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「ウルトラセブン」傑作選 第34話「蒸発都市」(リテイク版)


 第34話「蒸発都市」(1968年5月26日)

 天災と同じく、忘れた頃にやってくる「ウルトラセブン」の時間がやって参りました。

 ま、このブログでは既に三回ぐらい完結してる筈なのだが、その辺は詮索しないように。

 まずは、メンバーのご挨拶、もとい、OP主題歌のイントロから。

 ダン、ダダン、チャーチャーチャチャッーチャチャ、チャッチャッチャーッチャッチャチャーッ(分かるか!)

 しかし、久しぶりに聞いたけど、「セブン」のイントロって、めちゃくちゃ荘厳かつ勇壮で、もし自分が全世界の命運を背負って悪の軍団と戦わねばならぬ時が来たなら、迷わずこの曲をBGMに選ぶだろう。

 
 ナレ「水道、ガス、電気、地下鉄など大都会の動脈を作る工事がいつもどこかで行われています。昼も夜も……それは私たちが見慣れている風景、だが、安心してはいけません、侵略者は私たちの心の隙を狙って何を企むか分からないのです」

 冒頭、深夜のビル街の真ん中で、黒と黄色の縞模様の作業着を着た、まるで鬼太郎のようないでたちの作業員たちが黙々と働いている映像に、重々しいナレーションが被さる。

 ナレーションも言っているように、我々が見慣れたありふれた風景が、非現実な怪異な出来事の入り口になると言う、いかにも金城さんらしい……と言うより、「ウルトラQ」っぽい、SFの香り高き幕開けである。

 で、たまたまその区域をポインターでパトロールしていたのが、ダンとソガの仲良しコンビであった。

 ソガが本部への連絡を終えた直後、運転していたダンが急ブレーキを掛ける。

 
 ソガ「あた、あいたた、あいた……どぉしたんだよぉ」
 ダン「あの音は?」
 ソガ「カッターの音じゃないか、工事中なんだよ」

 
 ダン(カッター? 妙だ、あれは普通のカッターじゃない、アスファルトを切断し地底深く掘り下げている特殊なマシンの音だ)

 口をとんがらさせて文句を言うソガをよそに、真剣な顔で考え込んでいたダンだったが、

 ダン「よし、帰ろう」
 ソガ「帰るんかいっ!」

 その言葉に、思わずヘルメットでフロントウィンドウを叩き割るソガ隊員であったが、嘘である。

 正解は、

 ダン(よし、行ってみよう)

 でした。

 ダンが車をUターンさせて工事現場に向かうと、気配を察した現場監督らしき男が慌ててマイクロバスに乗り込む。

 現場に来たダンが、なおも作業を続けている作業員たちに声を掛けるが、彼らはまるでロボットのように何の反応も見せず、同じ作業を繰り返していた。

 特に説明はないのだが、彼らは宇宙人の作り出した作業用ロボットであったのだろうか。

 続いて、さっきのマイクロバスが後方からマシンガン(?)を撃ちながら急発進する。ダンたちもすぐに追いかける。

 
 ソガが本部に状況を報告してから、ダンがポインターのレーザーガンでマイクロバスのタイヤを撃ち、路肩に停止させる。

 だが、二人が車から降りて近付こうとすると、マイクロバスの車体が青白い光に包まれ、忽然と消えてしまう。

 さらに、ダンとソガ、そして様子を見に来た警官までポインターごと消失してしまう。

 何とか助かったもうひとりの警官の知らせを受けたキリヤマたちが直ちに現場に駆けつけ、調査を行う。

 
 キリヤマ「何か手掛かりがつかめるかも知れん、調べてくれ」
 アマギ「はっ」
 キリヤマ「本部に何か連絡が入ってないか?」
 アンヌ「はい」
 フルハシ「……」
 キリヤマ「フルハシ、気をつけろ!」

 何の気なしに消失場所に立ち入ろうとしたフルハシを、キリヤマが鋭く注意する。

 
 アマギ「隊長、多量に放射能が検出され、やはりこの一画が妙ですね」
 キリヤマ「うーん」

 などと二人が話していると、

 
 アマギ「あっ、危険です、下がって!」
 フルハシ「……」

 またふらふらっと現場に入ろうとしたフルハシが、今度はアマギ隊員に叱られる。

 キリヤマ(お前はニワトリか?)

 なかなか新しい物事を覚えられないフルハシに、キリヤマが心の中で毒づくが、嘘である。

 わざわざ発砲しながら逃げ出したことから見て、彼らが計画的にダンとソガを誘い出したのは間違いないようであった。

 
 フルハシ「何者の仕業でしょう?」
 キリヤマ「どうやらひと波乱ありそうだな」
 アマギ(隊長、今笑うところじゃないです……)

 部下が敵の手に落ち、既に殺されているかもしれないと言うのに、意味もなく不敵な笑みを浮かべるキリヤマに、アマギが心の中でそっとツッコミを入れたと言う。

 翌日、事件の起きたオフィス街はいつもと変わらぬ穏やかな朝を迎えたかに見えたが……

 
 出勤中のサラリーマンやOLの見ている目の前で、鉄筋コンクリートの巨大なビルが幽鬼のような光に覆われ、骨組みが透けて見えたかと思うと、ダンやソガと同じく、跡形もなく消えてしまう。

 異変はそのビルだけでなく、他のビルも次々と消滅していく。

 
 半ばパニック状態になって路地から大通りに出てくる人々。

 以前のレビューでも書いたように、このシーンでは、ビルの壁面にカメラを押しているスタッフの影がはっきり映り込むという、円谷作品では珍しいミスが見られる。

 あと、通行人たちが、ビルを見上げて口々に騒ぎ立てているのだが、声の反響が明らかにおかしい。

 オフィス街と言うより、トンネルの中の声みたいで。

 

 
 ビルが一区画ごと消えてしまう、素晴らしい合成ショット。

 異変を知ったキリヤマは、アマギと共にヘリコプターで現地へ飛ぶ。

 
 そのヘリコプターのミニチュアが、これまた入魂の精密さで、パッと見、実機に見えてしまうほどだ。

 
 また、彼らの視点で捉えたビル街の映像が、上下にがくんがくん揺れるのも、実に芸が細かい。

 それはさておき、近代的なビルで埋め尽くされていたオフィス街の真ん中が、土の露出した空き地になっているのを見て茫然とするアマギ。

 アマギ「人間や車を消すことなら、ちょっとした魔術団でもやれますが、巨大なビルが、しかも一区画ぜんぶ消えてなくなるなんて想像も出来ませんね」
 キリヤマ「恐るべき敵だ」

 やがて、空き地に大きな泡のような物体が出現するが、アマギがヘリのレーザーを撃つと、何事もなく地面に吸い込まれていく。

 正直、このシーンは別に無くても良かったかな、と。

 続いて、何の説明もなく、フルハシとアンヌが私服でポインターに乗って何処かへ向かっている。

 
 フルハシ「こう言っちゃあなんだがね、街もスモッグや排気ガスでくたびれてんだよ、でっかいビルを乗せて、やれ地下鉄だ、下水管だって年がら年中ほじくり返されてんだ。人間ならとうの昔におらぁ死んじまったってところだな、川は干からびてしまう、並木は枯れてしまう、これじゃ街だって蒸発したろうって気になるね」

 ハンドルを握りながら、サブタイトルにもなっている、街が過度の都市化や公害に嫌気が差して人間と同じように自分の意思で「蒸発」してしまったのだという珍説を得々と披露するフルハシ。

 それに対してアンヌは、

 アンヌ「えっ? あ、ごめん、聞いてなかった」
 フルハシ「……」

 嘘はさておき、この、本筋とは関係のない世間話のようなやりとりが、実に「大人」の感じがするんだよね。

 二人は郊外のホテルへ入り、アンヌと良く似た声の受付に言われて、2階のロビーへ上がる。

 そこで待っていたのは、こちらも背広姿のタケナカ参謀だった。

 
 フルハシ「急に呼び出したりしてなんですか? 3Pですか?
 タケナカ「ちゃうわ!」

 じゃなくて、

 フルハシ「急に呼び出したりしてなんですか?」
 タケナカ「ユタ花村と言う女性を知ってるか」
 アンヌ「ええ、いつかテレビで……非常に優れた霊媒ですって」
 タケナカ「ウルトラ警備隊に会見を申し込んできたんだ」
 フルハシ「だったら何も参謀みずから……」
 タケナカ「まあ最後まで聞け、会見の内容が今度のビル蒸発事件だというんだ。だとしたらこっちから出掛けて行くのが礼儀だろう」
 フルハシ「しかし、霊媒と蒸発事件とどういう関係があるんですかね」

 フルハシの疑問はもっともであった。

 三人がとある部屋の前に立ち、タケナカがノックをすると、せむしのような老婆がドアを開ける。

 
 タケナカ「地球防衛軍のタケナカです」
 老婆「……」

 老婆は無言で彼らを招じ入れる。

 
 水晶玉越しに見たアンヌたちの姿が映し出されるが、腕がびょーんと伸びて、まるで「スピルバン」のヨウキのようになっている。

 
 ユタ花村は、部屋の奥まったところに座って彼らをじっと見詰めていた。

 演じるのは真理アンヌさん。

 エキゾチックな美貌が、謎めいた霊媒と言う役にピッタリである。

 やがて水晶玉の内部から眩しいほどの光を発せられると、ユタ花村が抑揚のない声で機械のように喋り出す。

 ユタ花村「我々は太陽系からそう遠くない星から来たものだ。一時的な宇宙乱流を避けるために」
 フルハシ「なにぃっ!」
 ユタ花村「い、いや、そんなに驚くところじゃないでしょ?」
 フルハシ「確かに」

 じゃなくて、

 フルハシ「なにぃっ」
 ユタ花村「しばらくの間、地球の住人となる」

 何かに憑かれたようなユタ花村の目のアップに続けて、

 
 男「我々は今日住むためのビルを頂戴した。そして自分たちの居住区を決めた」

 遠く離れた場所にいて、ユタ花村を操り、その声を通してタケナカたちに語りかけている、ヒゲを生やした男の口元が映し出される。

 男「私たちが無断でやったのは相談をしている余裕がないからだ」

 男……ユタ花村は、さらに、タケナカたちが彼らの居住区に近付かない限りにおいて、ダンとソガの安全を保証すると約束する。

 要するに人質と言う訳である。

 タケナカ「ひとつだけ聞きたい、君たちの居住区に指定した場所はどこだ?」
 ユタ花村「……」
 タケナカ「もし本当に一時的な滞在なら地球防衛軍は邪魔をしない。約束してもいい」

 だが、ユタ花村はそれっきり何も答えず、宇宙人の支配が解けたのだろう、糸が切れたようにその場に突っ伏す。

 次のシーンでは、キリヤマがフルハシたちに「蒸発都市」の探索を命じるが、

 タケナカ「行動は十分慎んで欲しい、あの言葉は単なる脅かしとは思えん、目的はモロボシ、ソガの両隊員を貰い受けることだ」

 タケナカは隊員たちにそう訓示する。

 ちなみにナレーションは「ユタ花村を通じて語られた宇宙人の言葉を手掛かりに……」と言っているのだが、宇宙人は、都市の所在地については何の手掛かりも与えてないと思うんだけどね。

 こうしてキリヤマとアマギが空から、フルハシとアンヌが地上から「蒸発都市」の探索を行う。

 アンヌたちはポインターで三ツ沢方面を走行していたが、キリヤマからの連絡に対し、

 アンヌ「現在のところまったく異常ありません」

 と、アンヌが笑顔で答えるのは、なんか変じゃないか?

 彼らは敵の襲撃に備えてパトロールしているわけではなく、「蒸発都市」を探しているのだから。

 それはともかく、二人は三ツ沢(峠?)のドライブインで一休みし、駐車場で暢気にコーラを飲むが、

 
 アンヌ「私、デキちゃったみたい」
 フルハシ「んぶーーーーーっ!!」

 景色を見ながらぽつりと漏らしたアンヌの言葉に、思わず口に含んだコーラを波動砲のように吐き出すフルハシであったが、嘘である。

 フルハシ「これ以上探したって無駄だよ、一休みしたら基地に帰ろう」
 アンヌ「ずいぶん冷たいのね」
 フルハシ「うん、良く冷えてるだろ」

 フルハシのとぼけた言葉に、

 
 アンヌ「コーラじゃないわ、拉致された二人の気持ちも知らないで良くこんなものが飲めるわね」
 フルハシ「あっ、あっ、君ぃ」

 アンヌ、不機嫌そうにフルハシから瓶を奪い取ると、地面にぶちまけてしまう。

 フルハシ、もったいないので地面にこぼれたコーラをベロベロ舐める。

 ……嘘である。今回嘘ばっかりである。

 しかし、番組中で商品名を口にして、それを「こんなもの」呼ばわりして捨てるなんて、商業主義が骨髄まで染み渡った現在のテレビではまずありえないシーンである。

 
 アンヌ「……」

 と、アンヌが視線の先に何かを発見したように、無言で前方を指差す。

 フルハシがその方向に目をやると、

 
 前方のだだっぴろい平野に大量の泡が浮かび、その中から「蒸発都市」が蜃気楼のごとく出現する。

 しかし、ビルは消失すると同時に別の場所に転送されたと思われるのに、今頃になって実体化すると言うのは、なんか変である。

 ちなみに冒頭で怪しい作業員たちが行っていたのは、ビルを転送させるのに必要なメカを埋め込むことだったのだろう……か?

 フルハシたちはキリヤマに連絡してから「蒸発都市」に向かう。

 
 フルハシ「行ってみよう」

 
 フルハシ(で、でけえ……)

 ふと横を向いて、改めてそのでかさ(何が?)に驚嘆の念を禁じ得ないフルハシであった。

 ウルトラ警備隊の……と言うか、アンヌの制服って、トップスはパツンパツンで良いのだが、

 
 ボトムスが野暮ったいと言うか、張りがないので、そのヒップラインを堪能できないのが痛恨である。

 二人は「蒸発都市」の中に踏み込むのだが、他の行楽客たちも大勢それを見ているのに、誰もやってこないと言うのはいささか不自然である。

 まあ、フルハシたちが立ち入らないように警告したのだろうが。

 フルハシ「バカにひっそりとしてるな」
 アンヌ「宇宙人がいるのかしら」
 フルハシ「そんな気配もない」
 アンヌ「あっ、人がいるわ」

 アンヌ、前方の歩道にたくさんの人が立っているのを見て、思わず駆け出す。

 フルハシ「おい、アンヌ、参謀の注意を忘れたか?」
 アンヌ「でもっ」

 フルハシがそう言って止めようとするのだが、「蒸発都市」にホイホイ踏み込んでる時点で同罪だと思うんだけどね。

 しかも二人は、宇宙人から、「蒸発都市」に近付けば、ダンとソガの命は保証しないとじかに聞いてるんだけどね。

 
 それはさておき、フルハシの制止を振り切ってアンヌが通行人たちのそばに近寄るが、彼らは彫像のように固まって、微動だにしない。

 そう、これぞ、人力だけで表現した、格安の特撮技法なのである!

 
 フルハシ「おい、君たち、おい」
 アンヌ「逃げ遅れた人たちがビル街と一緒に運ばれたんだわ」
 フルハシ「失神して硬直してるんだ」
 アンヌ「あれ、この人、さっき、まばたきしてなかった?」
 女性(やべぇ……)
 フルハシ「そうかなぁ……よし、しばらく様子を見よう」
 女性(ますますやべぇ……)

 人生最大のピンチに陥り、心の中で全世界に向けてSOSを発信するOLであったが、嘘である。

 二人は手分けをしてダンたちを探す。

 
 アンヌ「ダン! ソガ隊員……」

 それにしても、で、でけえ……(何が?)

 
 アンヌは、拍子抜けするくらいあっさりソガを発見するのだが、何故か、消えた時のままの状態で路上に立っていた。

 いや、宇宙人は彼らを人質にしているのだから、いくらソガ隊員に価値がない(人間としてではなく、戦力として)とはいえ、路上に放置はないんじゃない?

 と、そばに立っていた警官の目がクローブアップされ、

 
 警官(で、でけえ……)

 じゃなくて、その目をカメラ代わりに利用して宇宙人がその様子を見ていることが分かる。

 
 男「で、でけえ……」

 宇宙人もびっくりのアンヌの横パイであった。

 男は再びユタ花村を通じて、タケナカ参謀に電話をさせ、

 ユタ花村「ウルトラ警備隊は我々を裏切った。君の部下が約束を破ったのだ。我々はこれから行動を開始する」

 ウルトラ警備隊の違約をなじり、宣戦布告する。

 まあ、この件については、全面的にウルトラ警備隊が悪いと思う。

 彼らが、その言葉の通り、緊急避難的に地球に短期間滞在したいだけだったのなら、何も彼らを撃滅する必要はないからである。

 彼らが正式な交渉をせずにダンたちを誘拐したのも、地球人、なかんずく、ウルトラ警備隊の好戦的で暴力的な体質は、宇宙にも知れ渡っているので、攻撃される前に先手を打ったとも考えられる。

 なにしろ、宇宙船を見たらとりあえず攻撃してくるような危ない連中だからね。

 もっとも、この後の過剰防衛とも思える行動からして、彼らの目的が最初から地球侵略だったと言う可能性もなくはないが……

 その後、キリヤマたちのホーク1号が「蒸発都市」付近の原野に着陸する。

 男はどうやってか不明だが、意のままに操れるようにしたダンに命じて、ウルトラセブンに変身させる。

 アンヌ「セブン!」

 ビルの向こうからセブンの巨体が現れたのを見て歓声を上げるアンヌだったが、セブンは両手を挙げたまま、アンヌのほうに向かってくる。

 アンヌ「気でも狂ったの?」

 セブン、エメリウム光線で足元の車を爆破すると、

 
 馬券でも外したのか、「てめ、この、ちくしょう!」とばかり、適当なビルに八つ当たりする。

 アマギ「セブン、やめてくれっ」

 と、セブンが方膝突いてアイスラッガーを放とうとするのを見て、

 キリヤマ「危ない、伏せろ!」

 
 ここでアマギが、咄嗟に棒立ちになっているソガの体に飛びついて伏せさせるのが、実になんとも麗しい友情の発露であった。

 アイスラッガーは彼らの頭上を掠めてビルの角に当たり、破片がバラバラと落ちてくる。

 
 キリヤマ「退避しろ!」
 アマギ「でも、ソガ隊員が……」
 キリヤマ「そんなもんほっとけ!」

 
 アマギ「世話が焼けるなぁ、もう……」

 キリヤマに言われたものの、捨てていく訳にも行かず、硬直したソガの体を運んでやるアマギ隊員の優しさに胸が熱くなる管理人であったが、途中から全部嘘じゃい。

 ウルトラセブンの戦いぶりに見入っていた男だったが、うっかり、部屋の鍵を閉め忘れていたのが運の尽きで、

 
 男「あっ」
 フルハシ「……」

 入ってきたフルハシに、問答無用で撃ち殺される。

 ね? ウルトラ警備隊って凶暴でしょう?

 これなら、宇宙人が最初に人質を取ったことも納得できる。

 ちなみに設定では、この男のことは「ダンカンの人間態」となっているが、ダンカンはあくまで彼らのペットor用心棒であり、彼は呼称不明の宇宙人にしておいたほうが良かったと思う。

 別に誰かに見られるわけじゃないのに、わざわざ人間の姿に化ける必要はないからである。

 フルハシがその部屋のメカを壊すと、男の体はぶくぶくの泡になり、

 
 それがビルの谷間に溢れ返るほど膨らんだかと思うと、その中から、体中にトゲの生えた、ハリネズミのようなキュートな怪獣ダンカンの姿が現れる。

 コントロール装置が壊れて正気に返ったセブンとの戦いとなるが、いかにも蛇足の感は否めない。

 ビル街を四方八方に走り回って戦う両雄であったが、ダンカンはどう見てもただのペット怪獣にしか見えず、

 
 セブンに持ち上げられると、まるっきりドリアンみたいになるところや、

 

 
 ぶん投げられて、ボウリングの球のように転がっていくさまは、抱き締めたくなるほど可愛らしい。

 最後は戦意を喪失したように、セブンに背中を向けて、哀れみを請うように体を丸めるのだが、ウルトラ警備隊に負けず劣らず残酷なセブンは何のためらいもなくエメリウム光線を放って倒す。

 ダンカン「お前には情ってもんがねえのか?」
 セブン「怪獣にかける情はない」

 ダンカンの死と共に、硬直していた人たちも元通りになる。

 ダンカンの体は多量の泡に覆われていたが、やがてその体が溶けると、泡も地面に吸い込まれて、最後は少量の粉になり、風に吹き飛ばされて散っていく。

 なんとなく、物悲しげな死に方である。

 アマギ「あのふわふわした白い物体はなんにでも変身できる宇宙生命だったんですよ!」
 キリヤマ「ちょっと何言ってるかわからない」

 ……と言うのは嘘だが、何言ってるのかいまいち判らないのは事実である。

 また、男の口ぶりから、既にかなりの数の宇宙人が移住していると思われるのに、まったく出てこないのも物足りない。

 ついでに、

 キリヤマ「ビル街をここへ運んだのも奴らだったんだな」

 と言う台詞も、「何を今更」感がハンパないのである。

 
 ナレ「でも、こうして平野の中に立ったビル街を見ると、美しい田園都市に見えます。ビルに心があれば、あのごみごみした過密都市に帰るより、この方が良いと思うかもしれません」

 ラスト、キリヤマたちがビル街を見上げながらあれこれ言い合っているところにナレーションが重なって幕となる。

 アンヌ「ところで、このビル、どうやって元に戻すんですか?」
 キリヤマ「……」

 ほんと、どうやって戻すんだろ? めちゃくちゃ金かかるぞ。

 だから、問答無用に殺さずに身柄を押さえ、彼らのテクノロジーでビルを元通りにさせてから、別の居住地を提供するか、宇宙へ送り返してやれば良かったのである。

 強硬策一本槍ではダメだということが良く分かる結末であった。

 以上、終盤があっけない感じもするが、見所の多い力作であった。
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コメント

忘れた頃に

管理人様お久しぶりですね😊久しぶりのセブンのレビューありがとうございます。確かにアンヌ隊員の身体をみたら“デカい”って反応になるのは当たり前ですね😅“男冥利に尽きる”というやつですな。あれだけの規模の特撮も素晴らしいですね。後始末にはお金と時間がかかりそうですね😅

金城哲夫さん

今話の放送が5/26で、「マイティジャック」1話が4/6だから
「マイティ」の「大コケ」=「金城(高視聴率)神話の崩壊」の後に執筆されたのかも?
「蒸発」したかったのは金城さんだっかのかも?

世界がほぼ「シャッター商店街」になった現在

>フルハシ「こう言っちゃあなんだがね、街もスモッグや排気ガスでくたびれてんだよ、でっかいビルを乗せて、やれ地下鉄だ、下水管だって年がら年中ほじくり返されてんだ。人間ならとうの昔におらぁ死んじまったってところだな、川は干からびてしまう、並木は枯れてしまう、これじゃ街だって蒸発したろうって気になるね」

この数ヶ月で、Co2濃度の増加ベースが急減しているそうです。
「街の死」が「地球の活性化」になっている・・・は言い過ぎかもしれませんが
この台詞がなんとも皮肉ですね・・・

>おらぁ死んじまった

当時の大ヒット曲「帰って来たヨッパライ」ですね。

https://www.youtube.com/watch?v=HgW5KUyJarw

この曲から円谷英二監督が「ヨッパライが帰って来たなら、ウルトラマンも」
と「帰ってきたウルトラマン」が命名されました。

No title

真理アンヌさんは今見るとローラさんに似ていますね。

Re: 忘れた頃に

> 管理人様お久しぶりですね😊久しぶりのセブンのレビューありがとうございます。

ちょっと色々ありまして……申し訳ない。

我ながらアホなこと書いてるなぁと感心しました。

Re: 金城哲夫さん

> 今話の放送が5/26で、「マイティジャック」1話が4/6だから
> 「マイティ」の「大コケ」=「金城(高視聴率)神話の崩壊」の後に執筆されたのかも?
> 「蒸発」したかったのは金城さんだっかのかも?

なるほど、そんな事情があったんですね。

マイティジャックは少し見たことがありますが、あれじゃコケるのも無理ないですよね。俳優が地味過ぎ。

Re: 世界がほぼ「シャッター商店街」になった現在

> この数ヶ月で、Co2濃度の増加ベースが急減しているそうです。
> 「街の死」が「地球の活性化」になっている・・・は言い過ぎかもしれませんが
> この台詞がなんとも皮肉ですね・・・

今回のことで、人間の存在が地球環境にとってどれだけ重荷になっているかひとりでも多くの人に気付いて欲しいと思う、いつになく真面目な管理人でした。

Re: >おらぁ死んじまった

> この曲から円谷英二監督が「ヨッパライが帰って来たなら、ウルトラマンも」
> と「帰ってきたウルトラマン」が命名されました。

そうだったんですか。意外な繋がりがあったんですねえ。

Re: No title

そう言えばそうですね。

最終回への伏線?

>部下が敵の手に落ち、既に殺されているかもしれないと言うのに、
>不敵な笑みを浮かべるキリヤマに、アマギがそっとツッコミを入れた

で、最終回でアマギがゴース星人の人質になったら部下の説得は
旧友のクラタに丸投げして爆薬入りマグマライザーをとっとと発進させた。
戦中派は怖いですねぇ。ノンマルト全滅指揮の時といい
金城さんはキリヤマ隊長に相当、含む所があったのでは?

Re: 最終回への伏線?

> で、最終回でアマギがゴース星人の人質になったら部下の説得は
> 旧友のクラタに丸投げして爆薬入りマグマライザーをとっとと発進させた。

そんなことがありましたね。

常識人のように見えて、たまにめちゃくちゃなことしますよね。

時々戦争が絡む

セブンだけでなく60年代(昭和 40年代)の特撮は時々戦争が絡む作品がありますよね😅今回は違いますが、やはり時代背景があるのでしょうか?

Re: 時々戦争が絡む

戦争が終わって20年くらいしか経ってませんからねえ。

金城さんは

基本的にファンタジーの人なんじゃないか?と思います。
ヒドラやウーは子供の心から生まれているし、メフィラス星人は「心に挑戦」する。
今回の「ビルの蒸発」なんて常人じゃ思いつかないですね。

Re: 金城さんは

確かに、あまり生々しい話はないですよね。

1938年生まれ

金城哲夫さん・・・1938年7月5日生まれ(享年37歳)

石ノ森章太郎先生(享年60歳)・松本零士氏(現在82歳)1938年1月25日生まれ

ウルトラ・ライダー・ヤマト(の原作は西崎義展Pになりしたが)という
日本のエポックメーキング作を産み出したクリエーターが同い年・・・

東映ビデオ

は売れ筋エピソードから収録するので「順番がめちゃくちゃ」との他の方のコメント
「セブン」では1巻が1・3話、2巻が「史上最大の侵略」人気作ゆえ全話収録も
最終巻のコピー文「ついに地球の平和を守り切ることに成功する」
って収録されてる22話あたりじゃ「道半ば」でしょ!
とレンタル店でツッコんだのも遠い日・・・

ちなみに

ビデオソフトが高額だったのは「倍速ダビングが出来ない」のが一因だそうです
(カセットテープは2倍速ダビングが可能)。

余計なパッケージとか特典とか要らないので、USBだけで安く売って欲しいです。

Re: 1938年生まれ

へー、意外ですね。

金城さんもですが、石ノ森先生の60歳と言うのがいかにも早過ぎますよね。

Re: 東映ビデオ

そうなんですか。しかし、売れ筋とかどうやって決めるんでしょうね。

Re: ちなみに

> ビデオソフトが高額だったのは「倍速ダビングが出来ない」のが一因だそうです

そうだったんですか。

しかし、ビデオに比べれば安いけど、日本のDVDってなんでこう高いんでしょうねえ。

「忍者キャプター」を買おうと思ってるんですが、高くてなかなか買えません。

一段の企業努力を!

「忍者キャプター」はありませんが・・・
https://www.toei-video.co.jp/special/tokusatsunewprice-3/

2枚組をバラしてほしいんですが・・・同じジャケットでいいので。

8割くらい視聴しましたが、物語の面白さは一定水準ではないものの

1.ライダー・戦隊のようなブランドが無い分「創意工夫」が感じられる

2.ヒーローのスーツ・乗り物・武器の造形の水準がとにかく高い!

3.レギュラー・ヒロインのビジュアルはおしなべて高い(私見ですが)

Re: 一段の企業努力を!

情報ありがとうございます。「キャプター」は既に値下がりしてると思います。

「ジライヤ」があるのが嬉しいですが、それでもやっぱり高いですよね。

毎回毎回、各話解説にある冗談というかネタというか…がマジで不要

詳しく書いてて分かりやすい…て思ってても、途中のネタで一気に冷める


くっそつまんねーし、見ててイライラするわ

Re: タイトルなし

ご批判のコメントありがとうございます。

今回もリマスター鑑賞

「人質」等の有利な条件を押さえておいて「交渉」を行うとか
宇宙人側が国家の一員的な行動を取るのは「セブン」ならではですね。
やはり金城節?

一方、フルハシの発砲経緯等は淡泊でこう言う所は
市川先生の「悪魔と天使の間に」に軍配。

Re: 今回もリマスター鑑賞

> 「人質」等の有利な条件を押さえておいて「交渉」を行うとか
> 宇宙人側が国家の一員的な行動を取るのは「セブン」ならではですね。

単なる侵略じゃないところが良いですよね。

No title

今から55年前の今日、放送されました。全話オープニングタイトルテロップの順番に出てくる「脚本」、「特殊技術」、「監督」を担当した人物の名前で、前作「(初代)ウルトラマン」第13、39話、本作「セブン」第1、34話と同じ「脚本:金城哲夫」、「特殊技術:高野宏一」、「監督:円谷一」、昭和ウルトラの3名揃って安らかに‥‥。

Re: No title

55年ですか……

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