第14話「ナベ男勇介の叫び」(1988年5月28日)
冒頭、勇介が特に意味もなく採石場をバイクで走っていると、

白い仮面をつけて、色とりどりのタテガミのような髪をした三人の戦士が追いかけてきて、勇介の体に抱きつく。

勇介「放せーっ!」
三人を乗せたまま、なおもバイクを走らせる勇介。
ま、インド辺りでは、至極ありふれた光景である。

ハンドル操作を誤り、勇介のバイクが火を吹きながら崖から落ちていく。
ここはちゃんとバイクを燃やしているのがえらいが、

少し遅れて勇介本人が落ちていくのは、もっとえらい。
ま、スタントなのだが。
落ちる寸前にバイクから離れた三人の戦士は、崖上から黒煙が上がるのを見下ろしていたが、無論、勇介がそのくらいで死ぬ筈がなく、野獣のような動きで崖を駆け上ると、三人の頭上を跳び越して着地する。
勇介「貴様ら一体何者?」

ふと、気配に気付いて振り向けば、採石施設の上にアシュラが立っていた。
三人の戦士は一斉に飛び上がると、アシュラの背中に吸い込まれて消える。

勇介「消えた……」
アシュラ「この前は不覚を取ったが、戦う天才ドクターアシュラはそのまま終わる男ではない……俺は自らをさらにパワーアップするために新しい分身システム、サイバー分身を開発した……わが肉体と精神を共有するまさに一心同体の新戦士、アシュラ組三人衆シュラー! サイバー分身!」

アシュラが両手をクロスさせて叫ぶと、胸部で爆発が起き、三人の戦士が再び飛び出してくる。
つまり、アシュラの体に戻るときは背中、出るときは胸と言うことなのだろう。
口から出て肛門に戻るシステムじゃなくてほんとに良かった。

アシュラ「今日こそ貴様を倒す!」

シュラー「倒す!」
彼らはアシュラの分身なので、たまにアシュラの動作や台詞をトレースすることがあるのだ。
ちなみに彼らのデザインは、やっぱり歌舞伎からヒントを得てるんだろうなぁ。
勇介、ともかくレッドファルコンに変身して戦うが、なにしろいつも三人がかりで一人をいてこましているので、複数の敵に相手にすると生まれたての仔馬のように頼りなく、一方的にボコられる。

シュラーたちに痛めつけられたところで、伏兵のエレキヅノーの放った電撃ビームをまともに浴び、再び崖から転落する。
そのショックで変身が解け、通信機で仲間に助けを求めるが、何の反応もない。
その頃、丈は、勇介の苦闘も知らず、グラントータスでファミコンゲームに興じていた。
タイトルは不明だが、自機がバイクの形をした、横スクロールシューティングである。
そこへめぐみとコロンが入ってきて、

コロン「ああっ、丈、モニターはおもちゃじゃないコロン」
丈「かたいこと言わないの」
めぐみ「何かあったらどうすんの?」
丈「他のモニターの回線、ガンガン空いてんだからさー」
説教されてもゲームをやめようとしない丈に対し、

めぐみが、いたずらっぽい笑みを浮かべてその背後に回り、両手で丈の目を塞ぐ。

丈「あっ、バカ、やめろ」
めぐみ「あっ、ゲームオーバーだぁ! はっはっはっ」
……
めっちゃ可愛いやんけ!!
なんか「乳姉妹」の耐子を思い出してしまうような無邪気さである。
二人が、そんな楽しい青春の1ページを過ごしているとも知らず、勇介はぼろぼろの体でひとり山の中を逃げ回っていたが、アシュラはそんな勇介の動きを余裕たっぷりに見詰めていた。
アシュラ「逃げられるものか」
シュラー「ものか」

アシュラ「大教授ビアス様、ドクターアシュラと三人衆シュラーが、天宮勇介を仕留めるところをゆっくりとご覧下さい」

シュラー「ください!」
空を見上げ、ヅノーベースのビアスににこやかに呼びかけるアシュラに対し、
ビアス「なんかムカつくからミサイル発射!」 マゼンダ「え゛えっ?」
じゃなくて、
マゼンダ「アシュラ組三人衆シュラー!」
ケンプ「いつの間にかあんなものを?」
アシュラの新戦力を見て色めき立つ二人であったが、
ビアス「愚か者め、驚く暇があれば研究に励め! そうでなくて我が弟子といえるのか?」
ビアスはここぞとばかりに発破を掛け、競争心を煽り立てる。
勇介、山を下ってキャンパーたちで賑わう河原に辿り着き、水を飲もうとするが、

女性「ううわあああーっ!」
勇介の手が水に触れた途端、離れた場所にいた女性が感電して悲鳴を上げて倒れ、

勇介「どうしたんだ?」
女性「あああああーっ!」
勇介が彼女を抱き起こすと、さらに強い電気がその体を駆け巡る。

女性「ああっ、来ないで、近寄らないでよーっ!」
女性はややハスキーボイスで叫ぶと、恐怖に引き攣った顔で勇介から離れる。
そして、管理人のタカのように鋭い目は、前屈みになったエキストラ女性のブラが浮いているのを見逃さないのでした。
ま、さすがに中身までは見えなかったけど、たとえ0.01パーセントの可能性しかなくともエロを追求するのが真のキャプ職人なのである!

勇介「どうなってんだ?」
自分でも訳が分からず、混乱する勇介。
キャンパーたちはクマにでも遭遇したようにとっとと逃げ出すが、入れ替わりにあらわれたエレキヅノーがもう一度電撃ビームを勇介に食らわせる。

アシュラ「電気人間となった気分はどうだ?」
勇介「電気人間?」
アシュラ「エレキヅノーのエレキビームを浴びたお前は、電気人間となったのだ」
勇介「そうか、それでみんなを感電させてしまったんだ。ツインブレスで連絡が取れなかったのも……」
そう、勇介、「バトルフィーバーJ」42話の志田京介のように、人に触ることもできない悲劇の電気人間になってしまったのである。
ちなみに、ひょっとして……と思ったら、案の定、どっちも曽田博久さんの脚本でした。
勇介「レッドファルコン!」
勇介、条件反射でライブマンに変身しようとするが、当然、ツインブレスは機能せず、勇介はリーゼント兄ちゃんのまま。
アシュラ「何処へ逃げてもエレキヅノーはお前の体から発する電気を突き止める。すなわち、もうお前は終わりだ」
勇介「なにぃ」
勇介、無謀にも生身の体でエレキヅノーに向かっていくが、かなうはずがなく、再びエレキビームを浴びるが、その勢いで川の向こう岸まで飛ばされたので、なんとか命を拾う。
アシュラ「しぶといやつめ……だが、その体では逃げ切れん」
アシュラにとって、いや、ボルトにとって、ライブマンを倒す千載一遇のチャンスであったが、元々メンバー間の競争心が強く、自分たちの才能を世に知らしめることが目的で、世界征服は二の次に過ぎないようなところのあるボルトの幹部たちが、アシュラの手柄を横取りしてまで勇介を殺そうとするはずもなく、ヅノーベースに留まって傍観するだけで、またしてもチャンスを棒に振ってしまうことになる。

早くも日が傾き、オレンジ色に染め上げられつつある荒野を、よろめきながら進む勇介。
夜になって、勇介は漸く一軒の民家に辿り着くが、都合のいいことに、その家には大きな電波塔があり、そこの息子が友達と一緒にアマチュア無線に興じていた。

勇介「お願いがあるんだ、この周波数で俺の仲間に連絡をとってくれ、頼む」
窓を叩き、彼らにメモを渡そうとする勇介だったが、うっかり相手の体に触れてしまい、またしても感電させてしまう。
さらに、何度もエレキビームを浴びたせいか、勇介の体が磁気を帯びてしまい、

勇介「ああーっ!」
部屋にあった鍋やトースター、クッキーの缶などが飛んできて、勇介の体に付着する。
少年「出てけ!」
少年「バケモン!」
彼らは勇介の身を気遣うどころか、化け物呼ばわりして物を投げつけ、追い払う。

勇介が、住民から文字通り「石もて追われて」いる様子をニュースで見ていたコロンは、
コロン「警察が来たら、他人だと言うことにするコロン」 めぐみ&丈「オッケイ!!」
じゃなくて、
コロン「ねえ、変なニュースやってるコロン」
めぐみ「なんかの宣伝じゃないの」
丈「あれ、これ、勇介じゃねえか」
コロンは映像を分析し、
コロン「勇介の体から異常な電磁気が発生しているわ」
たちどころに答えを出す。
しかし、丸一日勇介と連絡が取れないのに、勇介を探そうともせずグラントータスに篭っているめぐみたち、ちょっと薄情じゃないか?
人生最悪の一夜を過ごした勇介であったが、なんとか朝を迎える。

勇介「なさけねえ、何が悲しくてこんな格好しなきゃなんねんだ……」
土手を降りるとバス停の時刻表が立っていたが、磁力がどんどん強くなっているのか、重たい時刻表まで自分に向かって飛んでくる。
勇介がなんとかそれをかわして距離を取っているのを、背後からアシュラがほくそ笑みながら見詰めていた。
アシュラ「お似合いだぜ、天宮勇介、お前の命もここまでだ。くたばれっ」
だが、アシュラが進み出ようとしたその時、路線バスがやってきて勇介のそばを走り抜けるが、

勇介の体がバスの車体に引き寄せられてしまい、バスは勇介を窓枠にぶらさげたまま、アシュラたちの前から走り去る。
アシュラ「運の良い奴め」
ここは、ちゃんと俳優さん本人が演じているのがえらい。
勇介の体から発する電気で、乗客は勿論、運転手まで感電してしまい、バスは道路から外れて擱座する。

で、例によって乗客たちによる投石が始まる。
……
なんだ、日本って、この頃からディストピアだったんだね!! ガッテン、ガッテン!!
勇介「どうしてこんな目に遭わなきゃならないんだ! 俺は、みんなのために戦ってるんだぞ!」
勇介の必死の叫びも、理性を失った群衆の耳には届かない。
そこへやっとめぐみと丈が駆けつけ、彼らをなだめようとするが、

運転手「こいつはな、みんなを感電死させて、殺そうとしたんだぞぉ!」
バスの運転手(毎度おなじみ、鎌田功さん)に突き飛ばされ、

めぐみ「ああっ」

ぷりんとしたお尻が丸出しになる。
……
鎌田さん、グッジョブです! その後も、乗客たちの勇介への投石は、ほとんど、どっかの独裁政権に火炎瓶で抵抗する市民なみの激しさで延々と続けられる。

勇介「どうして分かってくれないんだ? 俺はこんな奴らを守るために戦ってきたのか、今まで命を賭けて戦ってきたのはなんだったんだ?」
いわれのない迫害を受けている勇介の中に、人間に対する不信感と絶望がむくむくと湧き起こったのは無理からぬことで、遂にはスーパーヒーローとしてのアイデンティティーまで崩壊しそうになる。

めぐみ「勇介……」
それに気付いためぐみが、なんともいえない悲しそうな目で勇介の気持ちを気遣う。
ちなみに管理人は、森恵さんが眉を顰めると、額にくっきり縦のシワが入ることに、このシーンを見ていて気付いた。
めぐみ(あなたの口からそんな言葉聞きたくなかった……)
丈、なおも体を張って投石をやめさせようとするが、
シスター「おやめなさい!」
不意に、横から飛んできた凛とした声に、乗客たちも丈も一瞬動きを止め、静まり返る。
振り返れば、いつあらわれたのか、バスの前方に黒い修道服をまとった若いシスターが立っていて、すたすたと勇介のそばに歩み寄ると、
シスター「かつてあなたは人知れず戦うことを誓ったはずです、感謝されることなく、讃えられることはなくとも……忘れたのですか?」 ロザリオを勇介の顔に突きつけ、諄々と諭す。
しかし、この場合、感謝とか称賛とかのレベルじゃなくて、人殺し呼ばわりされて石ぶつけられてる真っ最中だからねえ……いまひとつ心に響かない台詞である。
疲労困憊した勇介の目はかすみ、相手の顔もはっきり見えなかったが、それが修道女であることは分かった。
勇介「尼さんか、お祈りでもしてくれるって言うのか、そうすりゃ元に戻れるって言うのかい?」
勇介が捨て鉢な口調で応じると、シスターはいきなり勇介の腕を掴み、感電して悶え苦しむ。
と、その拍子に、やっと勇介の体がバスから離れ、地面に投げ出される。
地に伏せたシスターが顔を上げれば、
勇介「あっ、めぐみじゃねえか」
無論、それはめぐみの変装であった。
一体何処からそんな衣装を調達して、何処で着替えたのかと言う点を突っ込むのは、野暮と言うものであろう。

丈「めぐみ、大丈夫か」
めぐみ「うん」
勇介「……」
めぐみ「ごめんね、生意気言って……弱音を吐く勇介なんか見たくなかったんだもん」
優しく勇介に語り掛けるめぐみタンは可愛いが、勇介の場合、自分が守っている人たちの「民度」に失望したのであって、弱音とか、そう言う問題じゃないと思うんだけどね。
めぐみ、ふと、勇介の体にくっついていた金属製品の一部が落ちているのを見て、歓声を上げる。
めぐみ「取れてる! そうか、勇介の体を流れる電流が私の体に通ったから、磁力が弱まったんだわ」
勇介「そうか……」
めぐみ「丈、次はあなたよ」
丈「ええーっ?」
めぐみ「勇介のためでしょう」
さすがに尻込みする丈であったが、めぐみに背中を押されるようにして、目をつぶって勇介の体に抱き付き、わざと感電する。
丈も服がボロボロになってぶっ倒れるが、そのお陰で完全に電気が抜けたのか、勇介に貼り付いていた鍋や缶は、すべて剥がれ落ちる。

勇介「丈、だいじょぶか?」
丈「へへっ」
勇介が抱き起こすと、丈はニヤッと笑って指で丸を作って見せる。

勇介「ありがとう丈、ありがとうめぐみ……」
めぐみ「うん」
ボロボロの衣装をまとい、慈母のように頷くめぐみが健気なのである!
めぐみと丈の献身で勇介の体が元通りになり、三人の結束が改めて確認されたのは喜ばしく感動的なシーンなのだが、肝心の、勇介の一般市民に対する不信感は棚上げされたままで、この後、アシュラたちの出現で乗客たちが「ごめん」の一言もなしに逃げ出してしまうので、うやむやのままラス殺陣に突入してしまうのが、実にもやもやしてスッキリしない。
ひとりぐらいは、勇介のことを気遣ってくれる人間(可愛い女子中学生or女子高生希望)がいれば、多少は違っていたと思うのだが、会う奴会う奴、ことごとく石ぶつけてこられた日には、勇介だって戦うのが厭になるというものではなかろうか。
あと、最初に勇介が接触したアマチュア無線少年たちが、何か役割を果たすのかと思っていたが、それっきり出て来なくなったのもやや肩透かしであった。
結局、勇介のそれまでの鬱憤は、ボルトに対してぶちまけられることになる。

勇介「よくも可愛がってくれたな、礼を言うぜ。貴様に三人衆があるなら、俺たちは三人の戦士、チームワークなら負けないぜ!」
勇介の雄叫びにあわせて三人が拳を突き出し、変身ポーズを決めると同時にOPが流れ出す。
これは普通に燃える。
今回はジンマーがいない分、ラス殺陣のアクションも濃密で、

シュラーたちが、トリプルライブラスターの爆発で空に飛びながら、

手から光る手裏剣を投げるところや、

ファルコン「その手は食わんぞ」
エレキヅノーの放ったエレキビームを剣で受け止め、それを振って相手に叩きつけ、

エレキヅノーの周囲に散った電流で激しい爆発が起きるところなど、見応え十分である。
エレキヅノーを倒し、巨大ロボバトルをつつがなく済ませた後、

勇介「丈、めぐみ」
めぐみ「うふっ」
丈「ふっ」
勇介の差し出した右手に自分たちの手を重ねるめぐみと丈であったが、
丈「うわっ、ちちちっ!」
突然、丈が、火傷でもしたように右手を離して叫んだので、

めぐみ「あっ」
勇介「うっ……」
勇介もめぐみも、一瞬ドキッとするが、無論、それは丈のいたずらに過ぎなかった。
この、めぐみの驚き顔がめっちゃ可愛いのである!
でも、前にも書いたと思うが、メンバーが三人しかいないと、それぞれの個性がより際立つので、彼らの掛け合いを見ているだけで楽しくなるんだよね。
なんでこの面子で最後までやろうとしなかったのか……
仲良くじゃれあいながらその場を離れる三人であったが、

アシュラたちが、そんな彼らの様子を山上から見下ろしていた。
アシュラ「さすがはライブマン、褒めてやるぞ」
シュラー「やるぞ」
アシュラ「だがな、ドクターアシュラと三人衆シュラーとの戦いはこれからが本番なのだ」
シュラー「なのだ」
アシュラ「必ず貴様らを倒す!」
シュラー「倒す!」
アシュラ(うぜえ……) 以上、ユーモラスなサブタイトルとは裏腹に、勇介が市民に迫害されて一時人間不信に陥るというハードな展開であったが、その解決方法が曖昧だったので、ドラマとしてはいまひとつ盛り上がりに欠けるのが惜しい作品であった。
それにしても、圧倒的優勢になりながら、仲間のサポートを受けなかったアシュラが敗退し、対照的に勇介たちがチームワークの力で困難を克服したのを見れば、ボルトも個人間の功名争いに明け暮れていないで、一致団結してライブマンを倒すよう戦略の方針転換をすべきであったが、「悪の組織」がそんな殊勝な考えに至ることは、残念ながら滅多にないのである。
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