第25話「死刑台のネックレス」(1972年3月19日)
今回は、辻真先さんがシナリオを手掛けているので、路線変更後にしてはかなりの面白さである。

ハルコ「これ、お誕生日に貰ったの。ほら、二連でしょう?」
ジャイ子「良いわねえ、ハルコちゃん」
由美「うちのママなんてブローチ買っても怒るのよ」
井原「うちだってえ、おしゃれは大人になってからしろってさ」
冒頭、ハルコちゃんが自宅に友達を招いて自慢のアクセサリーコレクションを披露していると言う、今までまったくなかった種類のシーンがら始まる。
ハルコちゃんの家族は一度も登場したことはないが、かなり裕福な家庭らしい。

ジャイ子「大人になってからじゃ、手遅れよね。センスを養うのは今のうち、ねー、ミドリさん?」
初めて見る、いかにも快活そうな子がこまっちゃくれたことを言って、向かい側のミドリと言う少女に同意を求めるが、
ミドリ「気安く話しかけてんじゃねえよっ!」 ジャイ子「……」
こう見えて、ミドリはスケバンなのである。
じゃなくて、
ミドリ「そうね……」
ミドリはそう言うと、俯いてしまう。
ジャイ子「気のない返事!」
ちなみに、ジャイ子と言うのは私が勝手につけたあだ名である。
井原「ミドリさんは秀才だから、おしゃれなんてカンケーないね!」
横の井原さんが、ミドリの気持ちを柴田恭兵っぽく代弁するが、途中から嘘である。

ハルコ「あら、勉強とおしゃれは無関係よ」
井原さんの言葉に、すぐにハルコちゃんが異議を唱える。

ミドリ「うふふ、そうね」
才色兼備でクラスのリーダー的存在であるハルコに言われて、わが意を得たりとばかり笑顔を見せるミドリ。恐らく、親から厳しくしつけられて、おしゃれをしたくても出来ない境遇なのだろう。
で、こちらも初顔となるミドリこそ、今回のゲストヒロインなのである。
演じるのは吉野比弓さんなのだが、これってなんて読むんだろう?
ちなみにこの元祖「女子会」みたいなシークエンス、女児向きのドラマとして作られていた前半ならともかく、ヒーロー路線に舵を切った後半においては、やや風変わりな印象を受ける。
プロデューサーも難色を示したのではないかと思うが、これは勝手にヒーロー路線にされてしまったメインライターの辻さんの、密かな抵抗だったのかもしれない。
さて、ハルコの家から帰る途中、やはり羨ましかったのか、ミドリはハルコのよりもっとゴージャスな真珠の三連ネックレスを夢見ながら枯れ野を歩いていたが、なんと、目の前にいるヤギが、その三連ネックレスを首に巻いて草を食んでいるではないか。

ミドリ「あ、ヤギがネックレスをしている。何処で拾ったのかしら?」
ミドリはすぐヤギに駆け寄り、ネックレスを取ろうとするが、

近くにいた、一見なんの変哲もない(どこがじゃ!)羊飼いが待ってましたとばかりに折れ曲がった角笛を吹くと、

ミドリ「あっ」
ヤギの姿がパッと消え、目標を失ったミドリは地面にばったり倒れてしまう。
……
全国の孤高のロリコン戦士の皆さん、この画像で、好きなだけ妄想して良いんですよ?
しかし、まぁ、このシーンを真後ろから撮らず、真横から撮ったのは、監督なりの節度と言うものだろう。
ミドリはすぐ起き上がって、少し離れた場所に瞬間移動したヤギに駆け寄り、ネックレスを取り上げると、

ミドリ「わぁ、素敵ぃ」
ためらうことなく自分の首に巻いてみる。

羊飼い「見ていたぞ、ヤギのネックレスを盗んだな?」
が、それと同時に、あの羊飼いが横からあらわれ、ミドリを糾弾する。
ミドリ「違います!」

ミドリ「ああ……うう……苦しい」
厚かましくも否定するミドリだったが、そのネックレスが勝手にミドリの首をぎりぎりと絞め始める。
そう、それは冒頭でクモンデスが作り上げた、呪いの真珠で作ったネックレスだったのだ。
羊飼い「もう遅い、首飾り欲しさの心の迷い、それが取り返しのつかぬ悪の道への入り口だ」
悪人の癖に、若干見ている子供たちへの教訓めいた台詞を吐く羊飼い。
ミドリは耐え切れずその場に倒れてしまうが、
羊飼い「その苦しさが逃れる方法を聞きたいかね? 方法はひとつだけある、今それを教えてやろう」
羊飼いに、その方法の具体的な内容まで言わせずに、翌日の登校シーンに飛ぶのが見事な引きで、さすが辻さんである。
ミドリ、ちゃんと学校に来るが、いかにも元気がない様子。
ひかるがホームルームで出欠を取るが、

ひかる「久保田ミドリさん?」
ミドリ「……」
二郎「お前だよ、お前、ほら」
ひかる「久保田さん?」
ミドリ「は、はいっ」
ミドリは上の空で、後ろの席の二郎(教頭先生の息子)に注意されて、ようやく返事をする。
ミドリが太いマフラーを巻いているのを見て、

ひかる「ミドリさん、マフラー何故取らないの?」
ミドリ「あ、あのー」
ひかる「まぁ、風邪引いてるのね、じゃ仕方ないわねえ」
ミドリ、答えられずに口ごもっていたが、ひかるは風邪だと判断して優しく許可してくれる。
無論、マフラーは、あのネックレスを隠すためのものである。

その後、昼休みの時間であろうか、さっきの女の子たちが、ひかるのを手を引っ張って校庭の鉄棒のところまで来て、第1話でひかるが見せた大車輪をもう一度見せて欲しいとせがむ。
だが、ミドリだけは、まったく別のことを考えながら、ひかるの左手の大きな指輪を見詰めていた。
その脳裏に、昨日の羊飼いの言葉が繰り返される。
羊飼い「助かる方法はただひとつ、ひかるの指輪を盗み出せ!」 そう、羊飼いことクモンデスは、今度は子供を利用してひかるのパワーの源であるムーンライトリングを奪おうとしているのだ。
……しかし、上級監視員と言ったひかるは、たとえ指輪を失っても、変身コンパクトさえあればアンドロ仮面に変身できるのではないかなぁ? あるいは、ムーンライトリングと変身コンパクトが揃ってなければ変身できないのだろうか?
ひかる「やればいいんでしょ、放して頂戴」

そのどさくさ紛れにミドリに指輪を抜かれたとも知らず、遂に折れて、二郎と同じ鉄棒を両手で掴むひかる。
二郎「先生の隣じゃ、俺、引き立て役じゃない」
ひかる「ははは」

と、ミドリはひかるの大車輪を見ようともせず、悲しそうな顔でその場から駆け去ってしまう。
二郎「なんだよ、ミドリーっ! 天邪鬼だなぁ」
それに注意を払ったのは二郎だけだったが、あるいは、密かにミドリのことが好きなのかも知れない。

何も知らないひかる、鉄棒にぶらさがり、体を前後に揺らし始める。
って、もう、スカートの中が見えちゃってるじゃないの!
もっとも、撮影用のブルマを履いているのか、それとも黒いパンティーを履いているのか、暗くてほとんど見えないんだけどね。
やっぱりパンチラには白いパンツが一番である。

ひかる「あっ、あっあっ……」
ところが、もともとムーンライトリングの力でインチキして大車輪を演じていたひかる、あっけなく鉄棒から落ちてしまう。
ひかる「変だなぁ……もう一回ね」
ひかる、気を取り直してもう一度チャレンジするが、結果は同じ。
ひかる「おかしいな……ああっ、指輪がない」
二郎「ええっ?」
ここでやっとひかるもムーンライトリングがなくなっていることに気付き、ハルコたちと一緒になってその周りを調べるが、何処にも見当たらない。
二郎「ミドリ? ……ひょっとしたら」
二郎はさっきのミドリの態度を思い出し、ひかるたちには何も言わずに走り出し、ミドリの後を追う。
ミドリは学校を飛び出して、昨日羊飼いと会った場所に向かって一心に走っていたが、とおせんぼするようにその前にあらわれたのが、意外にもバルであった。

バル「パイヨ! 待つのである」
ミドリ「バル!」
バル「おお、リングが発する緊急信号、もしやそれはかぐや姫先生の指輪でないかな?」
ミドリ「……」
バル「何故盗んだのであるか? 指輪はいわば姫の命じゃ、それがなくては不思議な力は使えんのである。悪者にやられちゃうのである。それでも、良いのか? うん?」
ミドリ「ごめんなさい、私、怖かったんです!」
バルに噛んで含めるように諭されて、ミドリも自分の過ちを認めて謝罪するが、バルに事情を打ち明けようとすると、再びネックレスがひとりでに首を絞め始める。

ミドリ「ああっ、うう……」
掻き毟るようにネックレスをつかんで、苦悶の表情を浮かべるミドリ。
この子、ルックスだけじゃなく、演技もかなり上手いのである。
それにしても、バルがガンガン人前に姿を見せるわ、ひかるが超能力の使い手であることまで半ば公然の秘密となっているわ、平和監視員がその正体や超能力を現地人に知られてはならないという初期設定が完全に崩壊しちゃってるなぁ。
そのルールをうまく使って「ムシ歯になった宇宙人」と言う傑作をものにした辻さんにしてみれば、こんなシーンを書くことに、いささか忸怩たるものを感じておられたのではないだろうか。
ミドリ「ああ、苦しい……」
バル「どうした、しっかりしろ!」
苦しさのあまりに地面に倒れ込むミドリに駆け寄ろうとしたバルの前に、あの羊飼いが出現する。
羊飼い「あははははは、緊急信号に誘われてうかうかとおびき出されたなぁ」
ここから、バルと羊飼い(クモンデス)&ナムダー(戦闘員)たちによる、面白くもなんともない殺陣となるが、多勢に無勢、バルはクモンデスの糸で縛られて身動きできなくなる。

羊飼い「いまだ、教えたとおり、その指輪を粉微塵にしろ」
ミドリ「……」
バル「いかん、いかん、そんなことをすれば、かぐや姫先生はおしまいである!」
羊飼い「早く行け、この指輪を壊す前に、このネックレスを外そうとしてみろ、たちどころにお前は縊れて死ぬ! 行け!」
羊飼い、何故か自分でムーンライトリングを壊そうとせず、あくまでミドリに命じてやらせようとする。
正直、不可解な行動であり、ミドリに代行させねばならない理由が欲しかった。
たとえば、クモンデス自身は、ムーンライトリングに触ることが出来ない、とかね。
ついでに言えば、せっかく自由を奪ったのに、クモンデスがバルにトドメを刺そうとしないのも変である。
CM後、引き続き、鉄棒のまわりを探していたひかるたちだったが、ひかるの目の前にすっとムーンライトリングが差し出される。

ひかる「二郎君、ありがとう!」
正夫「おめえ、探しモンうめえなぁ」
ハルコ「どこにあったの、二郎君?」
二郎「向こうだよ」
それは、前のシーンで旗野先生と一緒にミドリの行方を探している筈の二郎であり、視聴者には容易に、二郎も指輪もニセモノだと察しがつく。

ひかる「みんな、ほんとにごくろうさま、ありがとう」
ハルコ「良かったわね」
だが、ひかるは相手が教え子なので、まったく疑うことなく他の子供たちにも礼を言って向こうへ行く。
この、我がことのように喜んでいるハルコちゃんの笑顔が可愛いのである!
その後、ニセの二郎は言葉巧みにひかると正夫たちを体育倉庫に入れると、自分も入って中から鍵をかけてしまう。
ひかる「二郎君、何故閉めるの?」

二郎「二郎だと? はっはっはっ、そんな子供はここにはおらんぞ」
振り向いた二郎の口からは、長い牙が二本生えており、声もクモンデスのものに変わる。

正夫「あ、ああ……」
反射的に子供たちを庇うように腕を広げるひかる。
ついで、二郎の姿がクモンデスに変わる。

ひかる「クモンデス!」
正夫「また出やがった、こんにゃろー」
怯えた様子でひかるの背中に隠れているハルコちゃんが可愛いのである!

ひかる「おのれ、クモンデス」
クモンデス「月ひかる、相手になってやる」
アンドロ仮面のようにファイティングポーズを取るひかる、まずは子供たちを安全な場所に移そうと、ムーンライトリングを使おうとするが、いつの間にか、指輪が大きなクモに変わっているではないか。
そのクモに噛まれ、呻いてその場にしゃがみこむひかる。
今回のクモンデス、妙に冴えてるなぁ。
一方、ミドリは線路の上に本物の指輪を置いて、電車に轢かせて粉々にしようとしていた。

だが、その頭の中では、ミドリを脅す羊飼いの声と、必死で思いとどまるよう訴えるバルの声が交互にリフレインされ、典型的な葛藤状態が起きていた。
同じ頃、ひかるは一見ビニールテープにしか見えないクモンデスの糸でぐるぐる巻きに縛られてムチでしばかれ、ハルコたちはクモの巣によってひかるから遠ざけられていた。

進「やめてよ、先生をぶつなら、僕たちをぶって」
正夫「そうだ、お前、血が吸いたいんだろう? くれてやらーっ」
ハルコ「私も」
進「僕も」
目の前でひかるを痛めつけられた正夫たちは、自ら袖をまくって腕を突き出し、なんとかひかるを助けようとする。
げにも麗しい師弟愛である。
クモンデス「喚け、叫べ、怒りと苦しみに煮え滾った血が何よりの好物だ」
だが、冷血そのもののクモンデスは彼らの必死の願いをあざ笑うと、なおもひかるの体にムチを振り下ろす。
サディストのクモンデスらしい行為ではあったが、この場で即座にひかるを殺さなかったのは、クモンデスにとって痛恨のミスであった。
一方、ミドリはぎりぎりまで迷っていたが、電車がすぐそばまで迫ってきたところで翻然と決意し、間一髪で指輪を拾い上げる。
近くでそれを見ていた旗野先生と二郎は血相変えてミドリに駆け寄り、

旗野「ばかやろう、子供の癖に自殺をする気か?」
ミドリ「ええっ?」
旗野「詳しいわけは大伴(二郎のこと)から聞いた、出来心だ、死ぬ必要はない」
旗野先生、てっきり指輪を盗んだことを気に病んで、ミドリが鉄道自殺を企てたのだと考え、叱り飛ばすが、

ミドリ「死ぬんじゃありませんっ」
旗野「ええ?」
ミドリに即座に否定されて、怪訝な顔で二郎と顔を見合わせる。
ミドリ「これを壊すまいとしたんです……あっ、ネックレス?」
ふと首が軽くなっているのに気付いて触ると、いつの間にか、あのネックレスが外れ、地面に落ちていた。
ミドリ「あっ、転げた弾みに切れたんだわ。先生、私助かりました」
旗野「そうか、助かったか。ちっともよう分からんが、とにかく良かった」
現実には存在しない筈のツインテールのロリロリ美少女に抱き付かれた旗野先生、自分が教職の道を選んだのは、やはり間違いではなかったと思うのであった。
そこへ、自力で戒めを解いたバルがふらふらになりながらやってくる。
バル「は、旗野先生~」
旗野「よお、バル、なんだ不景気な格好して? リューマチでも出たんか?」
パル「それどころではないのである。今や姫の大ピンチ」
旗野「え、月先生が?」

バル、ミドリから指輪を受け取ると、それを杖の先端の三日月に引っ掛けて、空に向かって放り投げようとするが、クモンデスとの戦いで精根尽きたのか、体を仰け反らせるとそのまま倒れそうになる。
旗野「おお、しっかりしろよ、バル、だいじょうぶか」
バル「頼む、若者よ、この杖を投げるべし」
などとやってる彼らの背後を、作業着を着た人たちが平然と通り過ぎていくあたり、いかにも昔の特撮らしいガサツさである。
旗野「だけど投げるって何処へ投げりゃいいんだ?」
バル「何処へでも、さすれば杖は姫の脳波を探知して、必ず辿り着く筈である」
旗野「よし、よし、これまた良く分からんが、これも月先生のためならえんやこらだ」
バルに言われるまま、やり投げの要領で杖を空に向かって思いっきり投げる旗野先生。

旗野「杖よ届け、月先生にリングと僕の真心を届けてくれ」
バル「かっこつける場合ではない!」
投げた後、思い入れたっぷりにキザな台詞を吐く旗野先生の肩を、バルがグーでパンチする。
さて、バルが言ったように指輪はひかるの脳波を探知して、真っ直ぐひかるの閉じ込められている異次元空間に落ちてくる。

ひかる「クモンデス!」

ひかる、すぐに指輪を嵌めると、ムーンライトパワーで子供たちを安全な場所へ瞬間移動させる。
ここでは、久しぶりにひかるの目が青く光るイメージカットが使われているが、これがシリーズにおける最後の使用だと思う。
ここまで来れば、もう詳しく書くこともない。
ひかるがアンドロ仮面に変身し、正夫たちの目の前でクモンデスと戦うだけである。
今回は、お宝ショットはないので、アンドロ仮面の画像より、

正夫たちと一緒にアンドロ仮面を応援しているハルコちゃんや、

アンドロ仮面がクモンデスを倒したのを見て、ちょっと恥ずかしそうにはしゃいでいるハルコちゃんの画像を貼っておこう。
ああ、ほんと可愛い……
次回で彼女ともお別れかと思うと、大変淋しい。
ま、これだけではなんなので、

マントブーメランを使った後、マントを元通り背中につけて、

キリッとした目で頭上を見上げるアンドロ仮面の立ちポーズがかっこよかったので、貼っておこう。
ラスト、ひかるたちのところに旗野先生たちも駆けつけ、めでたし、めでたし。
ちなみにその際、ミドリのスカートがめくれてお尻が剥き出しになってしまうが、ちゃんとブルマを履いていたので、お父さんお母さんは安心、ロリコンは歯軋りなのです。
以上、路線変更後のエピソードの中では群を抜く面白さであり、クモンデスの作戦としても一番成功に近付いたものだったと思われる。なにより、ハルコちゃんの出番が多いのが嬉しい。
ただ、それでも、戦闘シーンと言う余計なシーンのお陰で、脚本本来の面白さが大きく損なわれていることは否めない。
これが路線変更前に書かれていたら、おそらく、ミドリが出来心でひかるの指輪を盗むとか言う話になって、より繊維な人間ドラマが展開していたであろうにと、今更ながら惜しまれる。
次回、いよいよ最終回である。
- 関連記事
-
スポンサーサイト