第10話「幻夢城―東京 エキスプレスの影を追え」(1983年5月6日)
冒頭、満面の笑みを浮かべ、身内から込み上げる嬉しさを抑え切れないように小躍りしながら小次郎さんが鈴木モータースに飛び込んでくる。
小次郎さんのことなので、彼女が出来たとか、万馬券を当てたとか、そういう俗っぽいことではなく、

小次郎「見てよ、見てよ、これ見てよ、奇跡の瞬間!!」
明「へーっ、これがUFO?」
10年一日のごとく、小次郎さんの生き甲斐はやっぱりUFOなのだった。
なにはともあれ、夢中になれるものがあるというのは幸せなことなのです。

その写真をチラッと見た電は、
電(イラストじゃねえの、これ?) と、素朴な疑問を抱くのだったが、嘘である。
イラストなのはほんとだけど。
電(これはマドーの戦闘機だ)

千秋「宇宙人が乗ってるのかしら」
小次郎「はい、ETちゃんが乗ってますよ~」
千恵「会いたい、ETちゃんに」
心優しい千秋たちは、そう言って小次郎に話を合わせてくれるが、

勝平「ばっかばかしい、宇宙人だのなんのって、インチキ写真にきまっとる」
小次郎「社長、インチキだなんて、僕がどんな思いでこの写真を撮ったか」
勝平「UFOなんて信じられんよ、インチキだ」
小次郎「インチキだって、ああっ!!」
現実家の勝平は、頭からそれをインチキだと決め付け、小次郎さんを憤激させる。
翌日のニュース 昨日深夜、○○区の路上で、鈴木モータースの経営者・鈴木勝平さんが何者かにナイフのようなもので腹部を刺されると言う事件があり、鈴木さんは救急車で病院に搬送されましたが、意識不明の重態です。警察は、現場から逃走した自称・UFO写真家の大山小次郎を重要参考人として行方を探しているとのことです。昨日の午後、UFO写真の真偽について二人が言い争いをしているのを鈴木さんの家族が目撃しており……
みたいなことになると怖いので、下手にマニアを怒らせるのはやめましょう。
もっとも、
電「どうやって撮ったか聞かせてよ」
小次郎「いいとも」
電がすかさずそう言ったので、小次郎もすぐ機嫌を直して電を自分のマンションへ連れて行くのだった。
あるいは、電、上記のような悲劇が起こるのを防ぐために、あえて小次郎さんの歓心を買って見せたのかもしれない。
それはともかく、小次郎さん、無職の癖になかなか豪華なマンションに住んでいた。
「ギャバン」では、もっとぼろっちいアパートに住んでいたと記憶しているが……

電「ほお、こりゃ本格的だなぁ」
部屋には所狭しと高価そうなハイテク機材が積んであり、その充実振りには電も本気で感心したほどであった。
小次郎「いやぁ、田舎の母ちゃんにね、泣きついて出してもらったんだよ、財産分けだぁ」
そして小次郎さんの口から、その金の出所が分かり、あまり自分のことを話さない小次郎さんの貴重なパーソナルデータとなっている。
財産分けと言ってるくらいだから、実家で家業を継いでいる兄夫婦、なんてのがいそうな感じである。
電「これ全部フルオートシステム?」
小次郎「うんだ、UFOを探知するとね、自動的にカメラのシャッターが切れる仕組みになってるんだ」
電「ほお」
小次郎「ところがね、不思議なことに、5コマしか映ってないんだよ、つまり、5秒間だけUFOが現れて、また消えてるんだ」
小次郎さんはそう言うと、問題のフィルムを電に示す。

小次郎「1コマ目で現れて、5コマ目で消えかかってるべや」
電(何故5コマだけ?)
幻夢城。
玉座の間に入ってくるなり、

ガイラー「どういう訳だ、これは」
と、問題の雑誌「月刊UFO通信」と言う、何もかもがヤバ過ぎる雑誌をポルターに突き出すガイラー将軍。
ガイラー将軍が、その格好で本屋に言ってこれを買い求めている図を想像すると笑ってしまうが、実際は、ミスアクマあたりが人間に化けて買ってきたものだろう。
ただ、ネットのない時代に、こんなキワモノ雑誌の中に重要な機密が写っていることを、どうやってガイラーが知ったのか、それが謎である。
ひょっとしたら、定期購読してたりして……

ポルター「計器の故障で5秒間だけバリアが途絶えてしまったのだ」
ガイラー「シャリバンが嗅ぎまわるに違いない、しばらく資材の搬入を控えたらどうだ」
ポルター「そうするつもりだ」
珍しく意見の一致を見る二人。
まあ、当たり前といえば当たり前だが、「悪の組織」が、ヒーローの出方を警戒して作戦を一時止めるというあたり、実に「大人」の感じがして好きである。
これがショッカーだったら、絶対何も考えずに作戦を推し進めていただろうから、それと比べると余計にね。
サイコ「これでマドー砲の完成が遅くなる。これ以上嗅ぎ付けられないためにもUFO写真家の追跡装置を破壊せよ」
念には念を入れ、魔王サイコは小次郎さんの虎の子の機材まで潰そうとする。
ナレ「マドーは大都会にマドー砲の要塞を築きつつあった」
ナレーションにあわせて、資材を積んだ戦闘機が高層ビルの中に入っていく様子が映し出されるが、肝心のマドー砲とやらは、コントロールルームに掲げてある「完成予想図」だけしか出て来ないと言うのは、いささか物足りない。
戦闘機は、普段はカムフラージュ装置が施されているのだが、何らかのトラブルで5秒間だけそれが無効になり、それを小次郎さんが親の金でゲットした高性能カメラが捉えてしまったというわけなのだ。

ポルター「ミスアクマ1、ミスアクマ2、指令を出すまでは資材の搬入を即刻中止せよ」

ミスアクマ1「了解、即刻中止します」
ポルターから命令を受けるミスアクマたち。
いつ見ても、ミスアクマ2のそこはかとなく悲しそうな顔がツボである。
今更言っても無駄だが、この衣装、もうちょっとどうにかならなかったかなぁ。
ララさんは勿論、丸山さんだってなかなか可愛いのに……
一方、電は、マドーの動きを読んで、密かに小次郎の身辺警護を始めるが、

ふと見れば、小次郎さんのマンションと向かい合ったビルの屋上に数人の兵士がいて、小次郎さんの部屋に向かってバズーカを撃とうとしているではないか。
急いでそのビルの非常階段を駆け上がる電であったが、そう言う時こそ、「赤射」して一気に屋上に行けば良いのである。

電が屋上に辿り着いた瞬間、バズーカ砲が発射され、小次郎さん自慢のUFOキャッチャーはめちゃくちゃに破壊されてしまう。
小次郎「戦争だー、戦争、戦争!!」
幸い、小次郎さん本人は軽傷で済み、大声で叫びながら部屋から飛び出し、非常階段を駆け降りていくが、

途中、踊り場に、スッと海坊主があらわれ、行く手を阻む。
電の監視が任務である海坊主が、消極的とは言え、マドーの作戦に参加するのは極めて珍しいケースである。

小次郎「ああーっ!!」
回れ右して、今度は屋上に向かって走り出す小次郎さん。
屋上に上がった小次郎さんに、魔怪獣が巨大なハサミを翳して殺到する。

小次郎「来ないで、来るな、あああ、お母さーんっ!!」
屋上の端まで追い詰められ、情けない悲鳴を上げる小次郎さん。

その魔怪獣は、小次郎さんに対するせめてもの思い遣りか、典型的な銀色のUFOに胴体と手足とチョンマゲがついたような姿をしていた。

人呼んでユーホービーストと言う、見た人が必ず
「まんまやないけっ!!」と叫ばずにはいられないネーミングの魔怪獣であった。
魔怪獣に体を持ち上げられ、ぐるぐる回転された小次郎さん、既に死を覚悟したのか、
小次郎「さよならー、さよならー、全宇宙の生命体よ!!」 と、ありきたりのセンスの持ち主では到底言えそうもない、スケールのでかいダイイングメッセージを全宇宙に向かって発信する。
いやぁ、やっぱり鈴木正幸さん、いい役者だわぁ。
もしこれが大五郎の伊藤克信さんとかだったら、目も当てられないトホホなシーンになっていたことだろう。
魔怪獣、そのまま小次郎さんの体を放り投げて殺そうとするが、今度こそ「赤射」して赤い球体となったシャリバンが飛んできて、空中でキャッチ、間一髪で命を救う。
その後、屋上や非常階段でちょっとしたアクションをこなしてから、ユーホービーストは退却する。

ガイラー「追跡装置は破壊した、さあ資材の搬入を開始しよう」
ポルター「いやまだ安心は出来ない、シャリバンの目が光っている」
ガイラー「早く完成させてズドンとやった方がいいんだ」
作戦の再開時期について、「御前会議」を開いているガイラーとポルター。
ガイラーの、勢いだけの、知性のかけらも感じられない発言に対し、
ポルター「マドー砲要塞はわがマドーにとって大事な戦力、それだけに慎重の上にも慎重を期さねば……」
あくまで理性的に、且つ謙虚に、自重を主張するポルター。
いつも自信だけは売るほどあるショッカーの皆さんに、少しは見習って欲しい態度である。
サイコ「ドクターポルターの判断は正しい」
また、両者の言い分を聞いて、的確な裁定を下す魔王サイコの、「民主的」な組織運営も見事である。
電とリリィは、小次郎さんの写真を分析して航路を割り出し、その周辺を念入りに探索するが、マドーが搬入を停止しているため、何の異常も発見できない。

リリィ「偶然だったんじゃない、小次郎さんの写真は? 秘密の航空路なんてないのよ」
電「いや、マドーは何かを企んでいる。俺達を警戒して息を潜めているんだ」
なるべく仕事したくないリリィはそう結論付けるが、電の確信は揺るがない。
考えたら、魔王サイコが小次郎さんの部屋まで襲撃させたのは、逆に電に疑いを持たせることになっただけで、あまり良策ではなかったかもしれない。
電「ようし、敵がその気だったら、こっちも」
電、リリィと手分けをして各地に磁気探知機を設置し、マドーの動きに即応できるようにしてから、

電「これでよし、さて、次の仕掛けは……」
ちなみにそれらは夜間に行われていて、さも隠密の作戦のように思えるが、夜が明ければ探知機を設置してあるのがバレバレで、あまり意味がないような気も……
続いて、電とリリィ、ジープに乗ってとある場所へ向かう。
ちゃんと、マドーの一味が尾行しているのを確認してから、

UFO社と言う、あまり、知り合いに入っていくところを見られたくないビルを訪れる。

その様子をじっと見詰めている、私服姿のミスアクマ1とミスアクマ2。
ぶっちゃけ、今回の一番の楽しみは、彼女たちの私服姿だったりする。

編集長「なにを証拠にインチキ写真だって言うんだ?」
電とリリィは、例の雑誌の編集長に会う。
演じるのは、シリーズ常連の冨田浩太郎さん。

編集長「これはね、大山小次郎と言うUFO研究家が、苦心の末に漸く撮影に成功したんだ」
電「別にインチキとは言っていません」

ちなみに今回レビューしてて気付いたのだが、電たちの話している手前を、ミスアクマたちがカメラマンっぽい男性たちに続いて横切っていのが見えた。
恥ずかしくない衣装に身を包んだララさんが、いかにも嬉しそうにしているのが微笑ましい。

電「ただ、撮影された場所が違うって言ってるんです」
編集長「ええ?」
リリィ「この雑誌では撮影場所は東京C地区になっていますが、我々の調査した結果、UFO航路なんてないんです」
電「これは多分、何処か地方で撮影されたものだと思います」
ちなみにここでは、貴重なリリィのスカート姿が拝める。しかも割りと短め。

カメラをいじっているふりをして、聞き耳を立てていた二人、電の言葉に頷きあう。
しかし、電が仮にそう判断したのだとしても、なんでそれをわざわざ雑誌社に「言いつけ」に来なければならないのか、その辺を少し考えれば、これが電の仕掛けた罠だとすぐ気付きそうなものだが……

ポルター「なに、気付いていない?」
ミスアクマ2「はい、シャリバンは東京上空の秘密航路に気付いていません」
異例のことに、その姿のまま幻夢城に戻り、ポルターに報告している二人。
ポルター、きっと、
「キーッ、自分たちだけ普通の格好しちゃってえ!!」と、内心で歯軋りしていたに違いない。
ララさんのモデルっぽい着こなしも素敵だが、丸山さんの、なんとく子供っぽいスタイルも可愛らしい。

ポルター「で?」
ミスアクマ1「撮影の場所が違うと、UFO者の編集長に噛み付いておりました」
丸山さん、見ての通りなかなか美人なのだが、あまり変装してくれないのが残念である。
いつものポルターなら、前述の理由で電の魂胆を見抜いていただろうが、

ガイラー「チャンスだ」
ポルター「……」
ガイラーのおバカが伝染したのか、何の疑いも持たずに会心の笑みを浮かべて頷く。
サイコ「よし、搬入を開始せよ」
この辺、少し残念だが、ヒーローと悪とが、相手の腹を読みあって謀略合戦を繰り広げるところは、見ていて実に楽しいものがある。
こうしてマドーは電の策略とも知らずに搬入を再開し、

リリィ「地下秘密基地があるとすればこの辺りよ」
電「ようし」
電たちは、あらかじめ仕掛けておいた磁気探知機からのデータを分析し、遂に秘密航路とその目的地を割り出す。
ナレ「伊賀電は計算されたその地点に不思議なビルを発見、そのビルから異様な匂いを嗅いだ」 と言う、めちゃくちゃ強引な理由で電がそのビルに目をつけたことが語られるが、

……
いや、そんな無駄にややこしいところから入らなくても、普通に階段登ればええんとちゃう?
ともあれ、ビルに首尾よく潜入した電を待っていたのは、

物言わぬ、無数の不気味なマネキン人形たちであった。
物は言わないけど、
お前、絶対、笑いを取りに来てるだろ? 案の定、マネキン人形たちが襲ってくるが、あんまり派手にアクションするとマネキンを壊してしまう恐れがあるので、可及的速やかに別の場所に飛ばされる。
エレベーター、ついで、操車場に移り、ファイトローやミスアクマたちと激しく戦う電。
やがてガイラー、ユーホービーストも参戦するが、相変わらずリリィは参戦しない。
まぁ、グランドバースに居残って、メカや「赤射」システムの準備をしているのだろうが。
ほどよいところで変身した電、ここから一気にラス殺陣に雪崩れ込む。
今回も、無駄にアクションシーンが長いのだが、

ガイラー「いやーっ!!」
車両の端に立ったガイラーが、気合を発して剣を足元に突き刺し、

そこから激しい火花が走って、シャリバンの足元で爆発し、

そのまま吹っ飛ばされるというアクションなどは、相変わらず惚れ惚れするほどの出来である。
戦いの途中、シャリバンはシャリンガータンクに乗り、地下を探査して、たちまち地下秘密基地の全容を把握する。

シャリバン「あれがマドー砲か……」
「あれってイラストじゃねえのか?」と、一瞬思うシャリバンであったが、気付かないふりをしてあげるのだった。
武士の情けと言う奴である。
シャリバン、モグリアンで地下に突撃し、ガイラーたちが丹精込めて作ったマドー砲を一瞬で瓦礫の山に帰す。

シャリバン「生まれたーっ!!」
とでも言うように、基地の爆発と共に地上に飛び出すシャリバン。
サイコ「よくもマドー砲
のイラストを……幻夢界に引き摺りこめ」
ポルター「幻夢界一丁!!」
じゃなくて、
ポルター「幻夢界発生マシーン作動!!」
幻夢界に移り、メカバトルなども一通りこなしてから、ユーホービーストを倒して事件解決。
特筆すべき点はないが、

頭部のUFO状のパーツを外したユーホービーストの顔が、諸星大二郎の傑作「子供の遊び」に出てくる得体の知れない生き物みたいで、かなり不気味である。

戦いのあと、ビルの上に立って剣を片手にポーズを決めるシャリバン。
なんだかんだで、シャリバンは絵になるなぁ。
それにしても、マドー、これで10回連続で負けているのだが、等身大の戦闘はともかく、毎回、戦闘機や戦闘母艦を無駄に消耗させているのがアホに見えて仕方ない。
10回も、それも一方的に負け続ければ、11回目にはどんな馬鹿でもそのままでは絶対に勝てないと分かりそうなものだが……
それでも戦うのなら、戦闘機を改良するか、戦い方を工夫すべきなのだが、そう言う形跡は一切見られない。これ以降、ひたすら芸もなく延々40回もこの同じ負けパターンを続けるのだから、これを愚かと言わずして何と言う。
ラスト、パトロールの途中、電は小次郎のマンションに立ち寄り、

電「小次郎さん」
小次郎「よお」
電「懲りずにまだやってるの、UFOの追跡」
小次郎「勿論」
車に乗ったまま、屋上の小次郎さんと言葉を交わす。

小次郎「私の命の続く限り、UFOは追いかけますですよ、ハイ、あははははは」
あんな目に遭ったのに、懲りずにUFO探しに熱中している小次郎さんであった。

電「なかなかいい根性してるなぁ、小次郎さん、ようし、俺も負けないぞ!!」
そんな小次郎さんの生き様に、素直に感心する電であった。
余人から見れば馬鹿馬鹿しいことでも、あれだけひたむきに取り組む姿には、何か人の心を打つものがあるのだろう。
ただ、予告編の、

ナレ「謎の飛行物体発見、わーっ、UFOだ!! と、喜ぶ小次郎に……」
ちょっとおちょくるようなナレーションと共に映し出される興奮した小次郎さんの目付きが、
完全にヤバい奴にしか見えないのも、また厳然たる事実であった。
以上、小次郎さんの「本物」のUFO写真に端を発した、電とマドーの虚虚実実の騙し合いを描いた力作であったが、今回も、千秋たちの出番がほとんどないのが悲しい。
とにかくアクションシーンが長過ぎ!!
こういうのを見ると、またぞろ「特撮アクションシーン不要論」を唱えたくなってくる管理人であった。
ちなみに今回の記事、約3時間半で最初から最後まで一気に書いたものである。
普通は、二回くらいに分けて書くんだけどね。
さすがに一気書きはしんどかった。
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