「変身忍者 嵐」 第10話「死をよぶ!吸血ムカデ!!」(1972年6月9日)
冒頭、いつものようにどの国とも知れぬ街道を、当てもなく旅しているハヤテたち4人。
このドラマの弱いところは、一応、ロードムービーの形式なのに、毎回、彼らが何処から来て何処へ向かっているのかも、現在どのあたりにいるのかも、さっぱり分からないことである。
ま、それでも今回は、台詞などから、東海道を東進しており、相模あたりにいることが推測できるのだが。
そんな4人をひとりの飛脚がすたすたと追い越していく。

ツムジ「へーっ、はええなぁ、まるで忍者みたいだ。おいら、一人前の忍者にならなかったら、ひとつ、飛脚でもなろうかな」
カスミ「ふふふ」
ハヤテ「こら、ツムジ、街から街に手紙を運ぶ飛脚は大事な役なんだ。そー簡単にはなれんぞ」
軽い気持ちでそんなことを言うツムジを、ハヤテが笑いながらたしなめる。
その飛脚・弥平次は、4人を追い越してすぐ、草履の鼻緒が切れて転んでしまう。
弥平次、ひとまず近くのお寺に腰を下ろすと、休息がてら新しい草履に取り替える。

弥平次「ははは、せがれのやつ、さぞ喜ぶだろうなぁ、つらい役目も、せがれの笑顔を見れば疲れも吹っ飛ぶと言うものだ」
弥平次、息子へのみやげの独楽を見ながら、しみじみつぶやいていると、その独楽が弥平次の手を勝手に離れ、宙を飛んでお堂の中に消える。
弥平次がお堂の中に入ると、何処からか奇妙な鳴き声が聞こえてくる。

怪人「あっほあっ」
弥平次「ば、ばけもの!」
ふと視線を上げれば、天井の隅に、巨大なムカデの化け物が張り付いているではないか。
怪人「血車党、化身忍者・吸血ムカデ、男よ、お前は生まれたばかりの化身忍者の実験人間になってもらう」
弥平次「お、お助けを……俺には、俺の可愛い子供が……俺の帰りを待ってる子供がいるんだ」
怪人「喚け、吠えろ、血も涙もない血車党には関係ないことだ」
吸血ムカデは、弥平次の命乞いを無視して、その首筋に鋭い牙を突き立てる。
そこから特殊な毒液を注入された弥平次は、吸血ムカデの操り人形となってしまう。
一方、付近のドクロ館では……
骸骨丸「見たか、化身忍者の力! これぞドクロ様の力よ」
下忍「骸骨丸様、吸血ムカデを使ってどのような計画で天下征服を?」
骸骨丸「ふっふふふふっ……ふっふふふふふっ……ふっははははははっ……どわーっはっはっはっ」
下忍(何も考えてねえな、コイツ……) じゃなくて、
骸骨丸「ふっふふふふっ、まずは藤沢の町を襲う、吸血ムカデが町の人間を残らず血車党の手下にする。それが成功すれば東海道の町を次々と血車党が支配するのだっ」
その後、さきほど自分たち追い越した飛脚が来た道を引き返してくるのを見たハヤテたちは、怪訝な顔をする。
タツマキ「あれは確か、さきほどわしらを追い抜いていった筈の飛脚……」
ハヤテ「うん、なんで戻ってきたんだろう?」
ほんと、なんで戻ってきたんだろう? 弥平次が息子へのみやげを持っていたことを考え合わせても、弥平次は藤沢宿に向かっていたと思われるのに……
と、擦れ違った際、弥平次がみやげの独楽を落としたのを見て、カスミが声を掛けるが、弥平次は無視して行ってしまう。

カスミが独楽を持って飛脚を追いかけ、街道から外れたところで、茂みの中から弥平次がぬっとあらわれる。
カスミ「飛脚のおじさん!」
弥平次「死にたいか、小娘?」
弥平次、カスミの、網タイツに包まれたボンレスハムのようなフトモモに目が眩んだのか、

いきなりカスミに抱きついて、とても親には見せられないようなすけべえなことをしようとする。
その気持ち、痛いほど分かる……
すぐにハヤテが駆けつけ、
ハヤテ「人の親切が分からんのか?」

弥平次「俺の邪魔をする奴は、殺す」
悪人メイクに加えて、長い牙まで生やして威嚇する弥平次を見て、

ハヤテ「違う、さっきの飛脚と同じ人間だが、
どっか違う!」
いや、ハヤテさん、「どっか」じゃなくて……
ハヤテ、ひとまず弥平次に当身を食らわせて眠らせる。
ほどなく、タツマキたちもやってきて、
タツマキ「これは一体?」
ハヤテ「この男がカスミを襲った」
タツマキ「すると何者かに操られて?」
ハヤテ「恐らく、血車党だ」
弥平次の首筋には、ヤツメウナギに噛まれたような8つほどの傷跡が円状に残っていた。
毒に詳しいカスミが傷口を調べるが、

カスミ「私にも分からない。ただ、この人の血が赤くないの」
ハヤテ「その血が何の血か分かれば、血車党の計画も分かるが……」
分かるかなぁ?
カスミ「お父さん、江戸にいる万物先生に調べてもらったら?」
ハヤテ「万物先生、とは?」
タツマキ「は、忍法のほかにもあらゆることを知っている学者でござる」
と言う訳で、タツマキが江戸まで一走りして万物先生とやらの意見を伺うことになり、ハヤテたちは弥平次を連れて藤沢宿の旅籠に部屋を取る。
記帳を求めに来た番頭は、眠っている弥平次を見るなり、

番頭「あれ、こりゃ、弥平次さん」
カスミ「番頭さんはこのおじさんを知ってるの?」
番頭「ええ、ええ、知ってるも何も、東海道を走る飛脚ン中じゃ、足が速いんで有名な人ですよ」
ハヤテ「それで、うちは何処です」
番頭「ええ、この隣村に住んどりますが」
ハヤテはカスミとツムジに後を任せて、一人で弥平次の家へ向かうが、

それを気がかりそうに見送った番頭の首筋にも、弥平次と同じ奇妙な傷跡がついていた。
そう、既に藤沢宿は、血車党の支配下に置かれていたのだ。
こういうさりげない演出は、当時の特撮番組ではあまり見られないもので、ちょっと感心した。
そして、ハヤテが向かった隣村も同様で、

弥平次の妻と息子も、不意に悪人メイクになると、鎌を持って襲い掛かってくる。
このまま、彼らに戦わせれば良いものを、何故か血車党は下忍たちも攻撃に参加させ、ばっさばっさと景気良くハヤテに斬り殺されてしまう。
CM後、カスミたちは、いつの間にか部屋の障子が開かなくなっていることに気付く。
さらに不気味な笑い声がしたかと思うと、弥平次が目から青白い光を発して起き上がる。

弥平次「お前たち二人、この藤沢から一歩も出さん」
ツムジ「なんだってぇ」
弥平次「この町全体、既に血車党が占領したのだ」
さらに吸血ムカデがあらわれたので、二人は邪魔する下忍たちを斬りながら宿の外へ逃げ出すが、

宿は既に、血車党の手下になった住人たちに包囲されており、じりじりと二人に迫ってくる。

怪人「はーわーっ、じたばたするな、いくら喚いても、タツマキもハヤテも来るものか」
ツムジ「来る、きっと来る、きっと来てくれるよ」
ツムジの願いが天に通じたのか、すぐに、ハヤブサオーと嵐に変身したハヤテがあらわれる。
宿場町でのチャンバラとなるが、ここでも吸血ムカデは、何故か洗脳された町人たちを使わず、下忍たちばっかりに攻撃させるので、ここでもばっさばっさと景気良く斬り殺されていく。
ひょっとして、バカなの?
だが、何しろ相手が多いので、嵐が敵と戦っている隙に、

怪人「邪魔だ」
吸血ムカデはなおも抵抗していたカスミに当身を食らわせ、
怪人「すぐ連れて行け」
下忍にカスミの体を抱えて運ばせるのだが、
カスミ(いや~ん) その際、カスミの大きな尻が丸出しになってしまう。
ここだけの話、今回はこのカスミのチラがなかったら、スルーしてただろうな。
だが、吸血ムカデ、気絶しているツムジは放置して、さらに、住人たちの洗脳を(一旦)解いてから立ち去ると言う、訳の分からないことをするのだった。
まだ、嵐が下忍たちと戦ってるというのに……
で、この辺で、視聴者も管理人もすっかり忘れていた万物先生のところをタツムキが訪ねるシーンになるのかと思いきや、万物先生は一切登場せず、早くも解毒剤を作ってもらったタツマキが、藤沢宿に向かって疾走しているというシーンとなる。
これだけの肩透かし感は、他ではなかなか味わえないだろう。
しかし、万物先生、じかに患者を診た訳でも、毒のサンプルを調べた訳でもないのに、タツマキの話を聞いただけで、良く解毒剤が作れたものだ。
そのタツマキを、虚無僧に扮した骸骨丸たちが急襲する。
骸骨丸からは逃れたタツマキであったが、結局、吸血ムカデの手の者に見付かって捕まる。

怪人「あわわわっ、タツマキ、血車党の張った網から逃げられんわい」
タツマキ「おのれ」
怪人「これがあったのでは、俺の仕事の邪魔になる」
タツマキ「それは!」
怪人「親子一緒に料理してやるか」
タツマキ「カスミも一緒に?」 怪人「連れて行け」
吸血ムカデ、タツマキが腰に下げていた解毒剤入りの竹筒を奪うが、その場では殺そうとせず、何処かへ連れて行く。
……
いや、だから、何回も言わせんなよ。
キャッチ&キル!(管理人推奨)
あと、タツマキ、ツムジはお前の子供ちゃうんか?
ともあれ、タツマキは縛られてとある神社に連れて行かれる。そこにはカスミと一緒に骸骨丸たちがいて、親子の対面をさせた上で、二人とも殺そうとするが、タツマキが縛られたまま鋭いキックを放って下忍たちを寄せ付けなければ、

カスミはカスミで、下忍の手を振り払って参道の脇へ逃げ込む(笑いながら)
……
はい、ここで実に伝統的な、正面仰ぎ型パンチラが発生するんですね~。
それにしても、このシーンにおける下忍たちのあたふたぶりを見ていると、血車党には、全国制覇の前に、まず下忍たちを一から鍛え直すことをオススメしたい。
論より証拠、

カスミは、松の木の後ろに隠れるのだが、追いかけてきた二人の下忍は、
下忍「ええい、いない、他を探せ!」 下忍「おうっ」
ろくにと言うか、まったくその周辺を調べようともせず、他の場所に行くというトンチキぶりを発揮する。
ええーっとぉ…………………………(どうやって突っ込もうか悩んでいる)
ちゃんと仕事しろぉおおおっ!(管理人の魂の叫び)
ショッカーの戦闘員でも、もう少しちゃんとした仕事してたぞ。
もっとも、カスミの吹く涼風を聞いたハヤテが、ツムジと共にハヤブサオーでこちらに向かって走るシーンを挟んだ後では、

結局、タツマキもカスミも再び捕まって、海辺に聳える太い松の幹に、縄で縛られているのだった。
カスミは、是非、正面を向く形で縛って欲しかったと言うのが管理人の願いなのです。
怪人「いいか、血車党に逆らう奴の最期だ」
今度こそ、迅速なキャッチ&キルを期待した管理人だったが……

怪人「待て、二人を殺す前に、これを海の底に沈めてやるんだ」
吸血ムカデ、槍を突き刺そうとした下忍を制すると、例の竹筒を掲げる。
タツマキ「せっかくの万物先生の薬を……」
カスミ「お父さん、もうダメなのね」
怪人「そのとおりだ。良く見ろ!」
いや、だから、キャッチ&キル……
で、わざとやってるとしか思えないのだが、そうやってグズグズしているうちに嵐が到着してしまい、吸血ムカデの投げた竹筒を空中で掴む。

嵐「とおりゃーっ、タツマキ、この竹筒の薬、無駄にはさせん」
さらに、嵐の姿を見た途端、
怪人「かかれーっ!」
確実に殺せる二人を完全に放置して、吸血ムカデも下忍も、一斉に嵐に向かって走り出すのだった。
……
もう、どこから突っ込んで良いのやら……
せめて、二人を人質にして嵐を脅すとかさぁ、仮にも「悪の組織」なんだから、最低限のマニュアルってもんがあるでしょー?
さて、こうなればもう書くこともないのだが、

今回は海辺の撮影、それも、だいぶ傾いてきた日に照らされた中での撮影と言うことで、怪人や嵐のシルエットが妙に絵になって、

ラスト、水平線の向こうに沈む太陽をバックに、斬られた吸血ムカデが爆死するシーンは、芸術的なまでに美しいのだった。
こうして、終わってみれば、血車党、何がしたかったんだ? と言う、70年代特撮ドラマを見た時にしばしば感じる一抹の虚しさが胸の中を吹き抜けていくのであった。

子供「ハヤテさん、カスミさん、ツムジさん、さよーならー」
無論、例の毒も、万物先生の解毒剤であっさり治り、弥平次の息子が、劇中一度も絡まなかったカスミやツムジに向かって手を振って別れを告げると言う結末となる。
この子役、色んな作品に出ている美少年・高橋仁さんだが、出番がたったの2シーンでは、わざわざ彼を起用した意味がない。

カスミ「さよーならー」
ツムジ「さよーならー」
タツマキ(あれ、ワシだけ無視されてるような……) 以上、途中で書いたように、カスミのパンチラがなければスルーしていたであろう、退屈極まりないエピソードであった。
弥平次の家族に対する愛情や、小道具の独楽が、その後のストーリーに
全く生かされていないところが、いかにも昔の特撮らしい大らかさである。
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