第21話「天女の幻を見た!」(1972年8月25日)
発端は、竜隊長が明け方に見た不思議な夢であった。
それは、大宇宙の神秘を連想させる、めくるめく虹色のアラベスクに天上的音楽が添えられ、さらにその中を卑弥呼のような緩やかな衣装をまとった美しい少女が天女のように舞っていると言う、幻想的なビジョンだった。
竜はそこで目を覚ますと上半身を起こし、

竜「ああ、夢か……」
そこは小奇麗なマンションの寝室であった。
そう、意外にも竜隊長はまだ独身で、ひとりでこのマンションに住んでいるのである。
時刻は6時前。
ベッドから降りて手足を伸ばしていると、階段を昇ってくる足音がして、ついで、自分の部屋のドアをノックする音が聞こえる。
朝っぱらから誰じゃいと思いながらドアを開けると、

廊下の曲がり角の陰から、白いワンピースを着た若い女性があらわれ、おずおずと竜の前に立つ。
……
残念!!(何が?)
ああ、これが丘野かおりさんとかだったら、管理人のやる気もどれだけ違っていたことか……
何度も残さず言うが、ゲストヒロインのキャスティングは重要である。
竜「こんな朝早くからどうしました?」
順子「私をお手伝いに雇っていただけないでしょうか」
竜「お手伝い? いや、幸か不幸か私はまだひとりもんでね、お手伝いさんは要らないんだよ」
彼女の本当の名前は天女アプラサと言うのだが、劇中では一度しか呼ばれないし、呼びにくいので、レビューでは、とりあえず、女優さんの名前で呼ぶことにする。
演じるのは三景順子さん。
「大江戸捜査網」にちょくちょく出ているから、この後も、竜隊長とは何度も顔を合わせている筈である。
しかし、竜の「独身だからお手伝いさんは要らない」と言う台詞、ちょっと変だよね。
奥さんがいるからお手伝いさんは要らないと言うのなら分かるが……
順子「お願いです、私、隊長さんのところで働かせて頂きたいんです」
竜「君は私のことを知ってたのか」
順子「はい」
竜「何処で聞いたの? TACと言う仕事の特殊性から私の住まいは秘密になってるんだけど、良く分かったね」
順子「私は前から知っていました」
竜「だから、誰に聞いたの?」
順子「ですから、私は前から知っていたんです」
堂々巡りの問答の末、竜隊長はきっぱりと女性の申し出を断る。
いやー、えらいなぁ、竜隊長。
朝勃ちしてる時にそんな女の子に押し掛けられても、全く心を動かされずに追い返してしまうのだから。
女性も遂に諦めて、丁寧にお辞儀をして帰っていく。
でも、後にこれはヤプールの差し金だと分かるのだが、竜がTACの隊長だと知っていると告げるなど、自分から相手を警戒させるようなことを言っているのは不可解である。
第一、竜を殺すつもりなら、いきなりレーザービームを放てば簡単に殺せていただろう。
続いて、銀河系が爆発したようなイメージに、砕けたガラス片がキラキラ輝く紙吹雪のように舞い落ちる華麗なビジュアル。
これは、遥か彼方の惑星の爆発による宇宙線の飛来を表現しているのである。
その異変は、TACのセンサーにも捉えられる。
山中「おかしいぞ」
今野「宇宙エネルギーの大変動か、まだ大星雲がひとつ消滅だな」
吉村「方角は?」
美川「おとめ座の方みたいね」
そこへ竜隊長が入ってくる。
竜「どうした?」
北斗「おとめ座の周辺でエネルギーの変動があったようです」
山中「星雲の大爆発です」
竜「おとめ座か、ま、地球には関係ないな」
竜隊長、ゆったりと座席に腰を下ろしてから、ふと思い出したように、
竜「おとめ座といえば、今朝、綺麗な乙女に叩き起こされたよ」

北斗「へーっ」
今野「大丈夫でしたか、隊長?」
竜「何が」
今野「いや、別に……」
からかうように尋ねる今野隊員の横で、ムニッと言う感じで口を結んでいる美川隊員が可愛いのである!

竜「いや、いきなりお手伝いにしてくれって言うんだよ」
夕子「お手伝いさんじゃなくて、奥さんじゃないかしら」
夕子も、珍しく悪戯っぽい顔つきで半畳を入れる。
竜「こら、年上をからかうもんじゃない」
北斗「はっはっはっはっ」
夕子「はーい」
竜「ははは、身許を尋ねたら帰っていったが、今日この頃の娘心は私には分からんね」
その後、シンイチと言う青年が、偶然あのお手伝い志望の女性と出会う。
で、次のシーンでは、早くもその女性を自分の家のお手伝いに雇っている、自分の欲望に大変正直なシンイチ青年であった。
そわそわしながらソファに座って順子がコーヒーを持ってくるのを待っていたが、

シンイチ「やあ、どうもありがとう」
順子がやってくると、弾かれたように立ち上がって礼を言う。
どうやら、順子に一目惚れしてしまったらしい。
シンイチ「君みたいに美しい人にお手伝いさんになってもらえるなんて、夢みたいだなぁ」
順子「私、とても感謝しておりますの、いつまでも置いてくださいませね」
シンイチ「それは僕の言いたいことです」 いや、その家に住んでるシンイチが「いつまでも置いてください」って言うのは変じゃね?
よって、ここは、
シンイチ「それは僕のほうからお願いしたいことです」
の方が妥当かと。

シンイチ「うちの連中も別荘から戻ってきたら喜びますよ……君はお手伝いさんと言うより、うちの、あ、僕の妹のようなつもりでいれば良いんだよ」
だらしないほどでれでれと笑み崩れるシンイチを演じるのは、このブログの常連の松坂雅治さん。
とても、「レオ」6話で、ゲンを鬼のような形相で罵倒していた人と同一人物とは思えない。
ちなみにシンイチの家はかなり裕福らしく、他の家族は別荘へ行っていて、大学生と思われるシンイチがひとりで留守番しているのだろう。

それからやっとコーヒーを飲み、
シンイチ(まずぅっ!!) その筆舌に尽くしがたい不味さに、思わず前言撤回したくなるシンイチだったが、嘘である。
それにしても、順子のブラがかなりはっきり見えているのに、全然嬉しくないのは何故だろう?
シンイチ「しかし、TACの隊長はけしからんな、君みたいな人を追っ払っちまうなんて……」
順子「でも、そのお陰で私、こちらにお世話になれたんですもの」
シンイチ「うん、そらぁまあ、そうだ、でもやっぱりTACの隊長はけしからん。身分など聞かなくったって君の人柄一目見りゃ分かる筈なのに」
シンイチ、異常なほどその点に拘るが、どう考えても非常識なのは順子の方なのだから、いくら恋は盲目とは言え、シンイチがそこまで隊長に反感を持つというのは、明らかに変である。
シンイチ「は……くしゅん、なんだか少し寒くなってきたな」
と、シンイチは物凄くやる気のないくしゃみをすると、真夏だと言うのに、急に寒さを訴え出す。
それは(いわば)宇宙線の塊である順子の影響だったと思われる。

北斗「おかしいな、このあたり一帯、温度が低いみたいなんだ」
夕子「そうね」
たまたまその近くをパトロールしていた北斗たちも局所的な気温の低下に気付いていた。
夕子が車から降りて、路上にいた二人の主婦に話を聞こうとすると、こちらが何も言わないうちから異変について訴えてくる。
ただし、それは気温の変化ではなく、テレビやラジオの受信状態が悪くなったと言う全然別のトラブルだった。
でも、シンイチの家の金魚が凍死するくらい気温が低下しているのに、その半袖の主婦たちが、そのことについては全く言及しないと言うのはちょっとおかしい。
だから、最初から気温の低下は省いて、電波の状態が悪くなると言う現象だけにしておけば分かりやすかったのではないかと思う。
ともあれ、北斗たちは異常気象の中心地点と思われるシンイチの自宅を訪ねるが、

シンイチ「TACの人間に用はない、帰ってくれ!」
夕子「あの、ちょっとお聞きしたいことがあるんですけど」
シンイチ「いやだ、君たちとは口を利かない」
シンイチ、のっけから罵声を浴びせると、まるっきりガキみたいなことを言って、二人を力尽くで追い払おうとする。
北斗「どうしたんです、この辺り一帯に異常があるんで、それでわれわれは調べてるんですよ」
シンイチ「僕はね、君たちの隊長が嫌いなんだ、驕り高ぶる人間は僕は大嫌いなんだよ」
夕子「私たちの隊長が驕り高ぶるなんて、そんなことありません」
シンイチ「この辺りに異常はない、さっさと帰ってくれたまえ」
北斗「君!」
夕子「あ、ちょっと……」
とりつく島もないとは正にこのことで、シンイチは一方的にまくし立てると、家の中に引っ込んでしまう。
しかし、いきなり押し掛けて来た見ず知らずの女性をお手伝いに雇わなかったからって、驕り高ぶっていると言うのは、いくらなんでも極端な決め付けである。
順子は別に本意でこんなことをしている訳ではないのだから、シンイチの心を操ってTACに対する憎しみを煽り立てているとは思えず、やはり、恋に狂ったシンイチの心がバランスを失っていると言うことなのだろう。
二人はやむなく引き揚げようとするが、玄関の横の窓から、白い服を着た若い女性がこちらを見ていた。
女性は二人に気付くと、すぐ隠れる。

夕子「
私ほどじゃないけど綺麗な女の子、奥さんかしら」
北斗「まさかな、今の男、まだ二十歳ぐらいだぜ」
一方、シンイチは順子の姿が見えないので探すと、ソファの陰に隠れるようにうずくまっていた。

シンイチ「どうしたの、気分でも悪いの?」
順子「TACの人、何か言ってましたか」
シンイチ「うんう、TACの奴なんて追い返してやったよ。本当に失礼な奴らさ、この辺りに異常があるなんて言うんだ」
順子「……」
シンイチ「君、何も心配は要らないよ、僕が断固守ってあげるからね」
いや、さっき寒いとか言ってなかったか、お前?
なんか、この、異常低温についての描写が曖昧と言うか、中途半端なのが気になる。
北斗たちは基地に戻って竜に報告するが、

竜「一体どんな恨みを買ったのか、さっぱり分からんな」
無論、竜にその原因が分かる筈もなく、首を傾げるばかり。
夕子「うちのなかに
私ほどじゃないけどとっても綺麗な女の子がいました」
北斗「その女の子がじっと我々を窓から見てるんです。近所の人の話では、そんな女の子はいないと言うことなんですけどね」
それでも順子のことを聞いて、もしやと思い当たり、自らシンイチの家を訪ねることにする。
相手を刺激してはまずいと、わざわざ私服に着替えて出向いた竜であったが、門の前に立ってふと見上げると、

平たい屋根の上にあの女性が立っていて、こちらをじっと見下ろしているではないか。
竜「おい、君……」
竜が話し掛けようとするが、順子の両目が青く光り、レーザービームが飛んでくる。
ビームは門に当たって小さな爆発を起こすが、竜は無事だった。
シンイチは彼女の姿がまた見えなくなったので庭に出て探していたが、庭の隅に小さくなっている順子を見付ける。

シンイチ「どうしたの?」
順子「TACの人が私を探しに、また……」
シンイチ「なにぃ、TAC? ちくしょう、用もないのに何度も来るなんて人権蹂躙だよ」
自分で竜を攻撃しておいて白々しいことを言う順子であったが、今のはヤプールに操られて行ったことだったのだろうか?

シンイチ「あんたがTACか、一体何の権利があって家の前をうろついてるんだ?」
竜「君、あの子は地球の人間じゃないんだ、今レーザー光線でやられかけたところだ、ほら、これを見たまえ」
竜は、門が赤黒く焦げている箇所を示して訴えるが、シンイチは全く耳を貸さず、
シンイチ「ふ、下手な芝居はよせよ、なんであの子にそんな力があるもんか、あ、あんた隊長だな?」
竜「そうだ」
シンイチ「帰れ、帰ってくれよ、あの子を追い出した張本人が何で今頃ここに来られるんだ? 帰れ、帰ってくれよ!」
まるっきり駄々っ子のようなシンイチの態度に、竜も説得を諦めて退散する。

梶「やはり同じ状態ですね、大量の宇宙線が、あの青年の家辺りに吸収されています」
竜「うん」
梶「報告待ちですか?」
竜「うん? はっ、いやぁ本当なら私が陣頭に立たなきゃいかんのだが、私やこの二人ではちょっとまずいんでね」
宇宙線をモニターで観測している梶に問われて、ほろ苦い笑みを浮かべて事情を説明する竜。
シンイチがTACのことを毛嫌いしていることが分かったので、三人はあえて本部に留まり、面の割れていない山中たちが私服であの一帯に張り込んでいるのだ。
深夜、4人がシンイチの家の門前に集まる。

美川「どうですか?」
山中「ああ、今のところ、全然異常なしだな」
くぅ~、せっかく美川隊員が貴重な私服姿を、それもカミナリ族みたいな衣装を披露してくれているのに、暗くてろくに見えんではないか。
あと、サングラスに背広の山中隊員が、
完全なヤクザにしか見えないのだった。
吉村「少女がレーザーを放ったっていうのはほんとかなぁ」
今野「それに天女の夢だろ」
山中「隊長もここんところ疲れてるからなぁ」
今野「おかしいんじゃねえかな、少し」
今野が竜隊長の正気を疑うような問題発言をするが、

竜「こら、筒抜けだぞ!」
今野「ありゃーっ、すいません、マイクのスイッチ入ってたよ」
今野隊員の通信機から、その竜隊長の雷が飛んでくる。
なお、暗いのではっきり見えないが、美川隊員が「あちゃー」「あらー」などと言うように、声を出さずに口だけ動かしているのが確認できる。
吉村「まっずいなぁ、おい」
山中「オイ、仕事だ!」
慌てて取り繕って持ち場に戻る山中たち。
無論、その程度の軽口で怒るほど器の小さい竜ではなく、梶と顔を見合わせて愉快そうに笑うと、
竜「あ、今野の実家にピザ120枚注文しといて」 北斗「はい……」
じゃなくて、
竜「君たちも内心そう思ってんじゃないのか?」
北斗「いっ、いえっ、そんなことありません」
顔を捻じ曲げて、北斗たちにも問い掛けるが、油断していた北斗はうろたえながら否定する。
しかし、それに続いて、
夕子「あの家には絶対何かあるのよ、ね、梶さん?」
夕子が竜におもねるように慌てて梶に水を向けたのに、
梶「隊長、日本上空の宇宙線がとうとう全部なくなりました!」
それが、事態の急変で二人から完全にスルーされるのが、ちょっと可哀想だと思いました。
ここでやっとCMですが、はっきり言って、今回の話、全然面白くない!
本筋とは関係ない、上記のアットホームなやりとりなどは楽しいのだが、ストーリー自体は退屈の極みである。
CM後、ソファでうたた寝していたシンイチは、冒頭で竜が見たのと同じような夢を見てうっとりしていた。
だが、順子は、あてがわれた寝室の大きな鏡の前に立ち、その中の自分に向かって必死に訴えていた。

順子「いや、いやです」
ヤプール「おとめ座が爆発したとき、おとめ座の精であるお前はワシのお陰で助かり、この地球に逃げてこられたのだ。さあ、天女アプラサよ、今度はワシに恩返しする時なのだ。地球を滅ぼすのだ」
順子「それは約束が違います、そんな約束なら私、おとめ座と共に死んだ方が良かったのです。私は地球を愛してます、人間を愛します」
ヤプール「ばぁかめ、お前はもうワシの手下なのだ。TACの隊長のところに転がり込もうとした時から、ワシの力に従うより他はないのだ。お前はワシの手の中のおもちゃなのだ!」
ここでやっと、彼女がおとめ座の精であり、ヤプールに命を助けてもらった代わりに、竜隊長暗殺を命じられていたことが判明する。
……
いや、だから、今まで何度も突っ込んできたことだが、おとめ座なんてのは、地球から見た星の並びを乙女に見立てただけなのだから、そこに乙女の姿をした精が宿るなんてことはありえないし、星座を構成する星も、実際には全然離れた場所にあるのだから、それが一度に爆発するなんてことも考えにくい。
せめて、おとめ座を構成する星のひとつが爆発し、その星のプリンセス的な女性をヤプールが助けた……とかならまだ分かるんだけどね。
まあ、この手の話にそんなツッコミを入れるのは野暮だし、今回のシナリオを書いた石堂さんは前作「新マン」でも、カニ座からカニの怪獣がやってくるなんて話を書いてるから、こういう話がお気に入りだったんだろうなぁ。
そう言えば、どちらにも謎めいた少女が登場し、なんか釈然としない結末であることも、見事に共通している。
ともあれ、順子がベッドに縋って泣いていると、シンイチが入ってくる。
シンイチ「君は……」
その異様な風体を見てシンイチも驚くが、

順子「シンイチさん、すぐ逃げて! 私のそばに来ないで」
シンイチ「どうしてだい、君は僕の天女だ、素晴らしい」
すっかり彼女のトリコとなっているシンイチは、ますますのぼせ上がってたわけた言葉を口走る。
順子「違うの、あなたには分からないの、お願い逃げて頂戴!」
シンイチ「どうして……」
順子もいい加減、シンイチのバカさ加減にウンザリして、その後頭部を便所のスリッパで思いっきり引っ叩きたくなっていたのではないかと思われるが、とにかくシンイチを部屋から追い出す。
だが、一度走り出したシンイチの暴走機関車は留まるところを知らず、
シンイチ「あの人が天女だとは、夢のようだ、素晴らしい、僕は明日、あの人に結婚を申し込むぞ」
順子「きゃああああああああああーっ!」 次の瞬間、順子は家中に響き渡るような絶叫を迸らせるが、それは、鏡に映った自分の顔が、百年の恋も一気に醒めるような醜いものに変わっていたからである。
完全にヤプールの支配化に入ったのか、

続いて、順子は巨大化し、超獣アプラサールとなる。
しかし、別荘行ってる間に自宅がぶっ壊されるとは、両親も夢にも思わなかっただろうなぁ。
バカ息子に留守番させるのは危険だ! と言う教訓である。
山中から知らせを受けた竜たちは、直ちにアローとスペースで出撃するが、

夜の出来事なのに、基地からの出撃シーンが昼なのは、ウルトラシリーズにしては珍しいミスである。
反対側から撮った抑えのショットはちゃんと夜になってるだけに、惜しい。
正直、ナイトシーンでの戦闘は、何やってんだか全然わかんねーよっ! と言うことが多いので好きじゃないのだが、

アプラサールが額の扇状の器官から閃光を放ち、

それによってビルが破裂するように爆発するショットは、ナイトシーンならではの素晴らしいビジュアルとなっている。
竜たちは激しい攻撃を加えるが、アプラサールはいたって涼しい顔をしていた。
ま、それは毎度のことなので驚くには値しなかったが、

どうやら、アプラサールにははっきりした実体がなく、ビームもミサイルもその体をすり抜けているようであった。
ここも、ちゃんとビームの軌跡を合成しているのが凄い。
竜「梶君、この超獣は一体何で出来てるんだ?」
梶「奴は宇宙線の合成物です、実体がありませんから、いくら撃っても無駄です」
竜は、何を思ったか、アローで超獣の体に突っ込み、その中で動けなくなる。
竜「その隙に外から頼む」
飛び込む前、北斗にはそう言っているのだが、はっきり言って意味が分からん。
逆に、アローが体の中にいたら、北斗たちも攻撃出来なくなるのではないかと思うのだが。
ともあれ、超獣の体内に入り込んだ竜隊長の耳に、

ヤプール「はっはっはっはっ、竜隊長、とうとう来たな、飛んで火にいる夏の虫だ!」
勝ち誇ったヤプールの声が聞こえてくるが、
順子「違います、違います。これはみなヤプールの仕業なのです。私はおとめ座の精です、私はおとめ座の精なのです!」
それに続いて、天女のような衣装をまとった順子の、無実を訴える叫び声が響く。
竜(……って言われてもなぁ)
この後、色々あって北斗と夕子が合体してAとなる。
竜隊長が体内にいるので、迂闊に攻撃できないだろうと睨んだヤプールの考えは甘かった。

そんなことお構いなしに、いや、むしろこのチャンスを利用して竜隊長を殺そうとしているのではないかと思えるほどの勢いで、超獣の上に馬乗りになって、そのお腹をボッコンボッコンに殴るAであった。
それでも、Aはちゃんと体内から竜隊長のアローを引き抜くと、丁寧に地面に置く。
竜はすぐアローを出て、山中たちと合流する。

美川「だいじょぶですか、隊長?」
竜「だいじょぶだ」
シンイチ「隊長さん、すいませんでした、謝ります」
竜「いや、あの超獣の中に天女が閉じ込められてるんだ」
シンイチ「えっ」
竜「あの少女がいるんだよ」
その後もAと超獣のバトルは続くが、なにしろ相手にははっきりした実体がないので、どれだけ攻撃してもダメージを与えられず、苦戦を余儀なくされる。
と、超獣の後ろの夜空に順子改めアプラサの顔が浮かび上がり、

アプラサ「ウルトラマンA、私はヤプールに操られています、ヤプールの送るエネルギーを断ってください!」
Aはその助言を受けると、額から虹色の光線を放ち、アプラサとヤプールの繋がりを切る。

その途端、超獣は巨大な天女の姿に変わり、あっけなく戦いは終わる。
うーむ、カタルシスゼロである。
やがて夜が明けるが、

シンイチ「僕の天女!」
シンイチはアプラサに向かって走るが、

アプラサは巨大な天女の姿のまま、シンイチを見下ろしてニッコリ微笑むと、やおら右足を上げてプチッと踏み潰すのだったが、嘘である。
シンイチ「どうしてそんなに大きくなっちまったんだい?」 ここで、「A」のみならず、ウルトラシリーズ屈指の爆笑台詞が、シンイチの口から発せられる。
しかし、この、二人の視線の合わせ方が実に自然で、さすが円谷プロの伝統芸と言った感じである。
そしてAは、アプラサを白鳥座に連れて行くことにする。
乙女の姿は白鳥に乗ってこそ最も美しいからだ、と言う訳の分からない理由からであった。
いや、だから、白鳥座なんてものは物理的に存在してる訳じゃないんですが……
まあ、どっちにしてもアプラサはあくまで精であって人間ではないので、このまま地球に留まってシンイチと結婚するなんてことは不可能だったろう。
……
でも、アプラサ本人は「地球を愛してます、人間を愛します」って言ってたから、そういう甘ったるい結末でも、別に構わなかったんじゃないかと思う。
ともあれ、Aとアプラサは揃って宇宙に向かって飛び立つ。

シンイチ「うわあーっ! ああ、ああ……」
大地に身を投げ出し、全身全霊で悲しみの雄叫びを上げるシンイチ。
ウルトラシリーズにおいて、これだけ暑苦しくて鬱陶しいキャラって、他にいないよね。
と、竜隊長がシンイチに歩み寄り、
竜「君、これは夏の夜の夢なんだよ、しかし、夢は大切にしたまえよ」 と、三秒で忘れてしまうような慰めの言葉を掛けるのだった。
こうして、色々と腑に落ちない点もあったが、とにかく事件は解決するのだった。
以上、途中で書いたように退屈なストーリーで、その上、台詞が無駄に長いという、レビューするには最悪の素材であった。
ゲストヒロインがもうちょっと可愛かったらなぁ……
でも、チョイ役の多い松坂さんにとっては、「レオ」6話と並んで準主役級の扱いなので、思い出深い作品だったのではないかと思う。
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