第28話「そして、誰も居なくなる」(1977年8月24日)
読者の皆様、わんばんこ。
木曜から土曜までの三日間で、某金田一の2時間サスペンスのレビューを書き上げ、ヘロヘロになっている管理人であります。
だいぶ前に読者の方からリクエストされた作品で、いつかは書かねばと思っていたので、ホッとしているところです。
ま、公開はだいぶ先になると思いますが……
そして、今回の記事も、読者の方からのリクエストを受けてピンポイントでリテイクしたものなのです。
冒頭、勝浦海岸の沖合いに、「海底地質調査団」と言うプレートを掲げたモータボートが浮かんでおり、船の上には男と女がいて、心配そうに海面を見詰めていた。
今、彼らの足元では三人のダイバーが活動中なのである。

恐らく、大学の研究グループだと思われるが、管理人のキャプチャーセンサーは、たちどころに紅一点のメンバー圭子の、大学の助手とは思えないあだっぽさを湛えたクールな美貌にロックオンされるのでした。パチパチパチ。
演じるのは紺あき子さん。
ただ、せっかくの海だというのに、水着姿ひとつ披露してくれないのがまことに遺憾である。
やがて三人が上がってくるが、

圭子「どうでした、教授?」
吉村「いやぁ、どうもこうも、どうだ見てくれ、酒が切れたので、こんなに手が震えておる!!」
圭子「アル中かいっ!!」 と言うのは嘘だが、前回レビューしたとき、「おっぱい揉ませてくれ」とか、たぶん、そんなギャグを書いたのではないかと思ったので、あえて違うボケを書いてみました。
実際はどうだったのか、怖くて見れません。
なにしろ6年以上も前の記事だからね。
話を戻して、
吉村「いやぁ、どうもこうも、どうだ見てくれ、興奮でこんなに手が震えておる!!」

圭子「と、おっしゃいますと?」
吉村教授の代わりに、圭子の恋人の川奈が答える。
川奈「ウランだ」
圭子「えーっ?」
川奈「純度100パーセントに近い、正真正銘のウラン鉱なんだよ」
圭子「まあ」
剛田「ほんとですか、教授?」
吉村「急ごう、もしもこんなことを悪い奴らに知られたら、邪悪党は今目の色を変えてウランを狙っているからね」
元々彼らがウラン鉱脈を探して調査をしていたのか、学術的な調査の最中、偶然発見したのかは不明だが、5人はボートで波を蹴立てて飛ぶように陸地へ向かう。
そこにサブタイトルが重なるが、無論、クリスティーの名作「そして誰もいなくなった」のもじりである。
原題は「10人の小さなニガー」と言う、人種差別丸出しのタイトルだったんだけどね。
今回のお話、子供向け特撮ドラマの中で、フォーマットを崩さずに本格ミステリーを描いてしまった画期的な作品なのだが、ついでに、マザーグースの内容に合わせて人が殺されると言う、見立て殺人の要素も取り入れていたら言うことなかったのだが、ま、贅沢は言うまい。

5人は小さな入り江の岩を削って作った桟橋に船を繋ぎ、その奥に広がる洞窟に機材を運び入れる。
その洞窟の中が、彼らの調査拠点になっているのである。
すぐ近くにある行川アイランドのホテルにでも泊まれば良いのにと思うが、大学にはホテルに連泊するほどの予算がないのだろう。
それを思えば、真犯人が金に目が眩んで悪に手を貸した気持ちも少し分かるような気がする。

圭子「あっ、あっ……」
川奈「だいじょうぶかい」
圭子「ええ」
ボートから降りる際にコケたのか、圭子のむっちりとした腕を掴んで助け起こす川奈であったが、

剛田「ようよう、いくら恋人同士かしらねえけどな、ここへはデートに来てるんじゃねえんだぜ」
A級「非モテ」ライセンスを所有する剛田(あだなは勿論ジャイアン)にやっかみ混じりのイヤミを進呈される。
圭子は殺意の篭った視線をジャイアンに放つが、

川奈「はっはっ、気にするな、でも、お互いあまり馴れ馴れしくしない方が良いな、仲間内でつまらんトラブルは避けないとね」
圭子「はい」
真面目で温厚な川奈は、怒る色も見せずに恋人に自重を促す。
言い忘れていたが、主人公的存在である川奈を演じるのは、特撮レジェンドのひとり、伴直弥さん!!
恥ずかしながら管理人、一度レビューしたにも拘らず、今回チェックするまで、この話に伴さんが出ていたのをすっかり忘れていた次第である。
それはともかく、この何気ないやり取りが、後の圭子の不審な態度の伏線になっているのである。
長坂さん、恐るべし!!
と、ただならぬ悲鳴が洞窟の奥から聞こえてくる。
川奈たちが急いで駆けつけると、吉村教授が左胸に短剣を突き立てて倒れていた。
早くも第一の殺人発生かと思いきや、

川奈「教授、教授、だいじょぶですか」
吉村「ああ……あ、手裏剣、いや、驚いた、こいつがなかったら死んでいたところだ」
胸ポケットに入れていた金属製のケースが盾になって、吉村教授が命拾いしたことが分かる。

圭子「大変です、無線機が壊されています!!」
ホッとしたのも束の間、圭子のけたたましい声に来てみれば、同じ手裏剣によって無線機がめちゃくちゃに壊されていた。
この状況で、余人に気付かれずにメンバーのひとりが無線機を壊すのは難しいので、これは出航中に、邪悪党の一味が行ったものであろう。
小説とは異なり、ここは絶海の孤島ではないので、危険を察した5人はすぐ車に乗って逃げ出そうとするが、既に車のタイヤにも同じ手裏剣が突き立てられてパンクしていた。

阿久根「これは」
川奈「やっぱり邪悪党だ、早くスペアタイヤを」
党員「察しが良いな、川奈助教授」
と、周囲のあちこちからいつもの戦闘員があらわれ、彼らを取り囲む。
党員「ボスの命令でね、あんたがたには死んでもらいますよ」
剛田or阿久根「何故だ?」
党員「お前たちが死ねば海底のウラン鉱のことは誰も知らない。つまり我々だけのものになる」
川奈「貴様たちの思い通りにはさせんぞ!!」
党員「それはどうですかね」
うっかり、昔取った杵柄で熱血ヒーローみたいな台詞を放ってしまう伴さんだったが、今の彼は一介の学者に過ぎず、ピストルを突きつけられればどうすることも出来ない。
と、何処からか飛んできた石がピストルを持つ手に当たり、間一髪で川奈たちを救う。

無論、投げたのは早川で、ギターを掻き鳴らしながら、岩盤にぽっかり開いた狭いトンネル状の通路を、黒いシルエットとなってゆっくり近づいてくる。
それを見て、
川奈(俺のパクリやん……) と、伴さんが思ったかどうかは知らないが、まあ、どっちも長坂さんが書いてるんだけどね。
早川、ギターを砂浜の上に垂直に立てると、目にもとまらぬ早業でザコどもを片付ける。

早川「おいでなさったな」
早川、殴りつけた拳を揃えて開くと、

早川「黒バラマークの手裏剣使い、ふふんっ、ブラックローズ」
ゆっくりと立ち上がり、船の陰に隠れていた今回の用心棒に向かって語り掛ける。
イナズマの模様が入った着流し姿の、ロングヘアが鬱陶しいおっさんが出てきて、

ブラックローズ「ふふふふふ、俺を知っているとはさすがだなぁ、早川」
早川「ああ、知っているさぁ、邪悪党のボス、悪天坊の用心棒、そして名うての手裏剣使い。ただし、その腕前は日本じゃあ二番目だ」
ブラックローズ「二番目だと? それじゃあ(以下略)」
おっと、思わず省略してしまったが、ここでいつもの腕比べタイムとなる。
先行のブラックローズ、やにわに三本の手裏剣を飛ばして、吉村教授の持っていたケースに突き立てる。
それを見た川奈たちが、
一同(普通やん……) と、心の中で突っ込みを入れたかどうかは定かではないが、このパフォーマンスが、シリーズ中、一、ニを争うほど地味なものであることは確かである。

ブラックローズ「殺すことだってできたんだぜっ、あっさり殺ったんじゃ、楽しみが薄くなる、ふっふっふっふぅっ……」
おまけに、ブラックローズ自身の顔も、シリーズ中、一、ニを争うほど地味である。
ついでに、これほど名前とルックスが隔絶しているキャラも珍しい。
早川はケースに刺さった手裏剣を引き抜くと、これまた猛スピードでブラックローズ目掛けて投げつける。
一瞬身構えたブラックローズであったが、手裏剣が何処にもないのを見て、
ブラックローズ「ふふふふ、早いには早いが、どうやら明後日の方へ飛んでっちまったらしい、ふふふふ」
早川「ふふふふ、そいつはどうかな、ブラックローズ、心臓の辺りを調べたほうが良いと思うがね」

早川の言葉にブラックローズが胸元を開くと、いつの間にか、そこに手裏剣が三本張り付いていた。
ブラックローズ「おっ……」
いつの間にか、手裏剣が服の中に潜り込んでいたことに気付き、愕然とするブラックローズ。
いや、肌に直接そんなものが触れたら、気付くだろ、さすがに……
あと、我々が見たいのは、圭子タンの、乳輪がでかめ(希望)の乳首であって、ブラックローズの控え目な乳首ではないんですが……

ブラックローズ「くそぉ」
早川「殺すことだってできたんだぜえ、あっさり殺っちゃあ……チチチチッ」
用心棒が負けるのは毎度のことだが、早川にその口調を真似されてバカにされるという、これまたシリーズ中、一、ニを争う惨めな敗北を喫したブラックローズ、捨て台詞を吐いて退散する。
その後、今度はボートで脱出中の5人プラス早川。
吉村教授は晴れ晴れとした顔で、
吉村「いやぁ、我々の中にスパイがいたのではなくて良かった」
早川「さあ、そいつはどうですかね」

圭子「えっ?」
早川の意味ありげな言葉に驚いて振り向く圭子タンのお顔が可愛いので貼りました。
文句あっか?

早川「奴らはウラン鉱の発見を知っていた、つまり、この中に奴らにそれを知らせたものがいるということです」
名探偵よろしく、「犯人はこの中にいる」と断言する早川。
考えたら、元々早川って私立探偵と言う肩書きなので、ある意味、シリーズ中、一番ちゃんと仕事してる回と言えるかもしれない。
もっとも、そう考えたのは早川だけでなく、
川奈「やはりそうお考えですか。実は僕も同じことを考えていたんです」
剛田「あ、俺も」
阿久根「僕も」
圭子「私も」
吉村「じゃあ、ワシも」
早川「張り合うんじゃないっ!!」 じゃなくて、
川奈「やはりそうお考えですか。実は僕も同じことを考えていたんです」
剛田「はっはっはっはっ」
吉村「何がおかしいんだね、剛田君?」
剛田「そうさ、スパイはこの中にいる、俺には分かってるんだ」
阿久根「それは誰です」
剛田「仲間に裏切り者がいるわけがねえ、だが、仲間じゃねえのがひとりいる」
剛田、部外者の早川がそのスパイだと遠回しに告発するが、
一同(まずい、バカだ……) ついさっき自分たちを邪悪党の魔手から救ってくれた早川を犯人扱いするという、邪悪党の人が聞いてもあきれ返るような推論に、川奈たちが内心で溜息をついたかどうかは定かではないが、剛田の推理が思いっきり的外れなのは確かである。
あと、仲間内から出るから、「裏切り者」って言うんですけどね。
早川は剛田のトンチンカンな憶測など意にも介さなかったが、俄かに険しい顔になると、いきなりエンジンを切り、

吉村「何をする?」
早川「静かに!! 爆弾だ。みんな、海へ!!」
全員が飛び込むのを待ってから、再びエンジンを始動させてその場から走り出し、

早川「といやっ!!」
適当なところで自らも海へ身を投じる。
次の瞬間、ボートは水柱を立てて爆発する。
続いて、

何の脈絡もなく、画面一杯にこんな看板が映し出される。
毎度お馴染み、
【タイアップの鉄則 その1】対象となる施設名を、さりげなく画面に映し込め! であるが、読者の皆様におかれましては、
これのどこがさりげないんだーっ!! と言うツッコミを入れながらお読み頂きたい。
で、今回はドラマの性質上、行川アイランドの施設内で撮影するのが難しく、はっきり言って無理やりなのだが、

オサム「はっ」
みどり「あっ」
オサム「みどりさん、今の音、なんだろう」
みどり「何の爆発かしら?」
その音に驚いて振り向いたのが、施設自慢のプールを掃除していた、シリーズ後半はほとんど出番のないみどりとオサムなのだった。
つまり、二人がそこで働いている設定にすることで、ストーリーとは無関係だが、スタッフが大変お世話になっている行川アイランドの施設を映し出すことを正当化している訳である。
二人は展望台から音のした方を見遣るが、そこからでは山塊が視界をふさいで、泳いでいる早川たちの姿は見えなかった。
で、残念ながら、みどりさんの出番はこれで終わり。
ま、一応台詞があるだけマシか……
早川たちはなんとかあの洞窟に泳ぎ着く。

吉村「やれやれ、振り出しに戻ったか」
川奈「一体誰が船に爆弾を……」
圭子「やっぱり犯人は私たちの中に?」
圭子の言葉に川奈たちは互いに猜疑に満ちた視線を交わすのだが、ウラン鉱が発見されることを見越して爆弾を持ってくる奴なんている筈ないんだから、ここは、普通に邪悪党の仕業と考えるのが自然かと。
と、剛田の姿が見えないので、阿久根は「なんか怪しいから」と言う理由だけで剛田を犯人扱いするが、
圭子「ああ、ああーっ!!」
不意に圭子が、何か恐ろしいものを見たように絶叫して海のほうを指差す。
見れば、すぐそこの海面に、胸を手裏剣で刺された剛田の死体が浮かんでいるではないか。
助けを呼ぶ方法もなく、5人はそのまま洞窟で一夜を明かす。
凶器の手裏剣を掴んで考え込んでいる早川に、

川奈「早川さん、剛田君はやはりブラックローズにやられたんでしょうか?」
早川「この手裏剣は確かに奴のものです、しかし、いくらブラックローズでも海の中で殺しに手裏剣を使うのは難しいでしょう」
圭子「と言うと?」
早川「つまりこの手裏剣は投げたのではなく刺した。岸へ向かって泳いでいる時にこのうちの誰かが……」
早川の名探偵っぽい推理に、またもや疑惑の視線が闇の中に飛び交う。

ま、とりあえず、圭子タンの画像でも貼っておこう。
ただ、確かに泳いでいる人間の胸に離れたところから手裏剣を投げて刺すのは難しいだろうが、それを言うなら、一緒に泳いでいる人間の胸に、他の人間に気付かれずに手裏剣を刺す方が、遥かに難しいと思うんだけどね。
後編に続く。
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