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「白い乳房の美女」~江戸川乱歩の「地獄の道化師」(リライト版) その1


 と言う訳で、新年最初のレビューでやんす。

 「白い乳房の美女」は、シリーズ第16弾、1981年10月3日放送。

 原作「地獄の道化師」は昭和14年に書かれたもので、乱歩の通俗長編の中では珍しく本格ミステリーの骨格を備えた作品。乱歩特有の強烈なイメージの奔流こそないものの、なかなかの力作だと思う。

 ドラマの方も、シリーズ後期の中ではトップクラスの出来栄えである。

 
 のっけから、いかにもユーウツそうな顔でお風呂に入っている「白い乳房の美女」こと、野上みや子。

 演じるのは日活ロマンポルノを振り出しに、色んな作品に出ておられる片桐夕子さんである。

 まあ、タイトルに入っているから、一応彼女がヒロイン(美女)と言うことになるのだろうが、顔出しで演じるシーンはあまりないし、実質的には岡田奈々さんと白都真理さんのWヒロイン体制と見るべきだろう。

 
 んで、幕開けから、そのみや子のかなりボリュームのあるおっぱいが、乳首の皺が数えられるほど画面いっぱいに映し出される。

 
 以前見たときは、女優さんがあまり綺麗ではなかったので気にも留めなかったが、こうして見ると、張りがあって形の良い、実に美味しそうなおっぱいである。

 
 相変わらず無表情のまま、浴槽から立ち上がり、

 

 
 心ここにあらずといった様子で機械的にタオルで自分の豊満な肉体を拭くみや子。

 これも以前は気付かなかったが、みや子の体はほんのり小麦色に焼けていて、胸元の水着の跡がくっきりしたラインを作っているのも、かなりのいやらしさである!

 ただ、劇中のみや子はひたすら暗く、じめじめした性格で、友達もあまりいなさそうなインドア派なのに、プールか海へ繰り出して普通に人生エンジョイしてるような水着跡があるのはNGであろう。

 それにしても、今思えば、地上波のテレビで(要するにタダで)これだけたっぷり女性の裸が見れると言うのは、実にありがたいことである。

 まあ、本作もそうだが、美女シリーズは基本的におっぱい星人向きの作品なので、おっぱいはげっぷが出るほど見れるが、お尻のほうの収穫はほとんどないのが、尻フェチの管理人としては遺憾である。

 風呂から出たみや子は、自分宛の差出人不明の小包を妹の愛子の前で開ける。

 
 愛子「そそっかしい人ねえ、なにかしら?」

 みや子の妹で、姉とは対照的に明るく元気な愛子を演じるのは、説明不要の岡田奈々さん。

 小包は木箱で、その中には小さな、手作り風のピエロの人形が入っていた。

 
 愛子「ピエロの人形じゃない。どうして送ってきたの、こんなもの?」
 みや子「……」
 愛子「心当たりないの?」

 人形を凝然と見ていたみや子は、一言も発さず、極度に怯えたような顔になり、毒虫にでも触れたようにピエロを放り投げると、ダッシュで部屋から出て行く。

 愛子「お姉さん!」

 怪訝な顔の愛子の視線が、不気味なピエロの人形をとらえ、ここでOPタイトルクレジットとなる。

 その数日後であろうか、原作とは違ってかなり裕福そうな野上家の門構え。

 ただし、内部の造作は、外観と比べるとなんとなくビンボー臭い。

 
 ステレオで音楽を流しながら、自分の部屋でバレエの練習に余念のない愛子。

 この、パジャマに包まれた控え目なお尻が実にキュートであるが、ガードの固い岡田さんのこと、そう簡単にパンツが透けて見えるようなパジャマは着用してくださらないのがとても残念である。

 ま、それでも念力集中すれば、うっすらとパンティーラインが見えるような気がするのである。

 むむむ……

 え、尻のことはいいから話を進めろ? わかりました。

 
 愛子「お姉さん!」
 みや子「……」
 愛子「ごめんなさい、うるさかった?」

 愛子、姿見に姉の姿を認め、急いでステレオを切る。

 みや子は相変わらず沈んだ顔で、ドアの前に立って俯いていたが、

 
 みや子「愛ちゃん……私、死んだら、あなた、お母さんと二人きりよ。お母さん大事にしてあげてね」
 愛子「どうしたの、お姉さん?」

 
 みや子「今度の公演、愛ちゃんきっと主役になれるわ。そしたら一躍バレエ界のスター」
 愛子「姉さん、馬鹿なこと言わないで」
 みや子「馬鹿なことじゃないわよ」

 ひつこいようだが、念力集中すれば、パジャマ越しにつつましやかな岡田さんのパンティーが見えるような気がするのである!

 
 愛子「ねえ、さっきのピエロの人形、あれなんなの?」
 みや子「あれは死の予告よ」
 愛子「え、妙なこと言わないでよ。誰かの悪戯にきまってるわよ」
 みや子「でも、私の体が感じるのよ……もうじき、私に死が訪れるってことが」

 みや子、寒さに震えるように、自分の腕を掻き抱いて不吉なことをつぶやいていたが、またしても急に部屋からドタドタ走り去るのであった。

 割りと騒がしいお姉さんであった。

 翌、9月10日、原作における主役と言うべき白井清一が主宰する白井バレエ団レッスンスタジオ。

 原作では白井はただのピアニストで、愛子も家事手伝い風の女性だが、ドラマではバレエ団の主催者にスケールアップし、愛子もそこに所属するバレリーナと言う設定になっている。

 
 こちらも外観と比べると、いかにも狭苦しいレッスン室で、数人のバレリーナが稽古を行っている。

 勿論、彼女たちは実際のバレリーナなのだが、若い女性のお尻がこんなにたくさん見れるとは、なかなか楽しそうな職場であった。

 
 しかつめらしい顔で彼女たちの踊りを見ている白井清一こと荻島真一さんも、

 (どいつもこいつも、良いケツしてやがんなぁ~)

 と、内心思っていたに違いない(註・違いますっ!!)

 一区切りついたところで、白井は「オデットを入れてやってみよう」と言い、部屋のコーナーに控えていた愛子と麗子のほうを見るが、二人は同時に立ち上がり、互いをけん制するような目を見交わす。

 そう、バレエ団のツートップである愛子と相沢麗子(白都真理)であったが、公演も間近だというのにまだどちらが「白鳥の湖」のオデット(要するに主役)を演じるか、決まっていない……と言うより、白井が決めかねているのだった。

 白井「それじゃあ、相沢君、君入って」

 白井、少し迷った末、曖昧な口調で麗子を指名する。

 
 麗子「はいっ」

 この、愛子の親友にしてライバルの麗子が、物語後半のヒロインとなる。

 原作では、麗子は愛子が殺されてから登場するので、互いに面識はなかったようである。

 その後、近くの喫茶店で、制作の男性から早くオデット役を決めてくれとせっつかれる白井。

 その男性と入れ違いに、カラシ色のスーツを着た女性が白井の前にあらわれる。

 思い詰めた表情の、野上みや子であった。

 白井、気まずそうな顔で、横を向いたまま、

 白井「愛ちゃんのことだったらもう少し待ってくれないかな」
 みや子「そんな話じゃありません」
 白井「……」

 妹をオデット役にしてくれるよう頼みに来たのかと思う……と言うより、思いたかった白井であったが、みや子は即座に否定する。

 そして、熱っぽい、潤んだような瞳を白井に注ぐ。

 「ついに来るべきものが来たか……」とでも言いたげな顔で、しきりにタバコを吹かす白井であった。

 そこでどんな会話が交わされたのかは、少し後に判明する。

 一方、レッスン室で思い思いの練習をしているバレリーナたち。

 麗子「どっちがオデットに決まっても恨みっこなしにしようね」
 愛子「うふ、当然よ。決めるのは白井先生だもん」

 が、続いて愛子は、麗子の父親がバレエ団の後援者だから、麗子が選ばれるに決まってると現実的な見方を示す。

 
 麗子「でも、愛子の亡くなったお父さんて白井先生の面倒見てたんでしょ?」
 愛子「うん、おんなじ田舎だったんですって……うちの父、オペラ歌手だったでしょ? 白井先生、音楽やりたくて父を訪ねてきたんですってよ」
 麗子「愛子のお姉さんと先生って幼友達なんだって?」
 愛子「そうよ」
 麗子「許婚だってほんと?」
 愛子「ええ、そうよ……麗子ショックでしょ?」
 麗子「どうして?」
 愛子「知ってるわよ、麗子が先生を好きなこと」

 愛子にズバリ指摘されて一瞬どぎまぎする麗子だったが、すぐ開き直って、

 麗子「そっ、大好き。愛子だってそうじゃないの」
 愛子「うふっ、そうねえ、好きっていうよりも憧れね」

 愛子も白井に好意を持っているのだが、自分の姉と結婚するとばかり思っているので、現実の恋愛対象として考えたことはないようであった。

 愛子はその麗子から、白井がみや子に呼ばれて喫茶店で会っていると言われて驚くのだが、さっきの感じでは、どう見ても白井はみや子があらわれたことを意外に思っていたようだから、ちょっと矛盾しているような気がする。

 それはさておき、愛子はすぐに私服に着替えて喫茶店へ向かう。

 店に入ると、既にみや子の姿はなく、白井がひとりでタバコを吹かしていた。

 現金なもので、愛子の顔を見た途端、白井はみや子にはついぞ見せなかった朗らかな笑顔を見せる。

 愛子、白井が今まで姉と会っていたと知ると、

 愛子「姉が何を話したか知りませんが、オデットの役は先生が決めてください」

 先回りしてそう釘を刺す。

 自分と同じ発想をする愛子に、白井はほろ苦い笑みを浮かべて、

 
 白井「心配しないでいいよ、みや子さんはそんな用事で来たんじゃないんだから」
 愛子「結婚の話?」
 白井「……ああ、ねえ愛ちゃん、僕は姉さんとは結婚しないよ」
 愛子「あらー、どうして?」
 白井「僕には他に好きな人がいるんだ」

 白井は思い切って打ち明けるが、

 
 愛子「まあ……麗子さんね。そう、だから姉さんこの頃元気がなかったのね」
 白井「……」

 白井が姉と結婚するとばかり思っていた愛子は、それが自分のこととは夢にも思わず、すぐに麗子の名前を口にして、謎が解けたように晴れ晴れとした顔になる。

 結局、この場では言い出せず、とりあえずコーヒーを飲む白井だった。

 一方、白井と文字通り別れたみや子は、何を考えているのか、人気もまばらな美術館に足を運び、ソファに腰掛けて、

 
 ピエロ「いやー、勘弁してくださいよー」

 とでも言ってるような、困り顔のピロエの絵をじっと見詰めていた。

 しかし、これは、みや子が白井との結婚の望みを絶たれて、ダークサイドに堕ちたシーンなのだから、彼女が見る絵も、もうちょっと不気味で暗い、邪悪な想念を具象化したようなピエロじゃないと駄目なのではないかと思う。

 同じ頃、美術館の入り口の階段の途中で、明智さんと小林少年が文代さんが追いつくのを待っていた。

 
 小林「何を見てるんですか、先生」
 明智「勿論、女の子のケツだよ!」

 じゃなくて、

 明智「え? いや、色んな顔があるもんだねえ。その人がどんなことを考えているのか想像するのも楽しいもんだよ」
 小林「あ、来ました! 大好きな先生を待たして申し訳ないって顔で」

 と、小林少年がこちらに走ってくる文代さんを見付けて叫ぶ。

 文代「すみません、遅くなっちゃって」

 
 道は全て自分のためにあると思っている(註・思ってません)文代さん、謝りながら階段を駆け上がるが、ちょうど降りようとしていたみや子とぶつかり、みや子のハンドバックを落としてしまう。

 文代「ごめんなさい、どうもすみません」

 「スワンの涙」の翔子からは想像もつかないが、文代さん、昔は悪いことをしたらちゃんと謝っていたのである!!(当たり前だ)

 文代と小林少年が、急いで散乱したものを拾い集め、バッグに戻してみや子に渡すが、みや子は怒るでも恐縮するでもなく、まるで魂の抜けたような、茫とした顔で突っ立ったままで、バッグを肩に掛けると、すたすたと向こうへ歩き去って行く。

 現時点では何の犯罪も起きていないのだが、犯罪捜査のプロとして長年培われてきた勘がささやくのか、明智はみや子の異様な態度になにか不吉なものを感じていた。

 
 明智「まるで死神に取り憑かれたみたいだ」
 文代「野上みや子って言うんですよ、今の人」

 わざとではあるまいが、みや子はその場に名刺を残していた。

 しかし、名前と住所が書いてあるだけの簡素なもので、見たところ働いている様子もないみや子がわざわざそんなものを作るだろうか?

 それから六日後、明智の予言は最悪の形で的中する。

 石膏で出来た、女性の立像を運搬していた運送屋の軽トラが追突事故を起こすが、その衝撃で石膏像にビビが入り、そこから赤い血がこぼれ、中に人間の死体が塗り込められていることが発覚する。

 
 警察で死体を覆っている石膏が取り除けられ、既に腐乱しつつある女のなまめかしい乳房が露出する。

 ちなみに、これも、片桐さんが演じてるのかなぁ?

 作り物ではないと思うが……

 死体の顔はめちゃくちゃに毀損されていて識別は不可能だったが、20代後半の女性で、死後五日ほど経過していることが判明する。

 ただ、肝心の死因について全く言及されないのは、ミステリーとして失格だと思う。

 ちゃんと検視すれば、それがガンによる病死だと分かった筈だが……

 それはともかく、波越警部は運送屋を連れて、石膏像を作った綿貫と言う男のアトリエへ向かう。

 道すがら運送屋のおやじは、綿貫に電話で石膏像の運搬を頼まれたと話す。

 
 波越「何をしてる男だ?」
 運送屋「彫刻家のようです。そんな看板が掛かってましたから」

 ほどなく車は、割と小奇麗な洋館に辿り着く。

 波越「綿貫創人(わたぬき そうじん)か……難しい名前だな。来たら、ここに石膏が置いてあった」
 運送屋「ええ」
 波越「で、この頼んだ綿貫って男は出て来なかったんだな?」
 運送屋「はい」
 刑事「どこまで運べと言われたんだ?」
 運送屋「横浜の桜木町の檜って画廊です」

 アトリエには誰もおらず、しばらく留守にしているようであったが、波越たちは、裏口から勝手に中に入り込んでしまう。

 中には、薄気味の悪い彫像や石膏が所狭しと並んでいた。

 
 刑事「二階に寝室がありますが、二、三日留守の気配ですね」
 波越「ずらかったかなぁ」(註1)
 刑事「警部、二軒先の酒屋で聞いてきましたが、近所の評判は全く良くないですねえ、独身で年は34、5だろうということで、あごひげを生やしていて、あまり売れる彫刻家ではないそうです。でも一年ほど前までは彫刻家教室をやっていて、若干の弟子もいたそうです」
 刑事「綿貫がホシですかね」
 波越「決まってるよ、こんな奇妙なもん創って喜んでる変態芸術家なんてのはホシに決まってる」

 ゾウリムシのように単細胞で、なおかつ芸術家に対する差別丸出しの波越は、綿貫が本星だと睨んでアトリエの周囲に部下を張り込ませることにする。

 註1……これを明智さんに向かって言うと、なんでか知らないが血の雨が降る。

 波越は檜画廊に行って主人から話を聞くが、綿貫のことは知っているが、そんな石膏像の話は聞いておらず、画廊にも来ていないとのことだった。

 また主人の証言から、綿貫と言う男が、変わり者で金にルーズで女にだらしがないという、波越警部の思い描く犯人像にピッタリの男だということが分かる。

 その後、捜査本部で、明智と事件について話している波越。

 野暮を承知で突っ込むと、令状もないのに人の家に上がり込むわ、民間人に事件の内容をベラベラ喋るわ、波越警部、めちゃくちゃである。

 
 波越「石膏像に塗り込められた美女の死体、まさに明智小五郎好みの事件だねえ」

 顔も分からないのに被害者を美女だと言って、勝手に明智の好みのタイプだと決め付ける波越に対し、

 
 明智「いやぁっはっはぁっ、僕好みの事件なんてひとつもありませんよ、僕は怠けてるのが一番好き、事件なんてないほうがいい」

 明智が堂々とニート宣言をしていると、そこへまさに明智好みの物件が入ってくる。

 野上愛子である。

 愛子は、あの死体は、六日前に家出した姉のみや子ではないかと話し、持参したみや子の写真を見せる。

 それを見た明智、たちまち顔色を変え、数日前、美術館で会ったあのいわくありげな女性の姿を思い出す。

 
 波越「家出だとはどうして分かったんです?」
 愛子「貯金を下ろしていったんです、50万」
 波越「旅行かもしれないじゃありませんか」
 愛子「いいえ、旅行なら連絡がある筈ですし……それに前日の晩、変なことがありました」

 愛子はそう言って、カバンの中からあのピエロの人形を取り出して見せる。

 
 愛子「姉はとても気味悪がって……もしかしたら殺されるかもしれないって言ってました」
 波越「この人形がどういう意味なのか、なにか話してませんでしたか」
 愛子「ええ、何度も聞いたんですけど」

 ともかく波越は、あの死体を愛子に確認してもらうことにする。

 明智も、美術館でのことを波越に告げ、立会いを許可してもらう。

 ちなみに明智の背後に貼ってあるポスターの標語「取り出すな 指を入れるな 向けるな人に」は、肛門のトリセツではなく、拳銃事故防止三大鉄則のことである。

 
 愛子「……」

 死体安置所で、無残な顔の死体と対面した愛子は思わず息を呑み、目を背ける。

 顔からは判別できなかったが、右の乳房に大きなホクロがあることから、愛子はそれがみや子の死体に違いないと言い、涙を流すのであった。

 しかし、原作の書かれた頃ならともかく、80年代のドラマなんだから、家族の証言だけで死体の身元を特定してしまうというのはどうなんだろう。

 指までは毀損されてないようだから、みや子の持ち物についている指紋と照合するくらいのことはしないと……

 夜、明智探偵事務所。

 
 文代「野上みや子26才、ショックねえ、石膏で塗り込められた死体が、美術館の前であった人だなんて」

 ほんとは全然ショックじゃないのに、明智さんに「私って見掛けによらずデリケートなんですの、うふふ」などと女らしさをアピールする為に心にもないことを(註・心にもあります!!)口にする文代さん。

 二人が事件についてあれこれ話していると、不意に、明智がひとりごとのように「ピエロのイメージは?」と質問する。

 
 文代「おどけ」
 小林「手振り」
 文代「厚化粧」
 小林「とんがり帽子」
 文代「赤と白」
 小林「団子っ鼻」
 文代「正体不明」
 小林「年齢不詳」

 回答者のない連想ゲームのように、交互に思い浮かんだ言葉を口にする二人の助手。

 無論、この段階で、メイントリックの手掛かりになるようなことは言わない。

 同じ日の夜であろうか、みや子の遺影を前に、愛子と母親が二人だけで家族の死を嘆き悲しんでいる。

 と、庭の鉢植えの木が倒れたのを見て、愛子が庭に降りると、植え込みの茂みが風もないのにがさがさ揺れている。

 猫でもいるのかと近付いた愛子であったが、

 
 ピエロ「うはははははっ」

 びっくり箱を開けたかのように、その眼前にいきなりピエロが飛び出してくる。

 
 愛子「……」

 あまりに突然のことで、叫ぶことも悲鳴を上げることも出来ずに固まる愛子。

 ピエロは境の竹垣に愛子の体を押し付けると、その口を手で塞ぎながら、

 
 ピエロ「分かるか、お前に……この世の中に絶望した人間の気持ちが分かるか? ふふふふふ」
 愛子「……」
 ピエロ「お前には分からない……」

 腹の底から絞り出すような声で、謎めいた言葉を口にする。

 ちなみにこのピエロ、ドラマでは妙齢の女性が扮していることになっているのだが、どう見てもおっさんなんだよね。

 原作では、真犯人が金で男を雇ってやらせていたと思うが、そうすると余計な共犯者が増えてしまうので、ドラマでは全て真犯人の単独犯と言うことになっているようだ。

 ピエロは愛子を呼ぶ母親の声を聞くと、それ以上何もせずに逃げていくが、愛子は安堵のあまり、その場で気を失って倒れてしまう。

 あまりにその印象が強烈だったのか、愛子は夢の中でもそのピエロに迫られ、さっきと同じ言葉を繰り返し投げ掛けられる。

 
 やがて愛子はベッドの中で目を覚ますが、

 
 目の前に、あのピエロが立って薄ら笑いを浮かべて自分を見下ろしているではないか!

 これはなかなかホラーである。

 声もなく、布団を首元まで引き上げで子供のように身を竦める愛子であったが、よくよく見れば、それはピエロではなく白井清一の頼もしい笑顔だった。

 たぶん、あれから一夜が明け、今はその翌朝なのだろう。

 
 白井「ピエロを見たんだって?」
 愛子「私の首を絞めたんです」
 白井「愛ちゃん、神経だよ、ピエロなんているわけないだろう」

 いると思いますが……

 愛「いいえ、私、本当に見たんです。きっとその男がお姉さんを殺したんだわ。警察にゆうべのこと……」
 白井「待ちなさい、落ち着くんだ」

 警察に通報すべく、すぐにベッドから起き上がろうとする愛子を優しくなだめると、

 
 白井「愛ちゃん、僕が好きだって言うのは、君なんだ」
 愛子「……」

 この前はいえなかった言葉を遂に口にする。

 愛子、一瞬驚いてから、じわじわと花が開いたような笑顔になるが、

 
 愛子「でも、お姉さんに悪いわ……」

 すぐに非業の死を遂げた姉のことを思い出し、目を伏せる。

 白井「いや、婚約と言うほどのものじゃないんだ、ただ、若い頃のちょっとした約束に過ぎないんだ。それにこのことは姉さんにも了解してもらったんだ。好きなんだよ、君が」
 愛子「先生……」

 一方、綿貫の家を見張っていた刑事たちは、家の前にタクシーが停まって、綿貫らしき男と若い女が人目を憚るようにいそいそと家の中に入るのを目撃する。

 
 アケミ「何おどおどしてんのよ、男じゃないの、しっかりしてよ」
 綿貫「いずれ、ばれるにきまってるんだ」
 アケミ「気が小さいのねえ、あんた」

 綿貫がいかにも不安そうにタバコを吹かしているのを見て、愛人のアケミは軽蔑したように言う。

 綿貫を演じるのは名優・蟹江敬三さん、アケミは、こちらもロマンポルノ出身の北原理絵さん。

 なんでも、この後、作家になられたらしい。

 と、二人が一服する間もなく、刑事たちが令状を手に乗り込んでくる。

 綿貫は反射的に逃げ腰になるが、すぐに身柄を押さえられ、

 綿貫「俺がやった。金が欲しくてやったんだ!」

 実にあっけなく罪を認める。

 美女シリーズ最短の事件解決か……と思っていたのは勿論、波越警部だけであった。

 次のシーンでは、早くも警察の取調室で、波越警部直々の取調べが行われている。

 
 波越「お前がやったんだな」
 綿貫「はい」
 波越「素直でよろしい、何もかも話してもらおうか」
 綿貫「話します、だから少し罪を軽くしてください」
 波越「そうはいかんよ、なにしろ殺人犯だからな」

 
 綿貫「さつじん……はん?」

 波越の言葉に、キョトンとした顔で聞き返す綿貫。

 波越「どうして殺したんだ」
 綿貫「何の話ですか」
 刑事「素直に喋ると言ったじゃないか!」
 綿貫「人殺しなんてそんな恐ろしいことやってませんよ」

 頓珍漢なことを言う綿貫に、波越が机をバンと叩き、

 波越「とぼけるな、野上みや子を何故殺したんだ?」
 綿貫「へっ、野上みや子は死んだんですか?」
 刑事「ふざけるな、殺したのはお前だ。石膏の中に塗り込めて運送屋に運ばせた」
 綿貫「いつのことですか?」
 波越「10日前だよ」
 刑事「さあ、何もかも吐いてスッキリしたらどうだ?」

 車酔いの人を介抱しているような台詞で自白を迫る荒っぽい刑事に対し、

 
 綿貫「ふふふふ、ほほほほほほほほっ、こりゃおかしいーっ、はははは、実に神秘的な見当違いだ。俺はそんな恐ろしいことやってませんよ」

 綿貫は世にもおかしそうに顔を仰け反らせて大笑いすると、きっぱりと犯行を否定する。

 刑事役の俳優たちの一本調子の演技と鮮やかな対照を成す蟹江さんの融通無碍にして金田一耕助のように飄々とした演技が素晴らしく、陰惨な事件にそこはかとないユーモアを持ち込んでいるところは、原作の綿貫と言うちょっととぼけたキャラとそっくり同じである。

 ただ、さっきも書いたように、そもそも石膏像の死体の死因が視聴者に提示されていないので、せいぜい罪に問えるのは死体遺棄ぐらいじゃないのかと思ってしまうのが、このシーンの欠点である。

 
 刑事「おい、小芝居はよせ」
 刑事「俺がやったと言ったじゃないか」
 綿貫「いやまあ、やったことはやりましたけどね」

 番犬のように芸もなくいきりたつ刑事たちを手で抑える仕草をする綿貫。

 一見小心者のようで意外とふてぶてしく、なんとなく人を喰った男である。

 波越「ようし、殺してはいないかもしれないが、石膏に塗り込めたのは間違いなくお前なんだ。お前の名前で電話してお前の家から運んでるんだよ」

 波越警部がなおも言い募るのを、綿貫はみなまで聞かずに失笑すると、

 
 綿貫「それがおかしいじゃない。俺がやったんなら俺の名前出す訳ないだろう」

 ごもっとも。

 日本のミステリードラマ史上、これほど説得力のある反論があっただろうかと言うようなエッジの利いた台詞を放つ綿貫。

 と、同時に、本人に指摘されるまで、中学生でも分かるような理屈をまったく思い付けなかった波越たちの頭の中身が心配になる管理人であったが、本当は別に心配はしていない。

 波越「じゃあ何をやったんだ?」

 波越警部が開き直って質問すると、

 綿貫「彫刻の贋作……西山泰三の贋作を三つ作って関西で売り捌いたんです」
 波越「うん、ただの贋作だけか」
 綿貫「そ、ただの贋作」

 ひょうたんから駒どころか、出て来たのがケチな贋作野郎だと知って、ガッカリするかと思いきや、波越警部は厳しい顔をまったく変えず、今度はみや子との関係を問い質す。

 綿貫によると、みや子は、綿貫が去年までやっていた彫刻教室の生徒だったらしい。

 みや子と肉体関係があったんだろうという不躾な質問を綿貫はきっぱり否定するが、みや子の面影をしみじみと回想する。

 
 綿貫「どっか暗い影があった、あの陰気さは男には好かれないなぁ、それだけにね、こう男を見る目付きがギラギラしてたなぁ」

 回想シーンの中で、綿貫の台詞に合わせて分かりやすく目をギラギラさせて物欲しそうに綿貫を見詰めるみや子タン。

 波越は念の為、みや子が失踪としたと思われる9月10日のアリバイを確認するが、綿貫は7日からアケミと一緒に淡路島に行っていたと主張する。

 綿貫「しかし、アリバイがあるのに殺人容疑者にされるとは、こいつは神秘の謎ですな、おほほほほっ」

 波越たちは当然アケミにも事情を聞き、その裏を取る。

 
 アケミ「ええ、間違いありません。7日朝一番の新幹線に乗って神戸からフェリーで洲本に行ったんです」
 波越「二人一緒ですか」
 アケミ「ええ、帰るまで……宿は洲本の淡路島ホテル、聞いてくれりゃ分かるわ」
 波越「綿貫さんとの関係は?」
 アケミ「私は結婚したいと思ってるんだけど……」

 アケミが嘘を言ってるようには見えないし、見掛けは派手だが、意外と家庭的なこの女性が、殺人の片棒を担いでいるとは到底思えず、これは完全な見込み違いかと揃って頭を抱える波越と刑事たちであった。

 その2へ続く。
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コメント

ホクロと🤡

ホクロアップのオ◯パイ丸出し画像も中々そそられる物がありますね😅ピエロに睨まれる岡田奈々さんも色気と怖さを感じますね

黒蜥蜴&パノラマ島と並んで

結構、ネタドラマ的な要素が多いこのシリーズの中でトップ3に入るでしょうか。
蟹江氏の客演も良いですがピエロ演出、マジで怖ぇ…。

>明智「勿論、女の子のケツだよ!」
主人公のスケコマシぶりが発揮されるのは序盤だけなので
これぐらいのネタは無いとレビューは苦しい?

ところで浪越警部の頭髪はネタになりません?

Re: ホクロと🤡

昔レビューした時は、片桐さんの名前すら知らない人間でしたが……

Re: 黒蜥蜴&パノラマ島と並んで

> ところで浪越警部の頭髪はネタになりません?

本人も別に気にしてる様子ないですからね。

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Author:zura1980
70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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