第6話「怪奇!死人ふくろう!!」(1972年5月5日)

魔神斎「血車党の秘密を盗み見たものは、女子供たりとも生かしておかぬわ」
珍念「うっ」
のっけから、とある村のお寺の墓地で、森三中の大島みたいな小坊主を痛めつけている魔神斎。
その割りに、地面に叩き伏せるだけで、トドメを刺そうとしないのが解せないが……
そこへ、左手にまるで剥製のようなふくろう(と言うよりミミズクだが……)を乗せた骸骨丸が来て、
骸骨丸「魔神斎さま、仕度はすべて整いました」
魔神斎「おお」
骸骨丸は、うやうやしく、とある墓穴の前に魔神斎を案内すると、

骸骨丸「土に眠る人間よ、土から蘇り、今一度その体を役立たせろ」
そう言いながら、丑の刻参りのような藁人形をまだ柔らかな土の上に投げる。
と、埋められていた死人がその藁人形を掴みながら起き上がる。
彼らは新たな化身忍者を作るための素材を吟味しているのだが、死体はひとつでは足りず、
・死後一日目の人間の目と心臓
・死後二日目の人間の腕とはらわた
・死後三日目の人間の骨と皮膚
などが必要なのだと言う。
めんどくせっ!
これに加えて、化身忍者のベースとなる生きた人間が要ると思われるのだが、ストーリーの都合上、その顔ははっきり見えないようになっている。
それにしても、骸骨丸、またメイクが変わってるような……
お前はルックスに自信のないOLか?
一方、珍念は、近くの草むらにぐったり倒れているところをたまたま通りがかったハヤテとタツマキに発見され、介抱される。
骸骨丸による化身忍者製造は順調に進み、恐らく死体の各パーツを移植されたのであろう、ベースとなる人間が、包帯で体中ぐるぐる巻きにされて寝台に横たわっている。
男「魔神斎さま、一日も早く化身忍者にならしてください。ハヤテを倒したいのです」
魔神斎「さすがは血の掟で結ばれた血車のものよ」
骸骨丸「血の滴る真新しい肉を好み、夜の世界を支配するふくろうの魂よ、この男に乗り移れ、乗り移るんだっ」
仕上げに、骸骨丸が手にしたふくろうを男に近付け、その魂とやらを乗り移らせて、オペ完了。
自ら志願したらしいその男は、おぞましいふくろうの怪物・死人ふくろうに生まれ変わる。
魔神斎「ゆけ、死人ふくろう、お前の体に流れる死人血液がどのように恐ろしい威力を持つか、試すのだ」
怪人「けーごーっ!」
死人ふくろうは直ちに出撃し、次々と村人に自分の血液を注入していく。

怪人「この毒薬の効き目は明日中にあらわれる……」
さて、ここに、一見ストーリーとは関係のなさそうな、兄と妹が登場する。
妹のこずえがひとりで針仕事をしていると、兄の山彦小次郎が今にも倒れそうな足取りで帰ってくる。
こずえ「兄さん? しっかりして兄さん!」
小次郎「心配ない、俺は三日間山に篭って新しい忍びの技を工夫していたのだ」
こずえ(中学生か、お前は?) もっとも、彼らは血車党のメンバーなので、忍びの修業をするのは立派なお仕事のひとつであった。

こずえ「兄さん、まさか、ハヤテさんと戦うつもりでそんな真似を?」
小次郎「バカな、この山彦小次郎は小さいときからハヤテとは親友だった。戦えるものか。それより俺はハヤテを助けてやりたいと思ってる。その証拠だ」
妹の疑念を払拭するように、小次郎は血車党の紋章と心得(?)の書かれた掛け軸を引き裂くと、囲炉裏に叩き込んで燃やしてしまう。
小次郎「くそっ、毎年お歳暮に同じもん送ってきやがって!」 こずえ「一枚あったら十分よね~」
嘘はさておき、ハヤテたちは、川辺でツムジの潜水訓練を行っていた。

ま、訓練と言っても、見た目には、ただの虐待であった。
どうせなら、ツムジとカスミの役割は逆の方が良かったなぁ。

珍念「311、312、313……」
で、何故かハヤテとタツマキと一緒に、珍念がエラソーに腰に手を当てて岩の上に立ち、カウントを数えているのだった。
いや、ハヤテたちも珍念さんも、暢気にそんなことしてる場合じゃないと思うんですが……
ハヤテ「タツマキ、だいぶ上達したな」
タツマキ「いやいや、まだまだ」
と、耐え切れなくなったツムジが水から顔を出し、荒い息をしながら立ち上がる。

タツマキ「ツムジ、もう一回じゃ」
ツムジ「ずるいやーっ、今度は姉ちゃんの番だぁい!」
全国の成年男子の願いを代弁するツムジだったが、
タツマキ「こりゃ、おやじの言うことが聞けんのか」
あえなくタツマキに却下される。
ま、なにしろ、ちょっと前まで「魔女先生」で教頭やってた人だからね。教育的配慮と言う奴だろう。
その時、ハヤテが誰かが近付く気配を感じたので、みんな急いで身を隠す。
だが、あらわれたのは血車党ではなく二人の村人で、川を見ると、転げるように駆け寄り、犬のように這い蹲って水をがぶがぶ飲む。
危険はないと判断してハヤテとタツマキが二人に話しかけるが、振り向いたその顔には、毒々しい色の斑点が浮き出ていた。ハヤテたちはともかく二人の体を抱き起こす。

ハヤテ「血車党の仕業だ」
ツムジ「姉ちゃん、治してあげなよ」
ハヤテ「いや、カスミには無理だ」
タツマキ「何かご存知で?」
ハヤテ「うん、血車党には化身忍者を作り出す力と、いまひとつ、世の中に知られていない不思議な病気を流行らす術がある」
ハヤテたちはひとまず村に二人を運ぼうとするが、途中、骸骨丸たちが襲ってきたので、ハヤテひとりが踏み止まって応戦する。
骸骨丸「血車党は今までにない最強の化身忍者を作り上げた」
ハヤテ「新しい化身忍者?」
骸骨丸「血車忍法・死人ふくろう、闇夜呼び!」
骸骨丸が叫んでジャンプすると、ハヤテの周辺に黒い煙がたなびき、視界が暗闇に包まれる。
ナレ「闇夜呼びとは、黒い煙幕によって太陽の光線を遮り、日食と同じ作用を起こさせ、昼間を夜に変えるのである」

怪人「俺の名は死人ふくろう! 俺の術を受けてみろ! くぇーろーっ!」
その闇の中に死人ふくろうがあらわれ、巨大な目を光らせて、催眠術でハヤテの動きを封じて斬ろうとするが、
ハヤテ「火炎手裏剣!」
ハヤテが火薬を詰めた特殊な手裏剣を空に向けて投げると、爆発が起きて再び周囲が明るくなる。

ハヤテ「術は破った!」
続いて、空に浮いた黒い凧のような幕が燃えているカットが映し出されるのだが、つまり、この黒い幕によって太陽の光を遮り、日食と同じ状況にしていたらしい。
うーむ、さすがに無理なのでわ?
あと、ナレーターは「煙幕」って言ってるんだけどね。
ハヤテは嵐に変身してなおも戦うが、最強といわれるだけあって死人ふくろうはかなりの難敵で、今度は「呪い笛」と言う超音波系の技を繰り出して嵐を苦しめる。
さしもの嵐も、「羽根隠れ」によってその場から逃げ出すのが精一杯であった。
CM後、村のお寺の一室で寝ていたツムジがいきなり布団の上に体を起こし、
ツムジ「ハヤテさん、音は音を跳ね返せるんだよ、死人ふくろうの呪い笛だって」
と、寝言を言って、また寝てしまうという、物凄く説明的なシーンとなる。
タツマキ「はははは、夢を見とるわい」
ハヤテ「夢でしょうかね?」
夢と言うより、
「脚本家の手抜き」だよね、これって……
ツムジの何気ない一言で、ハヤテが「呪い笛」を破る手立てを思いつく……と言うシーンが書きたかったが、あいにく思いつかなかったので、ツムジに寝言でそのまんまの台詞を言わせるという、ある意味、斬新な手法で誤魔化しているのだから。
同じ頃、こっそりどこかへ向かっている小次郎を、心配したこずえがつけていくと言うシーンを挟んで、

珍念「ほんとうに助かったぜ、和尚さんもやられちゃうし、俺一人じゃどうにもならないとこだったよ」
翌朝、寺に収容された村人たちの看病をしている珍念やツムジたち。
ツムジ「でも、変だなぁ、どうして珍念さんだけこの恐ろしい病気に罹んなかったんだろう?」
珍念「そりゃ普段の心がけが良いからさ」
カスミ「それはそうかもしれないけど、何か特別なものを食べているせいじゃないかしら」
ぬけぬけと言ってのける珍念だったが、毒に詳しいカスミがより現実的な理由を指摘する。
珍念「特別に? 変わってるというと、裏山に生えてる『蘇り草』を擂り潰してさ……」
カスミ「『蘇り草』?」
言いながら、心の中で
「わかりやすっ!」とツッコミを入れるカスミであった。
さっきのツムジの寝言もそうだけど、珍念だけが元気な理由についても、あまりといえばあまりにストレートな答えが用意されていて、見ていてガクッと来てしまう。
だいたい、病気でもないのに、なんで毎日そんなもん擂り潰して食べてるんだ、この10円ハゲは?
一方、ハヤテとタツマキは、村人が飲料水にしている川の水を調べ、それに病気を引き起こす毒が混入されていることを突き止める。
でも、前半のシーンでは、死人ふくろうが、ひとりひとり村人の体に自分の血液を注入していたのだから、なんとなく辻褄が合わない。
そうやって実験した後、毒を川に流したのだろうか?
ついでに言うと、そもそも血車党は毒をばらまいて、それで一体何をしようとしていたのだろうか?
それはともかく、タツマキが警護のために寺に戻って見張りをしていると、

迷彩服のような柄の忍び装束を着た、イカ忍者が襲ってくる。
イカの分際でその忍者はなかなか強く、百戦錬磨のタツマキを手玉に取る。
そこへハヤテが応援に駆けつけるが、
小次郎「ハヤテか?」
ハヤテ「その声は?」
イカの頭巾の下からあらわれたのは、あの小次郎と言う忍者だった。
小次郎「久しぶりだな」
ハヤテ「山彦小次郎! お前まで俺を狙って……」

小次郎「勘違いするな、ハヤテ、俺は血車党を抜け、お前と共に戦うつもりできたのだ」
ハヤテ「小次郎!」

タツマキ「知り合いでござるか?」
ハヤテ「いや、全然」 小次郎「オイッッッ!!」 じゃなくて、
小次郎「知り合いどころか、オギャーと生まれたときからの友達だ」
ハヤテ「小次郎!」
詳しいことは不明だが、どうやら二人は幼馴染らしい。
あるいは乳兄弟なのかもしれない。
一方、夜通し兄を尾行していたこずえは、村の近くで兄を見失い、途方に暮れていた。

こずえ「兄さんをここまで追って来て見失ってしまうなんて……」
骸骨丸「こずえ、この先に行くことはならん」
と、その前に、骸骨丸があらわれる。
こずえ「何故でございます? 私は兄さんを……」
骸骨丸「大人しく血車の郷へ帰れ」
こずえも血車党の一員なので、お互い顔見知りの間柄なのである。

こずえ「いやです、兄さんに会うまでは!」
気の強いこずえ、骸骨丸の指図にも従おうとしない。
ちなみに、こずえを演じているのは、島田淳子さん。そう、後の「ウルトラマン80」の京子先生こと、浅野真弓さんなのである!
当時はまだ15才で、丸々と健康的に太って、いかにも育ち盛りと言う感じである。
このオボコ娘が、ほんの数年後には、

こうなってしまうのだから、げに造化の力は偉大である。
「気まぐれ天使」第26話より。 こずえも忍者の端くれ、その場でジャンプして逃げようとするが、骸骨丸に斬られて斜面を転がり落ちていく。
だが、こずえが落ちた場所は、ちょうど例の「蘇り草」の生えているすぐそばで、ツムジを案内してそこに来ていた珍念によって速やかに発見される。

珍念「ツムジさん、死人だよ、早く! ナミアムダブツ、ナムアビダブツ……」
ツムジ「そそっかしいぜ、まだ生きてるよ」
早とちりして念仏を唱えだす珍念に、ツムジが冷静にツッコミを入れる。
それにしてもこの珍念と言う小坊主、なかなか人を食った愉快なキャラで、将来いかにも大物になりそうな雰囲気を漂わせている。
二人はこずえを寺に連れて行くが、既にハヤテと小次郎は、血車党が潜んでいると言うふくろうの森へ向かった後だった。
そのハヤテと小次郎、木製の吊橋に差し掛かったところで、前後から下忍たちに挟まれる。

骸骨丸「ふふふ、裏切り者二人、良くぞ来た」
ハヤテ「骸骨丸!」
小次郎「待ち伏せられたか」

その上で下忍たちと斬り結ぶのだが、そのたびに橋が思いっきり揺れて、かなりの怖さである。
キャプでは伝わらないけどね。
同じ頃、寺は血車党の襲撃を受け、カスミがいつものように涼風でハヤテに危機を知らせる。
ハヤテはその場を小次郎に任せて、橋から飛び降りると、ハヤブサオーで寺へ急行する。
だが、寺の前で馬から下りたハヤテの前に、残った筈の小次郎が悠然とあらわれる。

ハヤテ「小次郎?」
小次郎「もう済んだぞ、ハヤテ、
握手会は」
ハヤテ「済んだ?」
と、小次郎の横にこずえが出て来て、

こずえ「ハヤテさん、いけない、罠です」
ハヤテ「こずえさん」
こずえ「兄を追った私を骸骨丸は殺しかけた、兄は……」
いやぁ、良いよねえ、このふっくらした顔。
元来、女子中学生や女子高校生なんてのは、こういう健康的な顔をしているべきなのである。
途中でこずえは下忍に口をふさがれ、後方に引っ込められる。
こずえを助けようとしたハヤテを、小次郎が刀を抜いて妨害する。

ハヤテ「小次郎、まさか?」
小次郎「そうだ、山彦小次郎、化身忍者となった。今の名を死人ふくろう!」
ハヤテ「お前が?」
小次郎、刀を鞘におさめると、ハヤテと同じように変身ポーズをとって、死人ふくろうに変身する。

怪人「くぅえーろーっ!」
ハヤテ「何故だ、何故お前まで、化身忍者になった?」
怪人「俺は貴様を憎んでいた。腕は互角でも、身分が違っていた」
ハヤテ「小次郎!」
怪人「くたばれ、ハヤテ!」
その動機は、本人の口から簡単に説明されるのだが、それくらいのことでなにも怪人にならなくても……
なお、変身後は峰恵研さんの声に変わるので、この台詞は変身する前に俳優の口から言わせたほうが、より実感が篭っていただろう。
つまり、最初に包帯でぐるぐる巻きにされていた忍者こそ、小次郎だったのである。
ちなみに今回のストーリー、「仮面ライダー」の初期から繰り返し使われている「怪人の正体が、主人公の親友だった」と言う定番のプロットなのだが、親友の妹がそれに気付いて後を追うくだりなどから、むしろ「V3」23話の原型と見るべきなのかもしれない。
ここから長くて長くて死にそうになるラス殺陣となり、さっきの橋の真ん中で、再び「呪い笛」に苦しめられている嵐が、あのツムジの説明的な台詞を思い出し、
嵐(この刀で、あの音が跳ね返せるかもしれない)

嵐「秘剣・影うつし!」
いつもの必殺技を出すが、
ナレ「死人ふくろうの殺人音波は、ちょうどレーダーが金属に妨害されるように、嵐の刀に跳ね返されたのだ。特に谷間の狭い場所では山彦となってその力が倍化されたのである!」 と言う、何度聞いても良く分からない説明によって、「呪い笛」を跳ね返し、怯んだところを真っ向から斬り下げて、勝負あり。
死人ふくろうは人間に戻ることなく谷に落ち、爆発を起こして死亡するのだった。
なにはともあれ事件は落着し、ラスト、みんなで小次郎の墓に手を合わせている。

タツマキ「いやぁ、村の人たちは珍念殿の蘇り草で元気を取り戻したし」
カスミ「それにこずえさんはお寺の和尚さんが引き取ってくれるって」
彼らの台詞で、めでたく八方丸く収まったことが明らかになるのだが、毒は既に川に混入されているので、この問題はなおも続きそうだし、こずえだって、そう簡単に血車党と訣別できるとは思えず、若干気に掛かる。

骸骨丸「死人ふくろうよ、仇は必ず取ってやるぞ!」
それを墓石の陰から見ながら、悪の幹部にしては珍しく温情溢れる誓いを亡き部下に捧げる骸骨丸であった。
以上、ストーリーは凡庸だが、こずえと珍念と言う、二人のゲストキャラクターの魅力が捨てがたい一本であった。
- 関連記事
-
スポンサーサイト