第34話「トリック・ジャック」(1983年2月6日)
の続きです。
午後3時、状況は依然膠着状態にあった。

北条「こんなことしてられないぞ……」

北条「すまない」
圭子「何時まで続くのかしら? なんでこんなひどいことを……」
優しい圭子タンが、ぶつぶつぼやきながら北条の血まみれの足に包帯代わりのフキンか何かを巻きつけていると、

牛原「来な!」
圭子「いやあっ」
牛原「おめえはな、俺の盾になんだよ」
いきなりガバッと抱き寄せられて、目を白黒させる圭子タンが可愛いのである!
北条「その人を……」
牛原「うるせえ、このガキが!」
圭子を助けようとした北条だったが、牛原に乱暴に蹴り倒される。
ま、これはドラマで、北条は相手が自分を殺さないことを知ってるから抵抗できるんだけど、現実にこんな目に遭遇したら、とてもじゃないがこんな真似できないよね。
現に、マスターは躊躇なく殺されてるんだし。
牛原、さらに北条の傷口を靴でぐりぐり踏みつける。

牛原「ふふふふふ……」
圭子「やめて、やめてぇーっ!」
完全にイッちゃった目付きで、サディスティックな破壊衝動を存分に満足させる牛原。
バラエティー番組での阿藤さんのイメージしかない人には、なかなかに衝撃的なシーンであろう。
ちなみに、圭子タンの悲鳴は店の外にも筒抜けなのだが、ブラインドが下がっていて中の様子は見えず、刑事たちは中で一体どんなエッチなことが行われているのかと想像して、激しくコーフンしていたと思われる。
ま、実際に牛原が圭子タンの服を破くとか、乳を揉むとか、そういうけしからん行為に及んでいたらこの作品の価値もさらに高くなっていたであろうが、脱ぎNGの小林さんがそんな目に遭う筈もないのだった。
そもそも、暴力描写は過激でも、そっちの描写はおとなしめだからね、この番組。

沖田「聞こえるか、すぐに人質を解放、武器を捨てて投降しろ」
スピーカーで呼びかける沖田であったが、牛原は銃床で窓ガラスを叩き割ると、圭子を盾にしながら手当たり次第に乱射する。
こんな場合、レギュラーメンバーには銃弾は当たらないことになっていて、代わりに不運な警官が撃たれてしまう(生死は不明)
そこへ、大門がスーパーZで駆けつけ、車に乗ったまま牛原に「要求があるなら言ってみろ」と叫ぶ。

牛原「要求? ……はははははははっはっはっ、はははは」
牛原、一瞬キョトンとするが、世にもおかしそうに笑うと、
牛原「女だ、女連れて来いーっ! おんなーっ!」 圭子「……」
下卑た声で、ストレートに欲望を爆発させる。
そんな場合でありながら、
「じゃあ、なに、私は女のうちに入らないの?」と、軽くプライドを傷付けられる圭子タンであった。
もっとも、牛原の言う「女」とは、そう言う意味ではなく、いわゆる情婦のことであった。

大門「その人は今何処にいるんだ?」
牛原「しらねーよー!」
大門「それじゃ探しようがない」
牛原「名前はアケミ、藤田アケミだ、先月まで宇田川町でホステスやってた筈だ」
大門「その人を連れてくれば、人質を解放するんだな?」
牛原「おー、約束してやらーっ」
牛原の反応はいかにも投げやりで、大門に聞かれたから場当たり的に思いついたと言う感じであったが、大門はともかく鳩村にアケミなる女性を連れてくるよう命じる。
一兵「団長、牛原は誘拐一味となんらかのつながりがあるってことですか」
大門「いや、現段階では何の確証もない。そのためにもギリギリまで裏を取る。徹底的に奴の背後の関係を洗ってくれ」
沖田たちが時間に追われながら街を駆けずり回っている頃、横浜の山下公園では、神奈川県警の全面的なバックアップのもと、ゲンさんこと浜刑事が身代金受け渡しの場に臨もうとしていた。

どうでもいいが、管理人、井上昭文さんのこの、イラストで描かれたような「への字」口が妙に可愛いと思うのである!
一方、状況によっては、時として超人的な捜査能力を見せる大門軍団、今回も、鳩村が人間業とは思えない迅速さでアケミなる女性を発見して連れてくる。
だが、当のアケミは、牛原は自分にとってはただの客であり、何の関係もないと言い張り、大門がスピーカーでそのことを告げると、牛原は一瞬「素」に戻ったように呆然としていたが、捕まえていた圭子タンの頭を押し飛ばすと、

牛原「うるせえーっ、その女をこっち連れて来い、俺の女だーっ! 酒ーっ! 酒持って来いーっ! 女と酒だーっ!」
どう見てもヤケクソになったとしか思えないように喚き散らしながら、再び銃を乱射するのだった。
北条「おい、禁断症状か? シャブが切れてきたんだな。持ってねえのか?」
牛原「うるせえ、黙ってろ!」
牛原、北条を怒鳴りつけると、店の壁掛け時計に目をやる。
時刻は既に4時近くになっていた。

北条「時間が気になるのか? 何で時間が気になるんだ? 誰か来るのかよ」
北条、わざと大きな声で牛原を挑発するように話しかける。
無論、マイクを通じて、大門たちにも聞かせるためである。

牛原「うるせえっ、黙ってろ!」
北条「ふっ、そんなに震えてちゃ当たらねえぞ。シャブを要求したらどうなんだ?」
牛原「シャ、シャブーッ?」
北条、そんなに覚醒剤が欲しかったらそれを警察に要求すればいいじゃない? と唆すが、
牛原「うるせえーっ、シャブはなー、シャブはおめ、5時に手にはい……」
大門「5時?」
泣き笑いの表情を浮かべつつ、うっかり口を滑らせてしまう、割と天然の牛原であった。
北条「5時に手に入る? そいつはどういうこった?」
牛原「うるせえーっ!」
失言を誤魔化す為に、ライフル銃で北条を殴りつける牛原。
どんなに理性を失っても牛原が北条を殺そうとしないのは、風間たちにそう命令されているからなのだろう。もっとも、人質は一人いれば十分なので、風間たちがそう指示した理由がいまひとつ分からない。
いや、どんな形であれ北条が生きてる限り、北条に金を持ってこさせるという最初の条件を押し付けることが出来るからか?

鳩村「5時にシャブが手に入る。ってことは、奴は誰かとつるんでるってことですか?」
そこへ小暮っちから連絡が入り、山下公園には、約束の時間になっても犯人がゲンさんに接触してくる様子はまったくないという。
ま、それこそ、こっちで勝手に運び人を変えているのだから、当然じゃないかと言う気もするのだが……
小暮「これはどうやら、敵の陽動作戦の臭いがするな」
大門「陽動作戦? 分かりました」
鳩村「じゃ、山下公園は?」
大門「間違いなく牛原は誘拐の一味と繋がってる。これは敵の時間稼ぎだ」
ここに来てやっと確信を得た大門は、鳩村に、聞き込みを行っている沖田たちに協力するよう命じる。
さて、今回はあまり大門軍団が暴れないので物足りなさを感じていたそこのあなた、ここからやっと彼らが本領を発揮するのです!!
沖田と一兵は、遂に牛原にシャブを売っていたチンピラを割り出し、必死に逃げるそいつをなんとか捕まえようとする。

チンピラが塀を乗り越えて逃げようとするのを、一兵が抱きつくようにして止めようとしていたが、反対側からバイクでやってきた鳩村、
いきなり発砲! そう、まさに「いきなり」である。
「動くな、動くと撃つぞ」などと警告もせず、そして何の躊躇いもなく撃っちゃうのである。
で、弾はどうもチンピラの体に当たったようなのだが、別に怪我した様子はないのが不思議である。
一兵「くっそー、着替えたばかりの洋服汚しやがって!」
それはともかく、一兵、とことんついてないようで、チンピラと一緒に落ちたところにゴミ箱があり、またもやゴミまみれになってしまう。
沖田、チンピラの持っていたパケ(覚醒剤)を突きつけ、
沖田「おい、これ牛原に売ってるな?」
チンピラ「なんのことだかさっぱりわからねえや」
鳩村、横から割り込んでチンピラの胸倉を掴んで立たせ、軽く殴ってから、
鳩村「いきがるな、ゴキブリぃ」 ゴ、ゴキブリ……ゴキブリ野郎ではなく、ただのゴキブリ。
ヤクザでもなかなか口にしないような、あまりにひどい言い草である。
チンピラでさえ人権がないのだから、ゴキブリに格下げされてしまったこの男性の運命が、風前の灯となったのは言うまでもない。
鳩村「てめえの猿芝居に付き合ってる暇はねえんだ」
鳩村が続けて二発殴ると、やっとチンピラも牛原に売ったことがあると認めるが、半年前までの話で、今は関係ないと主張する。
一兵「なるほど、商売仇に客を取られたって訳か」
鳩村「憎い仇なら何処のどいつか名前ぐらい知ってんだろう? 吐け、この野郎」
知ってるかなぁ?
牛原みたいなシャブ中が「長い間お世話になりました。これからは○○さんとこで買います」なんてことをいちいち売人に言うとも思えないのだが……

と、ここで、沖田がごつい銃を取り出し、無言でチンピラの額に突きつけ、撃鉄を起こす。
ト、トモカズさん、冷静に! 一見、大門軍団の中では誠実で温厚そうに見える沖田だが、やる時はやる男なのである。
チンピラ「風間、風間って野郎だよ!」
ともあれ、大門軍団の「誠意」が通じたのか、やっとチンピラあらためゴキブリさんは、彼らの知りたがっていた名前を教えてくれる。
彼らは、すぐに風間と言う男の経営しているバーだかスナックに乗り込むが、既にもぬけの空であった。だが、店の壁には通学中の陽子を映した写真が数枚貼ってあり、彼が誘拐に関与しているのは間違いないようであった。
……って、そんな証拠になるようなものを堂々と残して行くかなぁ?
まあ、身バレはないだろうとタカを括っていたのかもしれないが。
で、警視庁のデータベースには、風間の写真もしっかり記録されていた。

沖田「風間文造、前科2犯、経営していた店が不振に陥り、シャブ商売に転じたらしいんですが、借金を返せずに先月店を畳んでます」
一兵「それともうひとり、奴の店のバーテンが消えてるんです」
沖田「問題は、そいつらが牛原といつ、どうやって接触するかですね」
……
ところで管理人、遅蒔きながら気付いてしまったのだが、何故か今回、大門たちは永松から犯人の人相風体を聞いてモンタージュなり似顔絵なりを作るという作業を一切していない。
相手が覆面してたのならともかく、あれだけはっきり顔を見せていたと言うのに、大門たちがそのことに思い至らなかったというのは、明らかな(シナリオ上の)ミスであろう。
一方、喫茶店では、北条が無謀にも牛原を取り押さえようとして、逆にボコボコに殴られていた。
前記したように、下手したら撃ち殺されかねない状況で、そんなことするだろうか?
4時40分。
一兵たちは強行突入すべきだと大門に訴えるが、そこへ鳩村から無線が入り、風間の相棒が塚原保と言う元配管工で、陽子が通院していた病院に下水道工事のために出入りしていた前歴があるという。

一兵「なるほどねえ、それで陽子ちゃんに目をつけたってわけか」
大門「配管工……配管……下水道!」
いささか短絡的に過ぎるが、大門は塚原が配管工だと知るや、たちどころに犯人たちの企みを見抜く。
沖田「団長、まさか?」
大門「一兵、下水道の地図!」
一兵「はいっ」
いくらなんでもまさか……と思いきや、
はい、そのまさかでしたー! そう、彼らは下水道に入り込み、ドリルでコンクリートを崩して、喫茶店の地下から侵入しようと言う、警察の盲点を突いた作戦を立てていたのだ。
まあ、普通の刑事なら、こんなアホみたいな推理はたとえ思っても口に出せませんからね。
そんなアホな計画を見破れるのは、大門軍団くらいであろう。
同じ頃、散々殴られて血まみれになった北条は、床にペンダント型マイクが落ちているのを見て、床に倒れ込みながら、マイクを回収しようとするが、

北条「下水道……」
床に耳を近付けたお陰で、地下から響いてくる掘削の音に気付く。

一兵「団長、間違いありません。下水道の本管は店の真下を通ってますよ」
沖田「団長、この喫茶店は地下室があります。やつら、こっから中へ」
大門たちは下水道の配管図や店の間取り図などを照らし合わせて、自分たちの考えに確信を持つ。
……
つーかさぁ、下水管はともかく、店の間取りとか設計図なんてのは、篭城事件が始まったらすぐチェックしておくべき、基本中の基本ではないか?
さて、風間たちは無事にトンネルを貫通させ、地下室に侵入を果たすが、北条がマイクでそのことを知らせようとしたところ、遂に牛原に気付かれてマイクを砕かれ、牛原は怒りに任せて北条を撃ち殺そうとする。
北条はそのライフルに必死にしがみつき、

北条「今だ、逃げろ! 裏口だ! 団長、今です!」
圭子に向かって叫び、外にいる大門に合図するが、そこを風間に撃たれてしまう。

風間「待たしたな、デカさん、身代金を渡してもらおうか」
塚原「金は何処だ?」
このタイミングで、大門が、「西部警察」の中でも一際印象に残る「無茶」をやらかす。
ひとりでパトカーに乗り込むと、

いきなり店の正面に向かって走り出すと、

スピードを緩めず、
そのまま店の中に突っ込む!! で、これがどうも、セットじゃなくて、ほんとの店舗に突っ込んでるみたいなんだよね。
もっとも、ほんとの店舗といっても、前記したようにガレージか何かの空間に、撮影のために組まれた仮の店舗なんだろうけどね。
いや、以上のことはあくまで管理人の推測なので、ぜんぜん違ってたらごめんなさい。
ただ、実際はそんなにスピードは出ていないにせよ、渡さんがパトカーに乗って突っ込んでるのは事実なので、それだけでも凄いアクションなんだけどね。
ちなみに、大門の怖さを知り抜いている北条は、咄嗟に圭子を連れて店の奥に避難していたので無事だった。

大門「ジョー! だいじょぶか?」
北条「金は無事ですよ」
圭子「……」
生きた心地がしない圭子タン、世の中には、シャブ中のライフル魔よりよっぽど恐ろしい連中がいることをイヤと言うほど思い知らされた22才の冬であった。
さて、ここまでくればもう詳しく書くこともあるまい。
風間と塚原は金を持って下水道に逃げ込むが、沖田と鳩村に追われて地上に出たところを、大門に捕まってボコボコにされ、陽子を監禁している場所を白状する。
こうして陽子は無事保護され、救急車で病院へ直行、透析を受けてなんとか助かるのだった。
ちなみにシャブのために頑張った牛原さんですが、シャブも貰えず、行き掛けの駄賃とばかり風間に射殺されてました。合掌。
最後は勿論、ユージロウのカラオケタイムとなるのだが、

今回はそのバックに、入院している北条を仲間や圭子タンが見舞いに訪れるという、ほのぼのしたシーンが流れる。
「西部警察」では、事件が解決した後はゲスト出演者はそれっきり画面に出ないことが多いので、嬉しい誤算であった。

んで、北条に花束を渡して握手した後、鳩村たちが北条を冷やかしたり、そのギブスに悪戯書きしたりするのを見て、圭子タンが子供のようにはしゃいでいるのがめっちゃ可愛いのである!
音声(台詞)がないせいか、小林さんが「素」ではしゃいでいるように見えるところもポイント高し。
ある意味、管理人は、このラストシーンを貼りたいがために今回のレビューを書いたと言っても過言ではないのである。
以上、二転三転する意外なストーリーと、犯人たちの大胆にして巧妙な手口、そして腎臓病の少女に迫る命のタイムリミットがいやがうえにもドラマを盛り上げ、さらにそこに小林伊津子さんの可愛らしさが加味されると言う、ほとんど完璧に近い内容であった。
これで陽子役の女の子がもう少し可愛かったら言うことなかったのだが、まあ、贅沢は言うまい。
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