第17話「泣く人形! 襲う人形!」(1988年6月18日)
冒頭、めぐみが、愛用のスポーツサイクルのサドルをお尻の割れ目にずっぽり食い込ませながら走っている。

その行く先は、人気のない陸上競技場であった。
めぐみ「今日も頑張ってるな、あの子……」
視線の先には、トラックをひとりで走っている、白いトレパン姿の高校生くらいの少女がいた。
その女子高生が転んだので、思わず駆け寄るめぐみ。
少女は、何かに躓いたというより、心の支えが折れたような感じで、地面に手を突いて泣いていた。

めぐみ「だいじょうぶ?」
令子「なんでもありません」
令子は涙を拭うと立ち上がり、ベンチに向かって歩き出す。

(なんだ、この画像は?)

(だから、なんだこの画像は?)

令子「トト、やっぱり私、これ以上速く走れない……記録が伸ばせないの。どうしたらいいの、私? ねえ、教えてよ、トト」
ベンチには、トトと名付けられたピエロの人形が座っていて、令子は人形に向かって話し掛ける。

晴子「お姉ちゃん、私の作ったトト、あげる。だから今度の大会絶対頑張ってね」
令子「うん、頑張る。だから晴子も頑張るの」
晴子「うん!」
令子の脳裏には、病院のベッドに寝ている妹の晴子と交わした会話がまざまざと蘇る。
画面の一部だけ矩形に切り取り、それ以外を白くマスクした、珍しい回想シーンの表現である。
めぐみは彼女とは知り合いでもなんでもなく、懸命にトレーニングに励んでいる姿を見掛けて、人知れず応援していただけのようであった。
詳しい事情を知らないので、迂闊に慰めることもできず、黙ってその様子を見ていたが、

めぐみ「涙……」
令子は気付かなかったが、トトの両目から、はっきりと涙がこぼれるのを見て驚きに打たれるめぐみであった。
と、スタンドの入り口にガッシュがあらわれ、同じくトトが涙を流すのを目撃する。
ガッシュ「ケンプの探し続けている心を持った人形、本当にいたとは……」
その後、ハンバーガーショップで腹ごしらえしながら、そのことについて話しているめぐみたち。

丈「嘘だろ、涙を流す人形なんて」
めぐみ「本当よ、はっきり見たんだから」
丈「泣き虫人形とか言ってさ、どっか押すと目からポロポロ流れるあれだって」
めぐみ「違うわよ、そう言う人形じゃないの」
勇介「それよりその令子って子、どうしてそんなに優勝したがってるの?」
めぐみ「調べたんだけどね、令子さんの妹の晴子さん、ひどい心臓病で危険なの……今までは令子さんが優勝するのを励みに何とか頑張ってきたんだけど……」
勇介「だからどうしても優勝したいのか……」
その後も一心不乱にトレーニングに打ち込む令子。
しかし、そもそも彼女が何の種目の選手なのか、どんな規模の大会に出場しようとしているのか、基礎的なデータが全く示されないのはどうかと思う。
ガッシュが、今度はケンプを伴ってスタジアムにあらわれる。

ケンプ「確かにあの人形、持ち主の必死の願いが乗り移り、心を持っている。とうとう発見できたか」
どうやらケンプ、ガッシュに頼んで心を持つ人形とやらを探してもらっていたらしい。
ガッシュ「あの人形を奪うのか?」
ケンプ「当然だ、だが、力尽くで奪っては人形の心が消えるかも知れん」
深夜、ケンプは令子の寝室の外に立ち、テレパシーで夢の中にいる令子に話しかけ、それを履けば必ず優勝できるスパイクをやるから、代わりにトトを引き渡すよう、取引を持ちかける。
翌日、令子がグラウンドにやってくると、果たして、真新しい赤いスパイクがベンチの上に置いてあった。

令子「トト、ごめんね……許して」
今は妹のために試合に勝つことしか頭にない令子は、大事にしていたトトをベンチに置き、代わりにスパイクを抱いて走り去る。

首尾よくトトを手に入れたケンプは、早速その人形を元にして、ピエロをモチーフにした頭脳獣ピエロヅノーを作り出す。
ケンプ「人形を操り、愚かな人間どもを襲わせるのだ」
ピエロヅノーの胸部にはトトの顔がおさまっているが、人格はいつもの頭脳獣と同じである。
トトは、あくまで人形を操るための頭脳獣のパーツに過ぎないのだろう。
で、苦労して作ったピエロヅノーに何をやらせるかと言うと、ショーウィンドウのマネキン人形に命を吹き込んで、折り詰めを紐で括った由緒正しい酔っ払いを脅かしたり、

こういうぬいぐるみタイプの人形に路上を歩かせ、通行人をびっくりさせたりする。
……
僕、帰っちゃ駄目ですか? 駄目? そうですか……
しかし、いくらなんでもこれじゃあ迫力不足だよね。
せめて日本人形やビスクドールとか、ビジュアル的に恐ろしげな人形を使って欲しかったところだ。
で、その後も似たり寄ったりの、せいぜいイヤガラセ程度のことしか起きないが、ケンプの作戦は、ボルトの皆さんには割りと好評であった。
マゼンダ「心を持つ人形のカオスが心のない人形たちを操り、凶器に変えるとは……」

アシュラ「ふん、人間は人形を可愛がるだけで全然警戒してねえからな、急にバケモンみてえになってびっくりだぜ」
アシュラ「そりゃもう大騒ぎさっ」 ビアス(アメリカかっ!!) マゼンダやアシュラは勿論、作戦にはうるさいビアス様さえご満悦の様子。
しかし、まあ、「悪の組織」も、こんな風に大掛かりな悪戯程度の作戦ばかりをやっていれば、ヒーローもムキになって攻撃したりはせず、末永く悪人ライフをエンジョイできて、当人たちも幸せではないかと思う。
下手に世界征服などと言う野望を持たなければ、手柄争いで仲間割れが起きることもないしね。
一方、勇介たちも、それでメシ食ってるので仕方なく人形騒動の調査に乗り出すが、探すまでもなく、向こうから襲ってきて、可愛らしい人形が飛び掛ってくるとか、白いガスを噴射するとか、パンチの弱い攻撃を仕掛けてくる。
続いて、ピエロヅノー、そしてケンプがあらわれる。

勇介「奴が人形を操ってたんだ」
ケンプ「ごきげんよう、諸君」
めぐみ「何故? 何故可愛い人形に人間を襲わせるの?」

ケンプ「愚かな人間の優しさなど所詮自分たちの思い上がりに過ぎぬ、それを教えてやるのさ!」
いまひとつ噛み合ってない会話。
つまり、人間が人形を愛でる優しい心に鉄槌を下してやるということなのだろうか?
でも、それこそただのイヤガラセになってしまうので、せめて
「愚かな人間どもが人形を可愛がるのは、所詮ただの自己満足に過ぎぬ。俺は人形に意思を与え、その思い上がりを撃ち砕いてやるのだっ」くらいのことは言って欲しかった。
勇介たちは、ピエロヅノーの攻撃をかわすためにジャンプして木立ちの上に登るが、そこを襲われて地面に叩き落とされる。
その際、

めぐみ「ああっ」

めぐみ「うっ」

大開脚からの、エロ指数の高いパンチラが炸裂!
……
ここで残念なお知らせです。
我々の目を散々楽しませてくれためぐみのミニスカですが、なんと次回から、特撮ヒロインにあるまじきハーフパンツに変更されてしまうのです。
ぢぐしょおおおおおおっ!! 神も仏もないのかよぉおおおっ!! ああ、もうレビューするのやめよっかな……
いや、なんとか耐え抜こう……そうすればいつかきっと、めぐみが初心に帰り、またミニスカを着用してくれる日が来るかもしれないではないか。
勇介&丈「ライブマン!」

めぐみ「ライ……!」
二人に続いて変身しようとするめぐみだったが、変身ポーズの途中で、ピエロヅノーの胸にトトの顔が嵌め込まれているのに気付き、動作を止める。

めぐみ「トト……」
ライオン「めぐみ、早くブルードルフィンに……」
めぐみ「ええ」
ともかく変身するめぐみであったが、トリプルライブラスターの直撃を受けたトトが目から涙を流すのを見て、戦意を喪失する。

ファルコン「もう一度ライブラスターだ」
ライオン「よし」
ドルフィン「駄目、撃てない」
ファルコン「ドルフィン、どうした?」
三人がまごまごしているところにすかさずピエロヅノーがボール型爆弾を投げつけて吹っ飛ばし、その衝撃で変身が解ける。

丈「どうしたってんだ、めぐみ?」
めぐみ「トト、トトなの」
丈「トト?」
勇介「まさか、涙を流したって言う、あのピエロの人形?」
めぐみ「そう、そうなのよ」
三人は戦場から退くと、競技場に令子の様子を見に行く。
丈「すげえスピードだ」
勇介「軽く10秒台だぜ」
めぐみ「そんな……」
スランプに陥っていた筈の令子が、女子のワールドレコード並みの速さで快走しているのを見て、唖然とするめぐみ。
無論、ケンプから授けられた特殊なスパイクのお陰であった。

めぐみ「令子さん、トトどうしたの?」
令子「……」
練習を終えた令子にめぐみが単刀直入に尋ねるが、令子は押し黙ったまま。
めぐみ「あなたの大切なトトはどうしたの?」
令子「あなたに関係ないわ、トトのことなんか」
令子、スパイクをスポーツバッグの中にしまおうとするが、

勇介「ボルトの紋章!」
丈「ええっ?」
勇介「この靴、ケンプに貰ったのか?」
令子「返して」
めぐみ「令子さん、まさかその靴が欲しくて、ケンプに?」
令子「ケンプなんて知らない、私、速くなりたいだけよ。速くなって今度の大会で優勝したいだけ……そうすれば妹の晴子だって頑張れるのよ、あなたたちには分からないわ、病気の妹をどうしても助けたい私の気持ち、絶対に分からないわ」
令子は半ば開き直って自分の行為を正当化しようとするが、
めぐみ「でも、トトはあなたのために涙を流してくれたのよ」
令子「涙?」
めぐみ「心を持った人形なのよ!」
令子「やめて、他に方法がないのよ!」
めぐみの懸命の説得も通じず、令子はとてもアスリートには見えないでかい尻を揺らしながら走り去る。
しかし、今回のシナリオの欠点は、晴子の病状についての具体的なデータがないので、いまひとつ令子の行為に目的性が感じられないことなんだよね。
定番中の定番、「ホームランを打ったら手術を受ける」みたいな約束がある訳でもなく、励ますと言っても、それが慢性的な病気なら一時的に気力を取り戻したところで完治する訳ではないだろうし……
今が、いわゆる「峠」で、今さえ持ち堪えれば徐々に回復に向かう……と言う風にも見えないしね。
さて、CM後、グラントータスで、勇介が盗撮してきた令子の映像をコロンがコンピューターで分析している。
コロン「危険だわ」
めぐみ「えっ?」
コロン「このまま走り続ければ、この靴、必ずオーバーヒートして爆発する」
めぐみ「令子さんに早く走るのをやめさせて、トトを説得させなきゃ!」
自転車で令子のもとへ急ぐめぐみであったが、途中、ピエロヅノーとケンプに邪魔される。
ケンプ「ピエロヅノー、ひと思いに息の根を止めてやるが良い!」
ピエロヅノー「おおーっ!」
嵩に掛かって攻め立てるピエロヅノーであったが、めぐみはあえて変身せず、首を絞められながらも、ピエロヅノーの中のトトに向かって必死に呼び掛ける。

めぐみ「トト、聞いて、確かに令子さんはあなたと取り替えられた靴で速く走れるようになったわ、でも、早く止めなければその靴が爆発するのよ! 死んでしまうのよ、令子さん……」
めぐみの台詞に合わせて、トラックを走っている令子の姿が映し出される。
その胸がシャツの中でゆさゆさ暴れているのはなかなかエロいのだが、正直、あんまり可愛くないし、トレパンがあまりに色気がないので、あえて画像は貼らない。

トト「レ、イ、コ……」
めぐみ「そう、令子さんよ……令子さんから早くあの靴を取り戻さなきゃいけないの!」
めぐみの叫び声に初めてピエロヅノーに取り込まれていたトトが反応を示すが、ピエロヅノーはなおもぐいぐいめぐみの細い首を締め付け、めぐみの意識が徐々に遠のいていく。

めぐみ「トト、お願い、分かって……令子さんを助けて……」
トト「……」
めぐみの命懸けの訴えに、トトの両目から再び滂沱とした涙が溢れ出す。
めぐみ「トト……」
それと同時にピエロヅノーの意識がトトのものに切り替わり、ピエロヅノーはめぐみの首から手を離すと、ケンプの声も無視して、物凄い勢いで走り出す。
ピエロヅノーは競技場に行き、令子のスパイクを脱がそうとするが、何も知らない令子は悲鳴を上げながら逃げ惑う。
確率的にはほとんどゼロだと思うが、ピエロヅノーが令子を追いかけながら、再びさっきの公園に戻ってくる。
既に限界が近付いているのか、令子の履いているスパイクから火花が散るが、パニック状態にある令子はそれどころではない。
ピエロヅノー、やむなくボール爆弾を投げて令子の足を止める。

ピエロヅノー「靴を、靴を……捨てなさい、令子!」
さっきも書いたけど、この令子がもう少し可愛くて、もっと露出度の高いウェアを着てたら、なかなかエロいシーンになっていたのではないかと思う。
そこへめぐみが駆け寄り、

めぐみ「トト!」
令子「トト?」
めぐみ「あなたに取り替えられたトトなのよ」
令子「……」
めぐみ「その靴はもうじき爆発するわ、だからトトはこんな姿になってもあなたを助けようとしてるのよ!」
はっきり「捨てられた」とは言わず、「取り替えられた」とオブラートに包んでいる辺りに、めぐみの優しさが感じられる。

めぐみ「こんな悪魔の靴で優勝するより、トトと一緒に頑張った方が妹の晴子さんだってどれだけ喜ぶことか……」
令子「……」
令子、めぐみの説得と、トトの涙に心を動かされ、ケンプから貰ったスパイクを脱ぐと、思いっきり放り投げる。
スパイクは地面に落ちると爆発する。

めぐみ「令子さん……」
令子の肩を抱いて、優しく包み込むような眼差しを注ぐめぐみ。
それにしても、「乳姉妹」の時はまるっきり子供だった耐子が、僅か3年でこんな素敵なお姉さんになるとは……感慨深いものがあるなぁ。
この後、トトを自分の体から排除して本来の人格を取り戻したピエロヅノーとライブマンのラス殺陣&巨大ロボバトルとなり、事件は解決する。
気がつけば、今回も作戦遂行の途中でライブマンにちょっかい出して敗滅するという、前回と全く同じような負け方をした、学習能力ゼロ集団ポルトであった。
戦いの後、めぐみが、ぼろぼろになったトトを抱き上げていると、

むっちりした生足が美味しそうな令子があらわれる。

めぐみ「令子さん、トトよ」
令子「……」
めぐみ「トトと、精一杯頑張ってね。そうすればたとえ優勝できなくても妹の晴子さん、きっと分かってくれる。喜んでくれるって」
令子は泣きながらトトの体を抱き締めながら、めぐみの言葉を噛み締めるように聞いていた。
結局、令子の成績がどうなったのか、晴子の病気がどうなったのか不明のままなのが歯痒いが、ラスト、トラックを走る令子を車椅子に乗った晴子が応援しているイメージシーンが暗示しているように、成績はどうあれ、懸命に走る姉の姿に励まされ、晴子の病状も改善したのであろう。
以上、人間と、魂の宿った人形との絆を描いた、いかにも藤井邦夫さん好みのエピソードであった。
そう言えば「マスクマン」でも「愛しの吸血人形!」と言う、似たような話書いてるんだよね。
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