第13話「アリジゴクジン 東京爆発3時間前」(1979年12月28日)
アクション映画や刑事ドラマでは定番の時限爆弾ネタだが、「仮面ライダー」ではかなり珍しいプロットではないかと思う。

戦闘員「プラスアルファ爆弾、爆発5秒前……」
冒頭、ネオショッカーのアジトで、プラスアルファ(笑)爆弾と言う新型爆弾の実験が行われている。
その威力は凄まじく、モニターに映し出されている島がまるごと吹っ飛んでしまうほどだった。
しかし、「プラスアルファ爆弾」て……今なら「ワイドスクランブル爆弾」って言ってるようなもので、もうちょっとどうにかならなかっただろうか?
もっとも、「プラスアルファ」自体は別に固有名詞ではないので、文句を言われる筋合いはないのだが。

怪人「実験成功です」
ゼネラルモンスター「いでよ、アリジゴクジン……分かっているな?」
怪人「プラスアルファ爆弾で今の島のように東京を消しましょう。1000万の人間どもがいっぺんにこの地球から減ってしまう。なんとも小気味の良いことです」
水爆級の威力を持つプラスアルファ爆弾で東京都民を皆殺しにしようと言う、ネオショッカーの恐るべき計画であった。

今井「東京にプラスアルファ爆弾を? いやぁ、無茶だ、東京はいっぺんで吹っ飛んでしまう」
怪人「それが狙いだ。さ、プラスアルファ爆弾の時限装置を3時間後に爆発するようセットしろ」
アリジゴクジンは、爆弾の開発者である今井博士に命じるが、今井は恐怖に顔を引き攣らせながら拒否する。
怪人「今井博士、ネオショッカーに協力したものが今更イヤとは言わせん。それともお前は死にたいか?」
アリジゴクジン、右手に持ったムチで博士を何度も打ち据え、無理矢理ボタンを押させようとする。

今井、仕方なく右手を時限装置に伸ばすが、

怪人「えいっ」
今井「ああっ!」
その背中をもう一度ムチでしばき、

怪人「人間が作った爆弾で人間を殺す。なんと面白いことよ」
そう嘯いてから、さらにもう一発。
今井(ああん、早く押したいのにぃ~) ……と言うのは嘘だが、怪人が今井博士の邪魔をしているようにしか見えないのは事実である。
で、普通この手のシーンでは、博士は日和って結局ボタンを押せず、代わりに怪人が押すものだが、ここではちゃんと博士本人が押しているのがエライ。
続いて、幌付きのトラックに爆弾を積み、設置場所へ向かっているアリジゴクジンたち。

怪人「プラスアルファ爆弾で、もうすぐ東京は爆発だ」
しかし、怪人の格好のまま助手席に座っていたら、人に見られて騒ぎになりそうだが?
戦闘員「アリジゴクジンに連絡」

怪人「なんだ?」
戦闘員「東京が吹っ飛ぶと、我々も吹っ飛ぶことが判明しました!」 怪人「なにっ?」 じゃなくて、
戦闘員「今井博士が脱走しました」
怪人「なにっ?」
相変わらずショッカー系の「悪の組織」はセキュリティーがゆるゆるで、あっさり今井博士に逃げられてしまう。
博士、手近の電話ボックスに飛び込み、110番するが、
今井「警視庁、ネオショッカーが東京に爆弾を!」
声「今井博士、ネオショッカーからは逃げられん!」
今井「いや、たった今逃げてきたとこなんですが……」 声「おだまりっ!」 途中から嘘だけど、そう言う手回しの早さは、是非、博士がアジトから逃げる前に発揮して頂きたかったものである。
博士、ならばと、派出所に直接駆け込み、

警官「どうしました?」
今井「警視庁に連絡してください、東京が爆発します、ほんとうです。これは事実です。都民に避難命令を出してください」
正直なところ、相手が本物の警官であっても、キチガイ扱いされるのが関の山だったと思うのだが、
警官「さあ、本庁までお連れします」
ニセの警官たちは、即座に彼の腕を取ってパトカーの後部ドアを開く。

そこには、下着姿の男二人、つまり、本物の警官が気を失って倒れていた。
……
こんなもん見せられてもちっとも嬉しくない。
なんでスタッフは、むさい警官の代わりに「デンジマン」の千恵子と友子のような美人婦警コンビを登場させようと言う発想が浮かばないのであろうか。

今井「君たちは?」
警官「大人しくしろ、今井博士!」
今井「いや、座るとこねえじゃん!」 既に先客がいる後部座席に無理矢理押し込もうとする、まるで往時の国鉄職員のようなニセ警官たちに対し、猛然と抗議する博士であったが、途中から嘘である。
それでもなんとか彼らの手を払い除け、近くの資材置き場に逃げ込む博士であったが、

たまたまそこに通り掛かったのか、相変わらず惚れ惚れするほどイケメンの洋であった。
洋「どうしました?」
警官「そいつは重要犯人だ」
今井「違います、奴らはネオショッカーと言う連中なんです」
洋「ネオショッカー?」

警官「何を言う、その男を引き渡してもらおう」
洋「ダメだ、ネオショッカーには渡せん」
ちなみに前に立っている警官を演じているのは、毎度お馴染み、鬼火司令の河原崎洋夫さんである。
洋、博士を連れてその場から逃げようとするが、

今井「うわーっ!」
警官の撃った弾が命中し、博士は砂利山を転げ落ちる。
洋、とりあえずライダーに変身するとニセ警官たちを瞬殺する。

ライダー「しっかりしてください」
今井「聞いてくれ、東京は
ネオショッカーの開発したプラスアルファ爆弾で三時には爆発する」
今井、さりげなく、爆弾製造の責任をネオショッカーになすり付ける。
ライダー「プラスアルファ爆弾が三時に?」
今井「そうだ、水爆と同じ破壊力がある。三時だけに大変な惨事になるぞ」
ライダー「……」
じゃなくて、
今井「そうだ、水爆と同じ破壊力がある」
ライダー「水爆級の力ですって?」
今井「それを防ぐには、時限装置を分解して止める以外に方法はない」
ライダー「仕掛けた地点は?」
今井「東京タワーだ」
と、そこへ志度会長がやってくる。

ライダー「会長、この人を病院へ頼みます」
志度「わかった」
ライダー「ネオショッカーが水爆級の爆弾を東京タワーに仕掛け、三時に爆発します」
志度「あと
2時間40分しかないぞ!」
【朗報】結構ある。 ともかくライダーはスカイターボで東京タワーへ向かおうとするが、そうはさせじと新手の戦闘員およびアリジゴクジンが襲ってくる。

アリジゴクジン、地面に逆三角錐の窪地、いわゆる「アリ地獄」を作り出し、ムチでライダーの足を絡めて引き摺りこもうとする。

怪人「アリ地獄に引き込んで、始末してやる」
ライダー、あっさりムチを振りほどいてアリ地獄から脱出するが、爆弾を止めるのが先だと、怪人を放置してスカイターボで爆走する。
東京タワーの展望室に上がるライダーであったが、爆弾は何処にもない。

ライダー「何としても発見しなければ東京は全滅だ。12時41分……」
そこへ、志度会長から通信が入る。

志度「ライダー、今井博士は病院で手当て中だ。爆弾は発見できたのか?」
ライダー「それが……東京タワーには爆弾が見当たらないんです」
志度「なんだって? するとネオショッカーは何処へ爆弾を仕掛けたんだ?」
ちなみに爆弾が東京タワーに仕掛けられているという情報だが、この後のアリジゴクジンの用意周到ぶりを見ると、博士の脱走を知って急遽変更したのではなく、東京タワーは囮で、最初から別の場所に仕掛けるつもりだったと考えるのが妥当か。

みどり「三時に爆発だと、あと2時間18分よ」
ミチ「会長、東京はどうなるの? もし水爆級の爆弾が爆発すれば……」
みどり「今井博士に尋ねるしか分からないわ、でも、こんな状態の博士には聞けないっ」
突然の「この世の終わり」に、声を震わせて叫ぶみどりたち。
しかし、志度会長もだけど、みんな肩に力が入り過ぎてるなぁ。
沼さんのようなコメディリリーフ的なキャラがいないことが、「スカイライダー」初期の欠点である。
まあ、一応今太がいるんだけど、レギュラーと絡まないのでは、いてもいなくても一緒だからね。

ユミ「もし発見されなくて、爆弾が爆発すれば!」
上がっているのか、赤いほっぺが初々しくて可愛いユミたんも、思わず緊迫した声を上げる。
志度「慌てるな!」
志度会長が知らせたのか、実際に警視庁が大量のパトカーや、ヘリコプターを投入して爆弾の捜索に当たるが、何の手掛かりもないのにそう簡単に見付かる筈もない。
セーリングジャンプして空から探していたライダー、とあるビルの屋上に戦闘員がいるのを発見して降下し、その地下室でプラスアルファ爆弾らしきものを発見するが、

ライダー「通信機だ」
怪人の声「本物のプラスアルファ爆弾でなく、残念だったな」
アリジゴクジンの声が聞こえると同時に、背後の扉が自動的に締まり、ライダーはその部屋に閉じ込められてしまう。
そう、それもライダーをおびき寄せるためのダミーだったのだ。
怪人の声「ライダー、君に面白いものをプレゼントしよう」

ライダー「はっ」
続いて、左右の壁がスライドすると、その下から、剣のようなトゲがびっしり生えた壁が出てきて、ライダーを挟むようにせり出してくる。
ライダー、ともかく通信機を放り投げるが、
怪人の声「いてっ!」 ライダー「……」
アリジゴクジンがこの日のために温めてきた渾身の一発ギャグであったが、壮大にスベる。

などと管理人が嘘を書いている間にも、トゲトゲはどんどんライダーの体に迫ってくる。
しかし、「仮面ライダー」などにもこの手の罠は良く出てきたが、それと比べると、職人さんの腕も上がったのか、トゲの作りがめっちゃ奇麗になってるよね。
ただ、先端恐怖症の人や、トライポフォビア(集合体恐怖症)の人が見たら、鳥肌が立つかもしれない。

左右から串刺しにされそうになっているライダーの姿を映しつつ、CMです。
CM後、一体今までの緊張感はなんだったのかという感じで、背後のドアを蹴破ってあっさり罠から脱出するライダー。
一方、本物のプラスアルファ爆弾は、毎度おなじみ「船の科学館」に運ばれ、その地下室に設置される。

みどり「あと58分よ」
志度「ライダー、今井博士はまだ意識不明だ。ああ、なにか打つ手はないのか? なんとしても東京は守らねばならん!」
志度から通信を受けたライダーは、とにかく今井博士から話を聞くしかないと病院へ急行するが、その通信を傍受したネオショッカーの戦闘員が、今井博士を殺そうと病室に侵入する。
だが、会長たちは襲撃を予想して、あらかじめ今井博士を別の病室へ移していたので無事だった。
そこへライダーが駆けつけ、戦闘員たちを片付ける。
正直、このシーン、要らないと思うんだけど……
運の良いことに、ここでやっと博士の意識が回復する。

別の部屋で、今井博士を見守っているみどりとユミたん。
この美人コンビの魅力を活かしきれなかったことも、第1クールの反省点であろう。

ライダー「博士、爆弾は東京タワーにはありません」
今井「プラスアルファ爆弾の時限装置が作動すれば1500ヘルツの強力な電波が発信される。ワシの知ってるのはそれだけだ」
ライダー「1500ヘルツの電波? ありがとう博士、私がきっと、そのプラスアルファ爆弾の所在を突き止めて見せます!」
しかし、時限装置が作動したからって、電波は発信されないと思うんだけどね。
あるいは、万が一に備えて、司令室から爆弾の位置を把握できるように、わざと電波を発信させているのだろうか?

ミチ「どぉほやって?」
ライダー「心配するな、私にはこのレーダー触角で探知できるんだ」
心配するミチに対し、ライダーは自信たっぷりに請け負う。
ライダー「船の科学館の方向だ。あと……40分か」

怪人「爆発まであと38分だ、よし、東京を離れろっ」
戦闘員「イエーッ!」
アリジゴクジン、こともあろうに自分たちの命を惜しみ、起爆前に東京から逃げ出そうとする。
悪なら悪らしく、東京と心中するくらいの覚悟をみせんかい。
実際、彼らがこの地下室に留まって警護していれば、さすがのライダーも時間内に止めることは不可能だったろう。
ほどなくライダーが駆けつけ、船の科学館のまわりの空き地でオートバイ部隊とのバイクチェイスが行われる。
「仮面ライダー」などと比べると迫力があるが、特にどうでも良いのでカット。
今回、ストーリーはスリリングで面白くなりそうなのに、全体的に余計なアクションシーンが多く、その分、ドラマ要素が希薄になっているのが惜しい。
まあ、なにしろ、ひたすら爆弾を探すだけだからねぇ。
オートバイ部隊を蹴散らして地下室へ向かおうとするライダーの前に、アリジゴクジンたちが立ちはだかる。
怪人「仮面ライダー、地下には行かせん」
ライダー「アリジゴクジン、爆発すればお前も死ぬぞ」
怪人「1000万人の命と引き換えなら死んでも本望だっ」 怪人らしからぬカッコイイ台詞を放つアリジゴクジン。
しかし、「1000万の命と引き換えなら」と言うと、なんかアリジゴクジンが自分が犠牲になって1000万人を助けようとしているように聞こえるので、「1000万の命を道連れに出来るのなら」のほうが良かったかな。
んで、爆弾解除の前にラス殺陣になるのだが、ここのアクションがまた無駄に長いんだよね。
ライダーがアリジゴクジンを倒して地下室へ向かおうとすると、車で志度会長たちが駆けつける。

志度「ライダー、爆弾は何処だ?」
ライダー「避難しろ、万が一のことがあると」
みどり「今更逃げたって仕方ないわ」
ミチ「どこ? どこよ?」

ライダー「あの地下だ」
みどり「あと三分よ、
急いで!」
ライダー「……」
お前らが来て引き止めなけりゃ、もう爆弾のそばまで行ってる頃なんだけどなぁ……と思いつつ、言われるがままに地下室へ向かうライダーでした。
爆弾はすぐ見付かり、ライダーがドライバーやニッパーなどを使って時限装置の解除を始める。

ライダー「もしこれが成功しなければ東京1000万の人間が全滅する」
ライダーの台詞にあわせて、東京が壊滅するイメージシーンがインサートされるのだが、実にこれで三回目の挿入となる。
アクションシーンに加え、このイメージビジュアルの繰り返しが、ますますドラマの尺を削っていることは言うまでもない。

ユミ「あと58秒よ」

ライダー「東京は破壊させるものかっ」
と、ここでまたまたまたまた爆破イメージがぶっこまれ、さすがにたいがいにせいよと言いたくなる。

ミチ「あと30秒!」
タイムリミットが1分を切ると、要所要所で女の子たちが残り時間を叫ぶのだが、はっきり言って、ライダーをいたずらに焦らせるだけで意味がないどころか、むしろ足を引っ張っているように思う。
しかし、ミチのこの笑ってるような表情は、さすがに変だよね。
伏見尚子さん、台詞自体はなかなか上手いのだが、声が切迫している分だけ、表情とのアンバランスが余計目立つ結果になっている。

ユミ「20秒」
みどり「13秒」
ライダー「……」
みどり「10秒」
ミチ「9秒」
ユミ「8秒!」
ライダー「ああ、うるさいっちゅんじゃあああああああーっ!!」 あまりのやかましさに遂にキレるライダーであったが、その気持ち、良く分かる。

みどり「3」
ミチ「2ぃ」
ユミ「1!」
ミチ&ユミ「キャアーッ!」
秒針が12時に重なりそうになり、思わずミチと抱き合って悲鳴を上げるユミたんであったが、無論、この手のシーンで時間切れになることはまずなく、残り0.5秒と言う際どいタイミングで解除に成功するのであった。

ライダー「良かった……終わったぞ」
ミチ「やったぁーっ!」
志度「良かった、これで東京1000万人を守ったぞーっ!」
跳び上がって喜び、手を握り合うライダーたち。
ちなみに、みどりたちが、ふと気付いたように、
「この肝心なときに洋さんどこ行っちゃったのかしら?」などと言う疑問を一切差し挟まないのは、お約束とは言え、相当不自然である。
なお、今回は、洋がみどりたちと一切顔を合わさないという珍しいパターンなのだった。

ラスト、夕陽をバックにスカイターボを走らせるライダーのかっちょいい姿を映しつつ、幕となる。
以上、時限爆弾の捜索と解除がメインテーマとなった特撮番組ではレアなストーリーであったが、既述したようにアクションシーンなどが多過ぎて、ドラマが単調になっているのが残念な力作であった。
今井博士の娘(勿論、美人女子大生)を登場させてドラマに深みを持たせていれば、大化けしていたかもしれないのに……
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