,あの雨もたまたまその日に降っていたそうですが,結果として奇跡的な名シーンになっていると思います。

そうでしたか。貴重な裏話ありがとうございます。

Re: >「公害」と言うサブテーマが織り込まれているのだ。

実際、深刻な問題だったんでしょうね。

Re: 群衆の恐ろしさがじわじわくる

> 3月初旬に「デマに踊らされ」て「開店前にトイレットペーパーを買う」ための行列
> 約30名!を観て「上原先生、ごめんなさい」に・・・

トイレットペーパーぐらいならまだ笑ってられますけどね。

Re: ただただ救いが無い

言い訳できないですからねえ。少年の境遇が変わるわけでもないし。

Re: 1971年(昭和46年)11月

> 「シリアス」よりも「軽快」が「時代を造って」いました・・・

ま、テレビなんてそんなもんでしょう。

ウルトラマンが載っても壊れない

ラス殺陣は「長回し」で撮っていますが、これはアカンでしょう・・・
「長回し」は「仮面ライダーZO」のVSドラス第2ラウンド開始が最高です!

>この、女性店員の、ささやかな優しさだけが、このドラマにおける救いである。

このシーンはアキの予定だった・・・と何かで見ましたが
アキである必然性はないですし、これが正解でしょうね。

名作であることに疑いの余地はありませんが

これが新マン、これがウルトラ、間違ってもこれが上原先生と言わないでほしい。

基本はエンターテイメントであり、それが一本調子に陥らないためのアンチテーゼなので。

Re: ウルトラマンが載っても壊れない

そうでしたか。自分は巨大バトルには興味ないので良く覚えてませんが。

Re: >この、女性店員の、ささやかな優しさだけが、このドラマにおける救いである。

スケジュールの都合もあったでしょうけどね。

Re: 名作であることに疑いの余地はありませんが

確かにそうですね。

こんな話ばっかりだったら人気が出る筈ないですもんね。

伊吹隊長

托鉢僧の姿で郷に活を入れた伊吹隊長ですが、どうも郷=ウルトラマンだと気付いているようですね😅

Re: 伊吹隊長

まあ、これだけでは断定できないですけどね。

海外セールスを度外視

「ウルトラマン」「ウルトラセブン」は最初から海外セールスの意図があったので
基本的に日本の下町とかの描写を避けたり、時代背景を未来っぽくしてたけど
新マンが「昭和46年の日本そのまま」なのは、円谷一社長もそんな余裕は無かったか?

Re: 海外セールスを度外視

やっぱり普通に撮影する方が予算が少なくて済むんでしょうね。

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Author:zura1980
70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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