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「仮面ライダーX」 第2話「走れクルーザー!Ⅹライダー!!」



 第2話「走れクルーザー!Ⅹライダー!!」(1974年2月23日)

 婚約者に裏切られ、父親を惨殺され、自分も瀕死の重傷を負って改造人間になってしまった神敬介。

 「いつみても波瀾万丈」のクライマックスに使われそうなヘビーなネタを三つ同時に食らった敬介の頭が、惑乱・煩悶・悲嘆の三つ巴状態になったのは無理からぬことで、今の敬介には何を考える余裕もなく、ひたすらバイクを走らせることしか出来なかった。

 
 そんな敬介が通り掛かった住宅地で、和服姿のお父さんや主婦、女子高生など、ごく普通の住民たちが、ナタ、包丁、カマ、トンカチ、さらにはツルハシなど、思い思いの物騒な得物を持って、レザー調のミニスカワンピを着た若い女性を狂ったように追い掛け回していた。

 まさに(註1)、「ドキッ! まるごと多治見要蔵だらけの八つ墓村~たたりもあるよ!」状態であった。

 註1……何が「まさに」だ。

 敬介「涼子さん!」

 そして、その女性こそ、敬介を裏切った婚約者の水城涼子であった。

 敬介の言葉に一瞬振り返った涼子だが、すぐにまた石段を上がって行く。

 
 敬介、矢も盾もたまらなくなって、バイクのまま石段をガガガッと駆け上がり、殺人鬼と化した住民たちの間を一気に走り抜ける。

 
 男「ひええっ」

 殺人鬼たちが一斉にビビってのけぞると言う、割と珍しいシーン。

 敬介「涼子さん、何故逃げるんだ、君にはどうしても聞きたいことがある!」

 石段の上の裏山で、前回の戦いで傷付いた左足を引き摺りながら、必死に涼子を追いかけ、呼びかける敬介だったが、

 
 涼子「うははははっ、あはははっ、ひーっ」

 涼子、急に立ち止まると、敬介の方を見て、若干引き笑い気味に笑い出す。

 敬介「涼子さん……」

 敬介の目には、それこそ涼子が狂ってしまったとしか思えなかった。

 再び歩き出した涼子をなおも追いかけようとすると、涼子はピストルを構えて敬介に向け、実際に発砲してくる。

 
 敬介「何故だ、どうして涼子さんが……」

 地面に這いつくばって敬介が悔しそうに呻いていると、その横に、黒いロングブーツとミニのプリーツスカートと言う、最強の組み合わせの女性の下半身があらわれる。

 
 敬介「君は……」
 霧子「霧子です」

 これで、もっと美人だったらなぁ……

 いや、美山さんは美山さんで十分可愛いし、速水さんが結婚相手に選んだくらいだから魅力的な女性だったのだろうが、特撮ドラマのヒロインとしては、完全なミスキャストと言わざるを得ない。

 演技も、お世辞にも上手いとは言えないしね。

 敬介、不快そうな顔で立ち上がると、

 
 敬介「どうして俺の後ばかり尾けてくる?」
 霧子「敬介さん」
 敬介「名前まで知ってるのか」
 霧子「あなたはもう普通の人間ではないのです、お父さんの死んだことを悲しんだり、恋人を追いかけている余裕はない筈です」
 敬介「俺が何をしようと俺の勝手だ」
 霧子「いいえ、あなたはみんなのXライダーなのです。今もあなたは刃物を手にした大勢の人たちを見た筈です。でもあなたは、あの涼子と言う女に気を取られてあの人たちのことを忘れてしまっています」
 敬介「……」

 謎の女性・霧子に諭されて、やっと己の使命を思い出した敬介であった。

 一方、下の住宅地では、標的を見失った住人たちが、見境のないゾンビのように互いに殺し合いを始めていた。

 ……それにしても、なんで住民たちは涼子を目のカタキにして追い掛け回していたのだろう?

 それはともかく、ここは、

 
 エプロン姿の若い女性が狂ったようにトンカチを振り回して襲ってきたり、

 

 
 金田一みたいな男がツルハシを思いっきり振り下ろす様子がカメラ目線で描かれ、「仮面ライダー」シリーズと言うより、「イナズマンF」のような終末的映像となっている。

 敬介「やめろーっ!」

 後方からバイクを飛ばして来た敬介は、

 
 叫びながら彼らの真ん中に突っ込み、

 
 敬介「……って言ったら、やめてね!」
 住民「ズドドドドドド!」

 場を和ませようとした敬介の一発ギャグに、吉本新喜劇のリアクションのように一斉にコケる住民たちであったが、嘘である。

 荒療治が奏効し、住民たちは一斉にその場に倒れ、やっと正気に返る。

 
 道子「私、どうしてこんなところにいるの?」

 その中の奥様風の女性を演じているのは、建部道子さんであった。「仮面ライダー」のギリーラこと、九条みわさんね。

 男「ツルハシ? なんだいこりゃ」
 敬介「みなさんはたぶん、催眠術に掛けられたんでしょう」

 茫然としていた人々は、敬介の周りに集まってくる。

 
 八百吉「催眠術?」
 敬介「ええ、思い出してください、意識を失う前、何か変わったことはなかったですか」
 悦子「私たち、隣の団地のね、交流会が終わった後、表へ出て」
 道子「そこまで私もおぼえてるよわ」
 男「そうだ、笛だ」
 敬介「笛?」
 道子「そうよ、確かに笛の音が聞こえたわ」

 しかし、「交流会」って、昔は団地同士でそんなことしてたのだろうか?

 
 男「そうだ、私も聞いた、フルートだったよ」

 などと話しているそばから、近くの公園の滑り台の上に小学三年くらいの男の子が腰掛け、フルートを吹いているのが聞こえてくる。

 で、この若いエプロン姿の女性を演じているのが、これまた「仮面ライダー」にしょっちゅう出ていた松尾悦子さんなのだった。

 
 男「そうだ、あの男だ」
 男「くそう、ガキの癖に大人に催眠術掛けるなんて」

 住民たちは殺気立ち、すぐにでも子供のところに押し掛けようとするが、それを体で押し止めたのが

 
 八百吉「おっと待てよ、ススム君はただフルートを吹いてるだけじゃないか。あの子は父親を交通事故で亡くしたばっかりのかわいそうな子なんだ。それを催眠術だなんだ言って……」

 いかにも朴訥そうな顔をした、八百屋の八百吉のオヤジだった。

 演じるのは、これまたシリーズ常連の佐藤京一さんである。

 八百吉の言葉に住民たちも落ち着きを取り戻し、

 敬介(隣の団地の集会所までは距離がある。ススム君の笛が聞こえるだろうか?)

 敬介もそんな疑問を抱いて、この団地一帯の調査に乗り出す。

 まあ、そもそも、ただフルートを演奏するだけで、どうやって催眠術を掛けるんだって話なんだけどね。

 とある建物の屋上に怪人らしい人影を見た敬介は、すぐに屋上に上がるが、出て来たのは怪人ではなく戦闘員たちであった。

 
 だが、太股の傷が癒えない敬介は実力を出せず、

 戦闘員「今までの恨みを思い知れ! まだ2話だけど!」

 とばかりに、逆にボコボコにされる。

 生身とはいえ、仮面ライダーが、前週で受けた傷を未だに引き摺っていると言うのは珍しく、これは長坂さんが作品にリアリティーを追求した結果であろうか。

 ただ、後半、敬介は自分が人間でなくなったことに深く苦悩するのだが、この、傷がなかなか治らないと言う描写は、それと相反している演出のようにも見えるのだが……

 
 苦戦する敬介だったが、一体いつ用意したのか、金属製のパイプを二本くっつけたような武器を取り出し、目潰しの粉や吹き矢を飛ばして、なんとか敵を撃退する。

 生身の状態のヒーローがこんな小道具を使うのも過去のシリーズにはなかった趣向だが、これも不評だったのか、使うのは序盤だけだったと思う。

 その後、たぶん、「魔女先生」にも出てきた場所じゃないかと思うが、街を見下ろす高台で、ススム少年がフルートで「赤とんぼ」を吹いているのが聞こえてくる。

 
 敬介「お父さんを亡くしたんだってね」
 ススム「……」
 敬介「良い曲だ、俺もね、おやじに死なれたばかりなんだよ」
 ススム「……」

 敬介の告白に、思わず振り返るススム。

 ススム「これ、父さんのフルートなんだ」
 敬介「好きだったんだなぁ、お父さんのことを」
 ススム「喧嘩ばかりしてたんだ、ほんとは大好きなくせに……僕、父さんに逆らってばかりいたんだ」

 父親のことを思い出したのか、傍らの木の幹に縋りついて、激しく泣きじゃくるススム。

 それを見た敬介が、亡き父・啓太郎の在りし日の姿を思い浮かべたのは言うまでもない。

 
 敬介「ススム君」
 ススム「みっともなくたっていいんだ、僕は泣きたいから泣くんだ」
 敬介「みっともなくなんかないさ、俺だって同じ気持ちだよ。ただ、俺にはやらなきゃならないことがある。だから負けやしないさ」
 ススム「……」
 敬介「お互い元気を出そうぜ」

 その小さな肩を叩いて、明るくススムを励ます敬介であった。

 こんな場合、藤岡さんや宮内さんだと、どうしても上から目線と言うか、武道の師匠みたいな説教口調になってしまうものだが、速水さんが演じると、もっとまろやかな、友達同士のような気さくな感じになるんだよね。

 良くも悪くも、このライトな感じが、過去シリーズにはない、「X」の魅力ではないかと思う。

 もっとも、ストーリー自体は、当時の終末・オカルトブームに影響されてか、怪奇ムードの強い話が多いんだけどね。

 一方、ニワトリ型の通信機(?)経由で、総司令からXライダーの抹殺と「1億総殺人鬼計画」を推し進めろとの命令を受けた今回の怪人パニックは、長さの異なる数本の管を束ねたようなバンパイプと言う笛を吹いて、再び住民たちを狂気に駆り立てる。

 ちなみに、このバンパイプは、パニックの原型と言うべきギリシア神話の牧羊神パーンが吹いていたものとされているので、考証学的にも正しいチョイスなのである。

 住人たちはまたしても路上で互いに殺し合いを始めるが、屋上にパニックがいて笛を吹いているのを見た敬介がXライダーに変身して撃退したので、被害者が出る前に鎮静化する。

 
 道子「笛のせいよ、あのススムのせいよ」

 と、下の公園から、ぼんやりした顔をした八百吉が頭を掻きながら石段を上がってくる。

 
 悦子「八百吉さん、まだあの子を庇うつもり?」
 八百吉「いやぁ、わしにも分からなくなってきた、危なくお客さんを殺すところだったもんなぁ」

 などと言ってると、八百吉の背後を、そのススムが横切ろうとしているのが見えた。

 道子「あの子を捕まえるのよ!」
 悦子「あの子を何とかしなければ、私たちが人殺しをさせられてしまう」

 すっかりヒステリー状態になった人々は、本当に気が狂ってしまったかのように、武器を持ったままススムに殺到する。

 そんな人々の様子を嘲り笑って眺めていたのが、最初は人々を宥める役に回っていた八百吉であった。

 最初に彼が心にもないことを言ってススム無罪説を唱えたのは、住人たちの憎悪や敵意をわざと押さえ込むことで、その内圧が高まって一気に爆発するのを狙ってのことだったのだろう。

 彼が店に戻ってくると、店先にあのニワトリが待っていた。

 
 総司令「パニック」
 八百吉「GOD総司令、私の計画は上々の出来栄え……もう笛を使わずともあのものたちは殺人を犯してくれるでしょう」
 総司令「いそげ、バカな人間どもを使って、Xライダーを倒すのだ」

 八百吉が、ニワトリを放すと、ニワトリは煙となって消え、指令テープだけが残される。

 いや、だから、テープが残ったらダメだと思うんですが……

 ところが、八百吉が例の笛を持っているところを、たまたま通り掛かった三人の主婦に見られてしまう。

 主婦「あの笛は?」
 主婦「まさか、八百吉さんが?」
 八百吉「見たなぁ~」

 しかし、それだけで八百吉が真犯人だと気付くと言うのも、あまりに察しが良過ぎると思うんだけどね。

 そもそも、パッと見ただけでは、それが笛であることさえ分からないと思うのだが……

 
 それはともかく、八百吉は直ちにパニックの姿に変わると、街でばったり知り合いに会った時のような気さくな感じで右手を上げ、三人を追いかけて殺してしまう。

 CM後、段々になった広大な墓地の中、狂気にとりつかれた人々がススムを追いかけまわしている。

 そこへ飛び込んだのが敬介であった。

 敬介「待てい! 逃げろ、後は何とかする」
 道子「またあんたね」
 悦子「何するのよ、あんたもグルなのね」
 敬介「落ち着いてください、ススム君は無実です、笛を吹いた奴は他にいるんです」
 男「うるさい、お前も一緒にぃ!」

 先頭にいたコック風の男が包丁を敬介に向かって突き出すが、敬介は咄嗟に手の平で受け止め、

 
 男「ああっ」

 包丁をぐにゃりと曲げてしまう。

 敬介「やめろ、あんたたちと戦う気はない」

 
 道子「包丁をあんなに……」
 悦子「人間じゃないっ」

 意外と気の弱い殺人鬼のみなさん、敬介を化け物でも見るような目で見ると、後ろを向いてとっとと逃げ出してしまう。

 しかし、包丁を曲げたくらいで、どっからどう見ても人間にしか見えない敬介を化け物扱いすると言うのも極端な話なんだけどね。

 単に、敬介の右手が義手なのかもしれないではないか。

 だが、改造人間になったばかりの敬介は彼らの反応に激しいショックを受けていた。

 曲がった包丁を素手で真っ直ぐにすると、

 
 敬介「俺は、もほ人間じゃないのか?」

 力のない足取りで歩き出すと、逃げたとばかり思っていたススムが目の前にあらわれる。

 
 敬介「ススム君……」
 ススム「嘘つき! お前は人間じゃない、そんなこと出来るのはロボットしかいない!」
 敬介「……」
 ススム「ロボットのお前にお父さんなんかいるが筈ないじゃないか、お前のさっきの話は嘘だ」
 敬介「ススム君!」
 ススム「よくも僕を騙したな、お父さんを亡くしたばかりなんて」
 敬介「聞いてくれ、ススム君!」
 ススム「うるさい、ロボットの癖に人間のふりなんてするなっ」
 敬介(殺したろか、このガキ……)

 何もそこまで言わんでもええんちゃう? 的な罵声を浴びせ倒すと、ススムは敬介の言葉にも耳を貸さず、さっさと走り去ってしまう。

 あ、言い忘れていたが、ススムを演じるのは70年代の名物子役のひとり、小松陽太郎さん。

 なんとなく、この人、劇中で、大人を糾弾する役を演じることが多い気がする。

 敬介「違う、俺はロボットじゃない! でぇいっ!」

 泣きそうな顔で叫び、包丁を足元に叩きつける敬介。

 ま、この辺はいかにも「キカイダー」で特撮ドラマに新境地を開いた長坂さんらしい展開だが、ヒーローが子供にボロクソになじられるシーンを見て、当時のちびっ子たちがあまり心楽しくならなかったことは容易に想像できる。

 こういうヒーローの葛藤や苦悩は過去の作品でもまま見られたことだが、主人公がこれだけ生々しい悪意に晒され、自分が人間でないと言う事実を突きつけられるウツなシーンが展開するのは、かつてなかったことである。

 敬介はXライダーに変身してクルーザーで海へ突っ込み、父親の全人格が保存されている海底の神ステーションを訪れる。

 
 敬介「俺は今、子供に嫌われたよ……ロボットだって言われたよ。この調子じゃ、子供たちの味方になるなんて出来そうもないよ。子供の方で逃げちまうんだから……だけどオヤジ、俺はまだ人間だろ? 神敬介でいるときは人間なんだろう?」

 敬介、子供が親に甘えるように、拗ねたような口調で問い掛けるが、

 啓太郎「敬介、お前は人間ではない、パニックの笛に感じなかったのも、お前が改造人間である証拠だ」

 父親は、生前と変わらぬぶっきらぼうな言い方で、厳然と事実を告げる。

 啓太郎「お前以外にGODと戦えるものが何処にいる? お前しかないんだぞ、Xライダー、人間でない苦しさに耐え抜いて、それを誇れる男になれ!」

 そして叱り付けるように息子を励ますと、

 啓太郎「敬介、俺はどうやら計算違いをしたようだ。巨大なGOD機関と戦うのに力になってやりたいと思った。だがそれは間違いだった。この神ステーションの存在はお前を弱い男にしてしまう危険がある。なにかあるたびに神ステーションに泣きに来るような男になってもらいたくないのだ、敬介」
 敬介「オ、オヤジ、俺は……」

 前回は、「何かあったらいつでも相談に来いよ!」と言っていた啓太郎パパの突然の心変わりに戸惑う敬介。

 啓太郎「敬介、やはりお前はひとりで戦わなければならん、誰も頼らず、自分だけの力で! 敬介、この神ステーションはお前にはあってはいけないものだったのだ」
 敬介「オヤジ……」
 啓太郎「さようなら敬介」

 こうして、神ステーションは自らの存在を否定し、敬介が何も言わずに神ステーションを離れた直後、自爆して消滅してしまうのだった。

 第1話の設定を第2話で全部ご破算にしてしまうと言う、はっきり言ってめちゃくちゃな展開であった。

 声だけの出演でも田崎さんのギャラが予想以上に高かったせいか、あるいは田崎さんのスケジュールが合わなくなったせいか。

 でも、声だけなら、声優を代役を立てて続行することも可能だったと思うので、この設定自体にNGが出されたと言うことなのだろう。

 まあ、確かに、いちいち何かあるたびに実家に帰ってオヤジに泣きつくと言うのでは、ヒーローとして子供たちに示しがつかんわな。

 ライダー「ありがとうオヤジ、きっと言われたとおりのXライダーになって見せるぜ、見ていてくれ」

 敬介もオヤジの意を汲んで、生まれ変わったような気持ちでGODと戦い続けることを誓うのだった。

 一方、依然として狂乱状態にある住人は、鳥を捕まえるように網でススムをつかまえ、工事中の線路の中へ引っ立てる。

 しかし、これだけ何度も騒ぎが起きているのに、警察が全く出動しないのは不自然だよね。

 八百吉、みんなの前でススムのフルートを調べて見せ、特に変った点はないと強調するが、

 
 道子「この子自身に変な力があるのよ」
 悦子「そうよ、魔物が憑いてるんだわ」
 男「団地の奥さんが三人も行方不明になってるんだ、きっとこいつのせいなんだいっ」
 八百吉「おいみんな、この子どうする?」
 男「リンチだよ!」

 パニックの催眠音波を聞かずとも、自然と錯乱状態になった彼らはススムを赦そうとせず、遂に、最悪の事態に発展してしまう。

 この辺は「怪獣使いと少年」と同じく、デマと集団ヒステリーの恐ろしさを巧みに表現しているのだが、差別などと言う重いテーマが伏在していない分、それほど強烈な印象は残さない。

 網を被ったまま逃げるススムと、それを追いかける殺人鬼の集団。

 作戦通りの進行に、ひとりその場に残ってほくそ笑む八百吉であったが、

 
 何故かここでパンパイプを取り出し、催眠音波を吹き始めるのが、月見うどんに卵をトッピングするような、無駄な行為に思えて仕方ない。

 ま、ススムが殺された後も、互いに殺し合いをさせようという意図だったのだろうが、ここでは完全に裏目に出る。

 追い詰められたススムに包丁を刺そうとしていたエッちゃんの手に、横から敬介が吹き矢を刺し、それと同時に八百吉の笛が止まったため、

 
 青い筋の入っていた悦子の顔が、

 
 一瞬で元通りになる。

 それにしても、エッちゃんってやっぱり美人だよね。

 個人的には、美山さんよりよっぽど好みのタイプである。

 ともあれ、敬介、その場に生まれた一瞬の真空状態に飛び込んで、

 敬介「待てい、何をするつもりだ。ススム君を殺すつもりか? 誰が笛を吹いていたか良く見てみろ!」

 敬介が鋭く指差した先には、

 
 男「えっ?」
 男「あっ、八百吉!」
 八百吉「あう……」

 まさに、言い逃れの出来ない状況にいる八百吉が、なすすべもなく佇立していたのだった。

 道子「あんただったのね」
 男「子供に濡れ衣着せやがって」

 この後、八百吉がパニックになり、敬介がXライダーに変身して倒し、事件はやっと解決する。

 
 ラスト、線路の上に放り出されて住民に踏まれて折れ曲がったフルートを、ススムが何とか元通りにしようとしていると、

 
 横合いからそれを取って、敬介があっという間に真っ直ぐにしてしまう。

 敬介「人間じゃないってことも良いもんさ」

 自分が人間でないと言う事実を、男らしく乗り越えてしまった敬介であった。

 
 敬介「大事にしろよ、君がパニックの笛で狂わなかったのも、笛の波長で耳が慣れていたからなんだよ」
 ススム「ありがとう」

 新品同様になったフルートを抱くように持っていたススムは、敬介に礼を言うと、

 
 そのまま向こうへ走り去ってしまうのだった。

 
 敬介(……え、そんだけ?)

 「さっきはあんなこと言ってごめんなさい」とか、なんか一言あってしかるべきじゃないかなぁ、人間として……と思う敬介であったが、嘘である。

 以上、住民が殺人鬼と化すと言うハードなストーリーと、濃密な人間ドラマが同時進行する力作であった。
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コメント

悦子姉さん>>>>霧子(美人度)

折角のミニスカブーツなのに、霧子さん(真山さん)がどうも残念ですね😖管理人様の仰る通り悦子姉さんがXライダーのヒロインなら小生のテンションもアゲアゲなのですがね😅(なんでだよ)

実に的確です

>こんな場合、藤岡さんや宮内さんだと、どうしても上から目線と言うか、武道の師匠みたいな説教口調になってしまうものだが、速水さんが演じると、もっとまろやかな、友達同士のような気さくな感じになるんだよね。
「等身大の青年」ですよね。

>良くも悪くも、このライトな感じが、過去シリーズにはない、「X」の魅力ではないかと思う。
ホント、数え切れないくらいの創意工夫がありますね。

>もっとも、ストーリー自体は、当時の終末・オカルトブームに影響されてか、怪奇ムードの強い話が多いんだけどね。
13話のゴットラダムス!まんまじゃねえか!五島先生はあずかりしらないでしょう。
まぁ「レオ」ほど悲壮感が無いからまろやか。

ところでタイトルの「クルーザー」のシーンは無かったかもしれない。

ウーム…

>まるごと多治見要蔵だらけの八つ墓村
私は要蔵に新婚家庭をぶっ壊されたオヤジに扇動された人達が
何の罪もない辰也を殺しに来たシーンを思い出しました。

それにしてもカイゾーグの設定があっという間に無意味に…。
スカイライダーは最初の1クールぐらいは毎回、飛んでいましたが。

脚本:長坂 秀佳

 彼の作品に出てくる一般市民は、皆キツいのが多い。

神ステーション

過去の2作品のライダー隊本部等とは違い本格的な秘密基地なのにまさかの2話で自ら爆発とは……
せめてゴッドの怪人に破壊されたなら敬介が更にゴッドを許せない気持ちを増幅する展開に出来たのに。

Re: 悦子姉さん>>>>霧子(美人度)

まあ、悦子さんにしても、ヒロインと言うほど可愛くはないんですけどね。あくまで比較の問題で。

佐藤京一さん

パニック人間態は佐藤京一さんですね。
アブゴメス、火炎コンドルに続く3作連続ゲストです。

Re: 実に的確です

> 「等身大の青年」ですよね。

ま、今までの人が濃過ぎたとも言えますが。

> まぁ「レオ」ほど悲壮感が無いからまろやか。

怪奇色は強いけど、暗くはないですよね。

> ところでタイトルの「クルーザー」のシーンは無かったかもしれない。

神ステーションから出る時に乗ってたような気もしますが、良く分かりません。

Re: ウーム…

> 私は要蔵に新婚家庭をぶっ壊されたオヤジに扇動された人達が
> 何の罪もない辰也を殺しに来たシーンを思い出しました。

ああ、どちらかと言うとそっちの恐怖ですよね。

Re: 脚本:長坂 秀佳

確かに……人間の暗黒面を描かせたら天下一品ですね。

Re: 神ステーション

> せめてゴッドの怪人に破壊されたなら敬介が更にゴッドを許せない気持ちを増幅する展開に出来たのに。

確かにその方が良いですよね。

Re: 佐藤京一さん

いい顎されてますよね。

>前回は、「何かあったらいつでも相談に来いよ!」と言っていた啓太郎パパの突然の心変わり
電脳化したんで、判断力と決断力が異常にアップしたんでしょう・・・

家族で「頼りたい」のは?

>まあ、確かに、いちいち何かあるたびに実家に帰ってオヤジに泣きつくと言うのでは、ヒーローとして子供たちに示しがつかんわな。

第一生命経済研究所の「人生100年時代の「幸せ戦略」-全国2万人調査からみえる多様なライフデザイン-ライフデザイン白書2020」によると

「困ったとき、家族の中で誰に頼りたいか?」は、老若男女通じて
母親・配偶者のツートップ&父親が最下位・・・とのこと。

あ、そういえば「死んだ母親に会いたいから聖闘士になった」人がいましたね・・・
これは時代を先取りしてたんですね(-_-;)

>特撮ドラマのヒロインとしては、完全なミスキャストと言わざるを得ない。

平山Pよ!お詫びも兼ねて真樹千恵子さんをキャスティングするんだ!
3年前のルリ子さんなんてもう誰も覚えてはいないぞ!

父Ⅱ

他の方のコメで言及された事のある
「仮面ライダーSPIRITS」のX主役のストーリーでは、
「大変身!」⇒これまでの激闘でマーキュリー回路が故障!
⇒「セタップ!」という流れが描かれました。
成長した主人公が全てを出し尽くして、それでも行き詰った最後の最後に
頼れるのが父親というプロセスが欲しいですね。
(そもそも第一期ライダーは立花藤兵衛がいるため実父は基本的に不要)

呪博士と神博士もギルと光明寺の関係を推し進めたぐらいの
バックボーンが描かれれば良かったですが。
それでも最終回の決め技がライドルなのは嬉しい。
(場所が狭くて地獄車は使えないかったそうですが)

Re: 父

ある意味、啓太郎らしい行動ではありましたね。

Re: 家族で「頼りたい」のは?

まあ、家庭にもよるでしょうけどね。

Re: >特撮ドラマのヒロインとしては、完全なミスキャストと言わざるを得ない。

今更言っても仕方ないですけどね。

Re: 父Ⅱ

> 「仮面ライダーSPIRITS」のX主役のストーリーでは、
> 「大変身!」⇒これまでの激闘でマーキュリー回路が故障!
> ⇒「セタップ!」という流れが描かれました。

そうなんですか。なかなか燃える展開ですね。

> 呪博士と神博士もギルと光明寺の関係を推し進めたぐらいの
> バックボーンが描かれれば良かったですが。

めちゃくちゃ唐突ですよね。

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70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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