第17話「夏の怪奇シリーズ 怪談 ほたるヶ原の鬼女」(1972年7月28日)
今回のエピソード、実は一度スルーしたのだが、読者様のリクエスト(と言うほどでもないが)により、やはり書くことにしたものである。
冒頭、とある一軒家の中で、ヤプールが民子と言う女の子に話し掛けている。
ヤプール「民子よ、ママに会いたくはないか?」
民子「別に……」
ヤプール「そうか」
民子「……」
ヤプール「ほな、帰るわ」
民子「おつかれしたーっ」
じゃなくて、
ヤプール「民子よ、ママに会いたくはないか?」
民子「とても会いたいです。あわせてください」
ヤプール「ようし、このホタルンガについていけ、お前はママに会えるだろう」
民子「嬉しい」
ホタルンガと言う巨大な蛍に導かれて、薄暗い廊下を進んでいく民子の姿に続いて、深夜、ほたるヶ原を抜けるバイパスを走っていたカップルの車の前に、

不気味なほどたくさんの蛍の飛び交う中、武器を手にした鬼女が、こちらに向かって突っ込んでくると言う、心臓が縮み上がるようなショックシーン。

そして、二人のものと思われるしゃれこうべが仲良く並んでいる、おぞましいイメージ。
ま、カップルが憎いのは誰も同じだが、別にこれはカップルを標的にしているのではなく、その道を通る車を手当たり次第に襲っているのであった。
奇怪な事故の多発を知ったTACは、そのパイパスが兵器工場とTAC本部を結ぶルートになっていることを重視し、警察とは別に独自に調査を開始する。

ひっくり返った車のまわりで、実地検分をしている北斗たち。

民子「蛍さんの嫁入りは油も要らぬ~♪」
それを、車椅子に乗った少女が、物悲しい童謡を歌いながら土手の上から眺めていた。
車椅子の少女!!
我々ボンクラ魂を持つ者にとっては実に甘美な響きを持つフレーズであり、また、いかにも上原さん好みのキャラクター設定であったが……
その少女の存在に気を止めたのは、今回の主役、夕子タンだけであった。
やがて今野が近くの草むらに倒れていた白骨化した(カップルの?)死体を発見し大騒ぎする。
吉村「なんですか、猫踏んづけたみたいな声出して、それでもTACの隊員ですか」
今野「超獣は良いんだが、骸骨の方はねえ……どうも、お騒がせしました」
いや、仮にも遺体を発見したら大騒ぎするのが普通で、今野の慌てぶりを冷やかす北斗たちの頭がおかしいのである。
北斗「負傷して水を求めにきたところを襲われたらしいですね」
吉村「蛍です」
吉村隊員がピンセットで蛍の死体をつまみ上げ、北斗の手の上に載せる。

北斗「蛍に気を取られてハンドルを切りそこなったんじゃないでしょうか」
山中「うーん、その可能性は十分あるな」
と、山中隊員も北斗の推理に賛同するのだが、蛍が出るのは今に始まったことじゃないのだから、もしそうなら毎年同様の事故が起きてないとおかしいだろう。
今野「分かった、蛍に食われてしまったんだ」
北斗「バカ言っちゃいけませんよ、野犬や野ネズミの仕業に決まってますよ」
山中「いや、野犬や野ネズミならもっと草が踏み荒らされてる筈だ。足跡ひとつ残してない」
北斗は今野の推理を否定し、山中は北斗の推理をも否定して、要するに何がなんだかさっぱり分からないことになるが、実は今野隊員の冗談みたいな答えこそ、正解に一番近かったことが後に判明するのである。
被害者の時計から、事件が発生するのは決まって午前2時頃だと判明する。
V7計画と言う重要な計画を控えていることから、竜隊長はこの事故の徹底的な調査を命じ、自分は家に帰ってうどん食って寝たという。
そんな中、夕子は、事故現場付近の草むらで歩行練習をしていた民子と会い、仲良くなる。

民子「私、ここが大好きなの、何処でも見下ろせるんですもの……ああ、お父ちゃんだ」
などと話していると、道路の向こうから、サラリーマン風の中年男性が歩いてやってくる。
夕子は自宅の前まで二人についていくが、道々、父親と話をして、民子が5年前に事故に遭い、それ以来歩けなくなっていることが分かる。
夕子が本部に戻ると、珍しく竜隊長がお冠で、ガミガミ部下を怒鳴り散らしていた。
馬券でも外したのであろうか?

竜「これだけの人数が揃っていて、手掛かりひとつ掴めんとは、子供の使いじゃないんだぞ」
北斗「しかし、街の人の中に目撃者はゼロなんです」
竜「ゼロだから手ぶらで帰って良いと言うのか?
手ブラで帰って良いのは美川隊員と南隊員だけだっ!!」
じゃなくて、
竜「みんなもっと自分の任務に責任を持て」
山中「申し訳ありません」
みんなを代表して山中が頭を下げるが、竜隊長の発言ははっきり言ってめちゃくちゃである。
そもそも、刑事でもない隊員たちに聞き込みをさせるというのがおかしいし、事故現場は草深い山の中のバイパス、しかも深夜2時と言う時間帯なのだから、目撃者がいなくても仕方のないことだからである。
折も折り、梶隊員が興奮した様子で飛び込んできて、
梶「隊長、遂にモザイクが外れましたっ!!」
竜「外れたかっ!!」
じゃなくて、
梶「隊長、V7が完成しました!!」
竜「完成したか」
梶「これが輸送計画書です」
竜「おおっ」
梶が、V7の設計図などのファイルを広げて見せるのだが、

今野「かっこいいなぁ」
およそ防衛軍の隊員とは思えない、子供っぽい嘆声を目をキラキラさせながら上げる今野隊員に対し、

美川「……」
美川隊員の、心底興味なさそうな醒めた顔が、実に良い対照を成している。
これは同時に、当時の男の子たちと女の子たちの、この手の番組に対するそれぞれの反応をダイレクトに表現しているようにも見える。
無論、こういうのが好きな女の子だっていたんだろうけどね。
で、そのV7とは、超獣攻撃用の大型ミサイルであり、TACが極秘に開発を進めていたものなのである。
北斗「まさに超獣粉砕用ミサイルですね」
山中「喜ぶのはまだ早い、我々にはV7計画が残ってるんだ」
そのスペックの高さに北斗も感嘆の声を上げるが、それが誇大広告であったことが約17分30秒後に判明する。
んで、V7計画とは、そのV7ミサイルを、TACの霞峠工場からTAC本部まで輸送するという、そのまんまの計画なのだが、その途中、例のほたるヶ原バイパスを通らねばならず、竜隊長がピリピリしているのもそこに起因していたのである。
コース変えれば?

梶「V7計画をしばらく延期したらどうだ」
山中「しかし超獣攻撃用ミサイルなんだ、一日でも早く欲しい」
梶「だがもし敵が知ってるとすると必ず襲ってくるぞ」
隊員たちが額を集めて話し合っていると、手前右側から、

にょにょにょ……と言う感じで竜隊長の横顔がせり出してくる。
竜「……」
目を瞑って何か思索に耽っているふりをしつつ、「今日の晩メシ何食おうかなぁ」と考える竜隊長であったが、嘘である。
嘘であるが、結局何も良い知恵が浮かばなかったのも事実のようで、北斗と夕子の、深夜、実際にあのパイパスを走ってみるという進言を、そのまま受け入れるのであった。
深夜2時、事故現場付近までやってきた二人の前に、果たして、鬼女の面を被った怪人物があらわれる。
もっとも、幽霊ではなくちゃんと実体を持っているようで、二人が銃を撃つと、草薮の中を物凄いスピードで逃げていく。
ちなみに、同じ上原さんがホンを書いた「イナズマンF」13話にも子守唄を歌いながら人を殺す鬼女が登場しているが、鬼女面の殺人鬼と言うのが、上原さんのお気に入りのイメージのひとつだったのだろう。
無数の蛍に襲われている北斗を残し、夕子がひとりで鬼女を追いかけるが、ちょうど民子の自宅前で見失ってしまう。
と、見れば、こんな時間だと言うのに、民子が大きな蛍を入れた虫かごを抱いて、家の前に座っているではないか。

夕子「民子ちゃんじゃない、どうしたの、こんな夜中に」
民子「ホタルンガに甘いお砂糖水をあげてるの」
夕子「ねえ、民子ちゃん、今、ここに誰か来なかった?」
民子「誰も来ない、ここは誰も来ないの」
夕子「お父さんとお母さんは?」

民子「いないわ」
夕子「じゃあ、民子ちゃんひとりなの?」
……
管理人がこの話を一度スルーしようと思った理由、および、最初に彼女が登場したとき、「車椅子の美少女」と書かなかった理由がお分かりいただけただろうか?
上原さんも、オンエアを見て「かーっ!! 違うんだよなーっ!!」と、絶叫されたのではないかと思う。
ほんに、ゲストヒロインのキャスティングは大切だ。
で、夕子はそのまま民子の家に泊まることになるのだが、さっきの場所に北斗隊員を残しているというのに、ちょっと不自然だよね。
無論、無線で報告はしたのだろうが。

あと、せっかくのお泊まりなのに、色気のない制服姿のままと言うのはいただけない。
せめて、民子の母親の浴衣を借りるとか、なんだったら、下着姿でも良かったんですよ?
夕子、ふと隣を見ると、いつの間にか民子の姿が消えていた。
さらに、廊下の奥から、男とも女とも付かぬ声で、あの童謡を歌っている声が聞こえてくる。
夕子、銃を構えて油断なく周囲に目を配りながら声のするほうへ足を運ぶが、

その部屋には、浴衣姿の女性らしき人影がこちらに背を向けて座り、まるで赤ん坊でもあやすように、体を揺らしながら子守唄(?)を歌っていた。
だが、夕子が近付くと、人間業とは思えない動きで垂直に飛び上がったかと思うと、空中でパッと消えてしまう。
急いでさっきの部屋に戻ってみると、いつの間にか民子が布団の中にいて、すやすや眠っているではないか。
夕子は民子を無理に揺り起こすと、

夕子「あなた、何処へ行ってたの?」
民子「何処にも行かないわ」
夕子「嘘、あなた、布団にいなかったじゃない」
民子「私、ちゃんと寝てたもの」
夕子「これは何、誰の着物なの?」
民子「おかあちゃんの着物だわ」
このシーン、画面が暗いので分かりにくいのだが、民子の体の上に、さっきの女が着ていたのと同じ着物が掛けられていたのである。
今回、ナイトシーンが多いことも、管理人がレビューをしたくなかった理由のひとつだろう。
翌日、本部に戻った夕子の報告を受けて、
竜「その姿を見せない母親が鍵を握っているようだな」
と言うのだが、いや、母親が既に死んでいることはてっきり夕子も知ってるのかと思ったのだが……
話の流れからして、夕子はあれから民子に母親の所在を尋ね、それで母親が死んでいることが分かる……と言う風になってないとおかしいと思うんだけどね。
それ以上に、冒頭のヤプールと民子の話から、視聴者には母親がもうこの世の人ではないことがほぼ分かってしまうので、あまりトリックらしいトリックになっていないのが残念である。
また、
梶「輸送計画は延期すべきです」
竜「いや、予定通り今夜決行する」
まだ事故原因も判明せず、何の対策も立っていなのに、竜が梶の進言を却下して計画を断行するのも、相当に不可解である。
まぁ、それと並行して、更なる調査などを指示してはいるのだが……

美川「南隊員、これを付けとくといいわ、強力なガスが詰めてあるの」
民子の保護を命じられた夕子に、優しい美川隊員がブローチのようなものを手ずから夕子の襟につけてくれる。
命令だけして何のサポートもしない竜隊長より、よっぽど役に立つぜ!!

夕子「ありがとうございます!!」
白い歯を覗かせ、嬉しそうに礼を言う夕子タン。

それを、自分の妹でも見るような目で見送る美川隊員の美しい横顔。
そうじゃ、貼りたいだけなんじゃ。

夕子「車がまるでおもちゃのように見えるわね」
民子「なくなっちゃえばいいんだわ、車なんか」
夕子「えっ?」
夕子、民子の発言を、単に自分が事故に遭ったからだと解釈し、事故で母親を亡くしているからだとは夢にも気付かない。

夕子「さ、歩く練習してみようか」
相変わらず、八重歯が可愛い夕子タン。
夕子の体に縋って歩き出そうとする民子であったが、一歩も歩かないうちに倒れてしまう。
夕子「民子ちゃん、あなた本当に歩けないの? 歩けないと思い込んでるだけじゃないの?」
民子「歩けないのよ、本当に」
夕子、民子の体を抱え上げて車椅子に座らせると、それを押して歩くが、緩い斜面に差し掛かったところで取っ手から手を離す。
当然、車椅子は民子を乗せたまま猛スピードで滑り降りる。
はっきり言って鬼畜の所業だが、民子が本当に歩けないのかどうかを確かめるための苦肉の策であった。
だが、民子はやはり歩けないようで、なすすべもなく車椅子から投げ出されてしまう。
民子「ひどいわ、お姉ちゃん」
夕子「ごめんなさいね、あなた、もしかしたら歩けるんじゃないかと思ったのよ。だから試してみたの、許して頂戴ね」
さいわい、怪我もなく、夕子が率直に詫びたので二人の関係に亀裂は入らなかった。

夕子&民子「蛍さんの嫁入りは油も要らず~♪」
その後も、仲良く歌を口ずさみながら散策を楽しむ二人であったが、その様子を土手の上から北斗が見下ろしていた。
それは良いのだが、

北斗「……」
その表情と言うか、目付きが、なんか、これから二人を人目につかない茂みに引っ張り込んで、めちゃくちゃいやらしいことをしようと企んでいる変質者のように見えてしまうのがアウトです。
まぁ、実際は、そんな二人の様子にほのぼのとしたものを感じているってことなんだろうが、高峰さんの悪役俳優としての片鱗が図らずも漏れ出てしまったようにも見える。
ともあれ、夜になり、いよいよV7計画が開始されるのだが、念のため、夕子は引き続き民子のそばを離れず、連泊することになる。

泊まるといっても、無論、眠る気などさらさらなく、銃を持ったまま布団に横たわり、天井を見上げている夕子。
今回は、最初から泊まることが分かっていたのだから、せめてパジャマ姿くらいサービスして欲しかったな、あたい。
あと、今気付いたんだけど、なんでV7の輸送をわざわざ夜中にやるの?
しかも夜間に謎の事故が多発していることを知っていながら……
まあ、夜陰に紛れて一気に運ぼうということなんだろうが、昼間に、TACファルコンに積んでチャーッと運んじゃった方が安全確実だったのではあるまいか。
もし途中で超獣があらわれたら、そのまま撃っちゃえばいいんだし。

ともあれ、物々しい車列を組んでバイパスを爆走する大門軍団……じゃなくて、TACの輸送トラックと護衛の車両。
金かかってるなぁ。
色々あって、夕子がいつの間にか鬼女に首を絞められ、外で待機していた北斗に助けを求める。
これも、別に家の外で待機する必要はないんじゃないかなぁ……
あと、お父さん何処行ってるのよ!?
二日連続で家を空け、車椅子の娘ひとりにしておくなんて、無責任過ぎる。
もっとも、その理由を民子に説明させると、必然的に母親が死んでいることもバレてしまうから、(脚本家が)意識的に言及するのを避けたのだろう。
北斗が駆けつけると、紛れもない鬼女が夕子の体の上にのしかかっていた。
鬼女は北斗の銃撃を受けるが、天井の隅にへばりついてかわし、フッと幻のように消える。

夕子「民子ちゃんがいないわ、何処行っちゃったのかしら」
北斗「調査の結果が分かったぞ、民ちゃんのお母さんは5年前に死んでる」
夕子「ええっ?」
北斗「交通事故でな……場所は事故現場、時間は午前2時」
ここで、北斗の口からやっと民子の母親が故人であることが告げられる。

夕子「じゃあ、もしかしたらあの鬼女は……」
北斗「ともかく、パイパスに戻って隊長に報告してくれ。俺は民ちゃんを探す」
夕子「はいっ」
北斗の指示に気持ちの良い返事をして家を飛び出す夕子。
だが、夕子がパイパスに出ると、

道の真ん中に、鬼女がこちらに背中を向けて立っていた。
この話の流れでは特に怖くはないが、自分が夜道を歩いていて、目の前にこんなのが立ってたらと思うと、死ぬほど怖いよね。
夕子「民子ちゃん……」
ここにいたって、夕子にもその正体が民子だとしか考えられず、その名を呼ぶが、鬼女は振り向くと、いきなり飛び上がって夕子に襲い掛かろうとする。
夕子「タァーッ!!」 すかさず、両手を広げて鋭い雄叫びを放ち、鬼女の面を真っ二つに割る。
おそらく、ダンのウルトラ念力のようなものだったのだろうが、夕子が劇中で見せた、ほとんど唯一の超能力であった。
仮面の下から出てきたのは、やはり民子であったが、

夕子「なんて恐ろしいことをするの、あなたが鬼女だったのね」
民子「どうしてこんなところにいるんだろう」
民子、鬼女でいるときの記憶がすっぽり抜け落ちているようで、ぼんやりと不思議そうな顔で立ち上がる。
夕子「民子ちゃん、あなた立てるじゃないの」
民子「え?」
夕子「あなた自分の足で立ってるのよ、ちゃんと」
民子「本当だ、歩けるわお姉ちゃん」
夕子に指摘されて、その周りを嬉しそうに歩いてみて、無邪気に歓声を上げる民子。
夕子「あなた、本当に何も覚えてないの?」
民子「うん、でもね、眠ってると声が聞こえるの」
夕子「誰の声?」
民子「わからない、お母ちゃんに会わせてあげるって……ここでね、いつもお母ちゃんが待ってるのよ」
夕子「民子ちゃん、しっかりしなさい、きっと誰かがあなたの心を利用してたのよ」
今回のシナリオ、色々と残念な点があるのだが、民子の母親が、幽霊であれ、民子の記憶の中であれ、ヤプールの作り出したまがいものであれ、最後まで一度も姿を見せないこともそのひとつと言えるだろう。
実際に民子が母親と会っていたことも、この民子の台詞で漸くはっきりするくらいで、肝心の母親の存在感が極めて希薄なのである。
ともあれ、もはや鬼女ごっこの必要がなくなったと考えたヤプールは、民子の飼っている巨大蛍に化けていたホタルンガを巨大化させ、実力でV7計画の輸送を阻止しようとする。
……
ひっくるめて言うと、鬼女作戦、全然意味がなかったことになる。
むしろ、TACを変に警戒させてしまっただけで、これなら、何の前ふりもなしにいきなりホタルンガで攻撃させていた方が有効だったのではあるまいか?
つーかさぁ、せっかく夕子と北斗が離れ離れになっているのだから、夕子が寝ている間に、ホタルンガを巨大化させて踏み潰してしまえば、それでヤプールの大勝利だったんじゃないかと……
さて、ホタルンガ、本物の蛍のように緑色に輝く巨大な尻尾の中に夕子と民子を吸い込み、人質とする。
その具体的な方法はぼかしてあるが、後に二人が排出されている様子から見て、尾篭な話だが、ホタルンガが肛門から夕子たちを吸い込んだ可能性が高い。

車列の前方に、巨大な超獣が仁王立ちしている、失禁モノの特撮ショット。
竜隊長たちが直ちに銃で攻撃を開始するが、無論、何の効き目もない。
それどころか、ホタルンガの吐き出すガスで、トラックの一台が溶けるように燃えてしまう。
強力な可燃性ガスであった。
梶「V7を使うチャンスだと思いますが」
竜「よし、山中、V7を使う」
と、そこへ北斗が駆けつけ、夕子と民子がホタルンガの尻尾の中にいると告げる。

トラックの荷台の屋根と壁が開き、カタパルトに積まれたV7がせり出してくる、素晴らしいミニチュアワークス。
どうでもいいが、最初に燃やされたトラックには何が積んであったのだろう?
それにもV7が入っていたのなら、大爆発を起こしていたと思うのだが……

竜「ミサイル攻撃中止せよ」
美川「ミサイル攻撃中止」
緑色の光に染まりながら、寸前で中止を命じる竜隊長。
V7でホタルンガごと夕子たちを死なせることを恐れたのだが、これは自分たちの武器の威力を過大評価したためであり、結果論から言うと、撃ってもなんら問題はなかったと思われる。
夕子とウルトラタッチできない北斗にはどうすることも出来なかったが、

美川「これをつけとくといいわ、強力なガスが積めてあるの」
ここで、夕子が、美川隊員に貰ったお守り代わりのブローチのことを思い出し、

迷わずその栓を抜いて、強力なガスを撒き散らす。
と、お尻に異物感を感じてドタバタし始めるホタルンガであったが、そのうち、全身からもうもうと白い煙が吹き出してくる。
で、夕子たちは「今だわ、民子ちゃん」と言って、自分から体外へ飛び出すのだが、飛び出そうと思って飛び出せるなら苦労はないわけで、ここは、体内に溜まったガスを排出しようとして、尾篭な話だが、ホタルンガが屁をこくようにガスを噴射し、それと一緒に夕子たちが放出されたことにしておいたほうが、分かりやすかったと思う。
……
今気付いたんだけど、夕子を体内に閉じ込めたのなら、ホタルンガをそのまま異次元に連れ戻せば良かったのでは?
夕子を永遠に北斗と引き離し、Aに変身できなくさせるほうが、V7なんて中途半端なミサイルを破壊することより、よっほど有益だったと思うのだが。
さて、ここでやっと北斗と夕子がウルトラタッチを行い、Aとなり、バトルに移行する。

ホタルンガの可燃性ガスが足元で爆発し、トラボルタみたいなポーズをしたAが、

体を側転させてその攻撃から逃れる迫力のショット。
どうでもいいが、めちゃくちゃ人死んでるよね……
ホタルンガはなかなか強力で、長くて太い尻尾の先で首を絞められているうちにAが「落ち」てしまう。
エネルギーが枯渇したとかなら良くあるが、ウルトラ戦士が首を絞められて失神するなんて、滅多にないシーンである。
だが、たまにはお役に立つこともあるTACが、トドメを刺そうとしたホタルンガに猛攻を加え、注意をひきつけている間にAが意識を取り戻し、再び立ち上がる。

そして、ここで遂にV7が発射され、

見事、ホタルンガの額に命中し、ホタルンガの動きを止める。
……
これの何処が「超獣粉砕用ミサイル」なんだーっ!! ま、それでも、超獣を一時的にせよ戦闘不能にしたのだから、TACの装備にしては上出来の部類だろう。
もっとも、V7がどれだけのダメージを与えたのか、実際のところは不明である。

何故なら、この直後、背後からAがメタリウム光線を放ち、今度こそホタルンガを木っ端微塵に粉砕してしまったからである。
つまり、もしAが何もしなくても、ホタルンガが死んでいた可能性もあるわけで、V7の性能を正当に評価することが、なかなか難しいのである。
しかも、これ以降、V7が再び実戦に投入されることはなく、その後の検証も不可能である。
それでも、今回、AとTACの連携プレーで勝利を掴み取ったのは間違いなく、久しぶりに竜隊長が面目を施したと言ったところであろうか。
ラスト、土手の上を歩きながら、事件について総括している隊員たち。

今野「どうして民子ちゃんが鬼になっちゃったんでしょうね」
竜「あの子は母親に会いたがっていて、その上、母親の命を奪った車を憎んでいた。ま、その怨念をヤプールが利用して夜な夜な操っていたんだな、その上、事故死したものはホタルンガの餌にしていたんだ」
北斗「憎むべきは今野隊員ですね」
山中「まったくだ、念仏を唱えることと、食うことしか能がねえんだからっ!!」
美川「あ、私、生理的に無理」
今野(えっ、ええっ~?) 突然始まった公開処刑に生きた心地のしない今野隊員であったが、嘘である。
北斗「憎むべきはヤプールですね」
山中「まったくだ、すんでのところでお陀仏にされるところだったんだからな」
竜「ところで今回の殊勲者はどうした?」
吉村「あそこですよ、ほら」
美川「ほんとうの姉妹みたいね」
吉村隊員の指差したほうを見れば、仲良く野原を駆けている、夕子と民子の微笑ましい姿があった。
しかし、民子がとっくの昔に足が治っていたのに、歩けないと思い込んでいたのは何故かと言う疑問は、結局解明されないままだったなぁ。
以上、色々と突っ込みどころの多いシナリオで、ゲストヒロインがあんまり可愛くないと言うのもつらかったが、書き終わった後では、スルーするほどでの駄作ではなかったなぁと言うのが率直な感想である。
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