※今回の記事は、2014年5月に公開した記事を大幅に加筆訂正したものです。 本当はもっと早く書くつもりだったが、諸事情によって延び延びになってしまった「美女シリーズ」のお時間です。
今回紹介するのは、第19弾、1982年10月23日放送の「湖底の美女」であります。
原作の「湖畔亭事件」は、大正15年(1926年)に書かれた中編で、明智も出て来なければ、強烈な殺人鬼キャラも出て来ない、かなりマイナーな作品で、読んだことのある人はあまりいないんじゃないかと思う。一応、本格ミステリーと言っていいと思うが、うーん、ちょっと説明しにくい作風なのだ。
レンズ嗜好癖のある主人公が、旅先の旅館で殺人事件を目撃したが、それが本当に起きたのかどうか分からず、同じ宿に泊まっていた洋画家とあれこれ調べると言う筋。乱歩の作品中でも一種独特の雰囲気と言うか、香気があって、個人的には割と好きなんだけど、万人にお勧めできると言うような感じでもない。
しかし、この原作を使って2時間サスペンスを作れと言うのはかなりの難問で、自分が脚本家だったら荷物をまとめて故郷に帰りたくなるレベル。
もっとも、出来上がったものは、原作の部分的なモチーフ、人名、舞台を流用しているだけで、オリジナル作品と言っても過言ではない内容となっている。
ちなみにこの第19作を以て、文代役の五十嵐めぐみさん、小林少年役の柏原貴さん、そして監督の井上梅次氏がそれぞれ番組を卒業する為、シリーズとしてはひとつの区切りとなっている。
さて、原作では舞台についてははっきり書かれていないが、ドラマでは「白樺湖」となる。もっと言えば、「白樺湖レイクサイド ホテル山幸閣」がそのほとんどの場面を占める。
そのホテルでは、地下にある巨大水槽の中で、ビキニ姿の肌もあらわな美女が潜水しながら魚にエサをやり、それをロビーの巨大モニターに映してみんなでニヤニヤしながら見ると言うアトラクションが呼び物になっていた。
要するに、ソフトな水中ストリップみたいなもんである。
明智の声「ここ、信州白樺湖畔に立ったホテル……」
続いて、ホテルの外観や、白鳥の形をした遊覧船、蓼科高原の野山などの映像に、
「君恋し、面影を~白樺湖水に浮かべぇれば~♪」
「あの日の思い出懐かしく~二人で歌った青春賛歌~♪」
などという、しょうもない歌(観光用のイメージソング?)が被さる。
さらに、明智たちを乗せた特急あずさ2号だかV3だかの正面からのショット。

明智の声「蜘蛛男事件を解決した私は、久しぶりの休暇をそのホテルで過ごすことにした」
そして、茅野駅の改札を抜ける、文代さんと小林少年を引き連れた、物凄い柄のスーツを着た明智さんのご登場となる。
こうして見ると、まるっきりヤクザの親分が、愛人と子分を連れてお忍び旅行に来たとしか思えない。

上村「明智さん、明智さんじゃないですか」
明智「ああ、上村さん」
改札を抜けた直後、背後から明智と同年輩の知的な紳士に声を掛けられて、顔をほころばせる明智さん。
上村「お久しぶりです、どちらへ?」
明智「白樺湖へ、ちょっと休暇で」
上村「偶然ですな、私もこれから白樺湖に行くんです。河野陽水画伯に呼ばれましてねえ」
上村は弁護士で、その関係で明智と面識があったのだろう。
ちなみにこの二人、「新ハングマン」のGODと園山の顔合わせなんだよね。こっちの方が先だけど。
上村が駅舎から出ると、ほとんど同時に、若いモデル風の美女が車を運転して迎えに来る。
上村「来た来た、明智さんは?」
明智「僕は、ヒッチハイクで……」 上村(気の毒に……)
じゃなくて、
明智「僕はタクシーで」
上村「そうですか、じゃあ」
明智が、その運転手の美女・ゆかり(松原千明)に、ボーッとした眼差しを向けているのに気付いて、
文代「先生、また!」
明智「いやいや、どこかで見たことあるなと思ってね……あ、思い出した。あれは河野陽水の絵のモデルだ」
美人に関しては抜群の記憶力を誇る明智は、たちまち、かつてギャラリーで見掛けたゆかりのことを思い出す。

陽水を演じるのは、美女シリーズの常連・高橋昌也さんである。
ちなみにその時の絵と言うのが、
クッソ下手だった。 ま、お約束ですね。
その頃、河野は、娘の陽子をモデルにして湖畔で絵を描いていたが、そろそろ弁護士が来る頃だからと娘と一緒にホテルへ引き揚げる。
ホテルの部屋から、美しい湖畔の風景を見ている、陽水の後妻・忍(野川由美子)。
不意に、後ろからその肩を抱いたものがいる。驚いて忍が振り向くと、

そこに、僕らの島田アニキ(伊東達広)が立っていたので、管理人、大笑い。
おまけに、後妻の名前が「しのぶ」だし……
いきなりその唇を奪おうとする陽水の弟子・野崎の腕から、飛びのくように逃れる忍。
忍「やめて野崎クン! 人を呼ぶわよ!」
野崎「どうぞ、大声を出しても誰も来ませんよ」
忍「よして、あなた陽水の弟子じゃないの。主人に言いつけるわよ」
野崎「そんなこと、もーどうでもいいんです。僕は前からあなたが好きだった」
忍「やめて野崎クン! 陽水が……」
野崎「先生は日が暮れるまで帰ってきませんよ……奥さん、先生は今、ゆかりさんに夢中です」
忍「知ってるわよ」
野崎「いずれあなたは捨てられる。だが僕はあなたが好きだ!」
忍「……」
ずっと前から陽水との仲が冷え切っていた忍は、野崎の「愛してる」と言う言葉にあっさり陥落して、野崎に体を許してしまう。
最近おおっぴらにモデルのゆかりに入れあげている、陽水に対するあてつけの気持ちもあったのだろう。
ちなみにこの野崎三郎と言う名前、「湖畔亭~」と同時期に書かれた乱歩の問題作「闇に蠢く」の主人公の名前だっけ?
ともあれ、ここでタイトルが表示され、OPクレジットが流れる。
さて、上村弁護士はホテル山幸閣へチェックインするが、ほとんど同時に、明智たちも姿を見せる。そう、偶然にも同じホテルを予約していたのだ。
上村はにこやかに、明智とゆかりを引き合わせる。
上村「ご紹介しましょう、梓ゆかりさん、絵のモデルをやってる。ほら、車の中で話した明智さんだ」
ゆかり「はじめまして、お名前はよく存じております」
明智「私もあなたを存じてますよ、銀座の画廊で見ました、あなたのモデルの絵を」
ゆかり「あらっ、うふっ」
明智の抜け目ないアピールに、少し恥ずかしそうに息を弾ませるゆかりタン。
上村は、自分が河野陽水の顧問弁護士であり、陽水たちもこのホテルに滞在していると説明してから、明智と別れる。
文代「せんせー、お楽しみがひとつ増えましたね」
明智「えっ?」
早速、「恋女房」の文代さんが明智をからかう。
続いてホテルへ戻ってきた河野親子は、廊下で上村たちと合流し、みんなで一緒に河野の部屋へ入る。
だが、その部屋では、
忍と野崎がベッドインしている最中だった。 めっちゃ気まずい瞬間であった。
しかし、いくら「日が暮れるまで帰ってこない」と言われていたとしても、夫とふたりで泊まっている部屋で、こんなことするかなぁ?
忍「はっ」
二人も、すぐ気付いてシーツで前を隠しながら起き上がる。
河野「忍、これはどういうことだ? 説明して貰おうか」
忍「いや、あの、野崎クンが!」
河野「野崎、貴様なんてことを!」
ピシャッと野崎をビンタする河野。
野崎と恋仲だった陽子も激しいショックを受ける。
陽子「野崎さん、汚い、汚いわ!」
野崎「陽子さん、違う、これには……!」
野崎が慌てて陽子に何か言い訳しようとするが、河野はその肩を押さえ、
河野「野崎、やめろ、今更なんだ!」
その後、河野に一方的に離婚を言い渡されても、
ナニのあとなので、さすがに何もいえない忍。

ゆかりが地下の大水槽に降りてくると、河野の旧友で、画家の加賀(草薙幸二郎)が、マリンガールをしているマキをモデルに絵を描いているところだった。
ゆかり「こんにちは」
マキ「こんにちは」
加賀「おお、ゆかりくん」
ゆかり「おじさん、私、お魚にエサやっても良いかしら?」
ゆかりの申し出を、水槽などの管理をしている三造(牟田悌三)は快諾する。
三造「すっかりこの水槽が気に入ったようですな」
ゆかり「ええ、お魚とお友達になっちゃった」
この三造、原作にも出てくる数少ないキャラで、原作では知的障害のある風呂焚きだったかな?
ただ、そんな役を、名優・牟田悌三さんが演じているのと言うのは、これだけでひとつのネタバレだよね。
以前レビューした時はそれ以上の感慨は湧かなかったが、その後、「魔女先生」の洗礼を受けた身で見直すと、「おお、まんまバルだなぁ」と反射的に思ってしまう管理人であった。

ちなみに、加賀が描いているマキのデッサンも、コーノに負けず劣らず下手だった。チーン。
ゆかり「マキさんをお描きになってるんですか」
三造「よー描けとるでしょう」(皮肉にしか聞こえない)
ゆかり「でも、河野先生のタッチに似てるみたい」
加賀「そりゃそうだ、僕と彼とは兄弟弟子だからね」
加賀とマキが休憩に行った後、ゆかりが歯痛の薬を三造に渡すのだが、
ゆかり「おじさんに頼まれてた歯痛のお薬」
三造「ああ、こりゃどうも、ありがとう」
二人の他人行儀な話し方は、ミステリーとしては一種の反則に近い。
何故なら二人は○○なのだから……
もっとも、万が一にも周囲にばれないよう、二人きりのときも、そう言う喋り方をするように決めているのかもしれないが。
ゆかり、水槽のそばでズボンを脱ぐのだが、肝心の下半身は映っておらず、ズボンの下からプリッとお尻が出てくる、管理人の一番見たいシーンは見えなかった。

それでも、松原千明さんの割と大きなお尻がばっちり見えるのだから、贅沢は言うまい。
そして、ゆかりによるエサやりシーンとなるが、松原さんにはそんな芸当は出来ないので、スタントが、泳ぎながらエサをやっているシーンと、松原さんが、ただ水の中に入った状態でエサを蒔いているシーンとを組み合わせて表現している。
一方、河野と忍の離婚話は弁護士がその場にいたため、トントン拍子に進んで、後は離婚届にハンコを押せば良いと言う段階に来ていた。
河野「離婚はしても、向こう2年間は生活費を渡す。月に30万。文句はないな?」
上村「妻の不貞を夫が目撃、おまけに証人までいる。黙って判を押した方がお得だと思いますよ」
忍「……」
すっかり落ち込んでいる忍は、上村にセールスマンのような口調ですすめられるまま、ハンコを押すが、押した後で変なことに気付く。
忍「上村さん、あなたどうして離婚届の用紙を持ってらっしゃるの? 用意が良過ぎるんじゃない? 野崎君、あなたさっき陽子になじられた時、『違う、これには』って言ったわね。あれ、どういう意味? あなた、陽水は日が落ちるまで帰らないって言ったわ……騙したのね、あたしを!」
ここでやっと、忍は河野たちに(文字通り)ハメられたことを知る。河野は、忍を離縁し、陽子だけに財産を遺す為、野崎を使ってこんな芝居を打ったのだ。
河野「証拠があるかね、証拠が」
河野は平然とうそぶくが、
忍「あたし負けないわよ。ここに残ってあなたたちの陰謀暴いてやるわ! あたし、絶対許さない!」 怒らすと怖い野川由美子さん。
ただ、このエピソード、メインの殺人事件とは
まったく関係ないのだった。チーン。
この作品、メインストーリーとは関係のないドラマに力を注ぎ過ぎているのが最大の欠点である。
その後、野崎は、廊下で河野をつかまえ、陽子にまで自分と忍の痴態を見せたのは約束違反だと、師匠である河野を非難する。彼は陽子との結婚を条件に、この企みに加担していたのだ。
河野「お前に娘はやらん」
野崎「そんな……お嬢様を下さるというから、僕は先生の命令どおり……」
河野「野崎、お前の力量で私の後が継げると思ってるのか?」
だが、河野は冷たく突き放し、最初から陽子と結婚させるつもりがなかったことを明かす。
要するに、野崎は河野に利用されただけなのだ。
……と言うより、忍と離婚すると共に、野崎を娘から遠ざけようと言うのが、今回の謀略のもう一つの目的だったのだろう。
野崎は湖畔でぼんやりしていた陽子に会い、河野たちの企みを打ち明けて釈明する。
野崎「先生は心臓が悪い。いつ何があるか分からない。忍さんは万が一のことを考えて先生に遺言書を書いてくれって毎日毎日迫っていたんです。先生はそんな忍さんにすっかり嫌気が差して……陽子さん一人に遺産をやりたいって」
陽子「それであんな芝居を?」
野崎「命令どおりやれば、陽子さんを私に下さるって……でも、先生から未熟なお前には娘はやれないって言われました。僕は先生に騙されて利用されたんです。でも、どんなことがあっても、僕はあなたと結婚するつもりです!」
陽子「あたしもそのつもりだったわ、でも、でも、もうダメ、さよなら!」
陽子は涙ぐみながら、野崎の前から走り去る。
野崎「陽子さん! ……くそっ、親子で俺を馬鹿にしやがって……」

夜、陽子がシャワーを浴びて部屋に戻ると、ベッドの上にこんなコケシが置いてあるのを発見する。
犯人からの警告なのだが、これほど魅力のないプロップも珍しい。
陽子はすぐゆかり野部屋に行き、ドクロのコケシを見せる。
陽子「私のベッドの中に」
ゆかり「一体誰が?」
陽子「わかんない、なんだか薄気味悪くて……」
ゆかり「悪戯にしては度が過ぎてるわね」
過ぎてないと思いますが……
ちなみに陽子役の女優さん、林未来さんと言うのだが、なかなかの美人である。
惜しむらくは、脱ぎOK女優さんじゃないので、シャワーシーンでも、後の殺害シーンでも、おっぱいを見せてくれない。
おっぱいの出てこない美女シリーズなんて、パンチラのない「スピルバン」みたいなものである。
その2へ続く。
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