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「ウルトラセブン」傑作選 第37話「盗まれたウルトラ・アイ」(リテイク版)



 第37話「盗まれたウルトラ・アイ」(1968年6月16日)

 予算の都合で、怪獣や宇宙人が一切登場しない異色作である。

 ある夜、球状の宇宙船が、とある山の中に着陸する。

 次のシーンでは、早くもフルハシとアマギがポインターで調査に赴いている。

 今回、戦闘シーンがほぼないので、全体的に時間稼ぎのようなどうでも良いシーンが目立つ一方、この辺は必要以上にテンポが速くて、ちぐはぐな感じがする。

 
 アマギ「何をぼやぼやしてるんだ、落下地点ぐらい確認できないのか?」
 ソガ「防衛基地のレーダーには何千と言う怪事件がキャッチされてるんですよう!」
 アマギ「だからコンピューターがあるんだろう、お前みたいなウスノロが、よくもウルトラ警備隊になれたもんだっ」

 普段は温厚なアマギが、通信機の向こうにいるソガをいつになく烈しく罵倒している。

 「ウスノロ」はさすがに言い過ぎで、アマギ隊員にこんな一面があったのかとちょっと残念な気もする。

 たぶん、馬券でも外した直後だったのだろう。

 フルハシ「おい、アマギ、いい加減にしろ、我々は警察からの連絡を頼りに探そう」

 フルハシがたしなめるが、別にソガのことを庇ったわけではなく、「そんな奴相手にしてても時間の無駄だ」とでも言いたげなのがこれまた悲しい。

 ソガ「そうして頂きたいですね、ウスノロの僕じゃ、その未確認飛行物体とやらは……」
 アマギ「うるさいっ!」

 ソガもムカッと来たのか、いじけたような口調でなおもぶつぶつ言い訳していたが、アマギは途中で怒鳴って一方的に切ってしまう。

 アマギ「奴と話してると頭に来る」
 フルハシ「ふっふっふっ」

 何気に、アマギとソガって相性悪かったんだね。

 道理でダンとソガが良くつるんでると思った。

 ただ、このシーン、結局何がどうなっているのかよく分からない。

 本部のレーダーが未確認飛行物体をキャッチしたので、ソガがパトロール中のアマギたちに知らせてきたのだろうか。だが、ソガの指示が曖昧なので、アマギがキレたと言うことなのだろう。

 しかし、未確認飛行物体のことで「警察からの連絡を頼りに」すると言うのは、いささか奇異に聞こえる。警察ってそんなお仕事までしてるの?

 とりあえずポインターを発進させるフルハシたちだったが、前方の闇の中から、一台のダンプカーがあらわれ、擦れ違う。

 ハンドルを握っていたのは、まだ高校生くらいの美少女であった。

 
 フルハシ「おい、今の女に見えなかったか?」
 アマギ「ああ、イカす女の子だった」
 フルハシ「畜生、ダンプなんて運転しやがって」
 アマギ「はっはっはっはっ」

 可愛い女の子を見たので、たちまち機嫌の良くなるアマギ。

 だが、こんな夜中に、10代の女の子がダンプカーを運転、それも未確認飛行物体の落下地点の近くで目撃したというのに、二人が全く怪しまないのだから、それこそよくウルトラ警備隊になれたものだと呆れるほどの鈍感さであった。

 まあ、マヤの本当の姿は不明なのだが、わざわざマゼラン人がエージェントとして美少女を送り込んできたのは、男たちを油断させる為であったのだろう。

 宇宙船は再び夜空に舞い上がるが、その場に到着したフルハシたちは、宇宙船の発着の痕跡、そして血を流して倒れているダンプの運転手を発見する。

 運転手「女が……」
 フルハシ「おい、おいっ!」
 運転手「女が好きだぁあああああーっ!」
 フルハシ「……」

 じゃなくて、運転手はそれだけ言い残すと死んでしまう。

 ま、気絶しただけなのかもしれないが。

 二人はもう一台のポインターにいるダンに連絡し、検問を張るよう指示する。

 しかし、未確認飛行物体の調査くらいで、ポインターが二台も出動しているというのはいささか大袈裟な気もする。

 だいたい、ポインターを二台も出すより、ダンはホーク1号が3号で上空から調べた方が効率的だったのではないか。

 ダン「若い女ですねっ」

 そんな楽しい仕事なら、金を払ってでもやりたいと張り切るダンであったが、何をトチ狂ったか、走ってきたダンプカーの前に飛び出して両手を広げて止めようとして、危うく轢き殺されそうになる。

 ダン、ポインターですぐに追いかけるが、再びあの宇宙船が降りて来て、至近距離で眩しい光を浴びせ、視界を失ったダンはポインターごと崖から転落してしまう。

 
 意識朦朧となったダンが見たものは、ミニスカワンピの美少女が、身体から神秘的な光を放ちながら、ダンの胸元をまさぐり、ウルトラ・・アイを盗んでいく姿だった。

 続いて、何処かのプラネタリウムで、たくさんの人々が本物そっくりの星空を見上げている。

 
 解説者「皆さんが小さい頃、お父さんやお母さんが亡くなると、お星様になるなんて聞いたことがありますね」

 今回チェックして迂闊にも初めて気付いたのだが、出だしのこの台詞、なんかおかしいよね。

 みんなが子供の頃に、親が亡くなっていること前提で話してるように聞こえるのだ。

 まあ、戦争が終わって25年も経っていない頃だから、幼少時に親を亡くした人は今と比べてずっと多かったとは思うが。

 解説者「そうして、みんなが住んでいるこの地球以外にもまだまだたくさん、この地球と同じ惑星があることを知っていますね。そこには我々人間と同じような人間が住んでいるのかもしれません。もしかしたら君の横にいる人と同じ人がいるかもしれません。その星から今頃地球を見て、なんて星だ! と、小峠が叫んでいるかもしれませんね」

 じゃなくて、

 解説者「そうして、みんなが住んでいるこの地球以外にもまだまだたくさん、この地球と同じ惑星があることを知っていますね。そこには我々人間と同じような人間が住んでいるのかもしれません。もしかしたら君の横にいる人と同じ人がいるかもしれません。その星から今頃地球を見て、なんて綺麗な星だろうと我々の地球のことを褒めているかもしれませんね」

 
 そして、客席には、あの美少女マヤも座っていたのだが、その目は解説者の想像と違って、極めて冷ややかであった。

 マヤは周囲を見てから、何か複雑なメカを取り出して、本国のマゼラン星へ向けて信号を送る。

 マヤを演じるのは、これがデビュー作となった吉田ゆり(香野百合子)さん、当時高校2年生。

 その信号は、宇宙ステーションV2のレーダーに感知される。

 
 隊員「奇妙な電波です」
 マヤの声「マゼラン星、マゼラン星、第一任務完了しました。迎えの円盤を送ってください」
 隊員「つーか、なんで、日本語なの?」
 隊員「さあ」

 じゃなくて、

 隊員「マゼラン星雲?」
 隊員「任務を完了したとか言っていましたが、一体何のことでしょう?」

 その怪電波のことは、直ちにウルトラ警備隊に報告される。

 どうでもいいが、第一任務が完了したらすぐ帰っちゃうって、じゃあ第二任務は何なのってことになると思うんだけどね。

 ちなみに第一任務と言うのは、ダンからウルトラ・アイを盗むこと、すなわち、邪魔なセブンを無力化することだったのだろう。

 一方、傷の治療を終えたダンがメディカルセンターから出てくると、ソガが申し訳なさそうに話しかける。

 
 ソガ「ダン、すまん、俺がモタモタした為に怪我をさせてしまって……アマギがあんまりぽんぽん言うもんだからすっかり頭にきてしまったんだ」
 ダン「いやぁ、うっかりしていた僕が悪いんです」
 ソガ「じゃあ、気をつけてな」

 相変わらず、ダンとソガの、教科書に載ってもおかしくないような麗しい友情。

 もっとも、ダンの負傷に関して、ソガには別に責任はないと思うんだけどね。

 作戦室で、怪電波の発信源をレーダー地図で確認しているキリヤマたち。

 
 キリヤマ「怪電波の発信源はK地区のプラネタリウムセンター、恐らくもういないだろう。見たとおり娯楽場が多い。隠れ場にはもってこいの地域だ」
 アンヌ「ええ、ボウリング場にジャズ喫茶、地下にもぐればアングラバー」
 フルハシ「これは若い子ですねえ。ダンプに乗ってたのも17、8でした」

 彼らはもう一度怪電波が発信されるのを手くずね引いて待ち構える。

 もっとも、彼らは相手がK地区に留まっているものと決めて掛かっているが、別の地区に移動することだってありうるのでは?

 四日後、漸く怪電波が網に掛かる。

 発信源はスナック・ノアと言うことで、フルハシたちは直ちに急行する。

 
 キリヤマ「アマギ、どうだ?」
 アマギ「確かにマゼラン星に向けられてます」
 キリヤマ「通信の内容は?」
 アマギ「迎えはまだか、迎えはまだか」
 キリヤマ「それだけか?」
 アマギ「その繰り返しです」

 で、その内容がウルトラ警備隊の誇るコンピューターであっさり解読されちゃうのが、いまひとつ物足りない。

 あと、よくよく考えたら、V2のレーダーは、怪電波の内容を直接聞けるのに、それよりも優れた設備を有している筈のウルトラ警備隊では、いちいち解読器にかけないと分からないというのは、矛盾しているような気がする。

 よって、V2では、単に怪電波をキャッチするだけで、その内容までは分からない……と言う風にしたほうが良かったと思う。

 「迎えはまだか」と言うメッセージが視聴者には二度も繰り返されることになるわけだし。

 さて、問題のスナック……と言うより、それこそアングラバーみたいな地下にある薄暗い店だったが、そこは最先端ファッションでバキバキに決めた若者で溢れかえり、ステージで演奏しているバンドの音楽に合わせて、何処かけだるげに体を動かしていた。

 
 その中には、白いミニスカワンピに白いロングブーツと言う、シンプルだけど、こんなサイケデリックな場所では実に絵になるスタイルをしたマヤもいて、無心にゴーゴーを踊っていた。

 カムフラージュと言うより、単に踊ってみたかっただけのようにも見える。

 年より老けて見える香野さんの、とても貴重な青春の1ページ的シーンである。

 
 客の中には私服姿のダンもいたが、これは、キリヤマたちとは別に独自にマヤの行方を探して、ここに辿り着いたのだろう。

 
 ダン(聞こえるか、僕が分かるか?)

 ダンは、マヤに向かってテレパシーで語りかける。

 マヤ「誰っ?」

 喧騒の中で思わず声を出したマヤ、キョロキョロと周囲を見回しながら、

 マヤ(地球人ならテレパシーは使えない筈よ……わかったわ、あなたはセブンね)
 ダン(ウルトラ・アイを何故盗った?)
 マヤ(それが私の任務だもの)
 ダン(なにっ、地球を侵略するつもりなのか?)
 マヤ(こんな狂った星を? 見て御覧なさい、こんな星、侵略する価値があると思って?)

 テレパシーでダンに淡々と語りかけながら、表面的には大口開けて楽しそうに踊りまくっているマヤが可愛いのである!

 ダン(迎えはまだか、迎えはまだか……)
 マヤ(……)

 だが、ダンが怪電波の内容をつぶやいて見せると、マヤは明らかな動揺を見せて踊るのをやめ、ステージのリズムボックスに目を遣る。

 マヤはすぐに店から逃げ出す。

 ダンはちょうどやってきたフルハシたちに「リズムボックスです」と告げてマヤを追いかける。

 と、ソガがいきなり銃を天井に向けて撃ち、部屋が真っ暗になる。

 無茶なことするなよ……

 一歩間違えれば、パニック状態を引き起こして大惨事になっているところであった。

 あと、マヤがはっきり自分の使命はウルトラ・アイを盗むことだったと告げているが、これも冷静に考えたら、冒頭でウルトラ・アイを盗んだ時点で、ミッションコンプリートしてるわけなのだから、それ以上地球に留まらないで宇宙船に乗ってさっさと帰れば良かったのでは?

 ウルトラ・アイをマゼラン星へ持って行かれていたら、さすがのダンもどうすることも出来なかっただろう。

 もし、マヤに第二の使命……たとえば、ミサイルがある程度の距離に近付くまで地球から誘導電波を発信し続けることとか……が与えられていたのなら、さっさと帰らなかったのも納得できるのだが。

 それはともかく、ソガたちはリズムボックスを回収して、その機構を調べ上げる。

 
 アマギ「このリズム」
 キリヤマ「これを繰り返しマゼラン星へ送るんだ」

 と、キリヤマは命令するのだが、なんでそんなことをしなきゃならないのか、今ひとつ分からない。

 まあ、相手からの反応を見ようということなのだろうが、電波が発信され始めてから三日以上経っているのに、今更返信が……と思ったら、

 ソガ「返信が入りました」

 はやっ!

 いや、だったら、とっくの昔にマヤ本人がその返事を受け取ってないとおかしいだろ。

 仮にこれが初めての返信だったとしたら、あまりにタイミングがご都合主義的過ぎる。

 
 アマギ「恒星間弾道弾、既に発射せり、迎えに及ぶ時間なく……」

 アマギがその内容を読み上げる。

 しかし、「時間がない」と言うが、さっきも考察したように、冒頭の宇宙船を再び差し向ければ済む話ではないのか?

 それに、マヤがウルトラ・アイを盗んだということは、誰にも邪魔されず好きな時に地球を破壊できる権利を得たも同じなのだから、そんなに急いでミサイルを発射する必要はあるまい。

 むしろ、マヤをウルトラ・アイと共に帰還させて、勝利をより確実なものにすることのほうが彼らにとっては有益だったのではないか。

 まあ、それを言うなら、そもそもなんでマゼラン星がいきなり地球を破壊しようと思い立ったのか、それもさっぱり分からないのだが。

 シナリオの準備稿では、「地球人が銀河系に進出するのを防ぐため」とあったらしい。

 ソガ「恒星間弾道弾と言うと……マゼラン星が地球にミサイルを?」
 フルハシ「それじゃあの娘が」
 キリヤマ「恐らく何か特殊な任務を負ってやってきたんだろう」
 アンヌ「迎えには来ないってどういうことなの?」
 ダン「裏切られたんだよ、自分の星に……」

 アマギによると、ミサイルは深夜0時ジャストに地球に到達するらしい。

 
 アマギの言葉に、みんなの目は、自然とアンヌの巨乳、いや、壁の時計に注がれる。

 キリヤマ「あと7時間か……」

 その後、ミサイルは早くもV2目掛けて突っ込んでくる。

 V2もビームで応戦するが、なにしろそのミサイルはV2の数倍あるかと思われるクソでかい代物なので、まったく効かず、V2はミサイルと激突して大爆発を起こす。

 うーん、さすがにそんなものと衝突したら、弾道ミサイルだって爆発するか、少なくとも軌道がずれると思うのだが、ミサイルはそのまま地球への針路を保って飛び続ける。

 おそらく、超ハイテクを有するマゼラン星人謹製のミサイルなので、自動的に軌道を修正する機能を持っているのだろう。

 ウルトラ警備隊もダメモトで迎撃に出るが、キリヤマとホーク2号に搭乗することになったダンの顔色は冴えない。

 
 ダン「……」

 みなに続いて作戦室から出たものの、不安そうに胸に手を当てていたが、結局命令に背いて基地から出て行ってしまう。

 
 キリヤマ「何をしてるんだ、あいつ」

 先にコックピットに乗り込んだキリヤマは、いつまで待ってもダンが来ないので、痺れを切らして作戦室に連絡する。

 
 キリヤマ「作戦室、ダンはいないか?」
 アンヌ「えっ」
 キリヤマ「探すんだ、急いで」
 アンヌ「は、はいっ」

 だが、ダンは既にポインターに乗って基地のある山を降りているところだった。

 キリヤマ、仕方なくひとりで出撃しようとするが、ここで背後の扉が開く。

 
 やっと来たかと思いきや、現れたのは愛しのアンヌであった。

 キリヤマ「ダンは?」
 アンヌ「何処にも見当たりません、私が代わりに」
 キリヤマ「そうか……よし」

 アンヌと二人きりで宇宙旅行に行けると分かったのに、キリヤマはニコリともせず、仕方ないという感じでOKする。

 どんな時も必ず美川隊員を自分のそばに置こうとするTACの竜隊長とはえらい違いである。

 ダンは、他に当てもないのでもう一度ノアに踏み込むが、

 
 振り向いた若者たちは、全員ウルトラ・アイそっくりの眼鏡をかけていた。

 驚いたものの、ひとりひとりのウルトラ・アイを外して本物かどうか確かめるダン。

 が、そのうち若者たちに取り囲まれ、一斉に襲い掛かられて失神する。

 しかし、無論、これはマヤの仕業なのだろうが、若者たちは催眠術か何かで操れたとしても、大量の偽ウルトラ・アイをどうやって調達したのだろう?

 つーか、もう少しでミサイルが到達しようかと言うのに、そんなことしてるバヤイじゃないと思うんだけどね。

 ダンは、午後11時の時報の音で目を覚ます。

 既に店には誰の姿もなく、普段の喧騒が嘘のように静まり返っていた。

 
 マヤ「ダン……」

 やがて、そこにマヤがあらわれる。

 どうでもいいけど、なんでセブンの地球名を知ってるのだろう?

 まあ、事前にセブンやウルトラ警備隊のことをある程度調べてから来ているのだろう。

 しばらく無言で向かい合った後、マヤがそばにあったごつい銃を構えるのを見て、ダンも咄嗟に銃を向けるが、

 
 一瞬早く、マヤの撃った弾で銃を弾き飛ばされてしまう。

 【悲報】 今回のダン、良いところがひとつもない……

 
 なおも無言でダンの顔を見詰めるマヤ。

 やっぱり香野さんは綺麗である。

 出来れば、大学に行かずに10代の頃からどんどんドラマに出て欲しかった。

 ここで、ミサイルに立ち向かうホーク1号と2号の奮闘が描かれる。

 だが、なにしろサイズが桁外れに大きいので、キリヤマたちがどんなに猛攻を加えても、ミサイルは涼しい顔をしていた。

 11時30分、マヤは引き続き銃をダンに向けて立っていた。

 
 マヤ(この星の命も午前0時で終わりです)
 ダン(君も死ぬのか)
 マヤ(私は仲間が迎えに来てくれるわ)

 まだ迎えが来ることを信じているマヤに、ダンはつらそうな顔で例のテープを取り出し、

 ダン(誰も来ない……君は初めから見捨てられてたんだ)
 マヤ(……)

 マヤ、ダンからテープを受け取り、素早く解読する。

 再び見上げたマヤの目には、喩えようのない悲しみの色が満ちていた。

 
 ダン(この星で生きよう、この星で一緒に……)
 マヤ(……)

 心の中で語りかけるダン。

 今回レビューしてて気付いたけど、ダンの鼻の形って、森田健作の鼻に似てるな……

 
 やがて、マヤ、首の後ろに手をやり、隠しておいたウルトラ・アイを取り出し、

 
 何も言わずにそれをダンの顔の前に突き出す。

 ここでいきなり変身時のドビュウウウッ! と言う効果音がして、

 
 夜空を垂直に飛び上がっていくセブンの映像に切り替わるのが、実に見事な省略技法である。

 セブンにも、さすがにそのミサイルを破壊する力はなかったが、その内部に入り込んでメカをいじり倒し、軌道を180度変えてマゼラン星へ向けて送り返す。

 もっとも、さすがにマゼラン星をそれで破壊するのは、大量無差別殺人になってしまうので、マゼラン星へ送り返したのかどうかは不明なのだが。

 今回の件は、マゼラン星の独裁者、あるいは過激派が、将来的に脅威になるかもしれない地球を先制攻撃しようとしただけで、一般住民には関わりのないことだったとしたら、やはり、マゼラン星そのものを破壊するのはまずいだろう。

 ただ、その場合、今後もいつマゼラン星から、物騒な贈り物が届くかしれないのだが……

 
 一方、秒針の音だけが響く店の中で、ひとり佇んでいるマヤ。

 さっきも言ったけど、ミニスカワンピにロングブーツの組み合わせが、凶悪なまでの可愛らしさなのである!

 
 マヤ「……」

 マヤ、時計が12時に迫るのを見て、ジュークボックスに近付き、

 
 特定の番号をプッシュすると、足元から白い煙が出て、その体を包み込む。

 祖国に裏切られたマヤは、ミサイルの衝突を待たずに自ら命を絶ったのだ。

 うーん、でも、ここは、時計が12時になってから、すなわち、作戦の成否が分かってから行動した方が自然だったかな。

 その直後、12時を知らせる時報が鳴り出し、同時にダンが戻ってくる。

 ダン、彼女のつけていたペンダントを拾い上げ、彼女が自ら命を絶ったことを悟る。

 厳密には、それだけで彼女が死んだと判断する材料にはならないんだけどね。

 
 ダン(何故他の星ででも生きようとしなかったんだ? 僕だって同じ宇宙人じゃないか……)

 ラスト、ダンが心の中でマヤに語りかけながら、制服姿で夜の通りを歩くという、なかなか大胆な街頭ロケ。

 正体を隠して異郷の地で生きているウルトラセブンの孤独が表現された(?)、胸に沁みるシーンである。

 以上、大好きなエピソードではあるが、丹念にレビューすると色々とアラと言うか、突っ込みどころが目について、シナリオ自体の完成度はあまり高くないことが分かった作品であった。
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コメント

美人は得

管理人様、再び37話をレビューして戴きありがとうございました😊やはり美人は得ですね。普通なら真夜中に(昼間でも)女の子がダンプを運転してたら怪しむ筈ですがね😅シナリオの完成度が低いから低視聴率(17・8%)になってしまったのでしょうか?

シュール過ぎて・・・

連投お疲れ様です😆🎵🎵
この方、何処かでお見受けしたと思ったら、
『太陽にほえろ』の殿下(小野寺昭)さんの
恋人役の女優さんじゃなかったでしょうか?
(口元のホクロが印象的)
確か小野寺さんのファン(女性群)から
心ない手紙が殺到したとか・・聞きましたが、
その後余りお目にかかれませんね。

>シナリオの準備稿では、「地球人が銀河系に進出するのを防ぐため」とあったらしい。

市川氏も執筆した「シルバー仮面」2話「地球人は宇宙の敵」(佐々木守脚本)がこれ。
「セブン」世界でもR1号とかやらかしてるから、侵略の意図・必要の無い宇宙人でも
「手遅れになる前に手を下す」と考えてしまいますよ・・・

>予算の都合で、怪獣や宇宙人が一切登場しない異色作である。

僕たち「大きなお友達」にとっては「語り合える」内容ではありますが
当時の(本来の視聴者)子供にとってはたまったもんじゃなかったでしょうね。
もし「帰ってきたウルトラマン」でこれやったら、僕は観なくなったかも?

ヒロインが決め手

>ミニスカワンピにロングブーツの組み合わせが、凶悪なまでの可愛らしさなのである!
一にも二にも吉田ゆりさんの貢献が95%の作品だと思います。

>シナリオ自体の完成度はあまり高くないことが分かった作品であった。
ソガとアマギのやり取りとか「整理すべき」なところは結構ありますよね。

それでも、ジュークボックスが自決装置・・・とかセンスが光る名作ですね!

Re: 美人は得

喜んで頂けて、私も嬉しいです。

数字が悪いのは怪獣が出ないからでしょうね。

Re: シュール過ぎて・・・

> この方、何処かでお見受けしたと思ったら、
> 『太陽にほえろ』の殿下(小野寺昭)さんの
> 恋人役の女優さんじゃなかったでしょうか?

そうらしいですね。自分は見たことないですが。

> 確か小野寺さんのファン(女性群)から
> 心ない手紙が殺到したとか・・聞きましたが、
> その後余りお目にかかれませんね。

そうなんですか。大変ですね。

テレビ版の「座頭市」にゲスト出演されてますが、我儘なお嬢様役でめっちゃ可愛かったです。

Re: >シナリオの準備稿では、「地球人が銀河系に進出するのを防ぐため」とあったらしい。

R1号で反省したのかと思いきや、その後もスパイナーとか物騒なもんばっかり開発してますからねえ。

Re: >予算の都合で、怪獣や宇宙人が一切登場しない異色作である。

でも、こういう作品もあるからこそ、今も語り継がれてるわけですからねえ。

Re: ヒロインが決め手

> 一にも二にも吉田ゆりさんの貢献が95%の作品だと思います。

ヒロインのキャスティングは大事ですよね。「Xライダー」見てるとつくづく思います。

まったくですね(-_-;)

>ヒロインのキャスティングは大事ですよね。「Xライダー」見てるとつくづく思います。
純子さんの後だから余計に・・・_| ̄|○

Re: まったくですね(-_-;)

得をしたのは速水さんだけ……

セブン第37話「盗まれたウルトラ・アイ」について

こんばんは。
このエピソードも胸に残る話でしたね。マゼラン星の少女・マヤは狂った星・地球を破壊する為、邪魔になるウルトラセブンの変身アイテム・ウルトラアイを奪い取る為に地球へ送られてきましたが、彼女は少なくとも自分の任務に疑問を抱いていた筈です。本当に地球が狂った星なら、何故セブンは守ろうとするのか?

そして、彼女は見ました。プラネタリウムという文化施設、そこで純粋に宇宙の星々に目を向けている人々、自分よりも年少の少年少女達、他の星々に友好的なアナウンス(自我自尊な言い方にも聴こえますが、他の星々を友人と認めているのは分かります)。
地球人は荒廃的な人間達ばかりでは無い。だからこそセブンは地球を守る。マヤにはそれが分かった筈ですが、母星の上層部に不信感を抱きつつも彼女はそれに従わなければ生きていけない。だから彼女は己を隠して終始無表情を貫いていたのでは。

最終的にマヤは母星(上層部)から見捨てられるのですが、彼女の迎えを求める通信に迎えは無理と返信をよこしたのは彼女に友好的な善良な者だったと思われます。彼女に危機を伝えれば彼女は自分で対処すると見ての事でしょう。
そして、彼女はダンにウルトラアイを返しダンはセブンに変身、恒星間弾道ミサイルの進路は変えられ地球は危機を逃れます。

危機が去ったのを確認した後、マヤは自害してしまいます。同じ宇宙人の自分が他所の星でも生きているというのに何故マヤにはそれができなかったのかとダンは嘆きますが、マヤにしてみれば生きる為とはいえ犠牲にしようとした(冒頭の運転手さんは亡くなったかもしれない)地球の人々の恩恵を受ける訳にはいかなかったのでしょう。
地球がダンにとって「第2の故郷」であっても、マヤにとっては「他人の星」なのです。後に地球人が彼女のような運命を辿らない為には裏切りの無い世界を作らなければいけないのですが、それはなかなかできないようですね。

Re: セブン第37話「盗まれたウルトラ・アイ」について

こんばんは。

いつも詳細な考察ありがとうございます。

胸に沁みる良いお話ですよね。

女優さんの名前

こんにちは。
オープニング・クレジットを見て「ん?」。ゲスト女優の名前が「吉田」でなく「𠮷田」になっていました。間違いかと思ったのですが、こういう字もあるんですね。

違う結末で覚えていました。

テレビで放送していたので第1話から録画していましたが忙しくて見ていませんでした。ブルーレイも購入したけど見ていません。切ない話だとは覚えていたので今の心境のせいかこの話だけ見たくなりました。
子供のころに見ていたのは確かですけどウルトラセブンの出番が少なく、いわゆる宇宙人らしいのが登場しないので余り覚えていなかったと思いますので、大学の頃にLDで見た記憶です。それ以来、30年以上経っていました。あらすじは覚えていたのですが冒頭のケンカシーンとかは全く覚えていませんでした。
ラストシーンを見て私の記憶が間違っていたとわかりました。私の記憶ではラストはマヤが人混みをさ迷いながら足早に歩くシーンで、ダンのモノローグがマヤが地球で一人で生きていくことを案じているセリフだと思っていました。今日見たのもそのラストシーンをもう一度見たくなったからでした。ラストシーンはダンが街を歩いていて、そのシーンもあったなと思い出しました。
どうして間違って記憶していたのかと考えましたが、彼女に生きていて欲しい気持ちがそうさせたのかと思います。

Re: 女優さんの名前

こんばんは、コメントありがとうございます。

> オープニング・クレジットを見て「ん?」。ゲスト女優の名前が「吉田」でなく「𠮷田」になっていました。間違いかと思ったのですが、こういう字もあるんですね。

そうですね。芸名としてどっちが正しいのかは知りませんが。

Re: 違う結末で覚えていました。

ご丁寧なコメントありがとうございます。

> どうして間違って記憶していたのかと考えましたが、彼女に生きていて欲しい気持ちがそうさせたのかと思います。

なんだか分かるような気がします。子供向け番組にしてはあまりに切ない幕切れでしたからね。

祖国に裏切られた

マヤは使い捨てカイロの如く祖国に裏切られたようですね😖折角ウルトラアイを盗んでそれなりに貢献したようですが、何故上の人間は掌返しで粗末にしたのでしょうか?どうにもやり切れない結末でした

Re: 祖国に裏切られた

まあ、国家なんてそんなもんです。

楽しいツッコミ満載で感心いたしました。
物語の整合性合理性が高い作品が
面白い作品良い作品とは私は思いません。
ドキュメントのように作中に起こったことを実際の時間軸で追いかけることが正確で高質な物語ではように。

そんなことよりマヤの感情表現をなぜ排除したのか等考察する方がより作品を楽しめるのではないでしょうか?
もちろん、 鑑賞の仕方は人それぞれとは思いますが… . 。

Re: タイトルなし

> 楽しいツッコミ満載で感心いたしました。

ありがとうございます。

> そんなことよりマヤの感情表現をなぜ排除したのか等考察する方がより作品を楽しめるのではないでしょうか?
> もちろん、 鑑賞の仕方は人それぞれとは思いますが… . 。

ご意見ありがとうございます。

我ながら理屈っぽいと思うことがありますが、性分ですからねえ。

ご返信ありがとうございます。
なるほど、私も理屈を申し上げるとしたらマゼラン星人のこの計画はゲリラ戦です。
初めからマヤは捨て石なのです。
それがこの話の1つの核でありテーマです。

「迎えはまだか」
とマヤが祖国に求めるのは、任務完了の後迎えをよこす計画と聞かされていたのでしょう。
深読みですが、それは任務を完了できなければ迎えをよこさないと言う非常な命令だったのかもしれしれません。
もちろんその計画は偽りであり、初めから果たされることのない約束なのです。
スパイ=マヤを回収することでマゼラン星人は自分たちの存在正体を露見することを恐れたのでしょう。
この作戦の良し悪しはともかく、これがこのストーリーの基本設定です。

銀河系進出を狙う地球に脅威を感じ、自らの被害を最大限に抑えて勝利するためスパイを送り込み遠隔地から巨大破壊兵器を発射した。
当時、米ソの冷戦の世相を反映したのかもしれません。

長々と失礼いたしました。
魚屋で肉を買う行為であったのならお詫びします。

Re: タイトルなし

ご丁寧な返信ありがとうございます。

> 当時、米ソの冷戦の世相を反映したのかもしれません。

なるほど、それもあるでしょうね。

職質

10代の女の子が真夜中にダンプのような大型車を運転してたら確実に職質されると思うのですがね🙄

Re: 職質

まあ、目立ちますよね。

市川先生のインタヴューです

出典は不明。やはり、この回は予算が無かったようですね。
https://www.youtube.com/watch?v=Goj3CbrzLpw

Re: 市川先生のインタヴューです

リンクありがとうございます。

大変貴重な資料ですね。

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