第15話「ゴッド秘密基地!Xライダー潜入す!!」(1974年5月25日)
二人のニューヒロインが初御目見えした記念すべき回である。
マコの早田みゆきさんと、チコの小坂チサ子(仁和令子)さんね。
冒頭、小脇に青い包装紙の箱を抱え、薄汚れたモーニングにこうもり傘を手にした、異様に顔の白い男がよたよたと小さな個人病院の中に入っていく。
怪優・沼田曜一さん演じる、怪人クロノスの人間態である。
診察室の前のソファに座った老人に、看護婦が「次の方どうぞ」と促すが、男はなかなか入ってこない。

看護婦「変だわ、確かにひとりいた筈なのに……」
看護婦が気になってもう一度見に来ると、男は箱をそこに置いたまま姿を消していた。

看護婦「忘れ物かしら?」
看護婦がそれに気付いて持ち上げた瞬間、背後から再び現れた男がその肩を叩く。
看護婦「はっ、ああああーっ!」 男「……」
いきなり死人のように青白い顔を間近に見て、思わず悲鳴を上げる看護婦さん。
……
何がしたいんだ、お前は? はっきり言って彼女に姿を見せる必要は全くなく、小奇麗な看護婦さんを驚かしたかっただけとしか思えない。
要するにセクハラおやじの一種である。
悲鳴を聞いて、診察室から川上と言う医者が飛び出てきたときには、男はもういなくなっていた。

川上「どうした?」
看護婦「急に後ろから……患者さんの忘れ物です」
川上「私が預かっておく。君はもう帰っていいよ」
川上は、驚いた拍子に看護婦が落とした箱の中かに転がり出た、奇妙な人形を拾い上げると、そう言って診察室に戻る。
川上は、すぐにカーテンを引いて人形を診察台の上に置く。
と、部屋が急に暗くなり、人形の目が光ってGOD総司令の声が流れ出す。
だが、川上は恐れる色もなく、姿勢を正して謹聴する。
そう、彼はGODのメンバー(協力者?)だったのである。

総司令「川上博士に命令を伝える」
川上「はっ、GOD総司令」
総司令「君の優れた外科手術の腕をGODが必要とするときがきた。総司令の名の下にGODの日本基地アポロンの宮殿に案内する」
メッセンジャー人形は、その時刻と場所を指定すると自動的に消滅する。
川上「GODの日本基地、アポロンの宮殿か……」
しかし、こんなアナログな方法でメッセージを伝えることに一体何の意味があるのか、さっぱり分からない。
電話しろ!!

男「アポロン宮殿通信室へ、川上博士に総司令の命令は伝達、完全に連絡用テープは消滅しました」
通信員「残る一体は電子工学の宮本博士へ渡せ」
男「了解、城北大学へ行くんだ」
バンで次の目的地に移動しなから、本部に連絡を入れるクロノス。
しかし、なんで怪人が通信員に敬語使うの?
あと、普通は出掛ける時に誰と誰に渡すのかは聞かされてるよね。
城南大学と全く同じ外観の城北大学の外観を映した後、すぐに内部の映像に切り替わるが、

ここで、新たなヒロインのひとり、早田みゆきさん演じるマコが初登場する。
最初から、ミニスカを履いて階段を降りてくるあたり、特撮ヒロインとして将来が楽しみな逸材である。
どうでもいいが、内部のつくりがさっきの病院と全く同じに見えるのがちょっと悲しい。
マコは、向こうから来たクロノスとぶつかり、二人とも手にしていた青い箱を落としてしまう。

マコ「あ、ごめんなさい」

男「気をつけろ! ぬうっ」
マコはすぐ謝るが、男は忌々しそうに悪態をつくと、箱を拾って階段をのぼっていく。
しかし、全く同じ包装の箱が二つあったら、普通はどっちが自分のか確かめてから行くよね。

マコ「ふん、なによ、自分の方からぶつかっておいて」
早田さん、実に親しみの持てる可愛らしい顔立ちで、管理人、もろに好みのタイプである。
あと、なんとなく喋り方や雰囲気が、「バイオマン」の牧野美千子さんに似てるような気がする。

クロノスは宮本博士の部屋に行き、机の上に箱を置いて人形を取り出そうとするが、中にはみかんやお菓子などがぎっしり詰まっていた。
男「これは……あっ」
一瞬ギョッとするが、すぐに箱を取り違えたことに気付く。

チコ「なにしてたのよ、遅かったじゃない」
一方、マコは友人のチコと一緒に、大学の中庭にある池のほとりに腰掛けようとしていた。
小坂チサ子さん演じるチコの初登場シーンであるが、のっけから、ジーンズ越しにぷりぷりしたお尻を披露してくれて、これまた特撮ヒロインとして将来が楽しみな逸材であった。
言うまでもないが、二人はこの大学に通う女子大生なのである。

チコ「もうおなかペコペコよ」
マコ「慌てない、慌てない、ケーキにアンパン、おせんに果物、ね、待っててよ」
チコ「早くぅ」
どうやら、マコは二人分の食料と言うか、おやつを買い出しに行ってきたらしい。
でも、それを箱に入れるのは分かるが、わざわざギフト用の包装なんかするかね?
あと、重さですぐ中身が違うことに気付きそうなもんだけどね……

マコ「ほら、ね」
チコ「おなかペコペコ……」
マコ「あれ?」
チコ「何よこれは? これを食べろって言うの? もう、慌てもの!」
だが、いそいそと包装紙を破って箱を開けると、中から出て来たのが奇妙な人形だったので、チコはムチのようにしなる声で怒りの叫び声を上げる。
ちなみにその前の
「おなかペコペコ」と言う台詞、優しく囁くような喋り方が、めっちゃ可愛いのである。
もっとも、どっちが喋ってるのか、よく分からないんだけどね。

マコ「アンパン変じて人形に……あっ、そうだ、廊下でぶつかったあいつだ」
チコ「おなか空いた、死にそうだわ!」
マコも一瞬訳が分からず戸惑うが、こちらもすぐに箱の取り違えに気付く。
チコ、怒りのあまり人形の頭を叩くと、その拍子に人形から総司令の声が流れ出す。
総司令「GOD総司令の命令を伝える……」
内容は、川上博士への指示と全く同じであった。
……
だから、電話しろって言っただろうがっ! 悪役のやることとは言え、そのあまりの能率の悪さにイライラする管理人であった。
チコ「消えたわ」
マコ「な、なんのことかしら」
二人が抱き合って怯えていると、その背後にクロノスがあらわれ、首根っこを捕まえようとするが、気の強いチコに思いっきり足を踏まれ、逃げられる。

男「待てぇーっ!」
マコ「助けてーっ!」
完全な変質者と化したクロノスに追われて、必死で敷地内を逃げる二人。
うーん、仮にも大学のキャンパスなのに、その騒ぎに誰も駆けつけないというのは不自然だ。
それとも、ここは大学構内じゃなくて、近くの公園なのかなぁ?
ともあれ、逃げ惑う彼女たちの前に救世主のごとくあらわれたのが、バイクに乗った敬介であった。

敬介「どうしたんだ、君たち?」
チコ「殺されるの」
マコ「助けてっ」
敬介(うほっ、可愛い!!) やっぱり特撮ヒロインはこれくらい可愛くないとダメだよね。
速水さんが、彼女たちを選ばずに美山さんを生涯の伴侶に選んだのは意外な気もするが、二枚目と言うのは、普段から鏡で自分の美貌を見慣れているせいか、女性を選ぶ時も、見た目の美しさより人間性を重視する傾向にあるのかもしれない。
つーか、早田さんたち、実際はまだ15、6才だからね。
彼女たちを選んだら、ただのロリコン戦士である。

敬介「いったい誰が君たちを殺すって言うんだ?」
チコ「気味が悪い」
マコ「灰色の顔をした人が!」
敬介(うほっ、可愛い!!) だが、お約束として、第三者が登場すると、いつの間にかその怪人は掻き消すようにいなくなっていた。
敬介「犬の子一匹いないぜ」
チコ「嘘じゃないわ」
マコ「変な人形が声を出して……」
チコ「それを聞いたから殺すって」
敬介「人形が声を出した? なんて?」

チコ「GOD総司令の命令とか……」
敬介(うほっ、可愛い!!) 登場早々、「奇跡の一枚」を披露する小坂さん。
ほんと、めっちゃ奇麗なのだが、個人的には早田さんのほうが好みである(知るかハゲ)
敬介「その人形は何処に?」
マコ「公園のベンチよ、まだカケラが残ってるはずよ」
あれ、やっぱりあそこは公園だったのか?
でも、マコはさっき食材の入った箱を抱えて大学の中を歩き回っていたが、チコと公園で待ち合わせていたとするなら、なんか変な行動だよね。
仮に大学の寮に住んでいるとしても、
寮→買い出し→大学→公園 となり、買い出しに行った後、何故か一旦大学に戻ったことになるからである。
まあ、ひたすら些細なことなんだけど……

チコ「ここよ……あれ?」
敬介「人形のカケラらしいものはないじゃないか」
チコ「本当にあったのよ」
マコ「爆発して消えたんだけど」
チコ「ねえ?」
敬介は二人にその場所まで案内してもらうが、人形は跡形もなく消えていた。
ある意味、物質が跡形もなく消えるって、物凄いテクノロジーだが、GODはそれをこういうどうでもいいことにしか使わないのだ。
彼らの様子を近くの東屋からあの男が見詰めていた。

男「あの二人の口は封じておくか」
この、ちょっと斜めに歪んだ顔、どっかで見たことあるなぁと思ったら、「変身忍者 嵐」の悪魔道人とそっくりだった。
まあ、同じ人が演じてるんだから似て当然だが、キャラ的にもなんとなく被ってるような気がする。
その後、やはり二人は寮の、それも同じ部屋に住んでいるらしく、

マコ「おまちどおさま~」
チコ「わあ、おいしそう、やっと食べ物にありつけるわ」
テーブルについているチコの前に、マコが手製のラーメンを置く。
しかし、なんでマコは、ルームメイトのメシまで作ってやってるんだ?
あと、なんでチコの分しかないの?
ついでに、その部屋、寮の部屋と言うより、普通の民家の一室に見えるのだが……

マコ「あんな怖い思いしたのに、チコ、良く食べられるわね」
チコ「あれとこれとは別よ。いただきまーす」
それと、自分の部屋でラーメン食うのに、なんで割り箸で食べるの? 自分たちの箸ないの?
……え、ツッコミが小姑みたいに細かい? 失礼しました。

チコ「あ……あれを見て」
マコ「どうかしたの?」
チコはラーメンを口に持って行こうとするが、視線の先に異様なものを発見して、ラーメンを持ったまま立ち上がる。
見れば、窓の外に、さっきの不気味な男の影が映っているではないか。
マコ「あ、あの人はーっ!」
マコが叫ぶと影はパッと消えるが、

マコ「キャアッ!」
男「……」
次の瞬間、背後に忽然とその男があらわれ、二人は弾かれたように左右に飛びのく。
ここ、沼田さんの演技が、ほんとにただのボケ老人が震えながら立っているように見えるのが、かなりのツボである。
沼田さん、基本的に悪役が多いのだが、潮健児さんと同じく、極悪人を演じてもなんとなく愛嬌……と言うか、可愛げがある俳優さんなんだよね。

男「お前たち二人を殺す」
マコ「ええっ?」
いやー、それにしても二人とも実に可愛い!
ライダーシリーズ通して、これだけ平均点の高いペアは、他では初期のルリ子とひろみくらいだろうが、あちらはコンビと言うほど頻繁に絡んでいた訳ではないから、事実上、チコとマコこそ、ライダー史上・最強の美少女コンビと言えるだろう。
ああ、最初から彼女たちが出ててくれたらなぁ……

クロノス「死神クロノス!」
男は顔の前で両手をクロスさせると、やっと本来の姿になる。
今回は、珍しく、変身後も沼田さんが声を当てておられる。
しかし、はっきり言ってクロノスの行動は、やらずもがなのまさにヤブヘビであっただろう。
チコたちは、テープの詳しい内容までは覚えていない様子で、敬介もほんとうにGODが関与しているのか半信半疑だったのだから、目撃者など放置して、さっさと宮本博士にメッセージを伝えれば良かったのである。
が、ショッカー以来の「悪の組織」の悪い癖が出て、些細な目撃者の口封じに夢中になったせいで、かえってライダーの介入を早めてしまう結果となる。
そう、話が前後したが、そこへ敬介が飛び込んできたのである。
敬介は外に出て、ライダーに変身して戦うが、ほどほどで切り上げてクルーザーで退却する。
一方、チコとマコは、とりあえずおやっさんの店に避難していた。

立花「さ、二人とも、コーヒーでも飲んで気を落ち着けなさい」
マコ「ありがとう」
チコ「私たち、一生命を狙われるのかしら」
立花「ああ、だいじょぶだ、敬介がきっとうまくやってくれるさ」
マコ「でもぉ、もし敬介さんが失敗したら?」
立花「そしたら……いやぁ、そんな失敗する奴じゃない」
マコ、黒ぶちの眼鏡がなかなか似合ってて可愛いのだが、

次のカットでは早くも外してしまい、それっきり劇中では眼鏡っ子にはなってくれないのが、非常に惜しい。
敬介は、宮本博士に変装して指定された地下駐車場で迎えが来るのを待っていた。
変装と言っても、ほんとの変装じゃなくて、沼田さんと「地獄」で共演していた天知先生がよくやる、別の俳優が演じているのだが……
どうやら、マコとチコは、ちゃんとメッセージの内容を覚えて、それを敬介に伝えていたらしい。
だとすればクロノスが二人の口を封じようとしたのも多少は納得できるが、ひとつ大きな問題がある。
もし宮本博士にも同じメッセージが伝えられているのなら、ここで本物の宮本博士と鉢合わせしてしまうと言うことである。
その点を、敬介がまるで気にしていないのが極めて不可解である。
だから、このシーンを成立させるためには、その前に、敬介(あるいは、おやっさん)が、GODの協力者と思われる宮本博士の身柄を拘束するシーンを置かねばならないのだ。
それはともかく、敬介は本当に迎えが来るのか不安になるが、なんのことはなく、クロノスの乗ったハイエースがやってきて、敬介を丁重に拾い上げる。
車内には、既に川上博士が座っていた。

男「こちらは川上博士、そして」
敬介「城北大の宮本です」
川上「よろしく」
こういうシーンでは珍しいが、ニセの宮本博士の声は、演じている灰地順さんではなく、速水さんが吹き替えている。
男「さあて、お前たちをアポロン宮殿へ案内するんだが……」
さっきまで敬語だったのに、急にタメ口になるクロノス。
アポロン宮殿の場所は極秘事項と言うことで、男は二人に黒い布を渡して、目隠しするよう命じる。
敬介はちょっと抵抗して見せるが、下手に騒いで疑われては困るので、大人しく従うのだった。
やがて、男に言われて目隠しを取ると、車外は真っ白な霧で覆われていた。
敬介「宮殿らしきものは……」
男「人工霧を発生させて空からは見えんようになっておるんじゃ」
敬介「たいそうなところだ」
川上「さすがはGODだ」
運転手「前が、前が見えないーっ!」 男「え゛っ?」
この後、ハイエースは崖から転落して全員死亡と言う大惨事になったそうです。
ある意味、GODの大勝利であったが、嘘である。
実際は、車は無事に目的地に到着し、敬介たちが車から降りると、

前方の峠の向こうに、蜂の巣のようなドーム状の建物が、神秘的な霧の中に静かに佇んでいた。
この建物、いかにもアポロン宮殿と言う名前にふさわしい外観だし、漂ってる煙も、いかにもスタッフが頑張って焚いてますと言う感じじゃなく、本物の霧っぽくたなびいているのがグッドである。

敬介「アポロン宮殿!」
男「こちらへ……」
また敬語に戻って二人を霧の向こうへいざなうクロノス。
ここも、白い霧を抜けて別の世界へ行くような感覚を味わえる、なかなか見事なビジュアルである。
ま、肝心の、アポロン宮殿の入り口が出て来ないのが残念だが、三人は高速エレベーターに乗り、地下に降下していく。

男「このエレベーターは秒速10メートルじゃ」
川上「ほお、すると、我々は今、地下100メートルまで降りたって訳か」
男「原水爆撃ち込まれても、ビクともしない」
敬介(誰がそんなもん撃つんだ?) エレベーターは地下9階で止まり、三人は通路に出る。
と、直ちにGOD総司令の声がして、歓迎の言葉を述べるとともに、クロノスに宮殿内を見物させてやれと命じる。

男「総司令の命令じゃ、迷子にならんようにワシにしっかりついてきてくれ」
男はそう注意してガイドを始めるのだが、
敬介(どうやったら迷子になれるんだ?) 心の中でそっとツッコミを入れる敬介であった。
男は一歩も動かずに、通路の左手にある赤い蓋を開け、

男「ええ、第一区・GOD警備課、体育館じゃ」

その向こうに広がる広々としたトレーニングルームを見せる。
しかし、セットの都合があるとはいえ、ここはもうちょっと工夫して、廊下を何度も曲がるとか、そう言うシーンをまじえて、宮殿の広さを描写する努力をして欲しかったところだ。
男「警備課員は世界中のあらゆる格闘術、武術、スポーツのチャンピオンクラスをえりすぐった連中でな……」
クロノスは自慢げに解説するのだが、格闘術はともかく、スポーツは関係ないのでは?
つーか、全員素手で警備する前提でトレーニングさせるのやめましょうよ。
ともかく、クロノスは今度は向かい側の赤い蓋を開けると、そこは本格的な通信室になっていた。

男「第二区・通信課。地球を回るGOD通信衛星を通して地球のいかなる場所にも発信し、受信することができるのじゃ」
あわせて、なかなか本格的な衛星通信システムのイラストが表示される。
男「第三区・技術課、第四区・人事課、第五区・車両課、第六区・GD、第七区・作戦課、第八区・医務局……は飛ばして」
川上&敬介「飛ばすんかいっ!」 思わず二人揃ってツッコミを入れる敬介たちであったが、嘘である。
嘘であるが、クロノスがすっ飛ばしたのは事実である。
これじゃあ、全然「案内」になってないじゃないか。
でも、不完全とは言え、こうやって「悪の組織」の施設や組織構成がつまびらかに視聴者に示されるのは、たぶん、ライダーシリーズ初のことだと思うので、貴重なシーンではある。
あと、「GD」ってなんなんだろう?
さて、最後に、二人は通路のどんづまりにある、ドアも何もない部屋の前まで連れて来られる。
ほんと、さっきのギャグじゃないが、通路の端から端まで歩くだけで、どうやったら迷子になれるのやら……

敬介「ここは?」
男「総司令室」
敬介「すると、GODの総司令はこの中に?」
男「中に入ったものはおらんし、入れもしない。出入りできたのはGOD秘密警察第一室長アポロガイストだけ」
敬介「アポロガイスト」
と、壁に埋められているレリーフのマッハアキレスっぽい顔から、総司令の声が聞こえてくる。
総司令「どうかね、両博士、今見物したのはアポロン宮殿のほんの一部に過ぎん」
敬介「そりゃそうでしょうねえ……」 総司令「……」
総司令の誇らしげな言葉を軽ーく受け流す敬介だったが、なにしろ、まだ二つしか施設を見せてもらってないのだから、そう言いたくもなるよね。
そう言う台詞は、せめて5つか6つくらいの施設を見せてからじゃないと自慢にならないのである。
ま、実際には、
川上「いやぁ、驚きました、これだけでも地下の大要塞ですね」
GODに心服しているらしい川上は、素直に感動して見せるんだけどね。
総司令「後ろの小窓を見たまえ。大変面白いものが見られる。特に宮本博士にとってな」
敬介「私にとって?」
敬介が怪訝な顔で言われるままに小窓を開いて中を覗くと、溶接用の遮光マスクをつけた男が立っていたが、

宮本「城北大、電子物理学教授、および、GOD日本特務員、宮本大悟」
マスクの下からあらわれたのは、いつの間に招かれていたのか、本物の宮本博士の顔であった。
敬介「嘘だ、GOD総司令から招かれたのは私だ。私が宮本だ」
総司令「はっはっはっはっ、芝居はやめることだ、神敬介」
いささか往生際悪く自分が本物だと主張する敬介だったが、総司令に名前を呼ばれると、

首の下に手をやって、宮本博士そっくりのゴムマスクを自ら剥ぎ取る。

速水さん、後に「美女シリーズ」にゲスト出演しているのだが、実は、それより全然早く、明智先生顔負けの変装をしてたんだね。
しかも、こっちは声は敬介のままなので、声まで別人になってしまう明智さんの変装よりリアルかもしれない。
ただ、この暴露シーン、前述したように、敬介が本物の宮本博士の存在を失念しているようにしか見えないので、本物の登場に驚愕する敬介がいささか間抜けに見えることも事実だ。
敬介、男に掴みかかろうとするが、その前後にシャッターが下りて、通路に閉じ込められる。

敬介「GODの総司令、俺の変装を見破っていながら、どうして秘密基地アポロン宮殿に入らせ、内部を見せた?」
総司令「偉大なGODはこのアポロン宮殿クラスの基地を世界中に持っている。神敬介、君一人で手向かってどうなると思う?」
敬介「叩き潰す! いかに巨大なコンクリートの堤防でも、アリの穴から崩れるのだ」
崩れるかなぁ?
総司令「気に入った、君のような勇気ある人間をGODは望んでいる。GODの最高の地位に君を就ける、GODの一員になれ」
敬介「ふっふっはっはっ、GOD総司令も大したことはないな、たったひとりの人間の心も読み取れないのか? 俺がそんな人間に見えるのか」
総司令「分かった、アポロン宮殿GODの神のイケニエとなれ!」
総司令、敬介をGODに勧誘するが、無論、敬介が承知する筈もなく、ここからラス殺陣となる。

地上に出て、コロシアムの遺跡のような場所で死神クロノスと戦うライダーであったが、アポロン宮殿の手術室で、川上と宮本がとある人物に蘇生手術を行っている様子が並行して映し出され、クロノスとの戦いにも決着がつかないまま、16話へ続くのだった。
以上、15話目にしてやっと伊上さんが本領を発揮した感じの、ドラマの密度の濃い、文句なしの傑作であった。
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