第25回「若きトランペッターの死」(1985年10月8日)
前回のラストから引き続き、真鶴のしのぶの実家で睨み合っている4人の若き主人公たち。
ヤクザから逃げようと崖から海へ飛び降りて岸辺に打ち上げられてずぶ濡れになって震えて死にそうになっていた雅人を、偶然発見したしのぶが、千載一遇のチャンス到来とばかり病院にも連れて行かず自宅にくわえこんで、自分もすっぽんぽんになって抱きついているところを、偶然立ち寄った千鶴子と路男が目撃してしまい、一触即発のデンジャラスな状況となっている。

紆余曲折を経て、やっと真人間になったと思われていた千鶴子も、たちまち険悪な相になる。

続けて、しのぶ、雅人、路男と、三人のバストアップが映し出されるのだが、しのぶと雅人がもろはだ脱ぎになっているのが、なんかエロいのである。

あと、何気に雅人の体がムキムキなのが、ちょっと笑える。
劇中では、特に何かスポーツをやっていると言う描写はないのだが、道理でやたら強い筈である。
重苦しい沈黙の果てに、
千鶴子「しのぶっ……」
しのぶ「千鶴子さん、私、弁解はしないわ。私とここで決着をつけるというなら受けて立つわ」
千鶴子「……て言うか、あんた早くパンツ履きなさいよ」 しのぶ「……」
と言うのは嘘だが、管理人がそう思ったことは事実である。
しのぶ、何故かパンツを履こうとせず、なおかつ、ありのままの事情を話して誤解を解こうとせず、逆に、雅人との間に何かあったと匂わせるような発言を自分からして、千鶴子を挑発する。
千鶴子も反射的に何か言い返そうとするが、何とか自制してしのぶから目を逸らす。

雅人「千鶴ちゃん、僕は……」
千鶴子「雅人さん、私はあなたを信じます。あなたは私がどんなバカをやっても私を信じてくれたわ、あなたが信じてくれたから、私は今日まで生きてこられたんですもの」
そして、人間的成長をうかがわせる落ち着いた言葉を口にして、いたわるような目で雅人を見遣る。
それはそれとして、しのぶの裸の背中にうっすら見える水着の日焼け跡がいやらしいのです!
雅人「千鶴ちゃん、僕はね……」
路男「やめろぉーっ!」 雅人がなんとか言い訳をしようとしていると、こちらはまったく人間的成長が見られない路男が、横から怒号を上げながら殴りかかってくる。

千鶴子「やめて、私のためにもう誰にも争って欲しくないの!」
千鶴子が河合奈保子みたいことを言ってるそばで、まだしのぶが全裸で突っ立っているのが、かなり笑えます。
優子「路男、やめなさい」
路男「優子さん、あんたは黙って見ててくれ!」
やがて優子も駆けつけて、路男を止めようとするが、路男は聞かず、そばにあった太い薪を掴んで振り上げるが、ここで、最近路男を悩ませているめまいが襲ってきて、路男はそのままぶっ倒れてしまう。
お陰で、やっとその場は収まり、落ち着いて話し合いのできるムードになる。
とりあえず、横たわっている路男を優子が看病し、そのかたわらで、ぽつぽつと雅人としのぶがかわるがわる、一切の事情を話し始める。
話し終わった後、さすがにしのぶは恥ずかしそうに俯くが、

千鶴子「ありがとう……ごめんなさい」
千鶴子の口から出たのは意外な一言だった。
しかし、今まで散々千鶴子の二重人格ぶりを非難しといてこんなことを言うのはアレだが、あんまり物分りが良い千鶴子と言うのも、なんか調子が狂うなぁ。
それはしのぶも同じだったと見えて、

しのぶ「千鶴子さん、私、あなたに優しい言葉を掛けられるより、
責められた方が良いの!」
まさかのドM宣言をするが、千鶴子はあくまで慈母のような温容を保ったまま、
千鶴子「誰もあなたを責めることは出来ないわ、だって……だって、運命なんですもの」
しのぶ「運命?」
千鶴子「私もしのぶさんも、私たちの手ではどうにもならない運命のために苦しんできたわ、運命を呪ったり、つっぱることで逆らってもみたわ、でも私たちは運命から逃れることばかりやってきたんじゃないかしら? お互いに傷付けあうようなことばかりやってきたような気がするの……確かに人間の力ではどうにもならない運命ってあるわ、でも、そのために傷付けあうのはもうイヤなの、私ねえ、いま、もう、運命の思うとおりにはならないぞって思ってる。これからはたとえ負けても自分の意志で何かを選んで行こう」
しのぶ「千鶴子さん……」
いまひとつ分かったような分からないような千鶴子の言説であったが、聞いていたしのぶたちは深い感銘を覚えたようである。
「運命」と言う言葉を、「生い立ち」と置き換えれば、なんとなく分かるような気がするが、要するに、自分が誰の子供だろうが、そのことをいちいち気にするのはやめませうと言うことであろう。また、自分の不幸な境遇を「運命」のせいにして、抗うことをせずに流されるように生きていくことへの戒めでもあったろう。

龍作「……」
少なくとも、島田から逃れて自分の家の玄関先までやってきて、彼らのやりとりを立ち聞きしていた人間のクズこと龍作は、千鶴子の言葉をそう受け取ったのだろう、番組開始以来、初めて見せるような神妙な顔付きになる。
あと、千鶴子の台詞の「運命」を、
「脚本家の気まぐれ」「脚本家の思いつき」などと置き換えると、(視聴者としては)大変納得しやすいことに気付いた。
横になったまま彼らの会話を聞いていた路男は、むっくり起き上がると、とりあえず雅人に謝る。
雅人も別に気にしておらず、逆に路男の体調不良を気遣う。
雅人「田辺、医者に診て貰った方が良いんじゃないか?」
路男「そんなやわな体してねえよ」

路男「優子さん、別荘に戻ろう」
優子「別荘はダメ、島田たちが張り込んでるわ」
路男「ちっきしょう、俺の予想より三日も早いぜ」
当てはないがとにかくそこを出ようと言う路男だったが、
優子「路男、私はもう逃げないよ」
路男「何をバカなことを言ってるんだよ。あんた、また島田のもとに戻るつもりなのか」
優子「私はもう、二度と島田のもとには戻らないわ」
路男「だったら急いでくれ」
優子「島田はね、蛇のように執念深い男なの、今までにも何度も逃げ出したわ、でも、どこへ逃げても島田は必ず私を見つけ出してしまう。はじめは決まって優しい言葉を掛けてくるわ、泣いたり、土下座までしたり、私に帰ってくれと頼むのよ。でもその言葉にほだされて戻ったら最後、今度は私を死ぬほど殴りつけるのよ! 怖い、島田が怖い。島田から逃げることなんてできやしないわ」
路男「優子さん、しっかりしてくれよ」
優子「私はやっぱり島田のところにもどったほうが良いのよ」
路男「何言ってるんだよ、絶対戻らないと言ったり、戻ると言ったり、しっかりしてくれよ!」 路男の台詞、そっくりそのまま江連さんにお返しします。
絶望して、ともすれば自暴自棄になる優子を、路男たちが口々に励まし、勇気付ける。

翌朝、海鳥の声を聞きながら、一隻の漁船に手を置いて、芯から懐かしそうに、港から見える水平線を眺めている龍作。
その表情も、まるで憑き物が落ちたように、普段の龍作とは別人のような穏やかさを湛えていた。
そう、千鶴子に続いて、遂に龍作も、真人間への道を歩き始めたところなのである。
と、そこへその船の持ち主である老いた漁師があらわれ、親しげに話しかけてくる。

漁師「懐かしくて、舞い戻ってきたんか」
龍作「ははは、まぁそんなとこで……おやじさん、今でも海へ出てるのかね」
漁師「いやぁ、おらももう年だでなぁ……息子たちも街へ出てしまうし」
それこそ若山なら神の導きと言うだろうが、四方山話をしているうちに、引退を考えていたその漁師が、なんだったらその漁船を龍作に廉価で譲ってやってもいいと言い出す。
龍作「200万? それくらいの金だったらなぁ……」
漁師「試しにこの船で海出てみたらどうだ、東京の風より潮風の方がなんぼいいかわかんねど」
漁師に勧められて、龍作は久しぶりに船に乗ってエンジンを始動させるが、ちょうどその時、島田たちが優子を探して港をうろついている姿が目に飛び込んでくる。
龍作「おやじさん、この船借りるぜ」
龍作は素早くもやい綱をほどくと、そのまま船を発進させる。
で、海を突っ切って急いで自宅に戻り、優子を船で逃がそうとするが、それより先に島田たちが家の前に到着する。
そこで千鶴子が一計を案じ、雅人に路男の服を着せ、自分も優子の服を着て、路男と優子に成り済まし、わざと目立つように家から飛び出す。
二人が島田たちをひきつけている間に、優子たちが龍作の船で脱出すると言う作戦である。
浜辺で二人を捕まえて、やっと島田もからくりに気付く。

島田「やりやがったな、戻れ、戻れ!」
若干面白い顔になって叫ぶ島田アニキ。
しかし、女一人に好きなように振り回されている親分の姿に、子分たちもいい加減ウンザリしても良さそうなものなのに、文句一つ言わずに従っているのは、それだけ島田アニキに人望がある……ようには全く見えないので、ストーリー上の都合としか言いようがない。
OP後、群がるチンピラたちをスーツ姿の路男が奮闘して退け、龍作の船は彼らを乗せて無事に港を離れる。
だが、僕らの島田アニキはまだ諦めず、真鶴の友好団体(何それ?)に協力を要請して、近辺の港を見張らせる。
友好団体のチンピラの皆さんが、金にもならないそんな仕事を唯々諾々と引き受けているところを見ると、それだけ島田アニキに人望がある……ようには全く見えないので、これまた、ストーリー上の都合としか言いようがない。
一方、怒りの収まらない島田は、千鶴子と雅人をそのまま自分たちのそばに置いていた。

島田「優子が無事に戻らなかったら、あんたたち、生かしちゃ帰さねえ。たとえ大丸の子供でもだ!」
龍作は、もともと借り物の船なので、そのまま真鶴を出るわけにも行かず、最初の港に船を戻して、三人を下ろす。
龍作「上手く逃げ延びてくれよ」
優子「ありがとう、龍作さん」
優子が感謝すると、

龍作「なあに言ってんだよ、優子さんには散々世話になったじゃねえか」
これがあのキング・オブ・クズと言われた龍作だろうかと思うほど、人間味に溢れた言葉を返す龍作。
ま、最終回が近いので、そろそろ龍作にも真人間になってもらわないといけないということなのだが、いかにも唐突な感じがする。
龍作「俺もよ、海風に当たって昔の気分に戻ったようでよ、役に立てて嬉しいんだよ」
と、龍作は言うのだが、龍作、以前も静子に会いにこの海に来たんじゃなかったっけ?
潮風を吸って改心するのなら、その時点でしてると思うんですが……
あと、龍作の言い草では、まるで昔は良い人だったみたいに聞こえるが、18年前、路男の両親をそそのかして千鶴子を誘拐させたのは、他ならぬこの龍作なんだけどね。
もっとも、大映ドラマではこういう「記憶の改竄」は珍しいことはではなく、たとえば、「スクールウォーズ」では、後輩のことをひたすらいじめていたラグビー部の不良が、卒業して数年後には、あたかも真面目なラグビー選手だったようなツラして、後輩の試合を応援してたりするのである。
そう言えば、最近また「スクールウォーズ」を見たのだが、序盤で、内田たちが、練習の際、光男たち後輩の背中や尻を蹴りまくってるのが、かなり笑えました。
そんなことしておいてねえ……
閑話休題、龍作たちがそこでぐずぐすしているうちに、島田アニキの頼んだ「友好団体」のチンピラに見付かってしまう。

龍作「路男、行け、早くしろーっ!」
しのぶ「お父さん!」
ここでも龍作は自己犠牲の精神を発揮して、死に物狂いでチンピラたちを押さえつけ、その間に路男たちを逃がすのだった。
かっこいいけど、こんなの龍作じゃない。
さて、東京の大丸邸では、消息が途絶えた雅人たちのことを静子たちが心配していたが、帰宅した剛造は、「私の一番嫌いなことだが、やらねばならんだろう」と、手島に南原会長に電話させる。
以前、手島と島田の会話の中にも出て来た、ヤクザの大親分である。
南原会長の威光で、島田に千鶴子たちを解放させるつもりなのだ。
もっとも、この時点では、剛造には千鶴子たちが島田に捕まっているなんてことが分かる筈ないんだけどね。

その島田アニキ、地元の友好団体の事務所に二人を監禁し、ボコボコにして優子たちの行き先を喋らせようとしていたが、当然、二人が口を割る筈もない。
島田「優子は俺の女だ。暴力団組長の情婦なんだぞ、そんな女に命を賭けようってのか? 何の得があるってんだ? あんたらカタギだろう、カタギならもっと利口な生き方をしたらどうなんだ? 話せば命は助けてやる、こっから東京へ帰してやると言ってるんだ」
千鶴子「お前に屈服するぐらいなら、死んだ方がマシよ!」
二人のしぶとさに手を焼いた島田が、おもねるように促すが、千鶴子は痛烈に言い返す。
しかし、本物の暴力団の組長が、「暴力団組長の情婦」なんてことは言わないよね。
島田「そうかい、それじゃお望みどおり、二人揃って海の底へ沈めてやろうか」
雅人「島田、少しは考えたらどうだ、あんたたちは暴力で人を殺すことは出来るだろう、しかし、人間と人間の間の目に見えない関係を大切にして、温かくて大きな愛の世界を築いていくことは決して出来やしない! 人間として恥ずかしくないのか?」 不気味な笑みを浮かべる島田に、雅人が大上段から説教をぶちかます。

島田「愛の世界か、はっはっ、笑わせてくれる、はっはっはっはっはっ…………」
チンピラ「あれ、組長、泣いてるんですかい?」
島田「うるさいっ!」 途中から嘘であるが、猛も千鶴子も龍作も改心したんだから、島田アニキにも更生の機会を与えてやって欲しかった気もする。
だが、そんな島田アニキも、南原会長からの直電を受けると、あっさり屈服し、即座に二人を解放するのだった。
だっせえ。

解放された二人は、とりあえず大丸邸に電話して、無事を知らせる。
ちなみに千鶴子の髪型がさっきと違うのは、監禁中に島田アニキに髪を鷲掴みにされたせいである。
そして千鶴子は、路男たちと、強羅渓谷の湯本温泉旅館で落ち合うことになっていると告げる。
二人はすぐに強羅温泉に向かうが、突然、観光地が舞台になるのは、番組の慰安旅行も兼ねてるのかなぁ?
ともあれ、島田たちにもつけられず、二人は無事に宿に先着していた路男たちと再会する。
雅人「(スーツが)なかなか似合うじゃねえか」
路男「お前こそ!」
まるで長年の親友同士のように意気投合する4人だったが、

千鶴子の髪の量が、明らかに多過ぎるのがかなりの破壊力であった。
これは、次回作の「ポニーテールは振り向かない」と関係があるのかなぁ?

一方、龍作は事務所に連れて行かれ、地元のチンピラにボコボコにされていたが、大したことに、どんなに痛めつけられても優子たちの行き先を言おうとしない。
以前は、金さえ見ればどんなことでもしていた男の変貌ぶりに、
島田「どういう風の吹き回しだ?」
龍作「ちっ、俺は死んだっていわねえぞ、殺されたって言うもんか」
島田「だったらこのまま死んじまえ」
龍作「こ、殺せーっ、殺しやがれーっ!」
龍作の叫びに、島田は懐に手を入れるが、取り出したのはピストルではなく分厚い札束であった。
島田「松本、ここでくたばるか、銭をもうけるか、賢い道を選びなよ」
龍作「……」
で、結局龍作は白状してしまうのだが、ただ金に目が眩んだのではなく、さっきの、200万で船を譲ってやると言う漁師の言葉が耳底に残っていて、その金で自分が立ち直るきっかけにしようという、いわば前向きな貪欲さに負けたのが、今までと微妙に異なる点である。
路男、優子、しのぶの三人が旅館の近くの川で魚釣りなどしていると、千鶴子と雅人が息を弾ませ、地元の病院の院長が、優子を引き受けてくれることになったと知らせに来る。
おそらく、院長は大丸家と親しい間柄なのであろう。
優子が、覚醒剤ときっばり縁を切ると告げると、

路男「俺ももう復讐はやめだ!」
路男も、俄かにそんなことを言い出す。

路男「優子さんのためにも本気でペットと取り組まねえとな」
雅人「田辺、その言葉を待ってたぞ」
路男「恨みを完全に忘れたわけじゃねえよ」
しのぶ「路男さん、そのいきがりももうやめたら?」
路男「えっ? きついなぁ」
しのぶに一本取られたようにぼやく路男に、みんながどっと笑う。
千鶴子「もう少し秋が深まると素晴らしい紅葉が見られるわよ。私たち、毎年秋になると決まってここに来ていたの。もみじ狩をしたり、キノコ取りをしたり」
路男「あと一ヶ月もすれば優子さんもすっかり回復する、どうだろう、その頃ここにもう一度みんなで集まって、キノコ取りやもみじ狩りしねえか?」
雅人「いや、遠慮しとく」
千鶴子「私も」
しのぶ「忙しいんで」
優子「キノコ嫌いなんで」
路男「……」
調子に乗って青春ドラマのような提案をする路男であったが、世の中そんなに甘くないのだった。
……嘘である。
雅人「それはいいな、優子さんの全快祝いだ」
雅人が即座に賛成し、期せずして4人が優子へ拍手を贈る。
でも、覚醒剤中毒と言う難儀な病気(?)なのに、なんで一ヶ月で全快するってこの段階で言い切れるのだろう?
それはともかく、優子は、番組開始以来、最高に幸せな気分に浸って涙ぐむが、無論、それは、次に起こる最悪の悲劇をより一層効果的にも見せるための、脚本家の陰険なたくらみであった。
さて、龍作は島田たちの車で既に強羅温泉に来ていたが、用が済めば島田に殺されるのではないかと考え、途中で腹痛を訴え、病院の前に放り出される。
で、それをたまたま、病院の下見に来ていた千鶴子たちが目撃し、慌てて川に戻ってしばらく走り続けるが、途中で優子が、島田と決着をつける前に、自分の死んだ弟のことを詳しく語りたいと言い出す。
おそらく、もうすぐ自分が死ぬと言うことを予感したのか、生きているうちに何とか路男に弟のことを話しておかねばならないと考えたのだろう。

優子「私とリョウは二つ違い、浅草に生まれたのよ。父はバスの運転手をやってたんだけど、飲む打つ買うの三拍子揃った男で、うちでは夫婦喧嘩が絶えなかった……」
と言う訳で、目下ヤクザに追われている最中だと言うのに、岩場の陰に車座になって座り、優子の思い出話を拝聴することになるのが、さすがに不自然だよね。
だいたい、こんな辺鄙なところに逃げ込むより、普通に南部開発の本社ビルにでも行った方が遥かに安全だったのではないか?
それはさておき、優子が小学5年、弟が3年のとき、彼らの両親が離婚することになり、優子は父親に、リョウは母親に引き取られて福島の実家に移ってしまう。
その後、優子はお決まりのように非行に走り、
「浅草一のズベ公」になったと言うのだが、全然そんな風に見えないのが、岡田奈々さんのもってうまれた気品と言う奴である。
ヤケクソになっていた優子は、不良仲間や暴力団にちやほやされて舞い上がるが、

友人「優子、次の店に行こうよ」
優子「OK、ギンギンに行こうぜぇーっ!」 友人(ギンギン……)
暴力団(ギンギン……)
勢いで発してしまった一言で、それっきり誰からも相手にされなくなったと言う。
……じゃなくて、いくつかの店をハシゴするうちに、仲間がいなくなり、代わりに暴力団の連中ばかりが残って、彼らの部屋に連れ込まれ、

あっさり輪姦されちゃうのである!
いやー、スリットから大胆に伸びた太ももと、優子の放心したような表情が、実にスケベ心をそそります。
あ、念の為、当ブログは輪姦は推奨しておりませんので(当たり前だ)、誤解なきよう。
でも、たった今犯されたばかりだと言うのに、優子の着衣がほとんど乱れていないと言うのは、いかにも嘘っぽい。一応、一瞬だけ、胸元から色気のないブラが覗くんだけどね。
やがて優子が立ち上がり、無言で出て行こうとすると、
チンピラ「優子、明日から働いてもらうぜ」

優子「ふざけんじゃねえよ、こんなことで私を女にしたと思ったら大間違いだよ。バーカ」
チンピラ「わからねえ野郎だな!」
優子に罵られてチンピラが掴みかかってくるが、逆に腹部に深々とナイフを突き立てられる。
てっきり、殺したのかと思いきや、重傷で済んだと聞かされ、思わずコケそうになる千鶴子たちであったが、なんとか堪える。
優子は未成年だったので、刑務所ではなく少年院送りで済むが、退院後も素行は悪くなる一方だった。

ダイスカップに5つのサイコロを入れて激しく振り、

カップを上げると、サイコロが5つ縦に並んでいて、

おまけにすべて1の目と言う、「お前は早川健か?」的な珍芸を披露している優子。
六本木の深夜スナックでバクチをしながら、その日その日を自堕落に送っていたのだが、

島田「メシでも食いに外へ出ないか、こんなところにくすぶってると、カビが生えちまうぜ」
優子「うるせえなぁ、男はうんざりだよ」
その頃から優子に目をつけて足繁く通っていたのが、今と全然見た目が変わらない、ぼくらの島田アニキだったのである。
無論、優子は島田など相手にしなかったが、

リョウ「リョウです、迎えに来たよ、姉さん!」
優子「リョウ、ほんとにリョウなの?」
そこに突然あらわれたのが、10年以上前に別れたきりの弟リョウであった。
優子はその足でリョウのアパートへ行くが、部屋の隅に、白木の箱と、母親の遺影が飾ってあった。
リョウ「母さん、半年前に死んだんだ」
優子「母さん……」
リョウ「病気だったんだ。母さん、死ぬ間際まで姉さんのこと心配してた」
優子、リョウから最期まで母親が自分のことを気にかけていたと知らされ、涙ぐみながら遺影に手を合わせる。

優子「リョウ、あんたまだ高校生の筈だよね、一人で東京に出て来たのは何故なの?」
リョウ「姉さん、僕はトランペッターになろうと思って福島を出てきたんだ」
優子「トランペッターに?」
リョウ「福島に転校してからさ、ずーっと吹奏部に入ってトランペット吹いてたんだぜ」
優子「……」
弟がそんな夢を持っていると知って、なんともいえない感動を覚える優子。
早速近くの河原でリョウの演奏を聞くが、
涙が出るくらいヘタクソだった…… 優子(ダメだこりゃ……)
……嘘である。
弟の吹くペットの清新な響きに魂を揺すぶられ、感動の涙が溢れて止まらないのである。
優子は弟と再会したことで見違えるように立ち直り、深夜スナックをやめて、リョウが働いている店でウェイトレスの仕事をするようになる。

ウェイトレス姿の岡田奈々さん。
うう、なんちゅう可愛らしさじゃ。
でも、客たちは彼女には見向きもせず、店の隅でペットを吹いているリョウを見詰めていた。
おまいらの目は節穴か? 生まれ変わったような幸せ気分に浸る優子であったが、唯一の気がかりは、依然として島田アニキが彼女に付きまとっていることであった。
リョウは、金の無心に来たダメおやじにも、快くなけなしの金を恵んでやるような優しい青年であり、そのリョウの優しさがペットを通じて人々の心に伝わるのか、リョウは着実にファンを増やし、一流トランペッターへの階段を一歩一歩登っていた。
だが、リョウがメインのライブが行われる日の昼間、

島田「優子、今日こそ付き合ってもらうぜ」
公園でリョウと別れた直後、しつこく島田アニキが優子をナンパしようとする。
ちなみに左右にいる二人の部下、こんな昔から島田アニキについていたんだね。
これもやはり島田アニキの人望の厚さのあらわれ……ではなくて、単に他の役者を使うのが面倒臭かったのだろう。
それだけならまだ良かったのだが、そこへ通り掛かった数人の暴走族風の若者が、恐れ知らずにもそんな二人を囃し立て、

さっきまで静かだった公園は、あっという間に変な人たちで埋め尽くされる。
しかし、暴走族が、昼日中、本物のヤクザに喧嘩を売ると言うのもかなり変な話である。
ま、島田アニキたちにリョウが殺されたのでは、優子が島田の女になったことが説明できなくなるので、脚本家の苦し紛れであろう。

また、このシーンで岡田さんがスカートではなくハーフパンツを履いていたのは、この乱闘シーンに備えてのチョイスだったと思われる。
もう、パンツぐらい見せろよぉ~(by三村)
で、慌てて戻ってきたリョウを、暴走族の一人がナイフで深々と突き刺すのだが、他の連中は武器は使ってないのに、関係のないリョウだけ迷わず刺しているのも、相当不自然である。
あるいは、乱闘中の出来事に見せかけて、島田アニキが邪魔なリョウを始末させた、つまり、暴走族との乱闘はやらせだったとも考えられるが、島田アニキにそんな深謀遠慮があるとは思えず、やはり不幸な偶然の結果だったのだろう。
で、色々あって、トランペット馬鹿のリョウは、病院にも行かずにそのままライブ会場へ行き、腹から鮮血を溢れさせながらペットを吹いて、観客をドン引きさせたという。
じゃなくて、最後の力を振り絞って魂のペットを吹き鳴らし、ばったり倒れたのだと言う。

優子「リョウ、リョウ、リョウ!」
その体に取り縋って、何度もその名を叫ぶ優子さん。
優子の話が終わった直後、
しのぶ「病院行けば良かったのに……」(ぼそっ)
優子「あんだってーっ?」 ま、リョウと言い、しのぶに刺された猛と言い、腕の腫瘍を放置している路男と言い、雅人が凍え死にそうなのに病院に連れて行こうとしなかったしのぶと言い、このドラマを見てつらつら思うことは、
「具合が悪いときはちゃんと病院行け!」 と言うことである。
ちなみに最近見た「アリエスの乙女たち」でも、松村さん演じる司クンが、事故で目を失明し掛けてなんとか助かったものの、お医者さんから定期的に検診を受けるように言われていたのに全然行かず、結局ほんとに失明しまうのだが、これを見た管理人の心に浮かんだ言葉が、
「進歩のねえ奴……」 であったことは言うまでもない。
話を戻して、

優子「リョウは自分のためとか恨みのためではなくもっと大きな悲しみの世界に向けてペットを吹いていたような気がするの、悲しみのすべてを引き受けて、それでも生きていくんだって……何かに宣言するためにペットを吹いていたような気がするの……」

路男「優子さん、もう何も言わなくて良い、あんたの弟さんの魂は俺の体の中に飛び込んだ。俺が炎を燃やして見せる!」
優子「ありがとう、路男……」
全身で優子の話を聞いていた路男は、武者震いでもするように体を震わせつつ、力強く断言する。
正直、なんで優子さん、この話をもっと早い段階で路男にしてやらなかったのだろう?
ま、自分が輪姦(まわ)されたなんてことは言いにくいだろうが、別にそこは省略しても構わないんだから、弟の壮絶な生き方を聞かせたら、路男も一発で目を覚まし、復讐などくだらないことはやめていただろうに……
だが、路男が遅蒔きながら宣言した直後、疫病神と言うべき島田の声が降ってくる。
島田「感動した!」 じゃなくて、
島田「優子!」
見上げれば、島田と部下たちが彼らの頭上に仁王立ちしていた。
しのぶ「あーあー、誰かさんが長話するから……」(ぼそっ)
優子「あんだってーっ?」 じゃなくて、

路男「野郎~」
優子「路男、私と島田は一対一で話をするわ」
千鶴子「それはダメ、そんなことしたら殺されてしまうわ!」
……
あれ、千鶴子さん、また髪型が変わってない?

優子「大丈夫、私に任せて、私もかつては番を張った女なのよ、私の男との決着ぐらい、ひとりでつけ見せるわ。私ひとりで大丈夫」
心配する仲間たちに自信たっぷりに言う優子であったが、

島田(バキューン!)
優子「あれ……?」
4人(どこが大丈夫だっ!) じゃなくて、

島田「優子、東京に戻るぞ、ついてこい」
優子「島田、はっきり言っておく。あんたとは別れる。二度とあんたのところに戻るつもりはないわ」
そう言えば、リョウが死んだ後、優子が島田の情婦になった経緯については、優子の打ち明け話でも触れられてないのだが、まぁ、リョウが死んだので自暴自棄になって、島田に身を任せたと言うことだろうか。
でも、リョウの死に関しては島田たちにも間接的な責任があるのだから、そんな男に抱かれることを優子がよしとするだろうか?
島田「今なら許してやると言ってるんだ」
優子「あんたに許しを請うつもりはないよ」
今度こそきっぱり別れると決意した優子は、まじろぎもせず島田と向かい合いながら、あくまで島田を拒否する。
ここでほんとの小心者の島田アニキが、意外な挙に出る。
島田「田辺、てめえがいるからだ!」
そう言うなり、ピストルを取り出して路男に向けて撃ったのである。

だが、009なみの反射神経と身体能力を持つ優子さんは、島田が引き金を
引いた後で路男の前に両手を広げてたちはだかり、自分の腹部に銃弾を浴びる。
大映ドラマにしてはなかなか人が死なないなぁと油断していた視聴者の度肝を抜く、文字通り強烈なショットであった。

路男「優子さん、死ぬな、死ぬなよーっ! 優子さん、死ぬなーっ!」
優子の体を抱き起こして何度も絶叫する路男と、それを茫然と立ち尽くして見守っている千鶴子たちの姿を映しつつ、次回へ続くのだった。
- 関連記事
-
スポンサーサイト