続きです。

石川家の本拠地である、ゴルゴダの森の中にある巨大な城郭が映し出されるが、これは実際にある観光施設とかじゃなくて、CGのようである。
薬を打たれた零、その城に運び込まれ、その一室で眠っていたが、人の入ってくる気配に目を覚ます。

零「……」
佐々木「お目覚めですか、お嬢様」
零「お嬢様?」
零、上半身を起こすが、布団が胸に引っ掛かって落ちないのが、夏帆さんの体がすっかり大人になったことを示していて、なんか良いですなぁ。ぐふふ。

佐々木「お食事をお持ちしました」
零「何処なの、ここは?」
不思議そうに、全く見覚えのない部屋の中を見回す零。
零「私は誰?」
零の問い掛けに、音もなく部屋に入ってきた小百合がにこやかに答える。

小百合「お嬢様はこの屋敷のあるじの一人、石川ランラン様でいらっしゃいます」
零「この屋敷のあるじ?」

佐々木「いかにも、お嬢様は500年続くこの石川家をお姉さまのリンリン様とご一緒に継承なされた当家の当主であらせられます」
零「姉? 私にお姉さんがいるの?」
小百合「はい」
零、さっきの薬によって記憶を一切失ってしまったらしい。
彼らはその零の頭に、自分が石川家の当主だと言う偽の記憶を植え付けようとしているのだ。
小百合「お嬢様は昨日、道場での訓練中、突然お倒れになり、そのまま記憶をなくされたのです」
零「何の訓練をしていたんですか?」

小百合「銭形家を滅ぼす為の訓練です」
零「銭形家……?」
小百合「銭形家と石川家は初代当主・石川五右衛門様より、500年にもおよぶ長き間、反目を繰り返し、石川家にとって銭形家は目の上のたんこぶ、永遠の、最大の敵なのでございます」
星野真里さんが綺麗なのである!
もうちょっと若かったら、彼女にもケータイ刑事を演じて欲しかったところだ。
役名は、銭形星(セイ)なんてのはどうだろう?(聞かれても……)

小百合「リンリン様、ランラン様のご両親は銭形家によって……」
零「まさか?」
小百合「命を落とされました。ですから、お嬢様はリンリン様とご両親の復讐をお誓いになり、日夜、それはハードな訓練を……」
そう、彼らは大胆にも、銭形家の姉妹を誘拐・洗脳して、自分たちを石川家の一族だと思い込ませ、彼らの祖父である銭形警視総監を暗殺させようと考えているのだ。
先に捕まった雷も、零と同じく洗脳されており、また、あの薬品によって、先ほど零を襲った記憶も消去されているのである。
……しかし、宿敵銭形家の二人を手中におさめ、操り人形にしたのなら、もっと陰険で過激な利用方法がいくらでも考えられると思うのだが。
たとえば二人をエッチな……(以下、自主規制)
そもそも、石川家にとっては、老い先短い警視総監の暗殺を狙うより、若くてイキの良い雷たちの命をサクッと奪った方がよほど有益だったろう。
一方、同じ屋敷の地下に監禁されていた岡野だったが、彼らしくない機敏さで牢から抜け出て、屋敷の周囲をさまよっていたが、ちょうどそこへ、小百合に案内されて移動中の雷が通り掛かる。

岡野「銭形君!」
思わず雷に駆け寄る岡野。
こうして並ぶと、星野さんの背が割りとちっちゃいことが分かって、ますます可愛らしく見えてくる。
岡野、小百合を押しのけると、

岡野「銭形君、良かった、さぁ、早くこんなところを逃げるんだ」
さりげなく雷の体に触りながら連れて行こうとするが、当然、岡野についての記憶も失っている雷は、激しく抵抗して岡野の体を突き飛ばす。
岡野「銭形くぅん」
雷「この男は誰?」
小百合「銭形家に仕えていた罪人です」
岡野は再び小百合の部下たちに捕まり、引っ立てられていく。
小百合「参りましょう、お嬢様」
雷「ええ」
完全に記憶を操作されている雷、何の不審も抱かずに小百合についていく。
雷が連れて行かれたのは、襖で四方を仕切られた小さな部屋で、既に零が来て座っていた。
記憶の上では初対面だったが、元来仲の良かった二人である、小百合に紹介されるとすぐに実の姉妹のように打ち解ける。
雷「二人で力を合わせて銭形家を滅ぼしましょう、ランラン」
零「はい、お姉さま」
その様子を見てほくそ笑むと、小百合はスクリーンにプロジェクターでCGで作られた資料映像を映し出す。

小百合「警視総監室に行くには、その手前にあるレーザーの間を通過しなくてはなりません。レーザーの間では目に見えないレーザー光線が縦横無尽に張り巡らされています」
雷「レーザーに触れるとどうなるの」
小百合「たちどころに防犯システムが作動し、シャッターが出入り口を塞ぎます」
零「でも、見えないんじゃ触れてしまうわ」
小百合「ご安心ください、私たちはこの部屋のレーザー網を正確に把握しています」
で、嫌な予感がしたのだが、

雷「この糸に触れずに向こうまで行くのね」
小百合「体で感覚を身に付けるのです」
次のシーンでは、鈴をつけた赤い糸をレーザー網に見立てた部屋で、レーザー網を潜り抜ける特訓が行われるのであった。
しかし、警視総監って言っても、ただの国家公務員に過ぎないわけで、皇族の警護にすら使われていないようなそんな厳重な警戒システムが、なんで使われているのか?
裏返せば、銭形警視総監が警察内部で独裁者のような権力を握っていることのあらわれではないかとも思えてくる。
だからこそ、10代の孫を片っ端から警視正やら警視監などの役職につけるという、言語道断の横車を押すことが出来るのではないか、と。
また、小百合たちにしても、無理に警視総監がそんな入りにくい部屋にいるところを狙わずとも、行事に参加している時や、来客と会っている時、あるいは自宅にいる時など、もっと簡単に近付ける機会がいくらでもあると思うんだけどね。
そして、この警戒システムについても、侵入者を阻むのは網膜センサー(後述)とレーザー網だけで、人間による警備や、監視カメラのたぐいも一切ないと言うのは、いくらなんでも無防備過ぎると言うものだ。
だいたい、大泥棒・石川五右衛門の末裔を名乗るのなら、暗殺じゃなくて、何か貴重な宝物を奪うのに、雷たちを利用すると言うのが本道と言うものだろう。
ま、いちいち突っ込んでいると話が前に進まないので、この辺にしておこう。
で、二人は別の服に着替えて、その糸(紐)の間を潜り抜ける訓練を開始するのだが、

これが極めて色気のない、お父さんお母さんも安心のめちゃくちゃ露出度の低い忍び装束なのだった。
劇場公開時、思わず
「ふざけんな、金返せ!」と叫びたくなった観客も多かろう。
おまけに薄暗いし……

管理人に出来ることは、零がジャンプして糸を飛び越えた時の、かすかに見えるお尻の割れ目を貼ることぐらいであった。
しかし、まぁ、これだけエロスのない「くのいち」の衣装もないと思われる。
何も疑わず訓練に励む二人を、突き放すような目で見詰めている小百合と佐々木。

小百合「何も知らないのは幸せなことかしら? 愚かなことかしら?」
佐々木「間違いなく、愚かなこと」
小百合「そうね、かわいそうな子たち……」
一方、難波副総監のもとに、銭形警視総監への暗殺予告状と、雷と零の死亡診断書、そして二人のケータイが送られてくる。

柴田「二人が死んだなんて、僕は信じません!」
難波「落ち着きたまえ……それにな、
命より大切なケータイを捨てていくなんて」
いや、命よりケータイのほうが大事って、既に人間として終わってるような気がするんですが。
せめて「命の次に大切な」と言って欲しかった。
ちなみにここで、雷と零の素性が松山に明かされる。
その松山が、雷が零を撃つのを見たと聞かされた難波は、
難波「この犯罪には石川家のものが絡んでる可能性が高いな」
松山「石川家?」
難波「ああ、大泥棒・石川五右衛門の末裔だよ。洗脳を得意としている。善良な市民を誘拐してきては、洗脳させ、悪事に加担させる。実に卑劣な組織だよ」
松山「と言うことはあの二人は洗脳されてる?」
難波「おそらくは……」
さすが年の功の難波副総監、石川家の存在を知っていたが、洗脳の詳しい方法までは分からないと言う。
ところで、管理人、今ふと思ったのだが、実は小百合も、石川家の人間に誘拐されて洗脳された、石川家とも銭形家とも無関係の人間で、自分が正真正銘、石川家の当主だと思い込んでいたと言うオチだったら、ちょっと面白かったかもしれない。
この手の話ではありがちだけど。
さて、その後も、雷と零による、小学校低学年の創作ダンスみたいなトホホな動きが繰り返されるが、遂に二人は鈴を鳴らさずに糸を潜り抜けることに成功する。

零「やったね、お姉さま」
雷「うん、狙うは銭形警視総監の首ひとつ!」
で、予告状のせいで警戒厳重になっている筈の警視庁だが、

婦警に扮した二人が、誰にも咎められることなく堂々とその中を進み、レーザーの間の前まで行けてしまうというのは、さすがにどうかと思う。
ま、婦警コスプレがめっちゃ可愛いので、よしとしよう。

警官「ごくろうさん」
これで、スカートがもう少し短ければなぁ……
ちなみに二人が途中で唯一出会った警官こそ、

警官「うん?」
ケータイ刑事シリーズとは縁の深い、水野晴郎閣下なのだった。
亡くなる、1年半くらい前かな?
ま、あくまでカメオ出演なので、出番はこれだけである。
ちなみにWikiの水野さんのフィルモグラフィーには、この映画が入ってない……
(気を取り直して)無事、レーザーの間に通じる扉の前まで到達する二人だったが、扉は鍵が掛かっていて開かない。
ま、殺人予告状出してたら、そうなるわな。
こんなことで、あの、血の滲むような、幼稚園のお遊戯のような特訓が無駄になるのかと思われたが、二人は壁に角膜センサーがあるのに気付く。
雷「角膜センサーよ」
零「聞いてないよ、そんなこと」
小百合もセンサーの存在は知っていたが、あらかじめそれを教えると、二人に疑惑を持たれると警戒して、あえて言わなかったのだろう。

雷「なに?」
声「確認終了、ロック解除」
果たして、よく見ようと雷が顔を近づけると、センサーがあらかじめ登録されていた雷の角膜をスキャンして、勝手に扉を開けてくれる。
どうでもいいが、角膜センサーじゃなくて、網膜or虹彩センサーじゃないの?
角膜って透明だし……

零「開いた」
雷「どういうこと? 罠かもしれないわね、気をつけましょう」
不思議がる二人だったが、すっかり洗脳されている彼らには自分たちが銭形家の一族で、だからあらかじめセンサーに登録されていたとは露ほども思わず、警戒しつつ先へ進む。

いよいよ、レーザーの間の入り口に立ち、婦警のコスプレを剥いで本番用の忍び装束になる二人。
で、まさか……と思ったのだが、

信じがたいことに、二人は何もない空間を、体をくねくね動かしながら前進するのだった。
……
まぁ、レーザーは目に見えないんだから、何も見えなくて当然なのだが、普通は、CGでレーザー光線を描き込むところだろう。
レーザーが見えなくては、二人の体がそれに触れそうになったりしてハラハラすると言うお約束の楽しささえ観客は味わえないことになる。
にしても、いくら低予算だからって、これはないよね、これは……
小出さんたちも、演じながら
「こんなことが許されるのだろうか? 日本の映画界は大丈夫なのだろうか?」などと悩まれていたのではないかと思う。
CGが無理なら、せめてスタントを入れて超人的なアクロバティックな動きを見せてくれれば多少は納得できるのだが、それもなく、

最後まで我々が見させられるのは、こんなんなのだった。
冗談じゃなく、本気で日本映画の行く末が心配になってきた……って、まぁ、ほんとは別に心配してないけど。
せめて、コスチュームがもっとエロかったらなぁ。

ともあれ、二人は映画史上、もっとも緊張感のないレーダー網潜入シーンを無事、演じ切る。
零「やったね」
雷「ばっちり」
笑顔でハイタッチを交わす二人。
二人は薄暗い警視総監室に突入し、用意していた拳銃を、後ろを向いて座っている警視総監に撃ちまくるが、無論、それはただのダミー人形であった。
二人がそれに気付くと同時に、照明がつき、松山と柴田があらわれる。

雷と零、素早く銃を彼らに向ける。
このコスチュームの唯一良いところは、このように、美少女の綺麗なワキが見えることくらいである。

松山「目を覚ますんだ、銭形! お前たちは銭形なんだよ、いとこなんだよ!」
雷「銭形?」
零「いとこ?」
柴田「そうだよ、雷ちゃん、零ちゃん」

雷「零?」
零「雷?」
聞き慣れない呼び名に、首を傾げる二人。
松山「俺はお前たちが銭形警視総監の孫であろうが、階級が上だろうが、そんなことは関係ない、数々の事件を経験し、そして人生の先輩として……」
柴田「今そんなこといいじゃないですか!」
松山「銃を捨てろ、頼むから!」
柴田「僕たちも捨てるから」
柴田がポケットに入れていた銃を取り出そうとすると、

ためらいなく柴田の足に銃を撃つ零。
正しい判断です。
ちなみに、この映画、すべてのシーンかどうかは不明だが、銃の発射シーン、火薬を使わず、このようなCGで処理されている。
……
ううっ、もうビンボーはいやだぁっ!

零「逃げましょう、お姉さま」
雷「……」
零「早く」
机の上に置いてあったある写真に目を奪われていた雷を促して、零たちはさっさと警視総監室から出て行く。
警報の鳴り響く館内の階段を、雷と零が急いで降りて行く映像とカットバックして、合計
5人の刑事・警官たちが慌しく走り回っている様子が描かれる。
あの、一応、映画なんだから、もう少しエキストラ使いましょうよ~。
色々あって、なんとか追っ手をやり過ごし、目立たない場所に隠れている二人。

零「でも、どうしてあの男、私たちのこと銭形だって?」
雷「これ見て、あなたと私が映ってる」
雷、さっき警視総監室から失敬した写真を零に見せる。
それは、序盤で零が見せた、高村と二人が映っている記念写真をプリントアウトしたものだった。
雷「変だと思わない? どうして銭形警視総監の部屋に私たちの写真があるの? まだあるわ、角膜センサーでドアが開いたのはどうして? 私の角膜が登録されてる筈ないのに」
零「そう言えば、もう一人の男は私たちのこと、雷と零って言ってなかった?」
さすが、ケータイ刑事である。
洗脳されても鋭い推理力は健在で、自分たちの正体に疑いを持ち始める。
ただ、二人がそれぞれの名前を取り違え、雷が自分のことを零と考え、零が自分のことを雷だと思い込み、これ以降、間違った名前で呼び合うことになるのだが、はっきり言って紛らわしいだけなので是非やめて頂きたかった。
ともあれ二人は警視庁から脱出し、あの屋敷に戻ってくるが、

二人が駆けつけたときには、既に屋敷……どう見ても城だが……は、なんとしたことか、早い、安い、へぼいの三拍子揃ったCGでメラメラ燃え上がっているところだった。
二人は小百合の部下のひとりが城の近くの地面に転がって呻いているのを発見し、ひとまず安全なところまで連れて行く。
零「岡野富夫、噂の刑事検定……」
雷「この人……」
零が、地面に落ちていた岡野の検定カードを見ていると、それを見た雷が思わず声を上げる。
雷は、一度だけ会ったその男のことを思い出し、また、小百合が「銭形家に仕えていた」と言っていたことから、岡野なる人物に聞けば何か事情が分かるかもしれないと考える。

雷「ねえ、みんなはどうしたの?」
部下「お逃げになりました」

雷「この人も一緒?」
部下「うわぁああああっ!」
岡野の写真を見せられると、部下はけたたましい悲鳴を上げて恐れおののく。
雷「何があったの?」
部下「その男は災いを生む、悪魔です」
その男の話によると、多聞殺に入っている岡野のせいで、ありえない偶然が重なり、弾薬庫が火事になって、それが城全体に延焼してしまったらしい。

雷「じゃあこの人が火事を引き起こしたってこと?」
部下「うわぁああああーっ!」

雷「……」
部下「……」

雷「……」
部下「いーっ!」
雷「……」
部下「うーっ!」
写真を見せるといちいち反応する部下に、何度も岡野の写真を見せて奇声を発せさせる雷。
零「零、怪我人で遊ばないの」
雷「だって面白いじゃない」
見兼ねて零がたしなめるが、意外とサディスティックな面を持つ雷はやめず、合計7回も部下に悲鳴を上げさせる。

零「あーっ!」
雷「なによ、雷まで」
零「ううん、違うの、あそこ!」
急に大きな声を出した零を雷が咎めるが、零は雷の後方にあらわれた松山の姿に驚いたのだ。
前述のように、雷と零は、自分たちの本当の名前を間違えて覚えているのである。
その3へ続く。
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