第29話「ザバーンザバーンは異国の香り!~プリンセス暗殺計画」 (2008年1月19日)
と言う訳で、終わった筈の「銭形海」ですが、大政絢ファンのために特別にもう一本書くことにしました。
冒頭、いつものように海が刑事部屋に入ってくると、松山と柴田が熱心にテレビに噛り付いていた。
海も何事かと二人の間から覗き込むが、

柴田「ザバーン王国の王女が来日してるらしいんですよ」

ニュース映像の中のザバーン国の王女カイリーネは、誰がどう見ても海そっくりだった。
松山「ほらほらほら、そっくりだろ」
柴田「年も17歳で海ちゃんと一緒ですよ」
海「こんなことってあるんですね~」
などとやってると、

声「港区赤坂のザバーン王国大使館にプリンセス・カイ暗殺予告状が届けられた模様、直ちにプリンセスの身代わりになって捜査を開始せよ」
例によって、そのプリンセスの身に事件発生と言う知らせが、海のケータイに入る。
ちなみに、緊急入電の声が、具体的な捜査方法まで指示するのは極めて異例のことである。
つーか、ネタバレじゃねえか!!
二人は早速ザバーン王国大使館に向かう。

オルカ「……」
海「なんか凄く見られてます、私」
大きなシャンデリアのぶら下がる豪華な宮殿の一室で、非常識なまでの距離感で海の横顔を穴の開くほど見ているオルカと言う男を演じるのは、デビッドなのか、デビットなのか、太古の昔から全人類を悩ませ続けてきたデビット伊東さん。
B21スペシャル……懐かしい、何もかもが懐かしい……
オルカ「失礼しました、ここまで王女にそっくりとは驚きました」
オルカはそう言われてやっと気付いたように離れ、二人に席を勧め、自分も長椅子の上に無作法に足を投げ出して座る。

オルカ「私、ザバーン王国王室執務長オルカナディアロドス・サザンウィンドワード・タイガーシャークと申します」
海「長いお名前ですね」
オルカ「オルカと呼んでいただいて、結構!!」
海「日本語がお上手なんですね」
オルカ「わが国は親日派が多いですからねえ。王女も大の日本通でいらっしゃいます」

オルカ「あ、どうぞお食べください、これがわが国の特産品でポポロパンピンエックスレイヤードトレビア~ンと呼ばれるお菓子です」
オルカ、細長いグラスに差し込まれたお菓子を二人に勧めるが、それはどう見てもみたらし団子にしか見えなかった。
松山が意地汚く手を伸ばそうとするのを制すと、
海「その前に事件の詳細を教えてください」
オルカ「ああ、これをご覧ください」
オルカ、懐から折り畳まれた紙を取り出して二人に見せるが、アラビア語で書いてあるのでさすがの海にもさっぱり読めない。
オルカ「時の流れに従い、プリンセスの命の灯火は消されるべしと書いてあります」

海「単なる嫌がらせじゃないんですか」
オルカ「近年わが国に王政廃止を唱える武力グループがあらわれました、政府要人の狙撃や爆発テロ……」
海「いわゆるクーデターですね」
松山「これもそいつらが?」
オルカ「恐らく」
オルカによると、ザバーン王国の王位継承者はカイリーネ王女ただひとりで、王政廃止を企む一味が彼女を狙うのもその為だと言う。
この後、大使館でたくさんの貴賓を招いてのセレモニーが開かれることになっており、オルカは王女の警護を海に頼み、海も警視庁の威信にかけて王女を守って見せると約束する。
しかし、まあ、この手の話では、王室が善で、反体制派が悪と決まっているものだが、ザバーン王国が具体的にどんな政治を行っているのか不明なので、これだけでは何とも言えないよね。カイリーネの父親が、ゴリッゴリの独裁者&サディストで、毎日800人ほど罪のない国民を殺しているという可能性だってあるんだし。
あと、仮にも産油国(?)の王室の跡継ぎがたったひとりしかいないと言うのは、いかにもありそうにない話だ。他の近親者は既にテロリストに殺されたとも考えられるが、オルカの口調では特にそう言う事件は起きてないようなので、せいぜい、継承権第一位くらいにしておくべきだったのでは?
その後、二人はやっと王女と引き合わされる。

オルカ「ザバーン王国・王女、カイリーネクロアチアスエメラルドオーシャン
タモンアンドリューボナポルトジョゼッペ様」
海「これまた長いお名前ですね~」
オルカ「通称プリンセス・カイとお呼びしております」
松山「初めっから言え、そうやって」
例によって王女の名前もアホみたいに長い名前だったが、その中にさりげなく番組プロデューサーの名前が紛れ込んでいるのが、この番組のいつものお遊び。
……
これが恐らく「ケータイ刑事」シリーズ最後のレビューになるだろうから声を大にして言っておくが、毎週のように繰り返される、そのプロデューサー絡みのネタ、
ぜんっぜん面白くねえんだよ!! ああ、スーッとした。
いやぁ、ずーっと前から言いたかったんだよねえ。
これでもう思い残すことはありません。
以上でレビューを終わりにしたいところなんですが、やっぱり続けます。
オルカ「どうぞ、お入りください」

二人が深々と頭を下げると、扉が開いてプリンセス・カイが静々と入ってくる。
無論、大政絢の一人二役なので、手前で頭を下げている海は別人である。
どうでもいいが、この顔の見えないボディダブルの女の子、ひょっとしたらめちゃくちゃ可愛い女の子なんじゃないかと、根拠もなくプラス方面の期待を持ってしまうのは、管理人だけではないと思う。
マスクやサングラスでその一部が隠された女性の素顔を、反射的に自分好みの美人だと判断してしまうのと同じ心理的作用であろうか。
あと、海のスカートが70年代並のミニだったら、お辞儀しただけでパンツが見えたのになぁと思ったのは、管理人だけでは……え、俺だけ? おっかしいなぁ。

カイ「構わぬ、二人とも面を上げい」
松山「時代劇だな」
カイ「ほーっ、これはまことしやかそっくりじゃのう、まるで鏡でも見ているようじゃ」
海「なんで時代劇?」
自分と王女が瓜二つなのに改めて驚きつつ、海が王女の言葉遣いに疑問を呈すると、
オルカ「プリンセス・カイは、日本の映画やテレビドラマをご覧になって日本語に精通なさっております、水戸黄門、大岡越前……」
オルカが代わって説明する。
で、あらかじめザバーン王国から警視庁に申し入れがしてあったのか、オルカが海と王女の入れ替わりを頼むと、海は何の驚きも見せずに引き受ける。
私はてっきり、二人が互いの衣装を交換し合う生着替えシーンが見られるものとワクワクしたものだが、見れなかった(当たり前だ)
と、王女の衣装を着た海が、階段をしゃなりしゃなり下りてきて、松山の前に立つ。
松山「お前、あの、銭形?」
海「そうですよ」
松山「はーーーっ、馬子にも衣装ってこのことだな」

カイ「ほう、なかなかさまになっておるではないか」
などとやってると、反対側から制服姿のカイ王女がやってくる。

松山「て言うことは、こっちが王女様?」
カイ「わらわはおぬしの相棒とやらに扮せばいいのじゃな? よろしく頼むぞ」
松山「なんかやりにくいな……」
まるっきり、時代劇の世界に迷い込んでしまったような不思議な感覚に、居心地の悪さを感じるマックロクロスケこと松山であった。
考えたら、お家騒動中の藩のお姫様が彼女と瓜二つの女性岡っ引きと入れ替わるって、昔の時代劇ではめちゃくちゃありがちのプロットなんだよね。
そこへオルカが二人の衛兵を連れてきて海たちに紹介する。
オルカによれば、身代わりのことを知っているのは彼ら5人だけと言うことであったが……
さて、偽者だとバレてはまずいと言うことで、海はオルカの指導でプリンセスとしての行儀作法を仕込まれる。

一方、松山は大胆にもカイを連れ出して大使館から出ていた。
カイ「うまく誤魔化せたな、松山殿」
松山「松山はねえなぁ、敬意を表して松山先生と呼んでもらおうかな」
カイ「先生とな?」
仮にも一国の王女に「敬意を表」させる図々しいにもほどがある、日焼けサロンの帝王・松山であったが、あまりに大胆と言うか、危険な行為ではなかったろうか?
そもそもこの身代わり作戦、根本的に何か間違っているような気がするのである。
何故なら、王女とは何の関係もない女子高生と入れ替わるのならともかく、海が今回の事件を担当している刑事であることは、海自身全く隠そうとしていないのだから、テロリストが、手始めに海を始末しようと考えても不思議ではないからである。
つまり、安全な筈のカイ王女が、「海に間違われて」狙われる可能性だって十分考えられる訳で、海に扮したカイに対しても、松山が万全の警備を行わないとダメだと思うのだが、この後、なんと松山は、牛丼を買うために(カイを連れて)大使館から出ていたことが分かり、これだけでも刑事としては失格と言えるだろう。

オルカ「最近の王女様はことのほか、ヨガに興味があるのです。それは我が国のものならば周知の事実……」
一方、海、今度はヨガの特訓までさせられていたが、どう考えてもやる必要ないよね。
別にセレモニーでヨガを披露するわけでもあるまいし、だいたいそんな付け焼刃でヨガが出来る筈がない。
よって、これは一部スタッフが大政絢のトレーナー姿を見たいがために用意した公私混同シーンであり、言語道断だと断言できる。証明終わり。
おまけに、こんな露出度の低い衣装でヨガされても、全然楽しくないのである。
「ケータイ刑事」、BSの夜のドラマなんだから、もう少しお色気要素があっても良かったかなぁと今となっては思うが、まあ、アイドル女優が主役のドラマにしては今時珍しい健全さを保っていたことが、これだけの長期シリーズになった理由のひとつであろうから、一概には言えないか。
さて、松山たちは既に大使館に戻っていた。

カイ「松山殿、これはなんという食べ物じゃ?」
松山「は? お前牛丼知らないの?」
カイ「牛丼と申すかー」
松山「ツメシロ、ネギダク、ツユダク、俺のベストチョイスだ」
お持ち帰りの牛丼弁当を手に、某牛丼屋の符牒を得意げに言い放つ、世紀王ブラックサン松山。
ちなみに管理人、普段から牛丼なんか食わないので、ツメシロと言うのが「冷たい飯」だと言うのを今回レビューして初めて知った次第である。
カイ「何を言うておるのかさっぱりわからぬ」
松山「食い方、教えてやっから、こっち来い」
どう考えても要人の警護中とは思えないほどリラックスしまくっているブラックサンダー松山、そう言ってカイを隣に座らせる。

カイ、素直に松山の横に腰を下ろしてあぐらを掻く。
これが昔の特撮とかだったら、絶好のチラスポットになるのだが、「ケータイ刑事」はその辺の検閲が異様に厳しく、間違ってもスカートの奥に白いものが見えたりすることはないのである。
ちくしょう。

松山の動作の真似をしながら、牛丼をがっつくカイ王女。
松山「うめーーーーーっ」
カイ「うんめえ~っ!!」
食べ終わった後の奇声まで真似させられるのだが、王女の筈のカイが、単に言葉遣いが変なだけで、普通の外人の女の子みたいになっているのが、早くもシナリオがアイディア倒れになっている感じである。
それはそうと、以前にも書いたように、管理人、大政絢は全然好みのタイプじゃないのだが、今回無理やり気持ちを奮い立たせてレビューしているうちに、なんとなく可愛らしく思えて来たから不思議である。
まあ、やっぱり女優やアイドルについての好悪は、自分が見慣れているかどうかと言う単純な点も重要なんだよね。
にしても、色白の大政さんと並ぶと、松山の顔が尋常でないほど黒く見えるなぁ。
ほとんど喋るチョコレートである。
その後、礼儀作法の訓練に嫌気が差した海が建物から飛び出してきて、

松山「いいじゃねえか、花嫁修業だと思えば……」
海「私、高校生ですよ、まだ結婚なんて興味ありません」
カイ王女と衛兵二人が手前で牛丼食ってる後ろで、松山が海の愚痴を聞いてやっているシーンとなる。
……
いや、これ、思いっきり警備の警官たちに入れ替わりのことがバレちゃうよね?
なにが、
「この秘密を知っているのはこの5人だけ」だっ!!
あと、さっきオルカが口にしていたように、反体制派は狙撃だけじゃなくて爆破テロもしてるって言うんだから、もし今、犯人グループが爆弾によって王女の格好をした海を殺そうとしていたら、本物のプリンセスまで巻き添えにならないか?
ま、それ以前に、松山と王女が親しげに話しているところを犯人に見られたら、一発で身代わりトリックがバレると思うのだが……

松山「そんなこと言ってるとね、適齢期過ぎちゃうよ」
海「ちなみに私のケータイは『けっこん』て打つと、『血痕』に一発変換です」
松山「はぁー、そんなこと頻繁に使ってるんだ?」
松山のセクハラ臭い台詞に、変な自慢で応じる海。

松山「変な女子高生」
海「そんなことない……」

海が言いかけた瞬間、その眼前をボウガンの矢が走り抜ける。
矢は、松山の牛丼をかすめ、噴水のふちにおいてあった鉢植えを砕いてから、噴水の底に突き刺さる。

一瞬茫然とする海と松山であったが、そこはそれ、すぐボウガンの発射位置を確かめ、
松山「行くぞ、銭形」
海「はいっ!!」
……って、
身代わり作戦の意味ナッシング!! 二人は狙撃手がいたと思われる部屋に突入するが、既に犯人は風を食らって逃走していた。
松山「暗殺者は内部の人間だな」
海「……寄せる、悪のさざなみ」
CM後、俄かに緊張の度を増している大使館。
松山はオルカにセレモニー中止を要請するが、テロリストに屈することなど出来ないとオルカは突っ撥ね、

オルカ「これは不幸中の幸いですよ、あの場には王女もいた筈、でも、狙われたのはどなたですか?」
松山「……」
オルカ「これこそ、暗殺者を捕まえるチャンスなのでは?」
松山「お前、コイツをエサにするって言うのか?」
オルカ、言外に、暗殺者が身代わりに気付いていないのなら、このまま王女に扮した海を囮にして暗殺者をおびき出すべきだと主張する。
松山はとんでもないとばかりに声を荒げるが、
海「松山さん、私なら大丈夫、それより私たちの任務は王女の身を守り、暗殺者を捕まえること、セレモニーは予定通り行いましょう」
海はそんな模範的台詞を口にして、セレモニーの実行を支持するが、松山は海の父親のように、しつこく海の身を案じる。

松山「相手はな、命を狙ってくるんだぞ」
海「少し冷静に」
松山「何が冷静だ……さっきから何やってんだ」
海「おじいちゃまへの手紙です、もし私の身に何かあったら渡してもらおうと思って」
松山「縁起でもないこと言うな!! バカ」
海「でも、なんて書いたら良いのか分からなくて」
松山「だったら書くな」
海「え?」
松山「お前の身はな、俺が必ず守ってやるから」
万が一に備えて遺書まで書いておこうとする海と、そんな必要はないと言い切る松山、「銭形海」の中でもひときわ胸に沁みる名シーンである。
と、松山が粗相をして、食べていたみたらし団子の汁を、海の書きかけの手紙の上にこぼしてしまったことが、海を事件の真相に導くきっかけとなる。
海「もう何やってるんですか、子供じゃないんだから……」
松山「わりぃ」
松山、慌てて手のひらで汁をこすりとろうとするが、そのせいで、手紙の下に置いてあった用紙の端にも汚れが付着したのを見て、海、デスクの横に置いてあった白紙の束を手に取り、

その端をパラパラめくって、それにも、茶色い染みのようなものがついていることに気付く。

ついで、例の暗殺予告状を広げて、その紙と重ねてルーペで確認すると、汚れの位置がぴったり一致した。
……
しかし、仮にも暗殺予告状にそんなはっきりした汚れがついてたら、普通は書き直すよね?

海「そうか、そういうことか」
松山「どういうことだ」
不意に、晴れ晴れとした笑顔を見せると、

海「謎は解けたよ、ワトソン君」
松山「ワトソンじゃないよ、マツ、マツ」
いつもの決め台詞を放つのだった。
なんだかんだで、大政さん、可愛い!!
特に、この、とろけるような笑顔が。
と言う訳で、今回は本格的な事件が起きる前に、海が事件の真相を見抜いてしまうと言う珍しいケースなのだった。
さて、いよいよセレモニーの行われる時刻となる。

正面ホールで待っていた松山とオルカの前に、正装した王女カイに扮した海と、制服姿の海に扮したカイが静々と降りて来る。
オルカ「準備は如何ですかな」
カイ「うむ、彼女にわが国の挨拶を教えたところじゃ」
海「色々教わっちゃいました。てへっ」
カイ「よろしく頼んだぞ、ミス銭形」
海「はい、じゃあ松山さん、行って来ますね」
松山「気をつけんだぞ」
松山とカイを残し、オルカたちはセレモニー会場に移動するが、無論、セレモニー会場の様子が実際に映し出されることはない。
何故なら、予算がないからである!!
なにしろ、身代わりプロットに欠かせない合成ショットが、実に、最初の対面シーンとこのシーンの二つしかないんだから、台所事情の厳しさのほども分かろうと言うものだ。

セレモニー会場のほうを見詰めている松山の顔を後ろから覗き込むようにして、
カイ「随分心配そうじゃなぁ、そんなにミス銭形の身を案じておるのか?」
松山「あいつはまだ子供だからなぁ、俺がいないとなんにもできねんだよ」

松山「ちっ、だいたい警視総監も警視総監だ、孫娘にこんな危険な任務につけさせるか? 今度会ったら絶対文句言ってやる」
カイ「それだけ信頼しておるのであろう」
松山「もう一度見回ってくる、ここにいて下さいよ」
カイ「ウム、心得た」
護衛役としてはいささか信じがたいことに、松山はプリンセスをひとりにしてその場を離れてしまう。
まあ、犯人が身代わりに気付いていないと信じ切っていることもあろうが、個人的には王女より海のことが心配な松山のことだから、セレモニー会場を覗きに行ったのだろう。

オルカ「やれやれ慌しい男ですなぁ」
カイ「どうした、オルカ、セレモニーの途中ではないのか?」
と、松山がいなくなるとすぐ、二階の廊下部分にオルカがあらわれる。
でも、二人きりなら母国語で喋るのが普通だから、彼らが引き続き日本語で会話すると言うのはどう考えても変であるし、もしオルカがそうしていれば、一発で海の仕掛けたトリックに気付いていただろう。
オルカ「片付け物がありましてね。時に王女様のフルネームを聞いてもよろしいですか」
カイ「何を言うておる? カイリーネ……(中略)に決まっておるであろう」
オルカ、家臣としてはかなり無礼な質問をして、相手が本当に王女かどうか確かめようとするが、カイは怒る色も見せずにすらすらと本名を言って見せる。

オルカ「本人で間違いないようですな」
オルカ、懐から銃を取り出すと、

いきなりカイに向けてぶっ放す。
余計なことは言わず、さっさと引き金を引いたのは暗殺者としては100点満点だったが、

撃った直後、思わず目をつぶっちゃったのが、俳優としてはマイナス100点。
「チェンジマン」の西本さんを見習いましょう。
カイはあえなくその場に倒れ、続いてガースー黒光り松山が飛び込んでくる。

松山「どうした?」
オルカ「王女から目を離すとは、日本の警察はあてになりませんなぁ」(ごもっとも)
しかし、ここで、オルカが念のためにカイの頭をぶち抜いていたら、どうするつもりだったのだろう、海は?
暗殺者が常に防弾チョッキを着ている胴体を撃ってくれるとは限らないと思うのだが……
松山「お前が暗殺者か」
オルカ「いいえ、違います、暗殺者は王女と見張りの刑事を撃って逃亡しました」
オルカ、慌てず騒がず、松山に銃を突きつけながら階段を下り、

オルカ「ま、後から追っても無駄でしょうがね」
松山「はじめからそのつもりだったのか」
オルカ「はっはっはっはっ、あなたもとんだ貧乏くじを……引いたんだよ!!」
考えたらこのシーンも、オルカが余計なことを言わずにいきなり松山を撃ち殺していたら、どうするつもりだったのだろう、海は?
松山の態度から見て、松山は防弾チョッキを着てないみたいだから、海じゃなくて松山が殉職していた可能性のほうが高かったのではあるまいか。
ともあれ、この瞬間、三味線の音が聞こえてきて、海のお仕置きシークエンスが発動する。
最後なので、一通り再現しよう。

海「大波小波、掻き分けて」

海「七つの海を手にしても」

海「正義の海は泳がせない。その名も人呼んで、ケータイ刑事・銭形海」
左右から押し寄せる波のイメージをバックに「ちょっと何言ってるか分からない」決め台詞を放ってから、

海「私の碇で沈みなさい!!」
富嶽三十六景の「神奈川沖浪裏」のアニメの奥から真っ赤な碇を投げつけ、

オルカ「ぐああーっ、千切ってやるーっ!!」
その鎖で犯人をぐるぐる巻きにしてから、思いっきり引っ張ってコマのように回転させる。
ついで、殺された筈のカイ王女、否、海が、ゆっくりと階段を下りてくる。
オルカ「何事?」
海「正体を見せるのを待ってましたよ」
松山「お、お前、銭形か?」
海「ピンポン、正解です」

オルカ「そんなバカな、お前死んだ筈じゃ」
海「防弾チョッキです。計画はすべてお見通しですよ」
そう、海と王女カイは、セレモニーの前にもう一度衣装を交換し、本来の自分たちの姿に戻っていたのだ。
まあ、ミステリーファンなら簡単に想像がつくオチだが、今回の場合、もし入れ替えがなくても、結果はほぼ同じだったことが、そこはかとなく悲しい。
防弾チョッキを着ていれば、それが海だろうが王女カイだろうが死ななかったのだから……
それはさておき、ここから謎解き……と言うほどではないが、海の説明が始まる。
例の予告状を見せながら、

海「あなたはひとつ致命的なミスをしました。見てください、ここに染みがあります、紙に落ちたタレが染み込んだんでしょうね。デスクの紙にも全く同じ染みがありました。つまりこの予告状はあなたが書いたものです」
ついで、オルカがみたらし団子を食べながら予告状を書いているシーンが再現されるが、さすがにそんなもん食べながら暗殺予告状書く奴はいないのでわ?
それに、オルカのデスクを別の誰かが使って書いたとも考えられるので、それだけでオルカが書いたとは断定できまい。
あと、再現シーンの中でオルカが「もうすぐ出世する」と言っているのだが、王女を暗殺されてしまったのでは、大使館の責任者として、出世どころかクビにされてもおかしくないだろう。
海「恐らくあなたは武力グループと裏で繋がってたんでしょうね。前々から王女の身を狙っていた。でも王女は常に身辺を守られている。あなたの立場でもなかなか手は出せない、そこで今回の入れ替わりを利用しようと企んだ。庭で私を狙ったのも計画の一部です。そうすれば替え玉である私に警備が集中して本物の王女の警備が手薄になる。その隙を狙うつもりだった」
うーん、でも、動機としてはこれだけでは弱いよね。
王女を亡き者にしたってまだ王様は生きているのだから、すぐに王政がひっくり返るわけでもなく、たぶん、クーデター後の地位を約束されているオルカは、宙ぶらりんの状態になる……どころか、さっきも言ったように責任を取らされて、下手すれば処刑されていたかもしれないのだから。
ここは、オルカが実は王様の隠し子か何かで、カイにつぐ第二位王位継承者だったとしたほうが、すっきりしていたかもしれない。
第一、オルカが武力グループと手を結んでいるのなら、肝心のその武力グループが全く姿を見せないのはおかしいではないか。
だからあくまでオルカの単独犯としておいたほうがミステリーとしては面白かったと思う。
それともうひとつ、オルカはなんで警視庁にカイそっくりの刑事がいることを知っていたのか? もし、海と会って初めて王女そっくりだと知って今回の計画を思いついたのなら、王女たちを警戒させる結果にしかならない予告状をその前に出しているのは、明らかに矛盾している。
それはさておき、オルカはあっさり罪を認めるが、
オルカ「しかし、良く王女のフルネームを答えられたもんだ」
海「私は一度聞いた名前は絶対に忘れないんです」
オルカ「どうかな、ひとつ忘れてませんか? ここは我が国の大使館です。日本の法律は一切通用しない」
往生際悪く、外交官特権を利用して逮捕を免れようとする。
だが、いつの間にかその場に舞い戻っていた本物のカイ王女に糾弾され、衛兵たちに身柄を押さえられたところで松山に手錠をかけられる。

カイ「これにて、一件落着!!」
腕を剝き出しにして、遠山の金さんみたいなポーズを取って締め括るお茶目なカイ。

海「いよ、お見事です、プリンセス・カイ」
カイ「一度この台詞を言うて見たかった。おぬしには礼を言うぞ、ミス銭形」

海「こちらこそお役に立てて光栄です」
無事任務を果たし終えて、ホッとしたような笑みを浮かべる海であった。
まあ、武力グループまで捕まったわけじゃないので、これっきり王女が狙われることがないって訳じゃないんだけどね。

事件解決後、王女カイから感謝の気持ちとして贈られたみたらし団子(じゃないけど)一年分を味わっている海たち。
松山「しかし驚いたな、何時の間にお前たち入れ替わったんだよ?」
海「セレモニーの直前です」

海「入れ替わったことがバレないようにプリンセスにきちんとした日本語を教えておいたんです」
松山「あのな、先輩の俺にな、そう言うこと教えとけよ」
海「敵を欺くにはまず味方からです」
松山「えらそうにもう……あれ、と言うことはあの時入れ替わったって言うのは……一緒にいたのは……」
ここでやっと、松山は自分の本音を海に聞かれていたことを悟り、狼狽する。
海「私は子供だから松山さんがいないと何も出来ないんですよねえ」
松山「いや、あの」
海「あ、おじいちゃまにも何か言いたいことがあったんじゃなかったっけ」
松山「いや、あれは言葉の綾、大政絢!!」
切羽詰ってオヤジギャグをかまし、海に寒がられる、こんがりトースト松山であった。
ただ、この手のエピソードでは、松山が普段照れ臭くて言えないようなこと……ほんとは海のことを心から心配している、みたいなことを、相手がカイだと思って打ち明け、それを後で本人に持ち出されて恥ずかしがると言うのがひとつのパターンだと思うのだが、今回の場合、事前に松山が海のことを本気で心配しているのだと海自身に告げているので、いまひとつ効果的なオチになっていないのが遺憾である。
無論、本人の前で悪口を言って後でとっちめられるというパターンもありだが、「子供だと思っている」って言うのは、松山が普段から言ってることだからねえ。
つーか、森永純ココア松山から見れば、海がまだほんの子供なのは事実なんだから、いちいち取り繕う必要はあるまい。
だから、もっとひどい悪口をドカドカ言わせてないと、そのパターンのオチとしても有効に機能しないのではないかと思うのである。
と、テレビでカイ王女の会見をやっているとのことで、冒頭のように三人でテレビにかぶりつくことになるが、

記者「今回の来日で一番印象に残ったことはなんですか?」
カイ「そうじゃなぁ、牛丼がうまかったぞ」
海「牛丼?」
松山「あ、いや」
カイ「ツメシロに、ネギタクでツユダクがわらわのベストチョイスじゃな」
松山が伝授した「牛丼道」を堂々と語るカイを見て、海が松山に非難の目を向ける。

海「どういうことですかぁ?」
松山「牛丼だって、お前、立派な日本の文化じゃねえか」
さらに、「松山先生」から日本の国歌を教えてもらったといって、その場でカイが歌い出すのだが、それが「愛のメモリー」だったので、

海「これの何処が国歌ですか? 嘘を教えないでください!! これって国際問題ですよ」
遂に海が怒りを爆発させるのだった。
困った松山は、団子で乾杯しようと言ってうやむやにしようとするのだった。

海「ほんとにいいのかなぁ」

疑問を抱きつつ、やわらかいお団子を齧る海。
この画像は、管理人から大政ファンへのささやかな気持ちです。ご随意にお使いください。

海「うん、美味しい!!」
と言う訳で、最後は海の飛び切りの笑顔で締めましょう!!
今回はシリーズでも珍しいボディーガード系のエピソードであったが、全体に緊張感がなく、捻りらしい捻りがないのが物足りなかった。
犯人だって、デビット伊東さん以外に俳優がいないんだから、オルカだということは最初から分かりきってることだしね。
でも、低予算シリーズとしてはかなりゴージャスな雰囲気を出すことに成功しているので、その点は褒めてあげたい。
以上、「銭形海」の補遺レビューでしたーっ!!
……と同時に、今まで10回くらい言ってきたような気もしますが、「ケータイ刑事」シリーズのレビュー、今度の今度こそ本当に終わりです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!!
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