第18話「イノシシ大砲!百万発!!」(1972年8月4日)
冒頭、ナレーターが、そこが紀州の国であり、「見渡す限り木の海である~この森林地帯に~」などと力強く語った後で、

大砲をぶっ放している血車党の面々が映し出されるのだが、彼らのいるところが、土砂採取の為にガリガリに削られた山の残骸で、森林どころか草一本生えてないのがとても悲しい第18話である。
彼らは、前方約三百メートル先の急坂の頂きにある、谷をぴったり塞ぐように築かれた砦に向かって数発大砲を撃った後、刀を手に、何の防具も持たずに突っ込むが、

砦に篭る山賊たちに火縄銃で狙い撃ちされ、あえなく退却する。
血車党、実はアホの集団なのではないかと言う説が私を襲ったのは、実にこの瞬間であった。
せめて、盾くらい用意して攻め込もうよ。
血車党の襲撃を防いだ後、車座になって軍議を開いている山賊たち。
頭領「いいか、ご先祖から伝わる山の絵図は、絶対血車党に渡しちゃならねえ」
部下「おうっ」

お杉「山から山への秘密の通路、隠し金山のありかを記した山の絵図だ。我々の宝だからね」
頭領の妹で、副首領格のお杉がそう言って絵図を細かく裂き、それを仲間に一枚ずつ渡す。
いかにも姉御と言う感じのお杉を演じるのは、岡田由紀子さん。どういう女優さんか全く知らないが、なんとなく菊容子さんと雰囲気が似ている。

ちなみに、部下の中には、主題歌を歌っている水木アニキの姿もあった。
なお、頭領の口ぶりでは彼らは長年この土地に住み着いている山賊らしいのだが、金山を押さえているところを見ると、土着の豪族の末裔なのであろうか。
しかし、戦国時代ならともかく、徳川家によって統一された江戸時代、しかも御三家のひとつ紀州藩の領内で、そんなアウトローな連中が堂々と砦を築いて立て篭もっているなど、ありそうにもない話である。

魔神斎「骸骨丸、山の絵図はまだ手に入らぬか?」
骸骨丸「山の奴らめ、なかなかにしぶとく、砦の周りには地雷火まで仕掛けまして」
魔神斎「うむ、どんなことをしても山の絵図を奪うのだ。その絵図さえ手に入れば日本の半分は征服したも同然だ」
どくろ館で、部下を督励している魔神斎だったが、相変わらず途方もなく楽観的であった。
さすがに、隠し金山ひとつ手に入れたからって、日本の半分を支配するのは無理だと思うんですが……
もっとも、悪の組織の親玉なんてのは、初回から最終回まで延々負け続ける宿命を背負っているのだから、よほどの楽観主義者じゃないと務まらない仕事ではあろう。
骸骨丸「化身忍者イノシシブライが、近いうちに必ず」

怪人「エーッ、ウーッ、ウーッ!」
骸骨丸のそばに控えるイノシシブライ、夜道で出くわしたら、思わずギャッと叫んでしまいそうな不気味な姿をしている。
その後、お杉たちが総出で砦を出て、山の中で獲物を探していると、早くもそのイノシシブライが彼らの前方にあらわれる。
……
いや、今なら簡単に砦を占拠できるのでは?
ま、とにかく、それを普通のイノシシだと誤認した山賊が二人銃を撃つが、

二人とも、イノシシブライの体に当たって跳ね返った弾丸を自らの体に浴びて、あえなく絶命する。
よって、水木アニキの台詞は「ぐわっ」だけ。
もっとも、本人ではなく別の人が吹き替えてるみたいだけどね。

怪人「俺様の体は鉄よりも硬い。だから、撃った弾はぜーんぶ跳ね返るのだ」
続いて、お杉たちと別行動を取っていた山賊の頭領が、イノシシブライを見付けて銃を撃つが、これまた跳弾を浴びて倒れ、自分の銃でトドメを刺される。
よ、弱い……
よくこんな奴がリーダーで、今まで血車党の猛攻から砦を守ってこれたものだと感心してしまう。
ともあれ、その銃声を聞きつけたのが、近くの山道を歩いていたハヤテたちだった。
ハヤテとツムジがイノシシブライを追いかけ、タツマキとカスミは頭領を介抱するが、

頭領「これを……」
タツマキ「これを、どうするんじゃい?」
頭領は、例の絵図の一部をタツマキに託して、あえなく息を引き取る。
そこへ、イノシシブライの落とした火縄銃を持ってツムジが引き返してくる。
ツムジ「この頃のイノシシは、鉄砲を撃つのかね」
タツマキ「もしかすると、血車党の化身忍者?」
ハヤテは執拗にイノシシブライを追いかけていたが、ある場所まで来ると、イノシシブライが急に立ち止まって振り向き、

怪人「ハヤテめ、見事、罠にかかったなぁ」
ハヤテ「なにぃ?」
怪人「俺の名は化身忍者イノシシブライ、そして、血車レインジャー部隊!」
このブタ、レインジャー部隊って言っちゃったよぉーっ!! いくら変身ヒーロー番組とは言え、仮にも時代劇で、登場人物が堂々と英語を使うのはさすがにまずいのでは?
ちなみにレインジャー部隊と言うのは、普通の下忍とは異なる忍び装束を来た下忍たちで、恐らく、イノシシブライによって鍛えられた精鋭部隊なのだろう。

お杉「動くな!」
一方、頭領の死体に手を合わせていたタツマキたちは、お杉と山賊たちに取り囲まれ、銃を突き付けられる。

お杉「よくも、兄・松之助を殺したな? 血車党め!」
部下(え、頭領って、そんな名前だったのか……) めちゃくちゃ弱い上にめちゃくちゃ影の薄かった頭領の名前を、その死後に初めて知った部下たちであったが、嘘である。
タツマキ「なんじゃい、わしは頼まれてこの……」
お杉「小僧が持っている鉄砲が何よりの証拠だぁ」
ツムジ「こ、これはイノシシが持ってたんだい」
お杉「こやつらをひっくくれい!」
タツマキたちが必死に誤解を解こうとするが、めちゃくちゃ弱い兄を殺されて逆上したお杉は耳を貸さず、命令を受けた山賊たちが一斉に襲い掛かってくる。
混乱の中、カスミは涼風を吹いてハヤテに助けを求める。
イノシシブライたちと剣を交えていたハヤテ、カスミからのSOSを受けると、嵐に変身してハヤブサオーで砦に急行する。
だが、詳しい描写はないものの、嵐は不用意に地雷原に突っ込んでしまい、タツマキたちと一緒に山賊の捕虜となってしまう。

骸骨丸「なに、ハヤテがやられ、タツマキが山のものに捕らわれたと?」
怪人「クェーッ、クェーッ」
骸骨丸「ははははは、そいつは面白い」
お杉たちは、縄で縛ったハヤテたちになおも折檻を加えていた。

お杉「お前たちはこの山の絵図が欲しくて、兄を撃ったんだろう?」
タツマキ「それは、預かってくれと頼まれたんじゃい」
お杉「そんなこと信じられるかっ」
ハヤテ「……」
頭から彼らを血車党の一味だと思い込んでいるお杉の頑迷さに、ハヤテが絶望的な眼差しで首を横に振る。
と、そこに何処からか矢文が飛んでくる。

お杉「矢文だ……」
お杉がもどかしそうに細かく折りたたまれた紙を広げると、それには「後ろの壁を見ろ」とある。

お杉が後ろを向くと、そこに、血で書かれたような文字が浮かび上がる。
お杉「山の絵図はその男たちに渡せ……」
それを見たお杉は、
お杉「ザッツ二度手間!!」 血車党のまわりくどい伝達方法に戦慄を禁じえなかった。
……嘘である。
ちなみにその血文字は、珍しく骸骨丸が忍術を使って、どくろ館から送っている、いわばFAXのようなものだった。

骸骨丸「さもないと、皆殺しだ……ふっふふふふ、血車忍法・文字送り!」
骸骨丸が護摩壇の前に立ち、杖の先を筆のように空中で動かしてメッセージを書くと、それがそっくりそのまま離れた場所に転写されるという仕組みである。
この時、忍法を成功させるために何か呪文を唱えていたレインジャー部隊の一人は、後々まで、
「あの、そんな面倒なことしなくても、矢文に直接書けば良かったのでは?」 と、骸骨丸に進言する勇気を持てなかった自分を恥じていたと言う。
……嘘である。
嘘だが、管理人がそう思ったのは事実である。
無論、骸骨丸がわざわざそんなメッセージを送ったのは、ハヤテたちを血車党の一員だと信じさせ、山賊の手でハヤテたちを始末させるためである。
お杉「これでもお前たち、血車党じゃないというのか?」
ハヤテ「騙されるな、それこそ血車党の計略だ」
お杉「騙されるものかっ、こやつらを砦の前に晒しておけーっ!」
ハヤテ(ダミだこりゃ……)
思いっきり騙されていながら「騙されるものか」って叫ぶお杉の頭の悪さに、心の中でさじを投げるハヤテであった。

お杉「どうだ、血車党ーっ?」
お杉、ハヤテとタツマキとツムジの三人をハリツケ台のような十字架に縛り付け、得意げに叫ぶ。
何故か、カスミだけいないのだが、これは、林寛子さんがそんな高いところに登るのイヤだと駄々をこねたのか、スケジュールの都合であろうか。
怪人「えふっえふっえふっ、思う壺にはまったぞ」
計略が(ほぼ)図に当たったので、引き笑いをして悦に入ると、部下に弓矢で射殺するよう命じるイノシシブライ。
いや、それこそ鉄砲か大砲を撃てば良いのに……
つーか、日本征服を企む忍者集団の武装が、紀州の田舎に立て篭る山賊より劣ってるって、どういうことなの?
CM後、絶体絶命のピンチに陥ったハヤテだったが、下忍の放った矢が狙いを外れ、ハヤテの右腕を縛っていた縄を切ってしまう。
怪人「しまった」
ハヤテ「神の助け、吹けよ嵐、嵐!」
自由になった右手で刀を掴んで鞘に収め、嵐に変身するハヤテ。
しかし、ハヤテ自身が言ってるように「神の助け」としか言いようのない幸運であり、こんな方法でヒーローがピンチを切り抜けては、見てる方もちっとも盛り上がれず、脚本家の怠慢と言われても仕方あるまい。

嵐「嵐、けんざぁん!」
ツムジ「すげーなー」
お杉「やっと正体をあらわしたな」
だが、お杉から見れば、まるで血車党がハヤテを助けたようにしか見えず、ますますハヤテたちが血車党の一味だと言う信念を凝り固めてしまう。
しかし、地面にくっきり残っている、タイヤかキャタピラの跡が、ものすごく興趣を削ぐなぁ。
ツムジ「正体じゃない、普段はハヤテさんで、変身したら嵐、あれれ、やっぱり嵐はハヤテさんだったのか」
ちなみにここで、初めてツムジが嵐の正体がハヤテだということに気付くのだが、うーん、とっくの昔に知ってたと思うのだが?
お杉「やっぱり血車党だ、奴らを撃ち殺せ」
嵐「待て、私は変身忍者嵐だ。お杉さん、血車党の一味でないことを証明しよう」
お杉「どうやって?」
嵐「血車党の巣窟を叩き潰して見せる」

お杉「よし、面白い、だが今日の日暮れまでだぞ、それまでに戻らなかったらタツマキ親子を殺す」
一方、イノシシブライは、レインジャー部隊を人間大砲としてぶっ放して砦を攻撃しようとする。

その作戦自体は良いのだが、またしても下忍がパラシュート代わりの傘を持ってるだけで、銃撃に対する備えと言うものを全くしていなかったので、近付くそばから山賊に撃たれて死んでいくのだった。
管理人が、「血車党、実はアホの集団だった」説に確信を抱いたのは、実にこの瞬間であった。
痺れを切らしたイノシシブライは、自ら大砲の中に入って撃ち出され、砦に向かって飛んでいく。

一方、嵐は山伝いに彼らの拠点の背後に出て、攻撃を仕掛ける。
気付けばただの下忍と大差のなかったレインジャー部隊を斬り伏せて、骸骨丸と一騎打ちとなるが、タツマキには強くても嵐にはからっきし弱い骸骨丸、下手をすればこの場で切り殺され兼ねないヘタレぶりをさらけ出す。
骸骨丸「ふぅーっ、嵐、貴様の相手をしてる暇はなぁい!」 嵐「……」
肩で息をしながら、あまりに見え透いた
「負け惜しみ」を口にする骸骨丸に、思わず呆れる嵐であったが、その隙を衝かれて惜しくも骸骨丸に逃げられてしまう。
つーか、ヒーローとの戦いを途中で切り上げねばならないほど多忙なのか、お前は?
さて、砦では、大砲で飛んできたイノシシブライに山賊たちが銃を撃つが、次々跳ね返されて死んでいく。
いや、だったら最初からお前が飛んでいけば、大切な部下を無駄死にさせずに済んだのでは?
それはともかく、対空射撃がおさまったところで、レインジャー部隊が次々と大砲で砦に飛来する。
部下を殺され、砦に火をつけられたお杉、泣きそうな顔で応戦していたが、下忍に腕を斬られ、砦から逃げて斜面を降りていく。

下忍「観念しろぉ」
カスミ「えいっ」
追いかけてきた下忍にトドメを刺されそうになるが、そこでお杉を助けたのが、自力で砦から逃げ出したカスミであった。
ちなみにここで、お杉がパンチラを披露しているのだが、これはまぁ、パンツじゃなくてさらしみたいなものだろうから、あくまで追い風参考記録である。
お杉、何とか下忍を刺し殺すと、

お杉「お前は私を助けてくれたんだね?」
カスミ「あなたの味方よ」
お杉「……」
お杉、漸く自分の勘違いに気付き、カスミの縄を切ると、タツマキとツムジも自由にする。

砦では、血車党によって山賊たちは皆殺しとなり、そこかしこで地獄絵図が繰り広げられていた。
自暴自棄になったお杉は、白装束に着替え、絵図もろとも地雷原に突っ込んで自殺しようとする。
怪人「こら、どこへ行く、そっちは地雷原だぞ。その絵図を置いていけ(註1)」
お杉「あばよ!」
註1……そんなこと言われて置いていく奴なんかいねえよ。
お杉、振り向いて、いかにも山賊の姉御らしい、柳沢慎吾みたいな台詞を吐いて地雷原に突っ込もうとするが、

嵐「待て!」
お杉「嵐!」
その腕に鎖を巻きつけて間一髪止めたのが、我らの嵐であった。
嵐「まず、生きるんだ、お杉さん!」 いかにもヒーローにふわさしい台詞を放つ嵐。
怪人「ようし、絵図は貴様を片付けてからだ、いくぞぉーっ!」
嵐「望むところだ」
ここでイノシシブライとの一騎打ちとなるが、イノシシブライは銃弾も刀も通さない頑丈な皮膚を持つ上、あなどりがたい怪力の持ち主で、さすがの嵐も苦戦を余儀なくされる。
……
と言うことは、イノシシブライのほうが骸骨丸より強いってことだよね?
大幹部の立場がないではないか。
で、長丁場の戦いの末、

嵐「嵐、飛び投げーっ!」
嵐、初めての投げ技を繰り出してイノシシブライの体を大砲に向かって投げ落とし、

その砲弾を誘爆させて、イノシシブライもろとも吹っ飛ばすのだった。
しかし、銃弾を跳ね返すほどの装甲なら、砲弾の爆発でも大丈夫のような気がするけどね。

お杉「最初からあなた方を信じていればこんなことにならなかったのに」
戦いが終わった後、自分のせいで兄も仲間も砦も何もかも失ったお杉が涙を流してその場に座り込む。
ハヤテ「お杉さん、我々はあなたにこそ、お礼を言わなければならない」
お杉「え?」
ハヤテ「日本のために血車党の魔の手から山の絵図を守ったのだ」
タツマキ「犠牲になった仲間の霊を弔ってやってください」

お杉「はいっ……」
悲しそうな目で、それでも力強く頷くお杉。
なんだかんだで、綺麗なんだよね、この人。
ラスト、何故か再び嵐の姿になったハヤテが、ハヤブサオーに乗って走り去る。
おまけに、いるのはお杉だけで、タツマキもツムジもカスミもピーコもいないという、得体の知れない状況になっている。

さらに、嵐に向かって手を振る得体の知れない子供たちの映像。
つーか、お前、誰だよ? ま、昔の特撮では、ちょくちょく見られる現象である。
以上、設定はなかなか面白そうなのに、ドラマとしてはあまり面白くなってないという残念なエピソードであった。
まず、山賊たちの人間関係が全く描かれていない点が問題である。お杉を密かに想っている山賊がいたり、血車党に寝返る奴がいたりしたら、ドラマもずっと濃くなっていただろう。
また、お杉が絵図をばらばらにして仲間に持たせるという設定も、ストーリー上、全く意味がなかった。なにしろ、血車党はお杉がそんなことをしたとは最後まで知らないままなのだから、当然と言えば当然なのだが……
それでも、ヒロイン(と怪人)がなかなか魅力的なので、スルーした直近の3話に比べれば、ずっとマシなのは確かである。

ちなみに19話の予告だが、何故か、放送したばかりの18話の映像がそのまま使われている。
ただ、ナレーターは19話の内容を普通に語っているので、とても不思議な予告編になっている。
19話の撮影が遅れ、予告編に間に合わなかったのだろうが、それならせめて何話とも特定できないようなシーンで構成すればいいのに……
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