第33話「兇悪キメンガニレッド 呪いの掟」(1973年2月24日)
冒頭、アベックが道端に車を止め、男のほうが電話ボックスで電話をして、女のほうは車に残っていたが、ボックスから出てきた男が、突然両手で耳を塞ぎ、凄まじい呻き声を上げると、その体が爆発して白骨死体になってしまう。
やがて女の耳にも、なんともいえない奇怪な音……硬い金属をこすり合わせるような音が聞こえてきて、頭を抱えて苦痛の叫び声を放つ。
それは、今回の怪人キメンガニレッドの放つ破壊音波であった。

女「ああああーっ!」
座席に座ったまま、悶え苦しむ女の姿に、ハンマーを打ちつけるような金属音が重なり、

それにあわせて、カメラが徐々に引いていったかと思うと、

臨界点に達した音波攻撃により、車が大爆発を起こして巨大な炎を噴き上げる。
実に壮絶かつ派手な殺人描写であったが、残念なことに、破壊音波による犠牲者は結局この二人だけにとどまることになる。
ま、昔の特撮ではよくあることだが……
サブタイトルに続いて、

これまた度肝を抜かれるような、ギルの落ち窪んだまなこの、特大アップ映像。
モニター越しに、自分のアジトにいるキメンガニレッドに上機嫌で話しかける。
ギル「キメンガニレッド」
怪人「はいっ、プロフェッサー・ギル」
ギル「そのハサミから出る破壊音波を使えば一瞬のうちに数十万の人間どもをこの地上から消すことができよう。カブトガニエンジの持っていた破壊光線に優る素晴らしい武器だ。はっはっはっはっはっ……」

ギル「地球侵略もそのハサミひとつで十分だ」
地の底から響くような笑い声を立てると、カメラに向かってピースサインならぬハサミサインを作るお茶目なギル。
しかし、いくらなんでも数十万人を一度に殺すのは無理じゃないかなぁ?
つーか、ほんとにそんなことが可能なら、さっさとやれば良いのに、
ギル「だがその前に邪魔者の始末をつけておかなくてはなるまい」
怪人「キカイダー」
ギル「そうだ、奴がいる限り、必ず計画を妨害する」
ここでまたギルが余計な命令を発したため、計画を始める前にキカイダーを倒そうとして全部パーになると言う、今まで何度踏んできたか知れない轍を、またまたまたまた踏むことになる。
轍、多分もうぺっちゃんこ。
いや、邪魔されたら邪魔されたときのことなんだから、まずは大量殺戮計画を始めてみてはいかが?
ダークの弱点は、ギルの独裁体制がゆるぎなく敷かれているため、その方針に異議を唱える参謀役が不在だということではないだろうか。
それはともかく、そんな話をしていると、キメンガニレッドのところに戦闘員が駆けつけ、カブトガニエンジが暴れているとの知らせをもたらす。
19話に登場してキカイダーに倒された筈のカブトガニエンジは、何故かまだ生かされていた。
別にギルが仏心を出したのではなく、その第二世代タイプとも言うべきキメンガニレッドを開発するための土台として、あえて復活させてやったのだろう。
カブトガニエンジ、鉄格子で仕切られた「ドッグ」(ドック?)と言う場所にいたが、そこから逃げ出そうとして暴れまくり、止めようとする戦闘員を破壊光線で消滅させる。
そこへ兄貴分のキメンガニレッドがあらわれるが、会話文がどちらも怪人ではややこしいので、以下、レッドとエンジと表記する。

レッド「よせ、カブトガニエンジ、よせ」
エンジ「キメンガニレッド、頼む、俺をここから出してくれ」
レッド「出てどうする」
エンジ「もう一度この破壊光線でキカイダーを……」
レッド「無駄だ、俺はお前の構造を基にして改良して作られたロボットだ、俺はお前の5倍の力を身につけているのだ」
エンジ「なぁにをこのぉ……」
怒りに任せて突っ込んでいくカブトガニエンジであったが、5倍のパワーは伊達ではなく、逆にキメンガニレッドにぶん殴られて壁際まで吹っ飛ばされる。
レッド「ジェットナイフ!」
キメンガニレッド、ついで頭の左右に生えているトゲを飛ばして、カブトガニエンジの体を壁に釘付けにする。
レッド「俺はお前を消したくない。愚か者とは言え兄貴だ。しかしそれ以上抵抗すると、このビートガンで溶かす!」
エンジ「うぬうっ……」
キメンガニレッドが胸元のハッチを開いて、三角の形に並んだビートガンの銃口をちらつかせて脅すと、さすがのカブトガニエンジも悔しそうに唸り声を上げつつ、騒ぐのをやめる。
あとのことを戦闘員に任せて颯爽と出て行くキメンガニレッド。
こんな風に、過去の怪人の改良タイプのロボットが作られると言うのは極めて珍しいケースだし、二人が本当の兄弟のように人間臭いやりとりを交わすのも実にユニークなプロットである。
いかにも長坂さん好みの話……と思いきや、長坂さんではなく、「タイムショック」の多村映美さんであった。
だが、その後、カブトガニエンジはあっさりその部屋から逃げ出す。

ギル「なに、窓を破って逃走したと? キメンガニレッド、お前が甘やかし過ぎたのだ、草の根を分けても探し出し、ダークの制裁を加えるんだっ」
相変わらず死神のような面相で厳命を下すギルであったが、そんな怪人など放っておけばいいのでは?
この前の山陰ロケ編でも見られた、本来の作戦そっちのけで些細な目撃者探しに総力を挙げて結局何もかも駄目にすると言う悪癖……要するに、どれが重要でどれが重要でないかを見極め、それぞれの優先順位を的確に判断すると言う能力が、ギルには決定的に欠落しているようである。
カブトガニエンジ、キカイダーへの復仇を誓いながらその辺を適当に歩き回り、かなり大きな建物の建設現場にやってくる。

エンジ「死ね!」
たぶん、ただの肩ならしだと思われるが、カブトガニエンジ、目に付いた作業員に自慢の破壊光線を浴びせて跡形もなくその体を消してしまう。
そして、唯一残されたヘルメットを拾い上げたのが、たまたまその工事現場で働いていた光明寺であった。
カブトガニエンジは光明寺には気付かずさっさと工事現場から立ち去るが、光明寺はこっそりその後をつけ、不運にもカブトガニエンジを追っていた戦闘員に見付かり、捕まってしまう。
翌日、ミツ子が実家の書斎にいると、慌てた様子で半平が飛び込んでくる。

半平「大変、大変、大変、この記事をご覧下され」
ミツ子「この記事が何か?」
半平が指し示したのは、その工事現場から二人の人間が消えたと言うものだった。
無論、破壊光線で文字通り消された作業員と、光明寺のことである。
ほんとは、最初にもうひとり作業員が殺されているので、そのことも書かれてないとおかしいんだけどね。
半平「我輩が睨んだところでは、これは間違いなく光明寺博士ですぞ」
マサル「お父さん、工事現場にいるって言うのかい?」
半平「さよう、この現場監督が一週間くらい前に記憶喪失に掛かった身元不明の男を雇い入れたそうです」
なかなか抜け目のない半平、それこそ光明寺だと推理して、三人で工事現場に急行する。
もっとも、光明寺は行方不明になったからこそ、わざわざその来歴などが記してあったのだから、今更現場に行っても仕方ない気もするんだけどね。
過去の例から、極度に人目につくのを恐れている光明寺が、仮に無事だったとしても、その工事現場に舞い戻ってくる可能性はほぼゼロであるからだ。
と、その途中、いきなり四方八方から大量のシェービングクリームのような白い泡がスバル360の車体に吹き付けられ、長時間、吹雪の中を走ってきたように真っ白になってしまう。

エンジ「えへへへへへははっ、いーひっひっひっ、見たか、これぞカブトガニフォーム!」
それは、土手の斜面で待ち伏せていたカブトガニエンジが口から放った泡であった。
19話ではこんな技は使っていなかったが、ギルがわざわざ新しい能力を授けるとも思えないので、今まで使わなかっただけで、最初から持っていた能力なのだろう。
もっとも、その効果については今ひとつ分かりにくいのだが、直接泡に触れていないミツ子たちが、脱力したようにふらふらと車から出て路上にへたり込んだところを見ると、人間や機械からエネルギーを奪う力があるようである。
カブトガニエンジ、得意気にミツ子たちのところまで降りてくると、彼らからキカイダーの居場所を聞き出そうとするが、そこへばらばらと戦闘員があらわれ、

戦闘員「カブトガニエンジ、大人しくドッグに戻るのだ」
エンジ「いやだーっ、待て、もう少し待ってくれ、こいつらを痛めつければキカイダーの隠れ家が……」
なんとしてでもキカイダーと戦いたいカブトガニエンジ、格下の戦闘員に頭を下げてまで猶予を請うが、そんなことをするまでもなく、例によって頭上からあの聞き慣れたギターの演奏が聞こえてくる。
カブトガニエンジたちがおろおろして周囲を見回すと、土手の一番上に、ジローの姿があった。
ジロー「ダーク破壊部隊カブトガニエンジ、一度では懲りずまた現われたか」
エンジ「何を言うか、今度こそ不覚は取らんぞ!」
ジロー、そこから飛び降りて戦闘員を蹴散らし、キカイダーにチェンジしようとするが、これまた恒例行事のように、どこからかギルの「悪魔の笛」の音が聞こえてきて、ジローの動きを封じ込める。
ギル「カブトガニエンジ、最後のチャンスを与えてやる、キカイダーを殺すのだ!」
厳しいのか寛大なのか良く分からないギルの采配であった。
ま、この場合は、ちょうど良いタイミングでジローがあらわれたので、カブトガニエンジを粛清するより、ジローを倒す道具として使ったほうが得策だと言う判断だろう。

ミツ子「はっ、ジロー!」
その笛の音で、意識を失って倒れていたミツ子が目を覚まし、急いでジローの元へ向かう。
改めて言うことでもないが、水の江じゅんさんって綺麗だよね~。

調子に乗ったカブトガニエンジは、ここでジローの体にもカブトガニフォームをたっぷり浴びせて石膏像のように真っ白に塗り潰してしまうが、その泡によって「悪魔の笛」が遮断され、ジローはキカイダーに変身する。
うん? と言うことは、カブトガニフォームにはエネルギーを吸収する効果はないと言うことなのか?
単に、対象にガムのように粘着してその動きを封じるだけ?
でも、だったらミツ子たちが気絶した理由が説明できない。
ともあれ、キカイダーになったジローに、前回の敗北から改良されていないカブトガニエンジが勝てる筈もなく、良いように蹴られたり殴られたり投げられたりして、右腕の付け根を損傷してしまう。
だが、19話以来、ずーっとキカイダーとの再戦を待ち望んでいたカブトガニエンジ、

エンジ「うう、負けてたまるか、二度もお前に不覚を取ったとすればギルは俺を分解してしまうだろう……おおお、俺はキメンガニレッドより強いことを見せてやるんだっ!」
不屈の闘志で立ち上がると、悪ながら、いじましくて泣けてきそうな台詞を吐いて、なおもキカイダーに立ち向かおうとする。
ヒーローなのに割とドライなキカイダー、相手の健気さに琴線をふるわせることなく、容赦なくトドメを刺そうとするが、

ミツ子「ジロー、やめて!」
キカイダー「ミツ子さん、どきなさい」
横合いから飛び込んできたミツ子が、体を張ってキカイダーを止めようとする。
こんな場合でも、管理人が気になるのはミツ子さんのパンツが見えないかなぁと言うことばかり……

ミツ子「ね、見て、カブトガニエンジはもう立てないわ。彼はあなたに敗れたことでダークの厄介者にされてきたのよ。気の毒だわ」
やや唐突な感じもするが、ミツ子はもうこれ以上戦うことはないと、必死にキカイダーを説得する。
でも、実際のところ、良心回路を持つゴールドウルフ以外のロボットには、そんな情けを掛けたことは一度もないミツ子が、急にそんなことを言い出すのはやはりちょっと違和感がある。
それに、過去のロボットはことごとくキカイダーに負けているのだから、ミツ子の論法に従えば、ダークは、「厄介者の巣窟」になっちゃうのでは?
もっとも、一度倒されて、特に理由もなく修理されたロボットなんて、カブトガニエンジぐらいではあろうが……
とにかく、このシーンを成立させるためには、その前に、ミツ子がカブトガニエンジの中に何らかの人間らしさを見出すような伏線を持ってこないと駄目だろう。
キカイダー、ミツ子の手を振り解いてカブトガニエンジに飛び掛り、馬乗りになるが、
ミツ子「やめて、このままにしておけば、ダークに殺されるわ!」
キカイダー(いや、ワシが今から殺すところなんだけど……) と言うのは嘘だが、いまひとつ分かりにくいミツ子の説得に、キカイダーも遂に折れて、カブトガニエンジを赦してやる。
CM後、

これも相当不自然だが、ミツ子はカブトガニエンジを自宅に連れて帰り、鉄格子で仕切られた狭い空間のベッドに縛り付ける。
ミツ子「ごめんなさいね、こんなところに入れたりして……ここはお父様のロボット管理室なの。窮屈だけど少しの辛抱よ、お父様が帰ってらしたら、すぐにこの体を治療して元通りに」
エンジ「余計なお世話だ。ほっといてくれいっ」
ミツ子「まあ」
いや、カブトガニエンジは別に改心した訳ではなく、単に負傷して戦えなくなっただけなのだから、それをミツ子たちが修理してやる義理はこれっぽっちもないと思うのだが?
また、前回はひとりでジローの腕を直したほどの技量を持つミツ子なのだから、いつ帰ってくるか知れない光明寺を待つより、ちゃっちゃと自分で直してしまえば良いのでは?
半平「そうですよ、こんな怪物ほっときゃいいんですよ、なんで助けたのかさっぱり分からん」
ミツ子「……」
それを見ていた半平も同じ疑問を口にするが、ミツ子は何も答えようとしない。

半平「今にですな、アンドロイドマンがここを見つけて、そーっとやってきて、頭をポカリ! おおっ?」
半平が喋ってる最中、まさにそのアンドロイドマンたちが背後のから忍び寄り、半平の掛け声に合わせてその後頭部を殴る。
半平「言ったとおりでしょ!」
半平、あえなく昏倒し、ミツ子はカブトガニエンジと共に、キメンガニレッドのアジトに連行される。
今、便宜上、カブトガニエンジと共に……と書いたが、それは後のシーンから類推しただけで、実際の映像では、ミツ子だけが連れて行かれている。
それを見ていたマサルはこっそり後をつけ、山の中のアジトに勇敢にも単身潜入しようとしていたが、

戦闘員「あの小僧、どうします?」
レッド「ほうっておけ、こちらからわざわざキカイダーを迎えに行く必要はなさそうだ。あの小僧がそれをやってくれる」
その様子は監視カメラによって丸見えとなっていた。
なお、このキメンガニレッドの台詞もちょっと変である。
つまり、マサルを探しにジローがここに来るだろうから手間が省けると言うことなのだろうが、マサルは発信機も何も持ってないのだから、手掛かりもなしにジローがここまで辿り着ける筈がないからである。
そもそも、ジローをアジトにおびき寄せたいのなら、最初からミツ子の家にその旨を記した置き手紙でも残しておけば済む話ではないか。
このあたり、レビューではいちいち書かないが、工事現場に行ったジローが光明寺博士のヘルメットを拾うシーンや、家に戻ってきたジローが半平と会話するシーンとか、必要のない無駄なシーンが多くてテンポが悪くなっている。
極端な話、マサルがミツ子たちを尾行して基地に潜入しようとする一連のシーン自体、後の展開から言えば不要なんだけどね。
それはともかく、カブトガニエンジはミツ子と一緒にアジトの牢にぶち込まれていた。

エンジ「キメンガニレッド、俺を消すつもりか?」
レッド「俺はお前を兄弟のように思ってきた、俺は今まで何度もお前を庇ってきた、だがもう駄目だ、ダークの掟に従うよりない」
エンジ「キメンガニレッド、助けてくれ、もう逃げたりはしない」
牢の前に来たキメンガニレッドに、意地も誇りもかなぐり捨てて哀訴嘆願するカブトガニエンジであったが、キメンガニレッドはその体を冷たく突き放すと、
レッド「安心しろ、今すぐ処刑はしない。俺がキカイダーを地獄へ送ってからだ。それならお前も諦めがつくだろう」
ミツ子「ジローを?」
レッド「そう、奴は必ずここにやってくる」
ミツ子「ジローはあんたなんかに負けやしないわ」
レッド「ふぁっはっはっはっ、小娘め、何を言う!
早見優! まあいい、その空威張りももう出来なくなる。お前には今すぐ死んでもらう」
キメンガニレッドの言葉に、思わず壁際まで後退するミツ子。
レッド「殺す前にお前の探していた親父にあわせてやろう」
ミツ子「え?」
冷酷なのか、義理人情に厚いのか、いまいちよく分からない性格のキメンガニレッドは、部下に命じて向かって左側のシャッターを開けさせ、隣接する別の牢獄の内部を彼女に見せてやる。

何事かと視線を向ければ、なんと、そこに、光明寺博士がぼんやりとした顔をして座り込んでいるではないか。
ミツ子「お父様、お父様!」
レッド「カブトガニエンジ、博士はお前を追っている最中に捕らえたのだ」
ミツ子が必死に呼びかけるが、光明寺は何か薬でも投与されているのか、何の反応も見せない。
でも、今までの展開から見て、光明寺が捕まったのは昨日だと思われるのに、なんでキメンガニレッドはさっさと博士の身柄をギルの下に送り届けなかったのだろう?
キカイダー抹殺に匹敵するくらいの大手柄になっていたと思うのだが……
それどころか、
ミツ子「お父様をどうする気?」
レッド「跡形も残らぬように消してやる」
ミツ子の問い掛けに、ビートガンの銃口を開きながら、それこそ馬鹿じゃないの? と言いたくなる答えを返すキメンガニレッドであった。
いや、ギルが光明寺の身柄を押さえようと、第1話から躍起になっているのはダークのものなら知らないものはない常識だと思うのだが……
あるいは、博士をではなく、「お前を跡形もなく消してやる」と言いたかったのだろうか?

エンジ「おお、よせ、キメンガニレッド」
と、ここでカブトガニエンジがミツ子をその体で庇うように前に出て叫ぶ。
レッド「何故邪魔をする? 仏心がついたのか」
エンジ「やめるんだ、やめろ」
レッド「どけえっ、死にぞこない!」
エンジ「うっ、ああっ!」
構わず発射されたビートガンを浴びて、あえなくカブトガニエンジは破壊される。
うーん、これも、なんか唐突な感じがするんだよねえ。
こんな浪花節的な展開を成立させるためには、事前に、カブトガニエンジがミツ子に恩義を感じているようなことを示すシーンを置く必要があると思うのだが?
で、そのショックで牢の扉が開いたので、ミツ子はとっとと逃げ出す。
この後、どうやって突き止めたのかまったく説明がないままジローがアジトへ潜入、キカイダーに変身してキメンガニレッドたちと戦い、ミツ子および光明寺を逃がす。
ちなみにあんなに頑張って岩山を上り下りしていたマサルは、キカイダーとミツ子が洞窟の入り口から出てきたところで何事もなかったように合流しているので、管理人が、マサルのシーン自体不要だと前記した理由がお分かり頂けるかと思う。
この後、洞窟の中でキメンガニレッドに待ち伏せされ、必殺の破壊音波をまともに食らうキカイダー。

キカイダー「おっ、おおっ、なんだこの音は? この破壊音波を防ぐものは何もないっ」
遮蔽物のないトンネル状の洞窟の中にいると言うのは、いわば巨大なメガホンの中にいるようなものなので、ただでさえ強力な破壊音波が増幅されて襲い掛かり、キカイダーの電子頭脳を狂わせ、今にもその体が木っ端微塵に破壊されそうになる。
そんな絶体絶命のピンチに駆けつけたのが半平と愛車のスバル360であった。

キカイダー「助かった、これで音波が防げるかもしれない」
半平「どうしてこんなところへ?」
キカイダー「ハンペン、アクセルを一杯に吹かして俺が良いと言ったらエンジンを切って外へ飛び出すんだ」
半平「は、はい」
何がなんだか分からないままに、言われたとおりアクセルを全開にする半平。
レッド「くそう、俺の音波を妨害する気か!」
ナレ「半平の車のエンジン音が雑音となって、キメンガニの破壊音波の効力を○○している」
キカイダー「いまだ、エンジンを切れ! 外へ出るんだ」
半平がエンジンを切って車から飛び出して外へ出ると、

レッド「しまった、図ったな、キカイダー! 俺の音波で俺がやられるとは……」
破壊音波が跳ね返されて、キメンガニレッドの体を損傷させる。
……
はい、さっぱり意味が分かりません! ま、「コブラ」の異次元レース篇にあった、殺人超音波を共鳴現象で跳ね返す……みたいなことがしたかったんだろうが、車のエンジン音でそんなことが出来るとは到底思えず、残念ながら失敗していると言わざるを得ない。
この後、キカイダーが手負いのキメンガニレッドを撃破して事件解決となる。
終わってみれば、キメンガニレッド、一体何がしたかったんだろうと言うことになってしまったが、最初に書いたように、すべてはキカイダー抹殺と言う余計な仕事を与えたギルの責任なのである。
ちなみに、今回も、光明寺はアジトから逃げ出した後、再び姿を晦ましてしまう。
すぐ目の前に父親を見ながら再会できなかったミツ子はひどく落ち込むが、

マサル「姉さん、元気出せよ、お父さんが生きてるって分かったんだ、生きてさえすりゃそのうち見付かるさ」
半平「そうですとも、あ、それにしてもあのカブトガニエンジがミツ子さんを助けたとは不思議ですなぁ」
マサル「きっと姉さんの気持ちが通じたのさ」
ミツ子「私もそう思いたいわ」
マサル「だけどジローにはどうして姉さんの気持ちがわかんないのかなぁ」
半平「お、お、おっ」
ミツ子「マサル!」
半平「はっはっはっはっ」
マサル「いいから、いいから」
今回の事件をしみじみと振り返りつつ、こまっちゃくれた口調で際どい台詞を紛れ込ませるマサルに、半平も思わず大笑いし、キカイダーもちょっと照れ臭そうに横を向く、実にほのぼのとしたクロージングであった。
以上、荒削りではあるが、兄弟怪人の泥臭い人間関係や、ミツ子がカブトガニエンジと心を通じ合わせることなど、全体的にドラマ重視のエピソードで、台詞にもセンスが感じられ、長坂さんとはまた違った切り口の面白さが味わえる意欲作であった。
多村さんが、これ一本きりしか書いてないのが残念である。
- 関連記事
-
スポンサーサイト