第18話「のっぺらぼうだ!」(1984年5月11日)
いったい何年ぶりだろうか、懐かしの「マシンマン」のお時間がやって参りました。
そう、昔レビューした作品をもう一度レビューし直すと言う、今年になって始めたリバイバル企画の一環なのである。
最初に取り上げるのは、管理人がシリーズで一番好きなかもしれないエピソードである。
冒頭、雑木林の中で、テッキュウ男と言うテンタクルのアンドロイドが、大声で喚きながら暴れている。
八つ当たりするように、右手の鉄球で木をへし折ったり、その丸太をぶん回したり、まるっきり大きな駄々っ子のようであった。
だが、いささかドジなようで、自分が投げた丸太が跳ね返ってきて、その場に尻餅をつくと、そのショックで人間態に変わる。
ま、普通は逆だけどね。

男「俺はプロフェッサーKが外国へ逃げ出したとき、朝寝坊してしまい、飛行機に乗り遅れてしまったのだ、ああ……淋しい、ドンはいないし、仲間のアンドロイドもみーんなマシンマンにやられてしまって、俺はひとりぼっちだぁ」
男は立ち上がると、大変説明的な独り言を口にして、手を顔に当てて盛大に泣き出す。
演じるのは、どこか憎めない小悪党を演じさせれば右に出るもののない江幡高志さん。
なお、念の為説明しておくと、前回、悪の組織テンタクルは大幹部のモンスをマシンマンに倒されたため、一時的に活動を休止し、首領であるプロフェッサーKは、ヨーロッパに傷心旅行に出掛けてしまったのである。

男「そうだ!」
と、不意に何かを閃いたように泣くのをやめ、
男「子供たちさえやっつければ、プロフェッサーKは日本へ帰ってこれる。ようし、子供たちをいじめてやるぞーっ!」
嬉しそうな笑みを浮かべて雄叫びを上げるテッキュウ男であった。
つまり、今回は、特撮ヒーローの歴史でも極めて稀な、ヒラの怪人による単独作戦なのである。
こんな特異な設定は、たぶん、他にはないんじゃないかなぁ?

一方、ここに、藤色のワンピースを着た、OLらしい若い女性がいて、背中を丸め、俯き加減になって、擦れ違う通行人たちの視線に怯えるように足早に歩道の上を歩いている。
何がおかしいのか、通行人たちは一様に彼女の顔をジロジロと覗き込み、中には露骨に吹き出すものもいた。

やがて、人々の視線に耐え切れなくなったように、女性はその場から逃げるように走り去る。
泣きながら自宅に戻った女性は、さっきのテッキュウ男と同じように「悔しい、悔しい」と言いながら、ベッドに拳を叩きつけて八つ当たりをする。

確かに、年不相応なお下げ髪に、どぎついメイク、そして大きなホクロなど、なんとなくオカメっぽい面相ではあるのだが、正直、笑うほどではあるまい。
もっとも、この手のプロットで、ほんとにスーブーな人を連れて来ては女優さんに失礼だし、見てるほうもつらいので、実際のルックスと世間の評価が懸け離れることになるのも、やむを得ないことなのである。
で、この女性を演じているのが、この一年前までやっていた「ゴーグルファイブ」のレギュラー、さゆりを演じていた細矢智恵子さんなのである!
なお、劇中では役名がないので、便宜上、彼女のことはさゆりと呼ぶことにする。

さゆりは鏡台の前に座り、しげしげと自分の顔を見ながら、
さゆり「なんでこんなに不味い顔に生まれたのかしら、みんな私を見て笑う。悔しい~」
鏡台の蓋を閉めると、
さゆり「世の中の人の顔を奪ってやりたい。そうすれば笑われないで済むのにぃ~」
世間に対する呪いの言葉を吐いて、顔を伏せて子供のように泣きじゃくるのだった。
男「その夢を叶えてやる」
さゆり「え?」
と、背後から男の声がしたので、さゆりが何事かと振り向くと、

いつの間に入ったのか、テッキュウ男がヒゲを自慢げに撫でながら部屋の入り口に立っていた。

さゆり「誰、あなた?」
……てっ、
普通に可愛いやん! 男「ふっふっふっ……うぐっぐっ、あいて……」
男は不敵な笑みを浮かべて悠然と歩き出すが、テーブルの足に自分の足を引っ掛けてベッドに頭から突っ込む。
それでも気を取り直して立ち上がると、

男「これは魔法の銃だ。これを使うとお前を笑うものはひとりもいなくなる」
さゆり「魔法の銃?」
男「俺と組んで、復讐するつもりはないか?」
どこからか、銀色のおもちゃのような銃を取り出して、さゆりの気を引く。

男「世の中の美しい奴を悲しませるのじゃ。ええっ、面白いぞ~っ、うわーっはっはっはっはっ」

男「はっ……はっ、はぁ、あ、顎が、外れた……」
さゆり「……」
こうして、怪人とただのOL(?)と言う、これまた特撮ヒーロー史上稀な組み合わせのコンビが結成され、早くも作戦を開始する。
しかし、後に分かるようにさゆりは整形手術の費用目当てに引き受けたらしいが、テッキュウ男がどうやってこんなうってつけの人材を発見したのか、その説明が一切ないのが物足りない。
まあ、今回の話、内容的には東映不思議コメディーシリーズに近いので、そんな突っ込みは野暮と言うものか。
ま、そもそも、別にさゆりタンを引き込まなくても、テッキュウ男ひとりでやれた仕事ではないかと思うのだが、まあ、ひとりで悪事を働いても楽しくないからね。それに、実行犯が若い女性ならば、マシンマンの目を誤魔化せると踏んだのかもしれない。
二人はまず、空き地で野球をしているレギュラー子役たちの様子を物陰から窺う。

男「いいね」
さゆり「うふふふふふふふっ」
んで、以前のレビューでも散々書いたことだが、黒一色のマニッシュなスーツをまとい、バタフライ型のおしゃれ眼鏡をかけた細矢さんがめっちゃ可愛いのである!
折に見せる、この悪戯っぽい含み笑いも実に魅力的だ。
少なくとも「ゴーグルファイブ」のさゆりより、よっぽど可愛く撮れているのは間違いない。

男「どれにしようかな、神様の言う通り……」
テッキュウ男、ひとりひとり子供を指差しながら、アトランダムに最初のターゲットを選ぶが、

男「まず、あの女の子からだ」
さゆり(やっぱり……) テッキュウ男が偶然を装いつつ、最初から美佐に狙いをつけていたのは明白で、どーしてこう、男と言うのは、どいつもこいつもロリコンばっかりなんだろうと溜息が出るさゆりタンであったが、嘘である。
しかし、まあ、テッキュウ男じゃなくても、男なら、誰だって彼女を選ぶに決まってるんだけどね。
それはそれとして、さゆりの、
さゆり「うふふ……うんっ!」 と言う、いかにも楽しそうな返事がめっちゃ可愛いのである。
ま、こればっかりは実際に聞いてもらわないと分からないと思うが。
その後、都合の良いことに美佐は勝たちと別れて、ひとりで、スカートがめくれるほど勢い良くタシタシと石段を上がっていたが、

石段のてっぺんにいきなり黒い影が舞い降りたかと思うと、銃のようなものを彼女に向ける。

美佐「……!」
さゆり「うふふふふふふふ」
思わずその場に立ち竦む美佐に、さゆりが世にも嬉しそうに笑いながらガスを吹き付ける。
なんだかんだで、この子も可愛いんだよね。

美佐「きゃあーっ!」
ガスは一瞬で白い仮面となって美佐の顔に張り付く。

さゆり「諦めるのね、そのお面はどうやっても取ることができないわ。声も出ないし」
さゆりは勝ち誇ったように美佐に告げると、近くから見ていたテッキュウ男のところに戻る。

男「やった、やった、実験は大成功だ」
喜びのあまり、過去の「悪の組織」を漏れなく破滅に導いてきた不吉な言葉を口走るテッキュウ男。
そう、ショッカーの作戦も、実験だけは成功するんだよな……
もっとも彼らの場合は実験もダメで、パニックになってその場にしゃがみこむ美佐であったが、

なんのことはない、仮面は簡単に外れてしまう。
美佐「取れたーっ? 取れないだなんて嘘ついて、気持ち悪い!」
美佐、忌々しげに仮面を叩きつけると、さっさと行ってしまう。
男「ありゃりゃりゃ、そんなぁ」
さゆり「何が魔法の銃よ! こんなもの」
これにはさゆりも失望の色を隠せず、銃をその場に放り投げる。
男「いや、うーん、こりゃプロフェッサーKの大発明の筈なのに……長い間使わなかったから故障してるんだ。修理するから頼む、もう一度やってくれ」
さゆり「いやよ」
男「そんなこと言わずにお願い、ね?」
気の強いOLと、情けない中年おやじの掛け合いが、死ぬほど笑えるのである。
でも、考えたら、今のさゆりって、少なくとも擦れ違う人から笑われるような顔にはなっていないので、この時点でさゆりの願いは叶えられたことになるのではないだろうか?
まあ、さゆりは一途に自分はブサイクだと思い込んでいるから、自分の容貌を顧みる余裕はなかったのかもしれない。
それはさておき、マシンマンこと高瀬健は、葉山家の庭で美佐からその話を聞かされる。

ボールボーイ「ねえ、ニック、どう思う?」
健「うん、ただの悪戯かもしれないけど、やり方がテンタクルに似ている」
ボールボーイ「だけどテンタクルは潰れたんだよ」
健「ああ、それにテンタクルならこんな失敗はするはずないし、やっぱりただの悪戯かな?」
その後、相棒であるボールボーイと話す健であったが、さすがの彼にもテンタクルの生き残りの仕業とは見抜けず、判断を保留する。
ちなみに、ニックと言うのはアイビー星人である健の本名である。
それにしても、ボールボーイの声の曽我さん、「スピルバン」の残酷極まる女王パンドラと同じ人が喋ってるとは思えない可愛らしさである。
さて、翌日、凸凹コンビは、懲りもせずに再び街にあらわれる。

さゆり「本当に今度こそ大丈夫なのね?」
男「ああ、今度は改良銃だから絶対に大丈夫だ」
男から、集音器のようなパーツがついた銃を手渡されるが、いかにも疑わしそうなさゆりであった。
でも、単に修理したんじゃなくて改良を加えたって、戦闘アンドロイドにしては妙に優秀ではないか。
あるいは、アジトを引っ掻き回していたら、改良済みの銃が出てきたのかもしれない。
と、都合の良いことに、向こうからランドセルを背負った美佐がスキップを踏みながらやってくる。
男「昨日の女の子だ、それ、行け!」

スキップが勢い良過ぎてスカートの中がチラッと見えてしまっている美佐の前に、

さゆりが再び立ちはだかる。

美佐「昨日のおばさん!」
一目相手の顔を見るなり、失礼なことを言う美佐。

さゆり「おばさん? 失礼ね、昨日は失敗したけど、今日はそうは行かないわよ」
うーん、さすがにこの顔を見て「おばさん」と言うのは不自然な気もするが、考えたら自分が小学4年生の頃には、小学6年生の女の子でさえ「お姉さん」に見えたのだから、美佐の年齢から言えば、20歳以上の女性は全て「おばさん」にカテゴライズされるのかもしれない。
でも、美佐は間違っても(さゆりと同じくらいの年の)真紀のことを「おばさん」とは呼ばないだろうから、結局、服装とか髪型とか、パッと見のイメージにも左右されるのだろう。
些事はともあれ、さゆりが昨日と同じように美佐に銃口を突きつけて引き金を引くと、

美佐「はっ!」
前回とは違い、銃口から白い風船が膨らみながら出てくる。
キャプでは伝わらないが、美佐のこの、驚きに息を飲む演技が実に自然で上手いのである。
80年代の特撮の女性子役の中では、一番の名優かもしれない。
さて、風船にびっくりしたのは美佐だけでなく、

さゆり「風船?」
撃った本人が怪訝な顔をすれば、
男「あ、う、どうなってるんだ?」
物陰から見ていたテッキュウ男も驚いていた。
でも、自分で改造したのなら仕組みは分かっている筈だから、やはり既にあった改良銃を発見したと言うことなのだろう。
風船は膨らむと破裂するが、
さゆり「ああっ!」 自分でやっておいて悲鳴を上げるさゆりタンが、めっちゃ可愛いのである!
そして、美佐の顔に再びあの白いマスクがしっかりと張り付き、今度こそ取れなくなる。

男「やったーっ!」
さゆり「あはは、やった、やった、あははは」 叫びながら出てくるテッキュウ男と共に、その場で跳び上がって喜ぶさゆりが、さっきからこればっかり言ってる気もするが、めっちゃ可愛いのである!

男「お前はもう二度と元の顔には戻れない、家にも戻れないんだぞぉ、のっぺらぼうのお化けにしか見えんからな」
さゆり「あはははははっ」
声も出せずに悶え苦しむ美佐の頭を掴んで、心底楽しそうに追い討ちをかけるテッキュウ男と、それを見てゲラゲラ笑うさゆり。
一年前まで、しかつめらしい善玉を演じていた細矢さん、悪役がこんなに楽しいって初めて知ったんじゃないかなぁ?
どうせなら、このまま次なる「悪の組織」の幹部としてレギュラー出演して欲しかったところだが、次のオクトパスの首領は女性だったからねえ。
男「さ、次を狙え」
さゆり「オッケイ!」
二人は美佐をそのままにして、次なる獲物を求めて走り出す。

真紀「えっ? 美佐ちゃんがまだ帰ってこないって?」
勝「そうなんだ、学校からとっくに帰ってるはずなのに、まだ帰ってこないっておばさん探してるんだよ」
その日の夜、弟の勝から美佐のことを聞かされてハッと振り向く真紀。
うーむ、やっぱり塚田さんは美人だ。
細矢さんも可愛いけど、周りがパッと明るくなるような美貌と言う点では、塚田さんに軍配が上がる。

健「まさか、昨日の悪戯が関係してるんじゃ?」
真紀「えっ?」
意味なく貼ってしまう、真紀タンのお顔。
健「とにかく探すんだ、行こう」
三人は即座に外へ出て、美佐の行方を探すことにする。
そんな中、公園で白い仮面をつけた美佐を見た勝は、てっきりのっぺらぼうのお化けだと思ってその場で腰を抜かし、大声で助けを求める。
声を聞いてすぐ二人もやってくる。
健「どうした、勝君?」
勝「出た、のっぺらぼうが出たんだよぉ」
勝は、亀のようにうつ伏せに縮こまったまま、植え込みの方を指差して声を震わせる。

真紀「のっぺらぼう?」
健「のっぺらぼうってなんだい?」
真紀「いやね、健さん、のっぺらぼうも知らないの?」
元々アイビー星から、大学の卒論のために地球人の習慣や文化などを調べにやってきた健だが、研究そっちのけで悪人退治にかまけているせいか、いつまで経っても日本の文物に疎いのである。
健「ひょっとして、それ美佐ちゃんかもしれないぞ」
真紀「えっ?」
健がそのあたりを調べると、果たして、美佐の名前が書かれたランドセルが落ちていた。

健「やっぱりそうだ、昨日の悪戯と同じで仮面をつけられたに違いない」
真紀「そんな……じゃあ、何故逃げたりしたのよ?」
健「きっと怖かったんだよ、仮面は取れないし、お化けだって騒がれたら、誰だって逃げ出したくなるんじゃないのかな?」
勝「そんな、ひでーよ、それじゃ美佐ちゃんがかわいそうじゃないか!」
美佐は、健が推測したように、近くの植え込みの中にしゃがんでひたすら怯えて、すすり泣いていた。
その様子を、放棄されたテンタクルのアジトのモニターで見ながら悦に入っている凸凹コンビ。

さゆり「うふふふふ」
男「あーっはっはっはっはっ、あの泣いている女の子の姿を見たらプロフェッサーKがどんなにお喜びになるか」
Kの椅子にふんぞり返って、まるっきり首領気取りのテッキュウ男。
鳥カゴの中には、Kが飼っていたオウムの代わりにカラスが入っているという凝りようであった。
でも、怪人自ら作戦を立案し、人間の助手ひとりを使ってこれだけの成果を上げたのだから、大したものではある。

男「これで、いつプロフェッサーKが帰ってこられても大丈夫だ」
さゆり「うんっ!」 テッキュウ男の言葉に、弾むような声で応じるさゆりがめっちゃ可愛いのである!
男「テンタクルが再興されれば俺は大幹部よ」
さゆり「うふっ」
と、さゆり、テッキュウ男に右手を差し出すと、
さゆり「ね、早くお金頂戴」
あっけらかんとした口調で報酬をねだる。
男「まだだ」
さゆり「どーしてよー、仕事したらこの顔を整形手術するお金をくれるって約束じゃない」
前述したように、さゆりは単に世間に対する恨みだけでこんなことをしているのではなく、整形手術の費用目当てに協力しているらしい。
ただ、テッキュウ男にまとまった金の持ち合わせがあるとも、それを入手する当てがあるとも思えないので、最初から払うつもりなどなかった可能性が高い。

男「もっとたくさん子供たちをのっぺらぼうにしてからだ、そら、行け」

さゆり「分かったわよう、ふんっ」
さゆり、雇い主には逆らえないので、いかにも不満そうにほっぺを膨らませ、口を尖がらせてまた仕事に出掛ける。
さゆりは次々と子供たちをのっぺらぼうにして行き、その子供を見て驚かされる大人も続出し、社会的な問題に発展する。

編集長「現代の怪奇だ、こいつは面白い、特集を組むんだ」
真紀の勤めている週刊ヒットの編集長は、120パーセント興味本位にその事件を記事にしようとするが、真紀が冷静にたしなめる。
真紀「でも、編集長、のっぺらぼうの正体は子供たちなんですよ。お化けじゃありません」

編集長「バカを言うな、証拠はどこにある、証拠は?」
真紀「最近、子供たちが次々行方不明になってるでしょ? あれですよ」
だが、編集長は聞く耳を持たず、

編集長「あれとこれとは別だ、良いからのっぺらぼうの写真撮って来い!」
いつものように編集長の権限を振りかざし、口をタコのように尖がらせて命令する。

真紀「頑固なんだからぁっ! 信じてくれないなら、自分でのっぺらぼう見つけて写真撮れば良いでしょ?」
ああ、ほんと可愛い……
見てるだけでなんか幸せな気分になれるお顔である。
この作品、塚田さんのフィルモグラフィーの中でも、一番奇麗に撮れてるんじゃないかと思う。
翌年の「ジャスピオン」のアンリ役も、アンドロイド役じゃなくて、ジャスピオンが地球に来て出会った、こういう普通の女の子役のほうが、彼女の魅力を素直に引き出せていたのではないかと思う。

編集長「えっ、俺? いやぁダメ、俺、幽霊に弱いの」
口では威勢の良いことを言っても、実際はまるっきり意気地がない編集長、真紀に強気に出られると、たちまち腰が砕けてしまう。
真紀「ほんとに分からず屋の編集長なんだから、もう!」
その後、真紀がプリプリしながら歩道橋を渡っていると、向こうから来たテッキュウ男とぶつかってしまう。

痛みに顔を顰めた真紀、大の字にひっくり返ったテッキュウ男を見るなり、

真紀「編集長、まだ分からないんですか?」
男「うん?」
それを自分の編集長だと思い込んで叱り付ける。
いや、さすがに上司と見間違えるかなぁ? 昨日今日の付き合いじゃないんだから……

さゆり「えっ?」
一緒にいたさゆりも「素」で戸惑う。
ここで真紀もやっと自分の勘違いに気付き、謝罪する。

真紀「すいませーん、人違いでした。あの、ヘアスタイルが似てるもんで」
男「はぁ?」

真紀「でもぉ、ぷっ、変な格好! あはは……」
一応謝るが、しげしげと相手の姿を見て露骨に吹き出すと、笑いながらそそくさとその場を離れる。
割と失礼なムスメである。
でも可愛いから許す!!(言うと思った)
つまり、真紀の頭には「編集長」=「中年のハゲ」と言うイメージが刷り込まれていたのだろう。

さゆりも、自分も一緒にバカにされたような気になったのか、険しい眼差しで真紀を見送っていたが、テッキュウ男が、自分のゆでたまごのような頭に手をやるのを見て、

男「……」
さゆり「あっはっはっはっ……」 
手を叩いて発作を起こしたようにゲラゲラ笑うのが、またまたまたまたまた、めっちゃ可愛いのである!!
男「笑うな!」
さゆり「……」
以前のレビューでは気付かなかったが、真紀もさゆりも、風采の上がらないハゲた中年を上司に持ち、その我儘に振り回されているという点で、共通してるんだよね。
さて、思いのほか長くなったので後は簡単に片付けよう。
CM後、勝は顔と名前が一致しないレギュラー子役三人と一緒に、倉庫の立ち並ぶ一画に美佐たちを探しに行く。
彼らは、美佐たちのっぺらぼうにされた子供たちが、倉庫の片隅に肩を寄せ合って隠れているのを発見するが、そこへさゆりがあらわれ、逃げ惑う勝たちを追いかけては、次々とのっぺらぼうに変えていく。
真紀から話を聞いた健が駆けつけるが、その健ものっぺらぼうにされてしまう。
ヒラの怪人とただの人間のコンビにしては、望外の成果と言えるだろう。
が、健はアイビー星人だけあって体質が違うのか、ボールボーイが体当たりすると、仮面が二つに割れて外れる。
後は、ドルフィンを呼んでマシンマンに変身し、戦うだけ。

まずは、テッキュウ男を必殺「マシンサンダー」で倒すと、

逃げようとしたさゆりの胸に、Mマークをつけて気絶させる。

眼鏡が落ち、その場に倒れるさゆり。
うむ、やっぱり奇麗だ。

マシンマン「カタルシスウェーブ!」
さらに、人間の悪い心を善に変えることができる、ある意味、究極の技とも呼べるビームを浴びせ、悪に染まったさゆりの心を浄化する。
その上で、マシンマンが指を鳴らすと、さゆりが目を覚ます。

マシンマン「何の目的で子供たちの顔に悪戯をしたんだ?」
さゆり「あたし、自分の顔がイヤでイヤで……人がいつも私の顔を見て笑ってる気がして……それで仕返しに子供たちをいじめてたの」
素直に自分の気持ちを吐露したさゆりに対し、

マシンマン「君の顔を見て笑うものひとりもいな……ぷっ」
さゆり「オイッッッ!!」 じゃなくて、
マシンマン「君の顔を見て笑うものはひとりもいない。自分でそう思ってるだけだ。
人間は顔じゃない、一番大事なことは美しい心を持つことだ!」
さゆり「はい!」
いかにも昭和のヒーローらしく、迷いのない口調で説教するのだった。
まあ、奇麗事と言ってしまってはそれまでだが、フィクションであれなんであれ、そういう奇麗事を幼い頃から叩き込むことが、子供の人間形成には絶対必要だと思う。
この後、美佐たちの仮面もマシンマンのサーベルで切り落とされ、のっぺらぼう騒動は無事解決する。
以上、テンタクル編とオクトパス編の隙間の、いわば、穴埋め的なエピソードではあるが、江幡さんのユーモラスな悪役演技と、楽しそうに悪事を働くゲストヒロインを好演した細矢さんの魅力を存分に堪能できる傑作であった。
個人的には細矢さんの画像を余すところなく貼れて、もう思い残すことはありません!
追記 書き終わってから思い出したが、最後の倉庫のシーンで、さゆりが建物の屋上から飛び降りるシーンがあるのだが、冷静に考えたら、ただの人間である彼女にそんなこと出来る筈ないんだよね。
無論、実際に飛び降りているのは男性スタントなのだが。
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