第28話「好き!好き!真紀」(1984年7月20日)
冒頭、オクトパスのアジト。
レディーMが、マシンマンとの過去の戦いの映像をモニターに映して、マシンマン打倒の秘策を練っていると、トンチンカンがお腹を押さえながら飛び込んできて、Mに挨拶もせずに一直線にタンスに駆け寄り、常備薬の入っている抽斗を開けてそのひとつを飲み干す。
M「トンチンカン、またお腹痛くしたの? しょうがないわねえ」
トンカンカン「はーっ」
トンチンカンは胃腸が弱いらしく、しょっちゅう腹薬の世話になっているらしい。
……
(坂口杏里の人生と同じぐらい)
どうでもええわっ! ホッと一息つくトンチンカンであったが、

M「あっ、ねえ、これ飲んだの?」
トンチンカン「はい」
M「ああっ、これ薬じゃないのよぉ!」
トンチンカンの飲んだ薬瓶のラベルを良く見たMが、血相変えて叫ぶ。
それは「ラブマシーン」と言う、どっかで聞いたような名前の極小アイテムで、効果があらわれてから初めて見た相手を好きになってしまうという、要するに「惚れ薬」だったのである。
二人がおろおろしているうちに早くも「ラブマシーン」の効き目が出るが、偶然トンチンカンの目に留まったのが、モニターに映し出されていた真紀の顔だった。

トンチンカン「わぁ、真紀ちゃんだ、えへへへへっ……真紀ちゅわん、好き! 愛しちゃったの!」
こうして、トンチンカン、こともあろうにマシンマンの仲間である真紀にフォーリンラブしてしまったのである。
オウム「真紀と結婚させるんだ、じゃないとトンチンカンは恋わずらいで死んじゃうぞ!」
M「……」
部屋の中でスキップ踏んでいる気色悪いハゲのおっさんを見ていたレディーM、オウムの指摘に思わず「死ねば良いのに」と言いたくなるが、なんとか堪え、
M「あ、良いこと思いついたわ」
抽斗から設計図のようなものを取り出すと、オウムに見せ、

M「これを使うのよ」
オウム「それはプロフェッサーKが送ってきたアンドロイドの設計図じゃないか」
M「この間の1号機はマシンマンにやられたけど、今度こそ」
……
で、それとトンチンカンの恋わずらいと、一体何の関係があるのだろう?
それはともかく、同じ頃、真紀は、

牧師「葉山真紀、あなたは高瀬健を夫としますか?」
真紀「はい、いたします」
早くも教会で健と結婚式を挙げていた。
ウェディングドレス姿がめっちゃ可愛い真紀。
健「真紀さん、愛してる」

真紀(健さん……)
指輪の交換の後、健と向かい合い、潤んだ目を閉じて誓いのキスを待つ真紀であったが、

なかなか健がキスしないのでふと目を開けると、ハッと息を飲む。

それもその筈、目の前には健ではなく、トンチンカンが立っていて、おまけに肛門のように唇をすぼませて真紀にキスを迫っているではないか。

真紀「きゃああああーっ!」
幸せの絶頂から奈落の底に突き落とされた真紀が、思わず絶叫したのは言うまでもない。

と、同時に目を覚まし、デッキチェアの上でガバッと起き上がる。
そう、すぐ予想できたように、真紀は家の中庭で昼寝をして夢を見ていたに過ぎないのだった。

真紀「なぁんだ、夢か……」
真紀がつまらそうにつぶやいていると、健が元気良く庭に飛び込んでくる。
健「やあ、勝君、真紀さん」

真紀「え……あ……いらっしゃい……」
あんな夢を見た直後なので、真紀はいささか照れ臭そうに挨拶する。
健「久しぶりに三人で外で食事でもしようと思って誘いに来たんだ」

勝「すっげーや、健さん奢ってくれるの? 行こうよ、姉ちゃん」
真紀「うん、ちょっと待って、お化粧してくるから……うふふっ」
勝「いいじゃない、そんなの」
真紀「えっ、でも、健さんと食事行くのに……ちょっと待ってて」
勝「変な姉ちゃん」
いそいそと家の中に入っていく真紀であったが、植え込みの中に怪しい男が潜んでいて彼らの様子をじっと見詰めていた。

勝「何ご馳走してもらおうかな、どうせならハンバーグがいいや」
健「ハンバーグか、いいね」
まるで仲の良い親子のように、手をつないで歩いていた三人であったが、

前方からいきなりバンが突っ込んできたかと思うと、健に激突し、健は車の屋根を転がってその後ろのアスファルトに叩きつけられる。
真紀と勝が慌てて駆け寄って名を呼ぶが、健は死んだようにピクリとも動かない。
真紀は、ちょうど近くを通り掛かった亀太に救急車を呼んでくるよう頼むが、

亀太が行った後、二人の背後に、なんとも形容しがたい格好をした男があらわれ、

勝、ついで真紀の顔にスプレーを吹き付け、たちまち眠らせてしまう。
この男こそ、中庭の植え込みに隠れていた男であった。

ついで、健がくわっと目を開き、まるで人形のような不自然な動きで立ち上がる。
健「ふっふっふっふっ……」
不気味な笑みを浮かべると、戦闘アンドロイド・カメレオン男の姿に変わる。
そう、真紀の前に現れた健は、最初からカメレオン男が化けたニセモノだったのだ。
恥ずかしながら、管理人、もう何回も見て一度はレビューしたこともあるのに、今回レビューのためにチェックしてて、その瞬間までニセモノだと言うことをすっかり忘れていたのである。
我ながら、救い難いアホだ。
でも、まあ、それだけカメレオン男の化けっぷりが見事だったとも言える。
特に、真紀を食事に誘うのに最初から勝も一緒に誘っているあたり、いかにも本物の健が言いそうなことで、それだけレディーMの研究が行き届いているということだろう。
もっとも、マシンマンの正体が健であることは、オクトパスもまだ知らないんだっけ?
長いこと見てないのですっかり忘れてしまった。
怪人「二人を車に乗せるんだ」
男「よし!」
意識のない真紀の体を抱き上げて車に乗せるという、大変嬉しい任務を受けた元力士の男であったが、

実際に真紀がお姫様抱っこされてスカートの中身が見えるようなシーンはなく、荷台に置かれるところしか見えないのはちと残念。

男「腹減った、飯食わせろ」
怪人「またかー、食うばっかりで稽古をしないから相撲部屋を追い出された癖に」
およそ「悪の組織」らしからぬ、アットホームな会話を交わす二人。
元力士の男は、別にアンドロイドでもなんでもなく、今回の計画のためにオクトパスに雇われた、ただの人間なのである。

車が走り去って間もなく、亀太が自転車に乗った警官を連れて現場に戻ってくる。
……
私、救急車呼べって言ったよねーっ!?(真紀の魂の叫び)
亀太が、轢き逃げの現場を目撃していたのならなんとなく分かるけど、真紀に頼まれただけの亀太が、救急車ではなく警官を連れてくると言うのは、どう考えても変である。
これは思うに、
「救急車+救急隊員数名」より、
「警官一名+自転車」の方が安上がりと言う、純粋に予算的な理由だったのではあるまいか。
何しろ今回は真紀のウェディングドレスに、教会でのロケ、戦闘アンドロイド、動く壁、亀太のコスプレなど、何かと物入りだったからねえ。
ともかく、現場に誰もいなかったので亀太は信じてもらえず、警官に射殺される。
間違えました。
亀太は信じてもらえず、警官に怒られる。
一方、さらわれた真紀は、残念ながら、いや、幸いにも、特にいやらしいことはされず、アジトの一室の豪華なベッドの上で安らかに眠っていた。

やがて目を覚まし、きょろきょろと周囲を見回す真紀。
うーん、やっぱり塚田さんは奇麗だ。
それに、なんともいえない華がある。

真紀「ここは何処なの? あっ、あなたは?」
ベッドの上に半身を起こした真紀、足元に、以前、自分の足を捻挫させた憎たらしい男が立っているのに気付き、身構える。
トンチンカン「真紀ちゃん!」
真紀「健さんはどうしたの?」
トンチンカン「あの男は死んだ」
真紀「うそ! 弟は?」
トンチンカン「別の部屋に閉じ込めてある」

トンチンカン「うふっ、真紀ちゃん、好き好き! 結婚したい!」
真紀「あっ、いやーっ!」
体をくねらせながら、手にした花を捧げていきなりプロポーズするトンチンカンに、真紀は跳ねるようにベッドから起き出し、死に物狂いで逃げ回る。

真紀「いやっ、いやだ」
トンチンカン「真紀ちゃん、逃げないで」
……
いやぁ、美女が怯えて逃げ回る姿って、実に色っぽいですなぁ。

真紀「いやぁーっ!」

壁を背にして、めちゃくちゃに花瓶の花を投げつける真紀。
……
そうじゃ、貼りたいだけなんじゃ。
さて、亀太は、子供たちを引き連れ真紀の家を訪ねていた。
美佐「健さんが交通事故で死んだ?」
亀太「嘘じゃないよ、地面にぐったりしてるの見たんだから」

豊「誰もいないみたいだなぁ」
彼らが葉山家の門柱にへばりついて中の様子を窺っていると、他ならぬ健が、バイクで彼らの背後にあらわれる。
健「おい、みんな、何騒いでんだい?」
亀太「出たーっ、幽霊だーっ!」
健「幽霊?」
浩「健さん、交通事故に遭ったんじゃないの?」
健「えっ、僕が交通事故?」
そこへ珍しく編集長が、ルミ子を連れて車で駆けつける。
編集長「真紀はどうした? 大事な仕事があると言うのにいくら電話しても出ないんだ」
美佐「それが良く分からないんです、健さんが交通事故に遭って、そこに真紀さんも勝ちゃんもいたって言うんですけど」
ルミ子「でもここにピンピンしてるじゃない」
みんなは怪訝な顔で、震えている亀太を取り囲むが、
健(真紀さんと勝君の身に何かあったのかもしれない……)
健はボールボーイにも手伝わせて、二人の行方を探す。
その後、亀太は路上でカメレオン男と元力士に襲われ、真紀と勝を助けたければ1時間後に操車場に来るようマシンマンに伝えろと命じられる。
再びオクトパスのアジト。
トンチンカンは、健に化けたカメレオン男がバンに跳ね飛ばされるシーンを何度も見せ、

真紀「やめてーっ!」

トンチンカン「何度見ても、あの男は死んだの。ね、諦めて僕ちゃんと結婚して」
真紀に健のことを諦めさせ、結婚を承諾させようとしていた。
なるほど、その為にわざわざカメレオン男に健の真似をさせ、そんな映像まで撮ったのかと感心してしまうが、無論、これは恋に狂ったトンチンカンに思いつける作戦ではなく、レディーMが考え出した計略なのだろう。
もっとも、これではマシンマンを倒すことより、トンチンカンと真紀を結婚させることに重点が置かれていて、いくら部下のためとは言え、レディーMがそこまで手の込んだことをしてくれるだろうかと言う疑問が湧く。
それこそ、真紀にもラブマシーンを飲ませ、トンチンカンと相思相愛にさせたほうがよほど簡単なのでないかと言う気もするが……まぁ、ラブマシーンはひとつしかないのだろう。

真紀「いやよ、あなたと結婚するくらいなら死んだ方がマシだわ!」
無論、健が死んだからって真紀がそんな申し出を受け入れる筈もなく、恋する乙女の常套句で突っ撥ねるが、
トンチンカン「うーん、それなら、あれを見ろ」
トンチンカンがメカのスイッチを入れると、壁のモニターに、小さな部屋に閉じ込められている勝の姿が映し出される。
真紀「勝!」
トンチンカン「どうしても僕ちゃんと結婚しないと言うなら弟はぺちゃんこになるぞ」
トンチンカンが別のスイッチを入れると、今度は左右の壁が動き出して、見る見る勝に迫ってくる。

真紀「勝ーっ、やめて、お願い!」
トンチンカン「僕ちゃんと結婚するか?」
真紀「いやっ!」 再度の問い掛けに、迷わず拒否する真紀タン。
ま、誰だって、弟の命より自分の幸せのほうが大事ですからね!

勝「助けて、お姉ちゃーんっ!」
隙間はどんどん狭くなり、勝は今にも押し潰されそうになる。

真紀「……」
一瞬、魔が差したように、
「このまま死んでくれないかなぁ、あの子……」と思ってしまった真紀であったが、嘘である。
弟思いの真紀がみすみす勝を死なせる筈がなく、
真紀「分かったわ、結婚するから弟を助けて!」
トンチンカン「やったーっい!」
やむなくOKすると、トンチンカンは跳び上がって喜び、スイッチを押して壁を元の位置に戻す。
トンチンカン「真紀ちゃんと結婚、ランラン、幸せねえ~っ」

真紀「うう……健さん、なんで、どうして死んじゃったの……」
文字通り狂喜乱舞するトンチンカンをよそに、真紀はぼろぼろ涙をこぼして悲嘆に暮れていた。
しかし、今度の一件はレディーMがすべてお膳立てした筈なのに、肝心の彼女が真紀の前に一度も姿を見せないというのは、いささか物足りない。
後編に続く。
- 関連記事
-
スポンサーサイト