第15話「哀しき母の子守唄」(1977年5月11日)
……と言う訳で、何年ぶりになるのか、超久しぶりの「快傑ズバット」のお時間がやって参りました。
別に理由はありません。
書きたいから書きました。
冒頭から、とある街の商店街を、「狼党」と言う、ウルフガイ率いるゴロツキたちの集団がジープで爆走しながら、「ヒャッハーッ!」的なノリで暴れまくっている。
ちなみにウルフガイと言うのは、満月になると狼になる男のことではなく、狼党のボスの白塗りのおっちゃんの名前である。
ウルフガイ「もたたたするなーっ!」 住民(えっ、なにが?) 追いかけられながらも、ウルフガイのピントの外れた怒号に、心の中で問い返さずにはおられない住民たちであったが、嘘である。
ウルフガイ、つと、車の上で立ち上がると、

いきなり発砲しちゃう!
さすがにダメだろ、それは……一応、ここは法治国家なんだから。
もっとも、マネキン人形を壊しただけで、実際に人に当てたりはしなかったが。
ジープの前方にちょうど居合わせた、うっかり屋さんで有名な「すえ」ばあさん、
すえ「へえええい、タクシィーッ!」 うっかり、ジープをタクシーと間違えてハイテンションで呼び止めてしまうが、嘘である。
全力で怯え慄いているのである。
狼党が突風のように走り去った途端、住人たちが集まって口々に騒ぎ立てる。

オヤジ「この頃の狼党と来たら……」
主婦「警察に届ければ仕返しをされるし、もう」
オヤジ「奴らの暴れ方が急にひどくなったワケを知ってますか?」
主婦「え、何か理由があるんですか?」
オヤジ「たぶん、反抗期じゃないかと思うんですけどね」 主婦「ああ、なるほどねって……
オイッ!」
とりあえず、オヤジのボケにノリツッコミで応じる主婦であったが、嘘である。
ちなみに実際には、「用心棒ですよ」とオヤジが言ってるのだが、すえばあさんの「狼党じゃあっ!」と言う声に掻き消されて、ほとんど聞こえず、管理人も、今回チェックするまで知らなかった。
しかし、駒太夫みたいな女の子(後述)が配下に加わったからって、そんなに強気になるかなぁ?
この場合はもっと現実的な理由……たとえば、ウルフガイが、目障りな警察関係者や政治家を次々と暗殺しているから、みたいなほうがこの後のストーリーとも合致して、納得しやすかったと思う。
それにしても、何か物を盗む訳でもないのに、暴れるだけ暴れるだけの狼党は、一体何の見返りがあってこんなことをしているのだろう?
やっぱり反抗期かしら?
……と思ったけど、後に、きっちり金を巻き上げていたことが判明する。
話が前後したが、すえばあさんの叫び声にみんな慌てて小さくなって固まるが、それは狼党のジープではなく、ただのトラックであった。
さっきも言ったように、すえばあさん、ややそそっかしいところがあるのだ。
お陰で住民たちは勝手に転んで怪我をしてしまい、病院で手当てをしてぞろぞろ出てくると、すえばあさんが謝りに来る。
すえ「どうも、すいません」
オヤジ「ほら吹き婆さんが、嘘つき婆さんになったのかね?」(註・同じじゃねえか)
すえ「嘘つきとはなんじゃ、わしはほらなんて吹いたことはないぞ」
主婦「あーら、いつもしている娘さんの自慢話、あれがほらではないって言うの?」
すえ「バカタレ! 娘の話は嘘ではないわ、ワシの娘は心の優しい、評判の良い、孝行娘でな、ハーバード大学を一番で卒業……」

オヤジ「ばあさん、引っ越してきたばかりのあんたのことを我々が何も知らんと思ってるらしいがな。娘さんはほんとは高校時代からの札付きで何年も前に家出しちまってることは、みんな知ってるんだ!」
すえ「……した人の隣のクラスじゃったんじゃ」 オヤジ「悪足掻きをするんじゃないっ!」 じゃなくて、
すえ「……」
主婦「あんたなんてもう相手に出来ないわよ!」
みんなはばあさんのことをクソミソにけなすと、鼻息荒く去って行く。
しかし、実際のところ、なんで引っ越したばかりのばあさんの家庭の事情をこいつらが知ってるのだろう?
まあ、長坂さんも、ほんとは昔からこの土地に住んでる人にしたかったのだろうが、そうすると、娘の駒太夫が母親がこの町にいることを知らなかったという設定に出来なくなるからね。
すえ「バカタレ!」
すえばあさん、腹立ちのあまり足元にあった空き缶を蹴るが、

ツイてないという日はあるもので、空き缶は、ちょうど近くをのたくっていた狼党のひとりの頭に見事に命中してしまう。
狼党員「いてえ」
すえ「はあっ!」 全力でビビるばあさん。
「ズバット」の悪役って、基本的に普通の人間(要するにヤクザ)なので、こんな場合、ショッカーの戦闘員に当たるより、よっぽど現実的な恐怖を招くのである。
まあ、この件については100パーセントばあさんが悪いのだが、狼党が逃げようとするばあさんを捕まえてフクロにしようとしていると、例によってギターの音が聞こえてくる。

振り仰げば、公園内の小高い丘の上に早川が立っていた。
狼党員「誰だ、てめえ?」
……
前々から思うのだが、これだけ距離があるんだから、いちいち相手にせずに、チャッチャとばあさんの頭を叩いて逃げれば良いのでは?
早川「相手構わず町中から金をふんだくり、言うことを聞かぬといやがらせ、その挙句、そんなお年寄りをいじめるなんざぁ、いくら狼党でもやり過ぎってもんだぜ」
早川が彼らと戦っていると、まだ近くにいた住民たちが戻ってきて、
主婦「およしなさいよ、あんた、相手が悪いよ」
オヤジ「それにね、そのばあさんね、助けるほどの人間じゃないよ」
などと、いかにも日本人らしい事なかれ主義を発揮して、親切ごかしに早川の義侠的行為に水を差そうとするが、
早川「どんな人間だろうと、やられてる間は被害者です!」 住民(そりゃそうだろ) 割と当たり前のことを、まるで含蓄のある言葉のようにカッコよく叫んで一蹴する早川であった。
うーん、ここは、
早川「どんな人間だろうと、ひどい目に遭ってるのを放ってはおけません!」
などのほうが妥当だったかな、と。
狼党員「顔貸しな」
早川「チチッ! オーライ」
続いて早川は人気のない資材置き場のようなところへ連れて行かれる。
まあ、その気になれば彼らをその場でぶちのめすことは簡単だったろうが、相手の手に乗ってやるのもヒーローの度量なのである。
もっとも、実力差は歴然としていて、早川は彼らの手にしたナイフを弾き飛ばして、それをピラミッド状に積んでみせると言う珍芸を披露する。
と、そこへ赤い独楽が飛んできて、早川の立てたナイフの柄の上に止まってなおも回転を続ける。
早川「ご丁寧な挨拶、礼を言わせてもらうぜ」

早川「え、駒太夫姉さんよ」
早川、動じる色もなく、背中を向けたまま相手の名前を口にする。

駒太夫「ふふっ、ははっ、あたしを知っているとはさすがだねえ」
はい、
駒太夫姉さんキターーーーーッ!! そう、例によって例のごとく、数あるエピソードの中から管理人がこの回を選んだのは、可愛いゲストヒロインが出ているからなのであった。
めちゃくちゃ人の良さそうな、そしてたぶん殺し屋の中では最年少の駒太夫姉さんを演じるのは、佐藤久美子さん。
どういう経歴の人か不明だが、たぶん、モデルか何かやっていた人ではないかと思う。当時としては、かなりスタイル良いもんね。
早川「ああ、狼党のボス、ウルフガイの用心棒・駒太夫、ただし、曲ゴマの腕前は日本じゃあ二番目だ」

駒太夫「なんだって?」

駒太夫「ふっ、へっへっへっ、私のほかに曲ゴマ日本一がどこかにいるとでも言うのかい?」
……
駒太夫姉さん、だから、その笑顔はヤバいですって~!
これでは、不敵な笑いと言うより、普通に嬉しいことがあって喜んでる女の子にしか見えない。
ま、台詞と表情のアンバランスさがめちゃくちゃ萌えるのだが。

早川「ヒュウーッ! ツッツッツッ……ふふふはははっ」
早川、いつものポーズを決め、毎度お馴染み、珍芸対決の時間となる。

駒太夫「ふん、その言葉、忘れんじゃないよ!」
ああ、かわええ……
でも、早川、別に何も言ってないと思うんだけどね。
駒太夫、腰に差していたドスを抜くと、その刃の上で独楽を回して見せてから、

駒太夫「えいっ!」

立て続けに三つの独楽を投げて、最初に投げた独楽の上に重ねてみせる。

早川「ヒュイッ!」
狼党員「さすが駒太夫姉さん」
早川「ふふ、俺は三つもいらねえぜ」
早川が人差し指を立てたのを見て、独楽をひとつと紐を投げてやる駒太夫。

早川「こいつの上手い奴がいてね、飛鳥五郎という男だ。良い奴だった」
早川、独楽に紐を巻きながら、世間話をするように語り掛けるが、
駒太夫「シーン!」 これがジェネレーションギャップと言う奴か、駒太夫姉さんは、心の底から興味なさそうな「無」の表情でお聞きになられていた。
早川、それには気付かないふりをしつつ、なおも喋り続ける。

早川「ただし、そいつはお前らみたいなばぁかものに殺されちまったよ」
駒太夫「シーン!」 早川「……ようく見てろ」
早川、折れそうになる心をなんとか支えつつ、何気ない風を装って独楽を手の平に載せて回し、思い切り投げ飛ばす。

独楽は狼党員たちの目の前を飛んでいき、駒太夫姉さんの立てた独楽タワーを、下から掬うように弾き飛ばすと、それがおのおの狼党員たちの腹に命中、4人はその場に倒れ伏せる。
そして、早川の独楽は、独楽タワーの代わりに柄の上にとまってぐるぐる回転していた。

駒太夫「はっ」
早川の妙技に思わず声を上げる駒太夫。
ああ、かわええ……
しかし、無論、普通に考えたらめちゃくちゃ凄い(と言うか、ありえない)技なのだが、「ズバット」にしては、やや大人しい感じもする。
最後に、他の独楽も柄の上に戻ってきて、独楽タワーが五段になる、と言うのもありだったと思う。
あるいは、弾き飛ばされた独楽が、駒太夫姉さんの服を引き裂いておっぱいがポロリすると言うのもありだったと思う。
早川「駒太夫、女はもっと優しい方が可愛いぜ」

駒太夫「覚えといで!」
駒太夫、紋切り型の台詞を吐いてこの場は引き下がる。
その後、すえばあさんが公園の中をふらふら横切っていると、三人のワルガキが気付いて、「嘘つきばあさん」「嘘をつくのは泥棒の始まりだぞ」などと囃し立てる。
ムカッとしたすえばあさんが足元にあった割と大きめの石を掴むと、ワルガキたちは一旦逃げ散るが、今度はばあさんに小石を投げようとする。

オサム「やめろ」
みどり「やめなさい、なんてことするの、お年寄りに」
ガキ「だってあいつ悪者なんだぜ」
ガキ「大人がみんなそう言ってるよ」
そこへ駆けつけて止めたのが、みどりさんとオサムであった。
すえばあさん、ワルガキを威嚇すると石を放り投げて去って行く。ワルガキたちの嘲罵を背中に受けながら。
みどりさんたち、残念ながら、今回も出番はこれだけであった。
これじゃあ、俳優さんも張り合いがないよね。

気丈なようでもやはり淋しいのだろう、すえばあさん、公園の一番高いところまで登り、ベンチに腰掛けると、娘の写真を取り出して、
すえ「駒子、何処にいるんだい? おっかさんのところに帰って来てくれる気はないのかい?」
涙ながらに話しかけていた。
と、いつのまにか、ギターを担いだ早川がニヤニヤしながら後ろに立っていた。

すえ「な、なんの用じゃ?」
早川「娘さんの写真ですか」
すえ「写真なんて知らん、そんなものもっとりゃせんわ」
すえばあさん、助けてくれた早川に礼も言おうとせず、逃げるように立ち去るが、

後ろ手に持っていた娘の写真が、一瞬早川の視界に入る。
そう、セーラー服姿の、駒太夫こと駒子であった。
ま、これは撮影用に現在の佐藤さんがセーラー服を着て撮ったものだろうが、女子高生時代の佐藤さん、死ぬほど可愛かったことであろう。

その夜、すえぱあさんが街をふらふらしていると、ウルフガイが、背広を着た中年男性を至近距離から射殺するという、ショッキングな事件を目撃する。
ただ、結局この男性が誰なのか、どうしてウルフガイが殺さねばならなかったのか、その説明が一切ないのが残念である。
すえ「狼党のウルフガイが人を殺したぞーっ! 人殺しーっ!」
ウルフガイ「追えーっ!」
けたたましく叫びながら、まろぶように走り出すすえばあさん。
普通、この手のストーリーだと、ここで、すえばあさんが住民たちにそのことを訴えても信じてもらえず、いわゆる「羊飼いと狼」状態になるところだが、特にそう言う展開にはならない。
ともあれ、すえばあさんを追いかける狼党員たちの前に、再び颯爽と早川が立ちふさがる。

狼党員「てめえは早川」
早川「お年寄りを虐めちゃいけないって言ったはずですよ」
いいなぁ、この顔。
イケメンヒーローで、こんなに顔をしかめてもサマになる俳優って、ほんと宮内さんくらいだよね。
早川はあっという間に彼らを片付ける。
早川「もう大丈夫ですよ」
すえ「ふん、助けを頼んだ覚えはないよ」
早川「ふっふふ」
なおも憎まれ口を叩くすえばあさんだったが、早川は気を悪くした風もない。早川、お年寄り、とりわけ母親には優しいのだ。
と、そこへまたあの赤い独楽が飛んでくるが、早川はすえばあさんを守って手のひらで受け止める。

早川「駒太夫、出て来るんだ」
駒太夫「来たよ、さあ、そのババアを渡してもらおうかね」
さっきは言うの忘れたけど、赤で統一されたレザーのハーフトップとミニスカとブーツと、白のシースルーのブラウスの組み合わせがコケティッシュで、小悪魔的な彼女のキャラクターに実に良くマッチしている。
ただ、衣装が1パターンだけと言うのは少々淋しい。
早川「駒太夫、相手の顔ぐらい良く見てから物を言うんだな。お前は実のおふくろさんにそんな口が利けるのか?」
早川、自分の横にすえばあさんを立たせると、厳しい口調で問い掛ける。
駒太夫は、一目でそれが自分の母親だと気付く。
すえばあさんもほぼ同時にそれが娘の変わり果てた姿だと知る。

すえ「駒子!」
駒太夫「この町に……」
すえ「駒子、お前は狼党なんかに」
駒太夫「知らないよっ、私はあんたなんか知らないよっ!」
早川「駒太夫、無理するんじゃない、おふくろさんが好きなんだろう」
駒太夫「好きなもんか、だいっきらいだから家出してやったんだ!」
すえ「悪い友達にそそのかされて家出した時だって、私のためにあったかい料理を作ってくれてから……」
駒太夫「おっかさん……」
この顔で「おっかさん」って言うのがめっちゃ可愛いんですけど!
早川、狼党の用心棒をやめるように説くが、
駒太夫「私は駒子じゃない、今は死の曲ゴマ師・駒太夫だよ!」
すえ「駒子! (早川に向かって)やっつけておくれ」
早川「駒太夫、俺の言うことを聞くんだ」
駒太夫「うるさい、ええいっ」
早川の言うことを聞かず、自暴自棄になったように独楽を投げてくる駒太夫に対し、遂に早川が大人の怒りを爆発させる。
早川「まだ分からんのかっ!」
駒太夫、早川の弾き返した独楽を腹に受けて気絶し、その場に倒れる。

その後、すえばあさんのアパートの一室に寝かされ、手厚い看病を受けている駒太夫。
管理人、かねてより、本当の美人と言うのは「鼻の穴」の形までもが美しいという持論を抱いているのだが、この、真下から見た駒太夫の顔が、それを証明してくれているように思う。

すえ「ねんねぇこ、しゃっしゃりまぁ~せ……」
娘の寝顔を見ているうちに、自然と、娘が頑是無い赤ん坊の頃に歌った子守唄がすえばあさんの口から流れてくる。
ちなみにこの子守唄は岡山県に伝わる子守唄らしいので、彼女たちは元々岡山か、その周辺の県に住んでいたと推測される。
なお、歌いだしの意味は
「お眠りくださいませ」だそうである。
まあ、個人的には、この歌を聴くと稲川淳二のとある怪談を思い出してしまうので、劇中での追憶的・望郷的効果と違って、管理人などはむしろ背筋が寒くなってしまうのが難である。

で、実際に、その頃のイメージショットも出てくるのだが、こちらが新村礼子さん本来の姿であり、すえばあさんの姿は老けメイクであることは言うまでもない。
もっとも、新村さん、当時50前なので、これは逆に若作りしているんだけどね。

と、夢現の中で聞いていた駒太夫の目から、一筋の涙が溢れてくる。
すえ「駒子!」
駒太夫「……」
泣き顔を見られるのが恥ずかしいのか、唇を噛んで顔を背けてしまう駒太夫。
駒太夫「わかってくれたんだね、私の気持ちを……」
CM後、狼党本部。

ウルフガイ「なに、駒太夫がまだ戻らん? 探せ、どんなことをしても探し出して連れ戻すんだ!」
背中のアップリケが可愛らしい部下たちに、ウルフガイが吠えている。
ウルフガイ「用心棒に裏切られたら、俺もお前たちも首領Lに殺されてしまうぞ!」 ……え、なんで? 駒太夫はあくまでウルフガイが個人的に雇っているだけだと思うのだが、なんでそのことで上部組織のダッカーに処罰されねばならないのか?
あるいは、駒太夫は最近用心棒に雇われたとオヤジが言っていたが、彼女は狼党の戦力を強化するために、首領Lがじきじきに送り込んできた用心棒だったのかもしれない。

駒太夫「許しておっかさん、私、おっかさんがこんな苦労してるなんて知らなかった」
すえ「いいんだよ」
一方、駒太夫も強がりをやめて、素直に母親の胸に抱きついて詫びていた。
このように、あまりに簡単に和解しちゃうのがいささか物足りないのだが、あくまでアクションメインの30分番組だからねえ。

すえ「そんなことより、お前、こんなことが知れたら狼党に何か仕返しをされるんじゃないかい?」
管理人、この角度から見た佐藤さんの顔が、誰かに似てるなぁと思ったのだが、ここでは誰に似ているのか分からなかった。
早川「安心してください、狼党の手から必ず守って見せます」
早川、頼もしげに請け負うが、ここでドアを叩くノックの音がしたので、俄かに緊張感が高まる。
早川、襖を閉めて二人を隠すと、用心しながらドアを開ける。

が、そこに立っていたのは、狼党ではなく、愛しの東条サマであった。
早川「おい、東条」
東条「なんだ、お前もいたのか……ウルフガイの用心棒・駒太夫を婆さんが匿ってるそうだな。近所の人が騒いでる。必ず狼党が取り返しに来る。巻き添えになるのは御免だと言うんだ」
東条の口から、あの住民たちがまた麗しい事なかれ主義を発揮したことが分かる。
東条、警察で二人を保護しようとするが、彼らの話を聞いたすえばあさんは、それより先に、狼党に直談判するために部屋を抜け出してしまっていた。
その後、ダッカー本部に呼び出された白塗りウルフガイは、

L「バカモノ! 殺人現場をババアに目撃され、その上、駒太夫に裏切られるとはなにごとだ、ウルフガイ!」
彼よりもっと変な格好をした首領Lに豪快にぶっ飛ばされていた。
ウルフガイ「お待ちください、首領L、あのババアめは既に捕らえて牢にぶち込んであります」
どうでもいいが、管理人、「デスノート」に出てくる某世界的名探偵がこんな人だったら、結構笑えたんじゃないかと思いました。
刑事たちがLがいると言うホテルのドアを開けたらこの人が立っていて、
L「俺がLだーっ! どうした、早くキラを捕まえて来んかーっ! さもないとお前らも処刑するぞーっ!」 刑事たち「ヒイイッ!」
それはさておき、早川はひとまず駒太夫をホテルの一室に移し、保護していたが、そこへ再び東条があらわれる。

その東条目線で、不安そうに立っている駒太夫の姿が映し出されるのだが、ここでやっと、管理人、彼女の顔が誰に似ているのか分かった。
小橋めぐみさんである。 まあ、あくまでこの角度から見たときの顔が、だけどね。
東条、早川を廊下へ連れ出すと、正露丸を口いっぱいに含んだような苦い顔で、

東条「ダメだ、狼党本部はくまなく家宅捜索したが、婆さんは何処にもいない。奴らが婆さんを捕らえているという証拠はどこにもないんだ。警察の力ではこれ以上は出来ん」
早川「……」
その言葉に、無言で歩き出そうとした早川の腕を、東条が慌てて掴む。

東条「待て、いくらお前でもひとりでは無理だっ」
早川「いや、トイレ行こうと思ったんだけど……」 東条「あ、そうなの?」
じゃなくて、
東条「待て、いくらお前でもひとりでは無理だっ! そう言っては悪いが、評判の良くない婆さんひとりのためにお前が命を張る必要はどこにもない」
早川「……」
正義感の強い東条らしからぬ台詞を吐いて早川を引き止めようとするが、そんなことで早川が引き下がる筈もない。
しかし、「警察の力では」と言う東条の台詞は、言外に早川に
「はよズバットに変身して助けに行かんか」と言ってるようにも聞こえるので、自分でけしかけておいて引き止めているようにも見えるんだよね。
と、部屋の中で物音がしたので二人が慌てて駆け込むと、今度は駒太夫がホテルから抜け出していた。
鏡にルージュで書いた「自分の母は自分が助けます、ごめんなさい」と言う、書置きを残して。
早川「しまった!」
ここ、まるっきり同じようなシーンが繰り返されるのはあまり感心しないなぁ。
そもそも、非力なすえばあさんが、単身で狼党に直談判に行くというのがあまりに無謀で嘘っぽいので、すえばあさんは狼党に拉致された……と言う風にしておくべきだったかも。
それはともかく、早川は駒太夫を走って追いかけるが、彼女を捕まえられないまま狼党の本部に突入する。
だが、すえばあさんを人質に取られているので抵抗できず、今までのお返しとばかりに袋叩きにされる。
で、さっさと撃ち殺せば良いのに、何故かウルフガイは早川を縛って床に転がすと、1分後に爆発する時限爆弾を残して「街を焼き討ちに」出掛けてしまう。
まるっきり、逃げてくれといってるようなものである。
しかし、なんで自分たちの本部までふっとばさにゃならんのだ?
狼党は、街じゅうにガソリンを撒き散らすと、最後に廃墟のような建物にやってきて、それに火をつけようとする。
だが、建物の屋上に、ふらふらになりながら早川があらわれる。
ウルフガイ「駒太夫、出て来い!」
意外なことに、姿の見えなかった駒太夫が、ウルフガイの声に応じて廃墟から出てくる。

早川「駒太夫、お前にはおふくろさんの気持ちが通じなかったのか?」

駒太夫「お黙り、私は狼党の用心棒だよっ」
早川「駒太夫、おふくろさんはもう俺が助けた、安心するんだっ」
駒太夫「……」
ウルフガイ「殺せ、奴を殺せ」
駒太夫、おそらく、ウルフガイに母親を殺すと脅されて心ならずも用心棒に復帰していたのだろう。

駒太夫(おっかさん……)
反射的に戦闘ポーズを取る駒太夫であったが、その目には涙が滲んで、既に戦意を喪失していることは明らかであった。
ああ、かわええ……
ウルフガイ「駒太夫、早く殺せ!」
駒太夫「……」
ウルフガイ「駒太夫、どうして撃たないんだ? 早くやれーっ!」
ヤケになったウルフガイたちは、一斉に早川目掛けて銃を撃つが、駒太夫がそれを邪魔しようと独楽を投げ付ける。
ウルフガイ「駒太夫、裏切ったな」
駒太夫「ああっ、ううっ……」
早川「駒っ……!」
ウルフガイに撃たれて、その場に倒れる駒太夫。
この後、色々あって、いつものようにズバットに変身した早川があらわれる。

昔の特撮にちょくちょく出てくる給水塔の上に立ち、

ズバット「はははは、ズバット参上、ズバット解決、人呼んでさすらいのヒーロー、快傑ズバァァット!」

ウルフガイ「やれーっ!」
どうでもいいが、昔の吉本新喜劇に、こんな目ぇした人いたなぁ。
ズバットが悪人たちをサクッと成敗して事件は解決し、

東条「駒太夫の命は取り留めたよ、今おふくろさんがつきっきりで看病している」
駆けつけた東条の言葉で、ハッピーエンドとなる。
早川「ふーん、そうか、すーっ、良かった」
東条「二人ともお前に会いたがってるぞ」
と言う東条の台詞から、何の余韻もへったくれもなくエンディングとなる。
以上、母親と娘の愛をテーマに据えた、いかにも長坂さんらしい……と言うより、宮内さんらしいほろりとさせる佳作であった。
それにしても、佐藤久美子さん、自分の知る限りでは他に出演作がないというのが実に勿体無い。
- 関連記事
-
スポンサーサイト