第21話「残虐!ムラサキネズミの毒牙」(1972年12月2日)
冒頭、薄く霧の降りた夜道を、記憶喪失中の光明寺博士が、大きなネズミの足跡のようなものを辿って歩いている。
ふと前方を見れば、巨大なネズミの化け物が、「キキキキキ……」と奇声を発しながら、病院の塀に、鼻の穴から生えた巨大なドリルのようなものでガリガリと穴を開けているではないか。
光明寺「まただ、また何かが起こる。だがあの連中は一体なんだ? あいつらを見るたびに私の心のどっかにある記憶を感じさせるのだが……」
臆病なくせに好奇心旺盛な光明寺は、塀の向こうに消えた怪物を追って、敷地内に入り込む。

ネズミの化け物……怪人ムラサキネズミは、伝染病研究室に侵入すると、ちょうど巡回していたガードマン二人を血祭りに上げる。
怪人「死ねえ、キキキキキ……」
ムラサキネズミ、部屋の隅に見知らぬ男が立っているのを見て、
怪人「お前は誰だ? なんで迷い込んできたのか知らんが、ようし、お前には実験台になってもらう、ダーク新型ペスト!」
口から毒ガスを吐いて、光明寺博士を昏倒させる。
どうでもいいが、プロフェッサー・ギル、新しいダーク破壊部隊が出撃する際には、ちゃんと光明寺博士の顔写真を見せておいたほうが良いぞ。
もし見せていれば、簡単に念願の光明寺博士の身柄確保に成功していただろう。

半平「ややや、これは難事件」
翌朝、めちゃくちゃに荒らされた伝染病研究室に、意味もなく眼帯をつけた半平が、知り合いらしい看護婦と一緒に入ってくる。
しかし、前夜に二人も人が殺された現場だと言うのに、警察の姿がひとつもないと言うのは明らかに変である。

半平「だが、ご安心召されい、名探偵・服部半平様が来たからにはどんな難事件もたちどころに解決、うはははは」
まどか「部屋はこの通り、ガードマンは行方不明、何処からか迷い込んだらしい中年の男の人はひどい熱で意識不明、どうも新しい型のペストのようです」
なるほど、ダークがわざわざガードマンの死体を持ち去ったのなら、警察がまだ出動していなくても不思議ではないが、今度は、
「新しい型のペスト」の感染者が出たというのに、なんで当局にも報告せず、平然と部外者を部屋に入れているのかという新たな疑問が湧いてしまう。
そもそも、研究責任者でもないただの看護婦が、そんな事件の調査を半平に依頼するというのも変な話だが、まあ、半平と個人的に知り合いだったので、ダメ元で調べてもらっているのだろう。
そんなことより、このまどかという看護婦さんが、なかなか色っぽくて、そっちの方が気になる管理人であった。
演じているのは松村良子さんと言う人で、美人と言うほどではないのだが、妙な色っぽさが感じられる。
半平「こんなところにわざわざ迷い込むとは、馬鹿な中年男がいたもんですな。はっはははっ」
その中年男が、まさか光明寺博士とも知らず、無遠慮な笑い声を立てる半平に、まどかさんは、最近、色んな研究室からペスト菌が盗まれているので、用心のためにペスト菌を隠しロッカーに保管していたので、昨夜の騒ぎでは盗まれなかったと説明する。
いや、これも、ただの看護婦がペスト菌の管理を任されているというのもなぁ……
半平「やや、まどかさん、犯人が分かりましたぞ」
と、テーブルの下に潜って調べていた半平が、興奮気味に叫ぶ。

まどか「えっ、もう?」
わーおっ、まどかさん、パンツが見えちゃいますよ! ま、結局見えなかったのだが、いやぁ、ストッキングを履いた看護婦さんがしゃがむだけで、どうしてこんなに幸せな気持ちになれるのだろう?

半平「犯人の足跡に違いない」
まどか「でもこれは」
半平「そ、ネズミの足跡」
興味津々、顔を前に突き出して床に残った足跡をまじまじと見詰めるまどかさん。
どことなく、その顔がネズミに見えないこともない。
半平にしてはなかなか鋭い推理(?)であったが、そんな巨大なネズミがいることに気付いた途端、恐怖のあまり、その場にひっくり返ってしまう。
一方、ペスト菌奪取に失敗したムラサキネズミは、プロフェッサー・ギルから「めっ」されていた。

ギル「ダーク倉庫のペスト菌が品切れだということを忘れたわけではあるまいな」
怪人「わかっております、プロフェッサー・ギル、我々ダークの新兵器、ダーク新型ペストを作るために是非大量のペスト菌が必要なのです」
ギル「わかっているなら、手に入れて来い」
怪人「ははーっ」
しっかし、
「ペスト菌が品切れ」って、アバンギャルドな台詞だよなぁ。
つーか、ペスト菌なら培養すればいくらでも増やせるんじゃないの? 良く知らないけど。
それはともかく、残忍なギルが発破を掛けただけで部下のミスを許す訳がなく、

天井のランプが光ると、まるで人が書いたようなくっきりした稲妻が宙を切り裂き、
戦闘員A「ぐわーーーっ!」 ムラサキネズミの左後方に控えていた、何の罪もない戦闘員を直撃する。
ちなみに「悪の組織」の戦闘員の仕事は、世界のあらゆる仕事の中で最も過酷であり、俗に
3Kと呼ばれている。
そのKとは、
K……ヒーローに(肩慣らしに)殺される K……怪人に(誤って)殺される K……首領に(なんとなく)殺される の三つである。合掌。
それはさておき、
怪人「うっ、ああ、あっ」
ギル、怯えるムラサキネズミにギョロッとした目を向け、

ギル「分かっているだろうな、ムラサキネズミ、もし失敗した時は、右の奴もそうなるのだぞ!」
戦闘員B「ワシかいっ!」 じゃなくて、
ギル「もし失敗した時は、お前もそうなるのだぞ!」
その後、ミツ子とマサルが道を歩いていると、空き地で、半平が変な物を作っていた。
まさかと思ったが、お化けネズミを捕まえるための特大ネズミ捕りを製作中なのだった。

半平「ふふふ、我ながら良い出来栄えですな」
ミツ子「ハンペン!」
半平「うわっ」
上下に動いてシャッターの役目を果たす鉄格子の滑りを試しているところを、忍び足で近寄ったミツ子に肩を叩かれ、思わず叫ぶ半平。
その拍子に鉄格子を離してしまい、右手が、枠と枠の間に挟まれてしまう。

半平「うひゃっ、痛い痛い、取って取って」
ミツ子「ごめんなさい」
マサル「こんなところで何してんだい?」
ミツ子「仕事なの、遊びなの?」
半平「見りゃ分かるでしょ(註1)、仕事ですよ、ネズミ捕りを作ってるんです」
ミツ子とマサル、半平の奇行には慣れているので、根掘り葉掘り聞かず、研究室に運び込むのを手伝ってやる。
註1……分かるかっ!

ミツ子「わあ、凄い、この穴、間違いないわ」
マサル「うん、きっとダーク破壊部隊だ」
その穴の向こうの病室には、男性患者が寝ていて、まどかさんが看護していた。
無論、新型ペストにかかった光明寺なのだが、いくらなんでも、ペスト菌に掛かった患者を、こんな穴の開いた病室に入れるというのは滅茶苦茶である。
せめてビニールハウスみたいな感染予防の覆いをして欲しかった。

まどか「心配することないです」
半平「あ、あれね、あれは病気の中年男さ。さ、手伝ってくれたまえ、ネズミ捕りを仕掛けるんだから」
ミツ子もマサルも、まさかそれが長いこと探し回っている父親とは夢にも思わないのだった。
こういう、いかにもドラマならではのシチュエーション作りの上手さは、さすが長坂さんである。
と、その時、別の壁が壊されて再びムラサキネズミが飛び込んでくる。
震えながらも、ネズミ捕りのシャッターを上げ、その中に誘い込もうとする半平。
半平に向かって突進するムラサキネズミ、素早く下ろされるシャッター。

半平「掛かったーっ!」
鉄格子を握り締めて叫ぶ半平の姿に、まさかの作戦成功……と思いきや、

怪人「ペスト菌は何処だ?」
閉じ込められたのは自分自身だったという、いかにも半平らしいオチがつく。
ま、差し当たり、一番安全な場所かもしれないが。
ムラサキネズミ、相手が光明寺の子供たちと知り、ペスト菌は後にして、二人を捕まえようとする。

病院から出て、並木道を走る二人の前に戦闘員が現れ、棒立ちになったところで久しぶりにミツ子がパンチラを披露する。

さらに、背後から戦闘員に腕を取られた際、スカートがめくれてかなりはっきりお尻が露出する。
ま、キャプではちょっと分かりにくいと思うが、なかなかのエロさである。
ああ、それにしてもミニスカのなんと素晴らしいことよ。
管理人がもし総理大臣だったら、10代から20代の女性に、ミニスカと白いパンツの着用を義務付ける法律を、政治生命を賭して成立させるのだが……
え? 死んでろ?
ここで、やっとジローのギターが聞こえてきて、中盤のアクションシーンとなる。

その戦いを、病室の窓から不安そうに眺めているまどかさん。
なんとなく、辛酸なめ子さんに似てる気がする。
光明寺「何の騒ぎですか」

まどか「あらあ」
光明寺「もう大丈夫、あなたのお陰ですっかりよくなりました。ほんとにどうもありがとう」
いつの間にか光明寺がその横に立っていて、強がりではなくほんとに全快したような晴れ晴れとした笑顔で礼を言う。
しかし、ダーク謹製の新型ペストをまともに浴びたと言うのに、わずか半日で快癒してしまうというのは……
ま、ムラサキネズミも「実験」と言っていたから、まだ不完全な生物兵器だったのだろう。
光明寺が裏口から逃げていくのを、半平が見掛け、ミツ子たちに教える。
CM後、光明寺を追いかけて川の横を走っていたミツ子の前に、ムラサキネズミが現れ、新型ペスト菌を浴びせる。ついで、光明寺を捕まえて気絶させると、小脇に抱えて走り出す。ギルの命令で、光明寺をダークに連れ帰るつもりなのだ。
やがてジローがサイドカーで追いつき、倒れているミツ子のそばに駆け寄る。

ジロー「ミツ子さん……ひどい熱だ」
マサル「怪物にやられたんだよ、あっち」
マサルに指差されたほうを見れば、今しも、ムラサキネズミが光明寺博士を連れて行くところだった。

ジロー「……」
光明寺を奪還すべきか、ミツ子の命を救うべきか、究極の選択を迫られ、本物の人間のように顔を歪ませて葛藤するジロー。
やがてジローは、ミツ子の体を横たえると、悲愴な面持ちで自分の体のハッチを開ける。
ジローが何をしたのか明示されないまま、次のシーンでは、ミツ子が病院のベッドに寝かされている。

マサル「姉さん、大丈夫?」
ミツ子「……」
目を覚ますと、マサルと半平がそばにいて、安堵の表情を浮かべて自分を見詰めていた。
マサル「心配すんなって、もう新型ペストなんてふっ飛ばしちゃったぜ。ジローのお陰さ」
ミツ子「え、ジローの?」
マサル「うん、ジローは姉さんを助けるために体から機械を出して使ったんだ」
半平「これなんだがね」
半平が差し出した銀色の円筒形の物体を見た途端、ミツ子の顔色が変わる。

ミツ子「あっ……」
まどか「見たことのない保温器だけど、とにかく悪寒に襲われていたあなたの体をあっためていてくれたのよ」
ミツ子「これはジローの中に組み込まれていた熱エネルギー電池よ。ジローは私を救うためにとんでもないことをしちゃったのよ」
ミツ子によると、この装置を外すと、ジローはキカイダーに変身できなくなり、パワーも1割まで落ち込んでしまうと言うのだ。
どうでもいいが、新型ペスト菌から回復するまで、光明寺の場合は半日、ミツ子の場合ははっきりしないが、多分1時間かそこらだろう。
要するに、ダークが開発した新型ペスト菌、全くの役立たずだった訳である。それこそ、普通のペスト菌のほうが効き目があるのでは?

ミツ子「早くしてハンペン、早くしないと間に合わないのよ」
半平「いやいや、早く行きたいのは山々なれど、なにぶんこの車めが!」
半平のオンボロ車に乗って、ジローの後を追っているミツ子とマサル。

ミツ子「ああ、ジロー、私のために……私なんかのために……死なないでジロー!」
そのジロー、まともに動かない体に鞭打ってムラサキネズミをひたすら追い続け、林を抜けた先の崖の上で遂にムラサキネズミに追いつくが、無論、戦える状態ではなく、あえなく崖から突き落とされてしまう。
ちょうどそこへミツ子が工具箱片手に駆けつけ、抱き起こすが、ジローはうっすらと目を開けて、ミツ子の名を呼ぶと、意識を失ってしまう。

ミツ子「ジロー、私を救うために、私なんかのために……あなたは……ジロー、ジロー!」
人形のように動かなくなったジローの体を強く抱き締め、むせび泣くミツ子。
ギル「でかしたぞ、ムラサキネズミ、念の為にトドメを刺しとけ!」
それを見ていた移り気なギル、今度は光明寺を打ち捨てて、ジローの抹殺をムラサキネズミに命じる。
まさに絵に描いたような「虻蜂取らず」である。
初志貫徹して光明寺を連れ帰っていれば、少なくとも光明寺を確保することだけは可能だったろうに。
話が前後したが、崖下に降りたムラサキネズミ、倒れてぐったりしているジローを発見し、部下に八つ裂きにさせようとするが、案の定、ジローは死んでおらず、戦闘員を蹴散らして空高くジャンプして、ムラサキネズミの前に飛び降りる。

マサル「ざまーみろ、ジローはもう姉さんが治したんだぞ」
半平「っていうわけだ、ざまーみろ、馬鹿」
近くの草陰にはミツ子たちが隠れていて、口々にムラサキネズミを罵る。
ミツ子、何度もジローの修理をするうちに、メカニックのとしての腕も上がったようである。
ここまでくればもう詳述するまでもない。
ジローがキカイダーに変身し、長い長い段取りの末にムラサキネズミを撃破して事件は解決する。
だが、例によって例のごとく、気絶していた筈の光明寺は、いつの間にかまだどこかに姿を晦ましていた。ちょっと目を離した隙に何処かへ行ってしまう、まるでゴキブリか赤ん坊のような博士であった。
それにしても今回のダークの作戦、まったくどうしようもない駄作(註・駄目な作戦の略)だった。
ペスト菌を奪うことも出来ず、開発した新型ペスト菌も失敗作で、結局、病原菌による被害者はゼロで終わったのだから、この手の作戦としては、歴代ワーストではないだろうか。
以上、ストーリーの面白さに加え、色っぽいまどかさんに、ミツ子のパンツもチェックできる佳作であった。
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