第32話「鬼火沼の怪 ライダー隊全滅!?」(1973年9月22日)
冒頭、鬼火沼近くの山荘の主人・伊藤がデストロンに捕まり、アジトに連れて行かれる。

彼を待ち受けていたのは、タキシードを着て、馬鹿でかい動物の骨を被り、右手に短剣、左手に人間の頭蓋骨を持ったキバ男爵であった。
キバ男爵「ドーブー教の悪魔の主よ、数百年栄える偉大なる炎よ、生贄を捧げ、その生贄の姿を我らキバ一族に与えたまえー!」
キバ男爵、そう言うと、短剣で怯える伊藤の腕に傷をつけ、そこから流れる血を頭蓋骨の器で受けて、オニビセイウチと言う今回の怪人に飲ませる。
首領「キバ男爵、呪いの悪魔の儀式は済んだか?」
と、面倒臭さを隠そうともせず、首領が尋ねる。
キバ男爵「ご覧下され、首領、ソロモンの深い海の底で牙を研いだオニビセイウチの姿を」
オニビセイウチ、右手で伊藤の顔を触ると、その手で自分の顔を撫でる。
すると、その姿が伊藤と寸分変わらぬ姿になる。
要するに、怪人が人間に化けただけで、それくらいの芸当、今までの怪人ならややこしい儀式など経ずに行っていたのだから、明らかに退化している。
首領「さすがはドーブー教の魔術師の血を引くキバ男爵、見事なものだ」
それでも、外部からスカウトした大幹部に気兼ねして、心にもない賛辞を贈る苦労人の首領であった。
なにしろ、ショッカー、ゲルショッカー、そしてデストロンを率いて2年半ものあいだ仮面ライダーと戦い続け、そのすべてに完敗を喫しているのだから、これを苦労人と言わずしてなんと言う。
同じ頃、少年仮面ライダー隊の一行が、おやっさんの運転するワゴンで、その鬼火沼の山荘へ向かっていた。
鬼火沼で、トレーニングがてらキャンプをする予定なのだ。

ちなみにその山荘と言うのが、ピラミッドを逆さにして途中まで地中に埋めたような面白い外観の建物で、これの何処が山荘なんだーっ? と言う感じであった。
駐車場には一般の車がたくさん停まってるから、実際は、ホテルなのかなぁ?

立花「どうだ、いいところだろう」
純子「空気が綺麗ね」(註・建物を褒める気はないらしい)
嬉しいことに、今回もちゃんと純子さんも同行していた。
正直、純子さんがいなかったら、迷わずスルーしてるところである。
シゲル「この山荘に会長の知り合いがいるの?」
立花「ああ、昔からの友人でな」

伊藤「立花さぁん、良く来てくれましたねえ」
立花「紹介しよう、これがワシの可愛い隊員たちだ」
やがて伊藤が出てきて、立花との再会を喜んで見せるが、無論、既にニセモノと入れ替わっているのである。
しかし、これだけ大きな山荘を経営しているのに、家族や従業員がひとりもいないと言うのは、いくらなんでもリアリティーがなさ過ぎる。
また、自己紹介した後、子供たちは建物の中に入って落ち着くのだが、通された部屋と言うのが、どう見ても住宅orホテルの客間みたいで、これまた山荘と言う言葉とまるっきりそぐわない。

立花「あ、ところで
予定は二泊三日だが構わんかね」
伊藤「ああ、いいですとも、僕の方は賑やかでかえって喜んでます」
宿泊施設に到着してから日程を決める団体客の幹事って、初めて見たぞ。
それに、伊藤の口ぶりでは、ここは商売としてやってるんじゃなくて、単にここに住んでるようにも聞こえるんだよね。
伊藤「で、この子供たち集めて何をするんですか?」
立花「いやねえ、少年ライダー隊のキャンプを開くつもりなんだ。ここでみっちりトレーニングやらテストやらをね」
伊藤「……」
伊藤の素朴な問いに会心の笑みで答えるおやっさんだったが、伊藤の顔が
「ええっと、それってキャンプなの?」とでも言いたげに戸惑って見えるのは、たぶん管理人の気のせいではない。
まあ、ここを拠点にして、鬼火沼にキャンプを張って泊まると言うのなら分かるけど、

純子「会長、部屋割りはどうしますか?」
伊藤「僕に任せなさい。さ」
山荘に泊まる気マンマンやないかいっ! まあ、別に良いんだけどね、どうでも……
その後、おやっさんとシゲルが窓の外に広がる雄大な自然を見ながら世間話をしていると、別の部屋から純子さんの悲鳴が聞こえてくる。

立花「どうしたんだ?」
純子「変な人影が覗いていたんです」
にしても、純子さん、ウェスト細いっすね~。
おやっさんは隊員たちに建物の周辺を調べさせるが、食料を運んでいた伊藤のほかには、怪しい人影はおろか、人っ子一人姿は見えなかった。
一方、東京に残ったケンちゃん、無線機の前に座り込んで何やらダイヤルをいじっていると、志郎に肩を叩かれる。

志郎「よお」
ケン「よお、先輩!」
志郎「つーか、お前、誰だよ?」 ケン「……」
じゃなくて、
志郎「インターポールのパリ本部から、何か連絡は?」
ケン「残念ながらキバ男爵の正体、いまだ判明せず」
いや、インターポールがそんなこと知ってるわけないと思いますが……
そもそも、キバ男爵の正体がなんだろうと、関係ないのでは?
志郎、前に怪しい車が停まっていると言ってケンを連れ出すのだが、

あれ、おやっさんのスポーツショップ、いつの間に改築したの?
一瞬戸惑ってしまうが、そこはライダー隊本部ではなく、どうやらケンちゃんが使っているインターポールのアジトらしい。
車には戦闘員の制服を着た戦闘員が乗っていたので、デストロンであることはバレバレであった。
戦闘員、胸壁にもたれているケンちゃんに短剣を投げて殺そうとするが、そこを志郎が取り押さえる。

戦闘員も激しく抵抗して、志郎が半開きのドアから身を乗り出した状態で車を発進させる。
車は壁に激突して停まり、志郎が改めて問い質すと、彼らの狙いが少年ライダー隊だと判明する。

志郎、バイクで石段のへりの、細い部分を一気に駆け上ると言う、地味だけど、結構あぶないスタントを見せつつ鬼火沼へ急行する。
と言う訳で、ケンちゃんの出番はこれで終わり。
しかし、彼らの見張りをしていたことが、デストロンにとって何のプラスにもなっていないところが悲しい。
余計なことをしなければ、当初の計画通り、まんまとライダー隊とおやっさんを殺して、純子さんを性奴隷にすることが出来たかもしれないのにぃ、なんとかしてよ川崎ぃ~!
一方、V3の介入を予期したキバ男爵は、作戦行動を繰り上げて直ちにライダー隊員の抹殺を開始するようオニビセイウチに連絡させる。
どうやらキバ男爵、キャンプ場に隊員が勢揃いしてから一気に殺すつもりだったらしい。
管理人の率直な感想を言わせて貰うと、
どっちでもええわっ!って、感じですかね。
今回の作戦、キバ男爵のコーディネートと同様、根本から間違ってると思う。
いくら少年ライダー隊員を殺したところで、世界を征服することなど不可能なのだから。
その後、おやっさんたちは、一列に並んで元気良く鬼火沼のほとりまで行進してくる。

立花「よーし、とまれ」
……
……
……
ああ、純子さんのお尻はいいなぁ!! あ、すいません、つい心の叫びが漏れてしまいました。
立花「それでは全員、この村でキャンプを張る」

純子「……」
で、その純子さん、何故か最後尾から、殺意のこもった目をおやっさんに注いでいた。
普段、おやっさんからセクハラされまくっているので、人気のないこんな場所まで連れて来られて三日も行動を共にしたら、どれだけ酷い目に遭わされるのか想像しただけで鳥肌が立つ、いや、こうなったらこのセクハラオヤジを事故に見せかけて鬼火沼に沈めてやろう……と考えているのではなく、

シゲル「ここが鬼火沼か、姉さん、出るぞ、出るぞ~」
純子「シゲルぅ」
どうやら、鬼火沼に幽霊が出るとの噂を信じて、ビビッていただけらしい。
その純子、忘れ物をしたと言ってひとりで山荘に引き返すのだが、

階段を降りてきた純子さんの胸が、結構でかいことに気付いてちょっと幻滅する(なんで?)管理人であった。

もっとも、続く真横からのショットでは、やはりペッタンコだということが判明し、ホッと胸を撫で下ろして、ついでに純子さんの胸も撫で下ろしたい管理人であった。

と思ったけど、やっぱり結構でかいなぁ……って、さっきから何の話をしとるんじゃ!
伊藤「なに、風見志郎が動き出した? うん、うん、よし分かった。直ちに作戦を変更して、ライダー隊を襲うことにする。ところで具体的にどうするかだが……」
ニセの伊藤、壁に張り付いた純子さんに聞かれているとも知らず、連絡してきた戦闘員と長々と話をしていたが、

純子さん、ふと、室内の鏡に恐ろしい化け物が映っているのを見て、

純子「逃げてください! 伊藤さんあぶない!」
咄嗟に飛び出して伊藤を庇うようにその体に抱きつく。
しかし、伊藤が伊藤の声でライダー隊を襲う相談をしているのだから、伊藤がデストロンの一味であることは明瞭なのに、純子さんが彼のことを気遣うと言うのは、端的に言って変である。
よって、ここは、管理人室の中から怪人の声がするのに気付いた純子さんが、ドアを開けて鏡に映っている怪物を見て思わず飛び込む……と言う段取りにしなければならなかったのではないか。
ちなみに、このシーンで伊藤の身分が管理人だと分かるのだが、要するに、山の頂上とかにある、小さな丸太小屋のような施設をイメージしているのだろうか?
それはともかく、部屋の中に怪人の姿がないのでまごつく純子さん。
純子「今の怪人は?」
伊藤「……」
純子「私見たんです、あの鏡に怪人が映ってるの」

純子、伊藤の腕を持ったまま、鏡の前に移動するのだが、

自分の横に、その怪人の姿が映っているではないか。
ギョッとして、伊藤の顔を二度見する純子。
まあ、「仮面ライダー」でも人間に化けた怪人の姿が鏡に映らない、みたいな演出はあったが、別にオニビセイウチは周りの人間の視覚を誤魔化して伊藤になりすましているのではなく、物理的に伊藤に化けているのだから、鏡に映したら正体がバレると言うのは、明らかに変なんだけどね。
また、仮にそうだとすれば、ニセ伊藤自身にも自分のありのままの姿が鏡に映ることは分かっていただろうに、事前に鏡を撤去していなかったのはあまりに迂闊と言うことになる。

純子「あ、あなたは……」
伊藤「はっははははっ」
ここでやっと鈍感な純子さんも、目の前の男こそ、その怪人なのだと気付く。

伊藤、オニビセイウチの姿になると、逃げようとする純子さんを背後から抱き締める。
純子「会長ーっ! 会長ーっ!」
若干面白い口の形をしておやっさんの名を叫ぶ純子さん。

が、あえなく意識を失い、がっくりと項垂れる。
しかし、もし自分がオニビセイウチだったら、千載一遇のこのチャンスを逃さず、純子さんに対してありとあらゆるセクハラ行為を働いて、日頃の妄想を現実のものにしようとするところだが、いつもながらデストロンの怪人は腹立たしいほどにストイックなので、服を脱がすことも、おっぱいを揉みしだくこともしない。
(万感の思いを込めて)ちくしょう。

CM後、そのかわり、純子さんの体を肩に担いで、その太い指先を純子さんの神聖なお尻の割れ目に挿入しながら建物から出てくるオニビセイウチ。
セクハラをしないのなら、さっさと殺せば良いのにと思うのだが、例によってアジトにお持ち帰りして人質にしようと欲を出していたのだろう。
V3「待て!」
だが、オニビセイウチがもたもたしているうちに、はやV3の声が飛んでくる。

見上げれば、建物から伸びる渡り廊下のような構造物の上に、V3が立っていた。
V3「待て、純子さんを置いていってもらおうか」

怪人「貴様か」
V3「そう、仮面ライダーV3」
怪人「俺はキバ一族のオニビセイウチ、殺してやる仮面ライダーV3」
自己紹介しながら、純子さんの体を下ろすオニビセイウチ。
それにしても、ヌードとは言わないけど、せめて純子さんにはズボンを脱いでこのシーンに臨んで欲しかったところである。
そうであれば、可愛い女の子がシャツを着て、下はレースの白いパンティー(希望)だけと言う姿がいかにいやらしいか、後世まで語り継がれる伝説のシーンとなっていたであろうに……
この後、V3と怪人&戦闘員のバトルとなるが、どうでも良いのでカット。
ただ、オニビセイウチが戦いながら、
怪人「聞けV3、ライダー隊は今頃皆殺しになっている」
と言うので、てっきり、もうひとりの怪人か戦闘員が鬼火沼を襲撃してるのかと思いきや、オニビセイウチ自身が瞬間移動してライダー隊を殺そうとするのは、ほぼ虚言に近く、ちょっとどうかと思う。
よって、ここは、
怪人「聞けV3、これからライダー隊を皆殺しにしてやる」
の方がモアベター。
一方、おやっさんたちは、申し訳程度のテントを立てて、その横で、薪や柴木を積んで、早くもキャンプファイヤーを始めようとしていた。
立花「それではこれから第一回少年ライダー隊キャンプを開くことにする。キャンプファイヤーに点火」
しかし、真っ昼間にキャンプファイヤーやって、どうすんだ?
つーか、おやっさん……と言うか、スタッフの人たち、キャンプ=キャンプファイヤーだと勘違いしてるのではないだろうか?
そう言えば、以前合宿した時も、何故かキャンプファイヤーだけはきっちりやってたからなぁ。
と、そこへオニビセイウチと戦闘員たちが襲ってくるが、駆けつけたV3によって助けられ、山荘に逃げ戻る。
V3とオニビセイウチ、戦いながら沼の中に飛び込むと、激しい爆発が起きて大きな水柱が上がる。
だが、沼から這い出て来たのはオニビセイウチだけだった。

怪人「あうあう、俺の正体に気付いたのは、あの小娘ひとり、あの子を消せば、まだチャンスはある」
何故か、まだ伊藤に化けて隊員を殺すことに執着しているオニビセイウチ。
いや、気持ちだけでも世界征服を目指しているデストロンの怪人なんだから、そんな搦め手に頼らずともライダー隊員ぐらい実力で全滅させろよ。
それくらい、ただの殺人鬼かヤクザでも出来ることだぞ。
それはともかく、おやっさんたちは山荘の一室に篭城し、デストロンの襲来に備えていた。
だが、ニセ伊藤が外から声をかけると、あっさりドアを開けて、

立花「いやあ、消えたと思って心配してたぞ」
伊藤「消えた? なんで? 僕は食料の買入れに街へ行ってたんだが……みんな、どうした、何かあったのか?」
立花「実はな……」

一方、純子さんは、おやっさんたちの手でベッドに寝かされ、依然として眠り続けていた。
うう、実に美しい横顔である。
そこへ凶悪な顔つきをしたニセ伊藤が入ってきて、枕元に座る。

純子さん、やっと目を覚まし、しばらくぶにっとした口をしてまどろんでいたが、

純子「はっ、あなたはっ!」
目の前に、伊藤が座っているのに気付いて思わず起き上がる。
伊藤「気が付いたね、お嬢さん」
純子「デストロン!」
伊藤、純子の息の根を止めようとするが、案の定、志郎の笑い声が聞こえてきたかと思うと、天井から志郎が飛び降りてきて純子を助ける。

純子「志郎さん」
志郎「あいにくだったな、もう一人正体を知ってるのがここにもいるぜ」
今更だが、この二人のツーショットは絵になるなぁ。
この後、再び鬼火沼のほとりでラス殺陣となるが、これまたどうでもいいのでカット。
ただ、戦いの最中、
V3「あ~ん、遅刻しちゃう~、キャッ! ちょっとヤダ、ドコ見て歩いてんのよ~?」 怪人「ご、ごめん」
などと言う、ラブコメの王道的出逢いのシーンを連想させる、女の子っぽい内股になるV3であったが、

V3「とおっ!」
無論、そんなほのぼのした展開になるはずもなく、豪快にオニビセイウチの背中を蹴り上げるのでした。
最後は「V3フル回転キック」で仕留めたかに見えたが、オニビセイウチは即死せず、その場から姿を消す。V3、大量の血痕を頼りにその行方を追うと、地下のアジトに続くハッチに辿り着く。
アジトの奥には、

キバ男爵が、瀕死のオニビセイウチをいたわるように支えていると言う、ちょっと他では見たことのない光景が広がっていた。
それだけキバ一族は結束が強く、家族のように濃密な人間関係を持つグループなのだろう。
キバ男爵「待っていた、仮面ライダーV3」
V3「キバ男爵……」

キバ男爵「そうだ、キバ一族を支配するキバ男爵。ドクロイノシシ、そしてたった今オニビセイウチは息を引き取った」
V3「そうか、オニビセイウチは死んだか」
キバ男爵「しかし奴はお前をここまでおびき寄せた。仮面ライダーV3、生贄の伊藤と一緒に死ねい!」
キバ男爵、そう言って巨大な骨の槍を投げつけると、パッと姿を消す。
どうでもいいけど、タキシードはどうしたんだ?
で、ここで、伊藤を分かりにくい場所に閉じ込めておけば、それを見付け出すのに手間取ったV3をアジトごと葬り去ることが出来たのかもしれないのに、何故か、目の前に本物の伊藤がふらふらと出て来てしまうのであった。
……
やっぱり、バカなのかな、キバ男爵。
まあ、この格好で、だいたい想像はついていたが……
V3、伊藤の体を抱いて天井にジャンプし、崩れ落ちるアジトからあっさり脱出する。
ちなみに二人がジャンプする時、伊藤さんのほうが先に飛び上がってました。
こうして、デストロンのライダー隊員抹殺作戦は水泡に帰し、おやっさんとライダー隊員たちは無事に山荘を後にするのだった。
彼らが、騒動の後、ちゃんとキャンプのやり直してをして、トレーニングやテストを行ったのかどうかは不明である。
デストロンのダメなところは、粘り強さとしつこさが足りないところで、たとえばこのラストシーンでも、ワゴンの下に時限爆弾でも仕掛けておけば、油断している彼らをあっさり皆殺しに出来ていたであろうに……
以上、はっきり言って面白くもなんともなく、純子さんの出番が多いこと以外は何のとりえもない駄作であった。
ツッコミどころもやけに多く、実際のボリューム以上に時間が掛かってしまった。ああ、しんど。
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