第9話「超獣10万匹!奇襲計画」(1972年6月2日)
冒頭、多摩丘陵一帯の上空に超獣出現の前触れと思われる怪気流が発生したため、TACが出動して、その出現を空と陸から臨戦態勢で待ち構えている。
そんな中、今回の主役である今野隊員だけは、望遠カメラを持たされ、超獣の写真を撮ることを命じられていたが、

民間人立ち入り禁止区域だというのに、ジーパン姿も勇ましい、いかにも活動的な若い女性が、同じくカメラを手に今野隊員のそばにやってくる。
今野「誰だ、君は?」
純子「……」
女性は、無言で名刺を今野隊員に渡す。

今野「月刊ボーイズ写真部・鮫島純子? 雑誌社の人がなんでこんなとこに?」
純子「決まってんじゃないのー、超獣出現の決定的瞬間を撮りに来たのよ」
今野「ダメダメ、勝手に写真なんか撮っちゃ」
純子「ちょっと、なんか文句あんの? あんただって撮るつもりなんでしょ?」
今野「これはね、TACの戦略資料にする写真なんだよ」
歯切れ良くポンポン言われて、今野隊員もタジタジであった。
ともかく竜隊長に報告しようとするが、純子は咄嗟に、北斗に許可を貰ったと口からでまかせを言う。
だが、今野隊員が彼女のことを知らせるより先に、上空にいかにも不気味な紫色の雲が渦巻いたかと思うと、果たして忍者超獣ガマスがあらわれ、それどころではなくなる。
竜隊長と美川隊員の乗るファルコンは、接近して新兵器のRXミサイルを撃とうとするが、

ガマスはすかさず、光の手裏剣を投げつけ、

ファルコンの機体を、綺麗にスライスしてしまう。
さいわい、竜隊長たちはパラシュートで脱出して無事だった。

純子、急いでレンズを超獣に向けるが、

シャッターを切った途端、その姿が一瞬で消えてしまう。
山中「まるで忍者だ」

今野「消えた」
純子「特ダネありがと!」
純子、まさかあの超獣が自分のカメラのフィルムの中に移動したとも知らず、今野隊員に礼を言ってさっさと立ち去ろうとする。それを今野は慌てて追いかけ、
今野「しまった。おい、君! ねえねえ、君!」
純子「なによぉ」
今野「今の超獣、キャメラで撮った?」
純子「当然」
今野「わりぃけど、その写真一枚回してくれないかな」
うっかり写真を撮り忘れた今野隊員、純子を呼び止めてお願いするが、他に回したらスクープにならないからと、すげなく断られる。
その後、TAC本部でガマスに対する作戦会議が開かれていたが、

竜「……よし、あとは超獣の写真を見て分析してみよう」
今野(やべぇ) まるで教科書を忘れた小学生が、先生にその教科書を読めと言われた時のように、内心で焦りまくる今野隊員。
そう、今野隊員は、まだ竜隊長に写真を撮り損ねたことを報告していないのだった。
竜「今野隊員、超獣の写真を持ってきてくれ」
今野「は、それが……」
山中「どうした、まだ現像してないのか」
今野「そ、そうなんだ、現像がまだ」
今野隊員、山中隊員の言葉に乗っかって人生最大のピンチ(註・どんだけみみっちい人生だよ)を切り抜けようとするが、
山中「しょうがねえな、俺が写真班に催促してやる」
今野「お、ちょっと待ってくれよ。俺がじかに行って貰って来るわ」
そう言ってひとまず司令室から飛び出す。
一方、純子は自分のマンションに設けた暗室で、今野隊員が喉から手が出るほど欲しがっているガマスの写真を自ら現像していた。

純子「ようし、彼に電話しなくっちゃあ!」
暗室から出て鼻歌まじりにダイヤルしている純子の映像に、
ナレ「このじゃじゃ馬カメラマン鮫島純子は、独身でお金持ちで親切な編集長・早瀬にしびれていた」
と、岸田さんのナレーションが被さるのだが、

早瀬「あーもしもし、あー純子ちゃん? ナニ、超獣の写真? ああ、やったぜベイビー!」
その編集長を演じているのが、岸田さんの盟友・草野大悟さんなのだった。
岸田さん、喋りながらニヤニヤしてしまったんじゃないかなぁ。
まあ、映像を見ながら収録している訳じゃないのだろうが。
ちなみに草野さんの出番は、このシーンと終盤の1シーンだけなので、それこそ友情出演だったのではなかろうか。

純子「あっははははっ、ええ、私が撮った超獣の写真はTACにも保存がないんですよ。特ダネですよ、編集長、ね、グラビアに差し込みましょうよ。はい、はい、じゃあ、あの、これからすぐすっ飛んで持って行きますから、はい!」
良く笑い、良く喋る、エネルギッシュと言う言葉がピッタリの純子。
演じるのは、その歯切れの良いルックスで人気を得ていた江夏夕子さん。目黒祐樹さんの奥さんね。
ちなみに管理人、てっきり「美しきチャレンジャー」に出ていた、ヒロインをイビるお局系の人と同一人物かと思っていたのだが、調べてみたら全然違う人だった。
と、純子がいそいそと身支度を整えていると、玄関のブザーが鳴って今野隊員の来訪を告げる。
純子、着替えを済ませて部屋から出てくると、写真を分けて欲しいと頭を下げる今野隊員を尻目に真っ直ぐエレベーターの前まで行き、

純子「あ、写真なら、さっき北斗さんが持って行ったわ」
今野「北斗が? 変だな、あいつ俺に何も言わなかったけど……」
純子「たった今」
今野「そうですか、なら良いんだけど」
バ……いや、お人好しの今野隊員、またしても北斗をダシにした純子のでまかせを真に受けて、あっさり引き揚げようとするが、途中で何か思い出したように引き返してきて、
今野「あのー、この次で良いんですけど、あんたの写真一枚頂けないでしょうか?」
純子「ええ?」
今野「俺の初恋の人にあんたそっくりなんだ、すいません」
そう言うと、照れ臭そうに走り去る。
だが、目下、早瀬にしびれている純子は、一瞬ポカンとした後、
純子「うっええっ!」 美女が台無しの物凄い顔つきでえづいてみせると、

純子「何が初恋の人よ、デーブ!」
その背中に向けて、情け容赦のない悪態をつくのだった。
今野隊員が聞いたら激しく傷付いていただろうが、世の中には、逆にこういうことを言われることにこの上ない悦びを感じる男性もいるらしいですよ。
そう言えば、表情の豊かなことと言い、丸顔と言い、ドSっぽいところと言い、どことなく菊容子さんにタイプが似ているなぁ。
純子、タクシーで編集部のあるビルに向かっていたが、

途中、誇らしげに見ていた超獣の写真が、生きているかのように動くではないか。

純子「あ? はーっ、ちょっと疲れてんのかしら?」
だが、それも一瞬のことだったので、純子は自分の目の錯覚としか思わない。
実は、そのタクシーのカーラジオが混線した際に出た、ジジジ……と言うような雑音に写真の中のガマスが反応したのだが、純子にそんなことが分かる筈もない。
純子、ふと財布の中をまさぐっていたが、
純子「あああー、ねえ、運転手さん、1万円で釣りある?」
万札を取り出して確認すると、
運転手「1万円で? 1万円でお釣りあるわけないだろう?」
タクシーの運ちゃん、そんなことを聞く方が非常識だと言わんばかりの口調であった。
ま、なにしろ、初乗りが
170円の時代だからねえ。
運転手「だからさ、そこに売店あるから、そこで崩してきてよ」
純子「もう、お釣りぐらい持ってりゃ良いのに」
運転手は、客の了解も取らずに勝手にハンドルを切って売店の前に車を停めると、急かすように左後方のドアを開ける。
今だったらネットで炎上してもおかしくない運転手の横柄な態度であったが、当時はそんなに珍しくなかったのかなぁ?

純子がブツブツ言いながら車を離れるや否や、運ちゃんは純子の見ていた写真を勝手に見てしまう。
運転手「へっ、色気ねえの」
当時でも、さすがにここまでひどい運転手はいなかったと思うが……

と、天罰覿面という奴で、ちょうどこのタイミングで再び雑音が入ったので、ガマスが動き出し、一気に巨大化して写真の中から飛び出す。

運転手「うわっ、うっ、ああーっ!」
喉の奥から絶叫を轟かせると、タクシーごと爆死する運ちゃんであった。
来世では、グッドマナードライバーとして生まれ変わることを彼のために祈りたい。
ここからガマスが暴れ回り、TACが出動して無駄に長い戦闘シーンとなるが、

最後はTAC自慢のRXミサイルを、割とたくさん撃ち込まれたガマスは、痙攣するように体を震わせていたが、

ゆっくりしゃがみこむと、その体が不思議な空間に縁取られ、内部がネガポジ反転したような映像になると、掻き消すようにいなくなってしまう。
冒頭の忍術のような消失現象から見ても、とてもこれでガマスが死んだとは思えない筈だが、
竜「ようし!」 山中「成功ですね!」
竜「全機帰還する」
竜隊長と山中隊員は途方もなく楽観的で、晴れ晴れとした顔で引き揚げて行くのだった。
無能な上に自信過剰なのだから、始末に悪い。
おまけに「異次元に逃げたのでは?」などと素人でも考え付きそうな疑問を口にする隊員が、主人公を含めて誰一人いないのだから、TAC、どうしようもねえなぁ。
それを見て、高らかなせんだみつお笑いを響かせたのが、言うまでもなくヤプールの親玉であった。

ヤプール「なははははははは、異次元超獣ガマスの種は既に蒔かれた。ガマスに新しい武器を与え、再びTACに立ち向かわせるのだ!」
ヤプールの声にあわせて、ピンク色の光輪のような物体が空を飛んで、純子の部屋の暗室にぶら下げてあるガマスの写真のネガフィルムの中に吸い込まれる。
つまり、それが、ヤプールの言う「新たな武器」なのだった。
うん? と言うことは、さっきのガマス(仮にコピー1と呼ぶ)は、別の次元に消えたのではなく、一応あれで死んだことになるのか?
ただ、ガマス本体の潜んでいるポジフィルム(種)は残っているのだから、それをまた焼き増しすればコピー2、コピー3と言うように、いくらでも増やせるということか?
てっきり、コピー1は再びポジフィルムの中に逃げ込んだだけかと思っていたが、そうすると、いくら焼き増ししてもガマスは常に1体と言うことになってしまうので、やはりコピー1はあれで消滅したということか。
TACの皆さん、無能呼ばわりして、めんご。
それはともかく、玄関のブザーが鳴り、純子がドアを開けると、

そこには、北斗を連れた今野隊員が悲しそうな表情を浮かべて立っていた。
今野「あんた、嘘つきだ」
純子「なにが?」
今野「北斗はあんたなんか知らないと言ってる」
北斗「俺が北斗星司です」
純子「ああ……」
本人を目の前にして、さすがの純子も決まりが悪そうに部屋の奥に引っ込む。

純子「あ、知ってるわよ、あのー、何かの雑誌の写真で見たことあるもん」
北斗「何故俺の名を騙ったんです」
純子「だってそうでもしなきゃ取材が出来なかったからよ、悪く思わないでね」
北斗「悪く思うな? なんですかその言い草は」
今野「北斗、彼女に会っても怒らないって約束したじゃないか」
カッとしやすい北斗、純子の態度にたちまち喧嘩腰になるのを温厚な今野が必死になだめる。

今野「もう済んだことはどうでもいいんです、ただ、あなたの軽い嘘が北斗に迷惑を掛けてるんです。北斗がTACの機密(規律?)を破ったと誤解されてるんです。ま、一言で良い、すまなかったと北斗に謝って貰いたいと思って」
今野隊員がつとめて穏やかに来意を告げるが、
純子「ふんうー、そりゃねえ、謝れっていうなら謝ったって良いわよ、ただ、こっちにだって言い分はあんのよ」
北斗「聞こうじゃありませんか」
純子「私だって好きであんたなんかの名前を借りたんじゃないってこと、超獣が出るってことをなんでTACだけの秘密にしておく必要があんの?」
北斗「それは……みんなの安全を守るために必要な処置だったからです」
純子「はぁ~、カッコイイこと言わないでよぉ、報道の自由を束縛したくせに」
北斗「そんなつもりはないっ! 口からでまかせの嘘をついて他人を困らせといて、問題を摩り替えないでくれ!」
純子「摩り替えてなんかいないわ、私は根本のことを言ってるのよ」
北斗「黙れ、嘘つき女!」 自然、純子と北斗との口論になってしまい、たちまち沸点に達した北斗が声を荒げて純子を罵倒する。
まぁ、気が強くて口の減らない純子と、若さゆえに妥協を知らない北斗とでは、
チャッカマンと瞬間湯沸かし器がお見合いしているようなもので(なんという稚拙な比喩だろう)、こうなることは目に見えているのだから、今野隊員の人選ミスであったろう。
せめて美川隊員か夕子を同伴させていれば、多少は落ち着いて話し合えたかもしれないのに。

北斗「だいたい君はねえ……」
純子「人のうちに勝手に入らないでよ、家宅侵入罪で訴えるわよ」
北斗「しかし、君が俺の名前を騙って写真を撮ろうとしたのは……」

純子「写真を撮ろうとしてどうして悪いの? みんなに見てもらえばTACのためにもいいじゃないの」
北斗「もしその時超獣があらわれて君が殺されたら……」
純子「ええ、私はこの通りピンピンしてますよー!」 両手を鳥のようにバタバタさせる純子が、めっちゃ可愛いのである!

北斗「黙れーっ! このじゃじゃ馬!」
純子「なによ、このガリガリ頭のトッチャン坊や!」 北斗「なにぃっ?」
純子の罵声に、鬼のような形相になる北斗。
「トッチャン坊や」と言う言葉は、彼がこの世でも最も忌み嫌う悪口だったからである。
それはそれとして、この一連のシーンで我々は、
純子のおっぱいが割りとでかいということに気付いてしまい、なんとなく口元が弛むのを抑え切れないのだった。
それはそれとして、とうとう怒りの頂点に達して待った北斗は、
北斗「元気ですかーっ! 元気があれば何でも出来る!」 遂にここで禁断の必殺技「猪木スペシャル」を炸裂させる。
純子「ま、まさに猪木!」 さすがの純子も、猪木の霊が乗り移ったかのような北斗の顔芸に戦慄するが、嘘である。

北斗「くそぉっ!」
純子「ああっ」
北斗、怒りに任せて純子の顔を思いっきりビンタしてしまう。
ま、やってることは猪木と同じだった。

純子「ああ! ……う、うう、ううーっ!」
最初は頬に手を当て、ポカンとしていた純子だったが、やがて顔を歪めると、泣きながら、横にいた今野隊員の巨躯を、両手の拳で駄々っ子のようにポカポカ殴り出す。

最後はその胸に顔を埋めて、めそめそと泣きじゃくる。
直前までの気の強い態度から一転、いたいけな少女のような一面をあらわにする純子に、ますます萌える管理人であった。
まあ、これもツンデレの一種だよね。
北斗「いけねえ」
今野「北斗、女性を殴るなんてお前らしくないぞ、か、彼女に謝れよ」
北斗「いやです、俺は不愉快だ。今野隊員もこんな人から写真を借りることはありませんよ。写真を撮り損なったことを今野隊員が言えなければ俺が隊長に言ってあげます!」
意地っ張りな北斗は、荒々しく言い捨てて部屋を飛び出す。
今野「北斗、ちょっと待てよ、俺はお前を信用して打ち明けたのに、俺を裏切るつもりか?」
純子の体を抱いたまま、狼狽した声を上げる今野隊員であったが、
純子「私ねえ、写真、焼いたげる」
今野「えっ、ほんと?」
どういう心境の変化か、頬の涙も乾かぬうちに、純子がそう言ってくれる。
CM後、暗室で純子が写真を現像するのを、今野隊員もそばについて見守っている。
なにしろ狭い部屋なので、作業中にお互いの顔が触れ合ったりして、なんとなく良い雰囲気になる二人。
今野「ありがとう、どうもありがとう」
純子「えへへ……」
その後、今野隊員は司令室に入ろうとしていた北斗を呼び止めると、
今野「お前、もう隊長にバラしちまったか?」
北斗「いえ」
今野「隊長には言わないでくれよ、彼女が写真をくれたんだ。口は悪いけど、根は良い子だよ」
北斗「何処がいいんですねえ、あんな子のー」

北斗、何気なしにその写真を見るが、超獣の右手に剥き身の刀のような武器が収まっているのを見て驚く。
北斗「この超獣、剣を持ってますよ。あの時はこんなもの持ってなかった筈だ」
今野「バカ言え……剣?」
北斗「確かに持ってなかった」
今野「いや、持ってたよ、お前、変な言いかがりつけんなよ」
恋は盲目と言うが、純子との「共同作業」で焼いた写真にケチをつけられ、今野隊員は機嫌を悪くする。
竜「あの超獣、あの時は剣など持ってなかった」 今野「ひでぶっ!」 だが、それを見た竜隊長に瞬殺され、ハート様のように吹っ飛んでしまう今野隊員であったが、嘘である。
その場で写真を検査した結果、特定の音波がトリガーになって、二次元の中のガマスが、実体化して動き出すことが判明する。
竜「写真を焼け」
梶「はっ」
竜隊長が急いで写真を処分させたので、コピー2の誕生は阻止できた。
梶「音波が二次元と三次元のパイプの役割をして超獣をこちらの世界に引き出そうとしてるんですね」
竜「今野隊員、直ちにあのネガを焼き捨てるんだ」
今野「ネガ?」
梶「ネガを焼き捨てなければ超獣は写真を焼き増しするぶんだけ増えることになりますよ」
今野「……」
進退窮まった今野隊員だったが、北斗にも促され、遂に観念して口を開く。
今野「隊長、ほんとのことを言います」
竜「……」
今野「実はあの写真のことなんですが……
北斗が間違って捨てちゃったんです」
北斗「ギャーーーッ!」 じゃなくて、撮り損ねて純子から借りたのだと打ち明けるのだった。
竜隊長がどんな反応を示したか不明だが、恐らく、今は今野隊員を焼きブタにしている時ではないと判断したのだろう、山中たちに、ただちに純子からネガを没収するよう命じる。
隊員たちはパンサーで急行して、マンションの入り口で純子をつかまえる。

純子「ネガを渡せですってぇ? あんたたちに何の権利があって?」
北斗「今は議論をしている間はない。超獣の写真は何処にあるんだ?」
純子「ふん、おあいにくさま、写真はねえ、社の編集長に渡してきたばかりなの……そうねえ、今日中には輪転機に回って10万部のおんなじ写真が刷り上るでしょうねえ」
北斗「10万?」
純子「うん、雑誌のグラビアのトップを飾るの」
山中「印刷を止めるんだ。10万匹の超獣に飛び出してこられた日には地球は全滅だ!」
隊員たちは純子など打ち捨てて、雑誌社に向かって猛然とパンサーを走らせる。
純子も邪魔させてなるものかとタクシーを拾って追いかける。

早瀬「諸君、来週のグラビアね、これ、純子ちゃんのこれ、決まりね」
編集者「うわーっ!」
一方、編集部では、純子が焼いたガマスの写真を掲げて、早瀬編集長がみんなに告げていた。
しかし、純子の写真が採用されたと聞いて、他の社員が歓声を上げるというのは変じゃないか?
だが、その写真が輪転機に回されるより先に、

早瀬が、写真を見ながら電気シェーバーを額に当て始めたため、その音に反応したガマスが実体化し、
早瀬「うわぁああああああーっ!」 純子の愛しい早瀬編集長は、あえなくお陀仏となる。
この後、色々あって、Aとガマス(と言っても、これもコピーなのだが……)とのバトルとなる。
ガマス、忍者超獣だけあって、目にも留まらぬ早業で手裏剣を投げたり、吹き矢を吐いたり、煙玉を爆発させて姿をくらませたり、

果ては、その足元に巨大なマキビシを撒いたりして、Aを翻弄する。
忍者の歴史上、最大級のマキビシだろうなぁ、これ。

だが、最後はAに自分の剣を奪われ、それを体に深々と刺され、倒れたところをビームで粉々に破壊される。
それにしても、手前の墓地の作り込みとか、いつもながら気合の入ったミニチュアセットである。
ラスト、今野隊員が純子から受け取ったネガを持ってきて、それを山中隊員が銃で焼き払い、やっとガマスをこの世から消すことが出来た。

北斗「今野隊員、しかし、あのじゃじゃ馬がよく素直に返しましたね」
今野「まあね」
北斗「もうあんな男勝りとは付き合わないほうがいいですよ。今野隊員だってかなりいいように振り回されてたんだから」
今野「いや、まったく、まったく、あんな勝手な子も珍しいよね」
北斗の忠告に、その肩を叩きながら口では同意する今野隊員であったが、その顔はいかにも幸せそうであった。
その後、メシを食いに行くと言って基地から出て行く今野だったが、

案の定、基地の外ではめかしこんだ純子が待っていて、二人は腕を組んで恋人同士のように歩き出すのだった。
最初はあんな悪態をついて吐き気まで催していた純子だったが、今野隊員の優しさに惹かれて(早瀬も死んだことだし)付き合うことになったのだろう。
しかし、自分の写真のせいで早瀬はもとより、同僚がたくさん死んだと思われるのに、少しは罪悪感というものを感じないのだろうか、この女は?
で、その様子を、たまたま司令室の監視モニターが捉えていた。

美川「やっぱりねえ」
北斗「だらしねえなぁ、まったく」
山中「あいつ、デレデレしやがって……ようし」
不粋にも、恋人の邪魔をしに行こうとする山中隊員だったが、竜隊長がそれを止める。
竜「ああ、待て待て、今野は純情な奴だ、あの年で未だに初恋の人の面影を追ってるんだからな。ま、
目が覚めるまで、そっとしといてやれ」
山中「恋は盲目」
北斗「女は魔物! あいてっ!」
最後に余計な一言を付け加えた北斗を、無言で夕子が射殺するのだった。
竜「な、なにをするんだ、南隊員!」
夕子「あっ、すいません、つい」
北斗「つい、で済むかーっ!」
じゃなくて、無言で夕子がその尻をつねるのだった。
しかし、一見、温かく見守ってやろうという竜隊長の台詞だが、「目が覚めるまで」って、遠からずフラれることを確信しているようで、割りとひどいこと言ってるよね。
ともあれ、写真で無限増殖する忍者怪獣を使ったヤプールの巧妙な作戦に、今野隊員の淡い恋物語をからめた、いかにも市川さんらしい佳作であった。
と、同時に、途中で台詞の多さに泣きそうになった管理人であった。
- 関連記事
-
スポンサーサイト