第39話「父の仇ジロー 全国指名手配」(1973年4月7日)
前回のラストから引き続き、荒野でハカイダーと対峙しているキカイダー。
だが、ハカイダーの頭に移植された光明寺博士の脳を傷付けることを恐れるキカイダーは、ハカイダーとの戦いをためらう。
ハカイダー「どうしたキカイダー、そっちが来なければ、こっちから行くぞ!」
ハカイダー、必殺のハカイダーショットを数発撃つが、
ハカイダー「このハカイダーショットの恐ろしさはもう分かっているはずだぞ、キカイダー」
物静かに告げると、銃をホルスターに戻し、

ハカイダー「俺は敵に後ろを見せる奴は許せん性分でな、お前との勝負、飛び道具は使いたくない、だが、逃げるなら撃つ」
キカイダー「むっ」
言葉でキカイダーの動きを牽制してから、

ハカイダー「行くぞ、キカイダー!」
ふわっと宙に舞い上がり、「キーーーーーン」と、アラレちゃんのようなポーズで空を飛んで、
ハカイダー「月面飛行蹴り!」
キカイダーの顔面に、豪快な膝蹴りを叩き込む。
矢継ぎ早に、「地獄五段返し」「ギロチン落とし」と言う強烈な技を繰り出し、銃の腕だけでなく、格闘戦にも優れていることを見せ付ける。

ハカイダー「そうだ、キカイダー、死ぬなよ、簡単に死んでは楽しみがないっ」
早くも勝利を確信して、余裕ぶっこいて粋がった台詞を吐くハカイダーであったが、

キカイダー「くそう、行くぞ、銀河ハリケーン! とおっ」
ハカイダー(あれっ?) キカイダーが反撃に出ると、たちまち形勢を逆転されて、一方的にボコられる。

ハカイダー「あ……う……」
なんとか立ち上がろうとするが、早くも足に来ているハカイダー。
……
前回から、自分が何故ハカイダーに惹かれないかと言う理由をあれこれ分析してきたが、結局、このシーンが象徴しているように、
「ハカイダー、あんまり強くない」と言うのが、最大の原因かもしれない。
おまけに、思いっきり相手を見下した台詞を放った直後だけに、余計その情けなさが際立っている。
さらに、
キカイダー「良かった、怪我はしてないようだ」 悪役がヒーローにその身を気遣われると言うのも、相当に情けないものがある。
そして、ハカイダーの脳が光明寺の脳じゃなかったら、普通にこの場でぶっ殺されていたのではあるまいか? と思えてしまうあたり、この設定が、ハカイダーの弱さを印象付けることにしか役立っていないような気がするのである。
つまり、最初から(キカイダーが本気で戦えないと言う)ハンディキャップを貰っていることになり、いくら画面上でその強さを見せ付けられても、それをそのままハカイダーの実力として認めることに一抹の疑問を感じてしまうのである。
まあ、あくまでこれは管理人の受け止め方であるが……
ともあれ、その隙に、キカイダーは空を飛んで逃げる。
ハカイダー「くそう、忘れるなよキカイダー、お前を殺すことのできるものはこのハカイダーしかいないと言うことをな!」
キカイダー(戻ってきて)「なんか言った?」
ハカイダー「言ってません!」 ……と言うのは嘘だが、さっきまで足腰が立たなくなっていた奴が、立たなくされた相手に言って良い台詞じゃないのは確かである。
一方、ミツ子たちが目白台の派出所の前を通り掛かると、掲示板にジローの手配書が貼られていた。

半平「あの、ちょっとお尋ねしますが」
関警官「なんか用か?」
半平「はぁ? 九日十日……」
ポール警官「十一日、十二日?」
半平「うっはははははっ、シャレのお上手な」
呼びかけに応じて出てきた二人の警官とギャグを言い合い、意気投合して笑う半平。
この二人はラッキーセブンと言うお笑いコンビで、年嵩の方が関武志さんで、若い方がポール牧さんなのである。
管理人、ポール牧さんは知ってるけど、関さんと言うのは全く聞いたことがないなぁ。
本編とは関係ないが、管理人、このシーンを見ていて、
女性が猫も杓子もミニスカを履いていた70年代バンザイ! と言う持論を、少し改めねばならないと痛感した次第である。
関警官「ワルノリなんだよ、お前は」
ポール警官「あ、ああああ」

相棒に押されたポールは、ちょうど向こうから来たミニスカ女性の足にしがみつき、

女性「いやん、やだ、放してよぉっ!」
それを振りほどこうとした女性のパンツが、ほんのり顔を覗かせる。
まあ、キャプではほとんど見えないし、赤いパンツなので、チラとしての価値はあまりないんだけどね。
関警官「だぁめだよ、お前は」
女性「エッチなお巡りさん、言いつけてやるからね!」
ちなみに、突然コメディアンがゲストとして登場したのは、最近ストーリーが深刻になっているから、多少なりとも番組の雰囲気を明るくしようと言うスタッフの配慮だったのだろうか?

半平「ところでお巡りさん、この指名手配の犯人のことなんですがな」
関警官「ああ、あれは有名な光明寺博士、あれ殺した男だからね」
ポール警官「あんたすり(知り)合いか?」
半平「失礼な、私スリなんかじゃございませんぞ。こう見えてもれっきとした私立探偵です……それで、あの犯人に賞金かなんかついて……たとえば100万円とか」
ミツ子「ハンペン、なんてこと言うの!」
半平「たとえばの話、たとえばの」
こともあろうにジローに掛けてある賞金を気にする半平を、ミツ子たちが色をなして叱り付ける。
マサル「このポスター、何処の警察にも貼ってあるんですか?」
関警官「これは全国指名手配だから、狭い日本の中だからすぐ捕まるんでねえか?」
一方、ダーク破壊部隊のアンコウブラウンは、本物のチョウチンアンコウよろしく、体にぶら下がっている色とりどりの電球を囮にして、塾で勉強していた子供たちを誘い出し、催眠状態に陥れた上で、アジトに連れて行く。
怪人「プロフェッサー・ギル、ご覧の通り、ダークの新しい戦士を作る私の計画は着々と進んでおります」
ギル「よし、10人ばかり集まったところでまとめて洗脳手術をしてやる」
何の緊要性も感じられない、いかにも取ってつけたような作戦だが、まあ、これは、ハカイダーの代わりにキカイダーに倒される怪人を出すための方便であろう。
ちなみに劇中には二つの異なる塾が出てくるのだが、

そのどちらにも、同じ女の子がいる……
あと、二枚目の画像の左隅にいる女の子、「仮面ライダー」91話に出てた、眉毛の凛々しい女の子のように見えるのだが、良く分からない。
夜、ミツ子たちが半平の車で移動中、久しぶりにスバル360がエンストを起こして立ち往生する。
ミツ子はマサルの手を引いて歩いていこうとするが、マサルはその手を振り解き、

マサル「いやだ!」
ミツ子「今度は私たちジローを探さなきゃならないのよ、ジローがどうしてお父様を襲ったのか、それからそこで何があったのか」
マサル「そんなこと分かってる、ジローがお父さんを殺したんだ、ジローはギルの笛のため狂っちゃったんだ」
ミツ子「いいえ……ねえマサル、私たちとジローのつながりはそんなもんじゃないわ。せめてジローの口からはっきり聞くまでは私たちジローを信じていてあげなきゃいけないわ。今のジローには味方はひとりもいないのよ!」
ミツ子が情理を尽くして説得するが、マサルの頑なな心は動かせず、
マサル「僕は姉さんと別に探す、ジローを見つけたら、この手でお父さんの仇を討ってやるんだ」
握り拳を固めて改めて宣言すると、マサルは半平のそばに行き、

マサル「一人で行けよ、姉さん、僕はハンペンの助手になる。ハンペンの助手になって働きながらジローを絶対見つけてやるんだ」
半平「いやいやマサルどの、さすが目が高いですな。20世紀最大の名探偵・服部半平の助手になろうたぁ、うっははははっ……おっ!」
半平、突然マサルに頼られて有頂天になり、マサルを諭すどころか無責任に煽るようなことを言って高笑いを響かせていたが、不意に、ミツ子の背後に怪しい光を見付けて声を出す。
ミツ子が振り向けば、闇の中から、赤と緑の光が明滅しながらこちらに向かってくるのが見えた。
半平「あれは?」
マサル「行ってみよう」
半平「我が愛する助手よ、頑張ろうぜ」
それは催眠状態の子供たちを従えたアンコウブラウンであったが、半平たちの尾行に気付くと、子供たちに先にアジトに行くよう命じ、夜陰に乗じて二人が来るのを待ち構える。
ジロー「危ないっ」
そこへ突然あらわれて二人を突き飛ばし、危ないところで怪人から救ったのはジローであったが、怪人の姿を見ていない二人は、逆にジローに危害を加えられたのだと思い込む。

ジロー「アンコウブラウン、子供に手出しをするな」
怪人「キカイダーか、邪魔なところへ出てきやがって、だが、俺にはまだ仕事がある、また会おうキカイダー」
アンコウブラウンは、任務を優先させて夜空を飛んで去って行く。
倉庫の裏手のようなところで半平がマサルを介抱していると、ジローが何事もなかったようにやってきて、二人を気遣うが、

マサル「僕たちに近付くな」
ジロー「マサル君……誤解しないでくれ、光明寺博士はまだ死んではいない」
マサル「でたらめ言うな!」
半平「ミスタージロー、我々、この両の目でしかと光明寺博士の死体を見たのですぞ」
ジロー「その死体はニセモノだ」
マサル「嘘つき!」
ミツ子「マサル、ジローの話を聞きましょう」
そこへミツ子も駆けつけ、マサルをなだめようとするが、
ジロー「とにかく、博士は死んでません」
マサル「騙されないぞ、今だって僕たちを殺そうとしたじゃないか」

ミツ子「えっ?」
マサルの発言に、ミツ子もその美しい眉を悲しみに震わせる。

ミツ子「本当なの、ジロー?」
ジロー「違う、アンコウブラウンがマサル君たちを襲おうとしてたんです!」
ジローも、我が身の潔白を示そうと必死に釈明するが、
マサル「アンコウブラウン?」
半平「ふっ、我輩、とんとそんなものは見ませんでしたな」
マサル「ジローは昔のジローじゃない、良心回路が壊れちゃってるんだ」
釈明すればするほどマサルたちの不信感が募るという悪循環に陥ってしまう。

マサル「お父さんのカタキだ、えい、えい」
ミツ子「マサル、何すんのよ!」
マサル、手近にあった鉄パイプを拾い上げると、それでジローをポカポカ殴る。
ジロー(ほんま、いっぺん殺したろかこのガキ……) 今度、ギルの悪魔の笛が鳴ったら、それに操られているふりをして殺してやろうかと思うジローであったが、嘘である。
でも、マサルが言うようにほんとにジローが狂っているのなら、この場でマサルたちを皆殺しにしようとする筈で、ジローが何の抵抗もしない時点で、その潔白は証明されているようなものなんだけどね。
マサル「信じられないんだ、僕はジローが信じられないんだっ」
だが、父親の死と言う過酷な出来事が、マサルの判断力や理性を曇らせているのか、マサルはなおも無抵抗のジローを殴り続ける。
ジロー、鉄パイプをマサルから奪い取ると、

ジロー「マサル君、どうして分かってくれないんだ?」
と、その時、またしてもあの哀愁に満ちた口笛の調べが聞こえてくる。
半平「あの口笛は何処だ? 何処だ? うん、あ、あそこだ!」

半平の指差す方を見れば、いい感じの霧の中から、黒い細身のシルエットがゆっくりこちらに近付いてくる。
ハカイダーの人間態サブローであった。
マサル「あっ、サブロー」
マサルはサブローと分かるや、いそいそとそのそばに駆け寄る。
ジロー「お前は誰だ?」

サブロー「サブロー、お前の弟とでも思ってもらおうか」
ジロー「光明寺博士に作られた人造人間だというのか? 嘘をつくな」
サブロー「とにかく俺はお前のようなポンコツじゃないってことさ」
ジロー「なにっ」
サブローは、左足のホルスターから、ハカイダーショットならぬ大きなナイフを引き抜いて、不敵な笑みを浮かべる。
サブロー「やるのかい、キカイダー」
サブローがナイフで風を切ると、ジローもファイティングポーズをとって身構える。
一気に緊張感が高まるが、

ミツ子「やめて、ジロー! サブローと争うなのは、やめて!」
ジロー「えっ? ……はっ」
ミツ子が金切り声を上げて割って入ると、ジローは我に返ったようにたじろぎ、そのまま闇の中へ走り去ってしまう。
マサル「サブロー!」
サブロー「もう心配要らないよ、俺がいる限りあんな奴には指一本触れさせん」
翌朝、マサルは歩道橋の上で、サブローから銀色の筒のようなものを渡される。

マサル「なにこれ?」
サブロー「一種のお守りさ、デスホイッスル、特殊光線を出すランプにもなる。試しにあの車に当ててみろ」

マサル「うん」
サブローに言われるがまま、マサルがちょうどそこへ走ってきた半平の愛車に向けてボタンを押すと、ミョミョミョミョと青白いビームが発射される。
ビームが当たると、車は突然止まってしまう。
半平「またもやエンストだ」
ミツ子「もう、困ったわねえ」

サブロー「その特殊光線はどんな機械の動きも止める。キカイダーにその光を当てればキカイダーもあのハンペンの車と同じ目に遭う」
マサル「ふーん」
サブロー「今度ジローに出会ったら、そのデスホイッスルでジローの体を動かなくしろ、そして光を当てたままそれを吹くんだ……そのホイッスルを聞いたら俺は何処にいても君の前に現れる。そしてこの俺がキカイダーをやっつけてやる」

マサル「キカイダーをやっつけるぅ? うーん」
サブローの言葉を繰り返し、憮然とした表情になるマサルだったが、

マサル「ありがとう、サブロー、ジローはお父さんのカタキだもんね」
無理に笑顔を作って応じるが、やはりジローを殺すのは忍びないのか、再びつらそうに目を伏せる。
オンオフのスイッチで動くロボットみたいな拙い芝居だが、当時の子役としては群を抜いた表現力であろう。
その後、洗脳手術直前にアジトから逃げ出して戦闘員に追われていたアキラ少年と、ミツ子とマサルが偶然出くわし、さらにジローが彼らを路地裏に引っ張り込む。
アキラ「助けて、友達が何十人も捕まってるんだ」
ジロー「分かってる、君は僕に道を教えてくれ」

ミツ子「ジロー、危険だわ、やめて、ジロー行っちゃダメよ、パトカーが」
ジロー「子供たちを見殺しには出来ない」
ジローはミツ子の諌めも聞かず、警察に見付かる危険を冒してまで、子供たちを救い出そうとサイドカーで走り出す。
しかし、目立たないけど、この場にはちゃんとマサルもいるのに、さっきのデスホイッスルを使おうとせずジローをあっさり行かせてしまっているのは、なんか違和感があるんだよね。
終盤の半平同様、ストーリーの流れとして、ここにはマサルがいない方が良かったと思う。
ジローはサイドカーにアキラを乗せて空を飛び、パトカーを振り切るが、山間のドライブウェイに入ったところでアンコウブラウンたちに襲撃される。
ジロー、なんとかキカイダーに変身して敵を蹴散らし、引き続きサイドマシーンに子供を乗せて爆走する。

だが、今度はバイクに乗ったハカイダーが追ってきて、

バイクからミサイルを発射して攻撃してくる。

この、バイクからミサイルが発射されるというギミックの映像が、なかなか見事である。
それにしても、ジローおよびキカイダーのサイドマシーンに乗って走った上、ハカイダーに追いかけられて攻撃されるという得難い経験、この子役にとっては一生の思い出になったことだろう。
キカイダー、サイドマシーンを捨ててハカイダーの追撃をかわすと、一気にアンコウブラウンのアジトに突入し、子供たちを全員助け出す。

この後、アジトの外でラス殺陣となる。
アンコウブラウンの猛烈な火炎攻撃に苦しめられるが、何者かがアンコウブラウンの口に向けて消火器を噴射して、キカイダーを援護する。

怪人「だ、誰だ?」
半平「へっへっ、火の用心だもんね、ミスタージロー、義によって我輩助太刀申すぞ」
それは、消防士の格好をした半平であった。
ただ、さっきのマサル同様、半平もジローのことを光明寺殺しの犯人だと考えているのに、ここで唐突にキカイダーの手助けをすると言うのは、どう考えても変である。
まあ、半平と言うか、うえだ峻さんのことが大好きな長坂さんのことだから、うっかり半平を活躍させてしまったのだろう。

キカイダー「ありがとう半平」
半平「なんのなんの、お代600円ぐらい頂きますかな」
その後、ぬけぬけと手を出して実に庶民的な報酬を要求する半平であったが、怒り狂ったアンコウブラウンにその手をがぶっと飲み込まれる。

半平「抜けたっ、さよならっ」
怪人「邪魔しやがって、とっとと失せろ!」 普通の人間なのに、怪人をガチギレさせるとは、半平、やはりタダモノではない。
キカイダー、アンコウブラウンを撃破したものの、そこへパトカーがやってきたので、休む間もなくその場から走り去らねばならないのだった。
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