第28話「そして、誰も居なくなる」(1977年8月24日)
の続きです。
CM後、いつものように部下を怒鳴り散らしている首領L。

L「悪天坊、早川が守っていて、奴らには手が出せんと言うではないか。貴様、それでも邪悪党の党首か」
悪天坊「ご安心下さい、奴らの中には我が邪悪党に忠誠を誓ったものがおります。そ奴は既に無線機を壊し、漁船を爆破し、助手の一人を殺しました。早川と残る三名の始末もそ奴に任せてあります」
悪天坊の言葉で、やはり内通者がいることを示してから、

川奈「ケイちゃーん」
圭子「はっ……」
海辺の岩に腰掛けてペンダントをいじっていた圭子が、川奈の出現に何か後ろ暗いことがあるようにそそくさとペンダントをしまうシーンを入れるのが、視聴者をミスリードする心憎い編集である。

川奈「みんなから離れない方が良い、早川さんが言ってただろ」
圭子「ごめんなさい」
そんな二人の様子を、物陰からじっと見詰めている早川。
結局、早川たちは岸伝いに歩いて、人のいるところに行こうということになる。
先行していた早川たちに、吉村が息を切らして追いついてきて、

吉村「すまん、すまん、どうも若い頃のように体が言うことを聞かなくてなぁ」
圭子「あら、阿久根さんがいないわ」
吉村「困った奴だ、勝手に逃げ出すとは……早川さん、どうする?」
早川「こうなったら仕方ありません、この4人だけでも離れんことです」
ついで、再び行川アイランドの看板がででんと画面を占領し、

何の脈絡もなく、フラミンゴショーの様子が映し出される。
そして、スタッフは、フラミンゴショーを見ている気の毒な客たちの間で売り子をしているオサムに東条が話しかけるというシーンを無理やりぶっこむのだった。
そう、これまたお馴染みの、
【タイアップの鉄則 その2】対象となる施設およびその周辺で可能なアクティビティーをストーリーに絡ませろ! である。
東条「オサム君、爆発らしいものが見えたって?」
オサム「うん、ちょっと来て」
東条はオサムにさっきの場所まで案内させるが、
東条(あのあたりには吉村教授の海底調査団が行っている、もしかしたら邪悪党が……)
水平線の彼方を見詰めながら、眉間に皺を寄せて心の中でつぶやくだけで、事件には全く関与しないのだった。わおっ!!
4人はさっきのトンネルを抜け、緑に覆われた岬の上に出るが、

早川「少し休みましょう、もうすぐ行川アイランドです」
ここで、
【タイアップの鉄則 その4】ロケ地の施設名・地名を俳優に言わせろ! が炸裂する!!
たとえレジェンド宮内さんであっても、この鉄則から逃れる術はないのである。
4人は潮風に顔をなぶらせながら休息を取るが、

なんとなく沈んだ様子で黙り込んでいる圭子を、少し離れたところからじっと見ていた吉村が、つと、川奈に顔を寄せて、

吉村「川奈君」
川奈「は?」
吉村「いや、どうも言いにくいことなんだがね」
川奈「仰って下さい」
吉村「君の恋人のことだがね。怪しくはないかね」
川奈「なんですって!!」
聞き捨てならない言葉に川奈は思わず振り向くと、
川奈「違います、彼女は豊胸なんかしてません!!」 吉村「いや、そーいうことぢゃなくて……」
もとい、
川奈「なんですって!!」
吉村「ああ、いや、ただ、もしやと思ってね……ワシはその、彼女が胸のロケットに小型の無線機を仕込んでいるじゃないかと思ってね」
川奈の脳裏に、慌ててペンダントを隠した時の圭子の姿がフラッシュバックする。
川奈「馬鹿なことは言わんでください、彼女は僕が妻にしようと決めてる人です。ケイちゃんのことは僕が責任を持ちます」
吉村「いや、すまん、これは君とワシの仲でも少し言い過ぎだった、許してくれたまえ」
それでも川奈がきっぱりと否定すると、吉村もすぐ前言撤回して引き下がる。
けれど、状況が状況だけに、川奈の中に圭子に対する漠然とした疑惑が芽吹いたのは無理もないことであった。
と、まるでそれを見澄ましたかのように、吉村が足元の草むらを歩く人影を目にして、「阿久根君がいたぞ!!」と、大声で叫ぶ。
実際、それが誰だったかの明示されていないが、たぶん、邪悪党の一味が化けたニセモノだったのだろう。
と言うより、ここは、実際に人影は見せずに吉村教授の声だけにしておいたほうがよりミステリーらしさが出ただろう。
吉村と川奈が人影を追って下に降りるが、早川と圭子はその場に留まる。
続いて早川も崖を降りようとするが、今度は圭子の悲鳴が聞こえ、三人が慌てて戻ってみると、圭子の目の前の草むらの真ん中に、阿久根が死体となって横たわっていた。
阿久根らしき人影は反対側にいたのだし、早川が目を離した僅かな隙に阿久根を刺し殺すのはどう考えても無理なのだが、

川奈「ケイちゃん、まさか……」
圭子「ひどい、あなたまで私を疑うなんて!!」
直前に、吉村教授に吹き込まれていたせいもあり、川奈は思わず圭子にまで疑いの目を向けてしまう。
ショックを受けた圭子はその場から走り出し、早川、そして川奈が追いかけようとするが、
吉村「川奈君、やはり……」
川奈「先生、僕は彼女を信じてるんです!!」
吉村(いや、今思いっきり疑ってたやん……) 嘘はさておき、川奈は吉村教授の制止を振り切って走り出すが、今度は背後で呻き声がしたので振り向けば、

吉村「ぐわぁーっ!!」
川奈「先生!!」
何処から飛んできたのか、首を手裏剣で貫かれた吉村の姿があった。
吉村は苦痛で顔を歪めたまま、崖から海へ転落する。
川奈が悲嘆に暮れていると、早川と圭子が戻ってくる。
コロコロと気持ちの変わる川奈は、再び敵意の篭った目を恋人に向け、
川奈「君は胸の無線機で誰と連絡を取っていたんだ?」

圭子「……」
若干、軽蔑したような醒めた目で川奈を見返す圭子タン。
特に今の場合、早川が共犯でもない限り、彼女に教授を殺せる筈がないのに、それでも自分を疑っている川奈に失望を感じたとしても不思議はない。
もっとも、こんな極限状態に置かれた挙句、恩師である教授を目の前で殺された直後だとすれば、川奈が一時的に錯乱したとしても、これまた不思議はないのだが。
川奈「吉村先生は死んだ、吉村先生は僕の親代わりの人だったんだ!!」
早川「待ちまたえ!!」
我を忘れて圭子にむしゃぶりつく川奈を引き離すと、

早川「圭子さん、ロケットの中身を見せて上げなさい」
圭子「……」
既に何もかもお見通しの早川は、振り向きもせずに圭子を促す。

言われるがままに圭子がペンダントロケットの蓋を開いて川奈に見せるが、そこにあったのは無線機などではなく、川奈自身の写真だった。
川奈「……」
早川「圭子さんは、悲しくなるたびに、優しかった君の思い出に浸っていたんだよ!!」
早川から圭子の気持ちを聞かされ、やっと憑き物の落ちたような顔になる川奈。
冒頭で、圭子が「馴れ馴れしくない方が良い」と川奈に釘を刺されたことが、こんなところに繋がっていたのである。
もっとも、早い段階で調査どころではなくなっていたのだから、それ以降も圭子が川奈の言葉を墨守して、写真を見るだけで我慢していたと言うのは、あまりに愚直過ぎて、その辺がちょっと引っ掛かるといえば引っ掛かる。
なのでここは、途中から川奈と圭子の関係がギクシャクして、二人の仲が疎遠になっていたと言う風にしたほうが圭子の謎めいた行動の理由も理解しやすかったかもしれない。
川奈「それじゃ、犯人は一体?」
早川「邪悪党に買収されて次々に仲間を殺した。その名前は……危ない!!」
その名前を言いかけた早川、手裏剣が風を切る音を聞いて、慌てて二人を伏せさせる。

早川「だっ!!」
川奈「早川さん!!」
左の肩口あたりに手裏剣を突きたてられた早川、そのまま吉村教授の後を追うように海に落ちてしまう。
川奈(何もそれくらいで海に落ちなくても……) と、川奈が思ったかどうかは定かではないが、早川のリアクションがややオーバーなのは事実である。
ちなみにその手裏剣を投げたのは、今度こそブラックローズであったのだろう。
川奈「早川さんは誰の名を言おうとしてたんだ?」
その疑問の答えは、映像によって視聴者に示される。
穏やかな波の打ち寄せる、行川アイランド近くの岩場にあらわれたのは、なんと、死んだはずの吉村教授ではないか。

吉村「苦労したわい」
首につけていた、湾曲した奇術用の手裏剣を煩わしそうに投げ捨てる。
そう、真犯人が殺されたふりをして嫌疑を免れると言う、「そして誰もいなくなった」でも使われていたトリックだったのである。
ちなみに、真犯人が社会的地位のある老人と言う点も、オリジナル(?)を踏襲している。
今までの殺人も、全て吉村の仕業だったのだ。
吉村が歩き出すとすぐ、岩の陰から邪悪党の一味がわらわらと出て来る。

悪天坊「教授、よくやってくれた」
吉村「今日からワシはあんたのお抱え学者だ。5000万円の月給は約束どおり頂くぞ」
その動機がひたすら金であったことが分かるが、まだ川奈たちが生きているのに、これでミッションコンプリートというのはちょっと解せない。
悪天坊「その前にウラン鉱脈の場所を聞こう」
吉村「イカリ島の南30キロの海底だ。この海図に印をつけておいた」
極悪人の癖にお人好しの吉村、悪天坊の求めに何のためらいもなく地図を取り出して見せるが、

悪天坊「ふふふ、ではまず手付金だ」
吉村「うわぁああーっ!!」
邪悪党のほうが一枚上手で、あっさりその場で射殺される。
悪党にふさわしい末路であったが、どうせなら、川奈たちが真相を知って吉村を糾弾するシーンも見たかった。
つーか、この後のシーンを見る限り、結局、二人は誰が真犯人か知らないままのようなんだよね。
もっとも、親代わりの恩師が犯人だと知れば川奈は立ち直れないほどのショックを受けただろうし、後味が悪過ぎるので、ちびっ子向けドラマとしては、それで良かったのかもしれない。
ついでに言うと、「そして誰もいなくなった」も、真相は事件のあとで読者に示されるだけで、被害者たちは何も知らないまま死んでいるので、その点も同じなんだよね。
そうそう、原作では全員死亡だが、戯曲版では、最後まで生き残った男女が真相を看破して、結婚する結末なんだよね。
ミステリーマニア(?)の長坂さんのことだから、川奈と圭子を生き残らせたのも、ひょっとしたらそれを意識してのことだったかもしれない。
閑話休題、なんとか行川アイランドの中に逃げ込んだ二人だったが、その前に邪悪党が立ちはだかる。

と、ここでいつものように、何処からともなくズバッカーが走ってくる。
そう、
【タイアップの鉄則 その1】対象となる施設名を、さりげなく画面に映し込め! である。

ズバット「はっはっはっはっはっ」
ズバッカーで意味なく空を飛んでから、行川アイランド名物のオブジェの上に降り立つズバット。
そう、
【タイアップの鉄則 その3】撮影はなるべく観光スポットで行え! である。
悪天坊「貴様、何者だ?」
ズバット「ズバッと参上、ズバッと解決、人呼んでさすらいのヒーロー、快傑ズバァッット!!」

悪天坊「快傑ズバット?」
ズバット「悪行を重ね、非道の限りを尽くし、あまつさえ罪のない人をあやめた悪天坊!! 許さん!!」
川奈たちに真相を知らせないためか、いつになく抽象的なズバットの断罪台詞。
ただ、剛田と阿久根を殺したのは吉村で、悪天坊はその吉村を殺しただけなので、「罪のない人をあやめた」と言う表現は間違ってるような気もする。
もっとも、剛田はともかく、阿久根については、実際に手を下したのが吉村なのか邪悪党なのかは不明なんだけどね。
この後、ラス殺陣になるが、たぶん、ズバットも視聴者もその存在をすっかり忘れていたブラックローズが出て来て悪天坊を守ろうとするが、

ブラックローズ「ぐわーっ!!」
手裏剣を全て鞭で弾き返された上、自分の手裏剣が首に刺さって悲しそうな顔になると言う、情けない死に方を遂げる。
良いとこなしやのう。
おまけに、

倒された際、ありがた迷惑のフンチラ(フンドシ・チラの略)まで披露してくれるという念の入りよう。
このブラックローズこそ、シリーズ中、最低の用心棒だったといっても過言ではあるまい。
ま、悪天坊にしても、印象に残らない点では、シリーズ中屈指のボスなんだけどね。
ただ、

ズバット「2月2日、飛鳥五郎と言う男を殺したのは貴様か」
悪天坊「ワシは知らん」
ズバット「貴様だなぁ」
悪天坊「ワシはその頃、インドで修行しておった」 最後の、ズバットの訊問に対する答えだけは爆笑モノで、管理人、今回チェックしてて思わず吹き出してしまったことを報告しておく。
戦いの後、
早川(飛鳥、お前を殺した奴は……もうコイツでいいだろ?) 果て知れぬ犯人探しにウンザリしたのか、思わず妥協しそうになる早川だったが、嘘である。
早川(飛鳥、お前を殺した奴は、何処にいるんだ?)
しかし、毎回突っ込んでる気がするが、容疑者のアリバイも調べずにその証言だけで犯人かどうか決めてしまうのは無意味だし、逆に、そうとは知らずに真犯人を成敗してる可能性だってあると思うんだけどね。

川奈「早川さん、海底のウランは平和のために使わせてもらいます」
圭子「早川さーーーん!!」
ラスト、オブジェの下から去っていく早川に呼びかける二人の姿を映しつつ、終わりです。
以上、前述したように、特撮ドラマの枠内で、切れ味鋭い本格ミステリーを描くことに成功した、シリーズ屈指の異色作であった。
惜しむらくは、悪役に華がないこと、圭子のおっぱいやお尻がろくに見れなかったことである。
- 関連記事
-
スポンサーサイト