第11話「暗黒星雲から来た最強の悪役ファイター」(1983年5月13日)
冒頭、銀河連邦警察からの緊急連絡を受け、地球に侵入した宇宙船の着陸地点にジープを飛ばしてやってきた電。
と、その一帯には既に地雷が仕掛けられており、崖の上からは巨大なアルマジロのような物体が転がり落ちてくる。
それをよけようとハンドルを切った電の周囲で次々と激しい爆発が起きる。
電、走っているジープから飛び出すと、一回転しながらコンバットスーツをまとう。

爆発で吹っ飛ばされたシャリバンの前に、ボールが分離して二人の宇宙戦士となって斬りかかってくる……というところで漸くサブタイトルが表示される。
このスピーディーで引き込まれるような編集が実に見事である。

崖の上に着地したベンガルブラザースに対する、シャリバンの構えがこれまた痺れるのである!!
なんつーか、ひとつひとつの動きが「絵」になると言うか……

シャリバン「なにもんだ、お前たちは」
タイガー「ベンガルタイガー」
コブラ「ベンガルコブラ」
タイガー&コブラ「宇宙の殺し屋ベンガルブラザース!!」
彼らのことは新米宇宙刑事のシャリバンでさえ知っていた。
シャリバン「ベンガルブラザースか? あの宇宙コマ回し芸人の?」
タイガー「はいっ、いつもより余計に回っております……って、
誰がじゃ!!」
シャリバン(ノリは完全に芸人なんだけどなぁ……)
じゃなくて、
シャリバン「ベンガルブラザースか? あの宇宙海賊の?」
タイガー「そうだ、わざわざやってきたんだ、暗黒のマジェラン星雲からな」
コブラ「貴様を抹殺するためにな」
ここでベンガルブラザースとの戦いになるが、その合間合間に、シャリバンの戦闘能力に関する注釈が入る。
たとえば、

ナレ「サーチャースコープは赤外線、紫外線、エックス線など、あらゆる光波長を感知、記憶、分析する機能である。データはテクビジョンに表示される」
とか、

ナレ「シャリバンプロテクションは火は元よりレーザー光線まで跳ね返してしまうバリアなのだ」
とかね。
で、注釈がある分、この戦闘シーンがやたら長いのだ。
採石場で一通り戦っても、まだ終わらず、今度は6話と多分おんなじ森の中に移動するが、

シャリバン「なんてことを……」
網に掛かって動けなくなっていた小鳥を見つけると、戦いそっちのけでそれを助け、空へ放してやる、元森林保護官のシャリバンであった。
だが、次の瞬間、仕掛けられていた罠が発動し、テグスのような細いロープが張り巡らされ、シャリバンの動きを封じてしまう。

タイガー「ふふふ、小鳥を助けようなどと、仏心を出すからだ」
そう、それは電の異常なまでの動物好きを利用した、ベンガルブラザースの巧妙なトラップだったのである。
どうせなら、異常なまでの幼女好きを利用して欲しかったなぁと思う電であったが、嘘である。
もっとも、ロープ自体はすぐ切れてしまったので、罠としてはいまいちであった。
結局、二人は途中で魔王サイコに強制的に幻夢城へ転送されたので、勝負は付かないまま終わる。
このプロローグとも言うべきシーンだけで、OP込みで6分使っている。
さすがに長過ぎであろう。

ポルター「ようこそベンガルブラザース」
タイガー「ここは?」
ポルター「マドーの幻夢城だ」
タイガー「おお、するとこの方が魔王サイコ様、ベンガルブラザースめにございます」
二人は宇宙海賊の割りに礼儀正しく、速やかに武器を仕舞って臣下のように跪く。
サイコ「地球に来た目的はなんだ」

タイガー「観光です」
サイコ「嘘つけぇえええっ!!」 じゃなくて、
タイガー「ははっ、我ら兄弟、是非マドーのメンバーにと思いまして、わざわざ遥かなマジェラン星雲からやって参りました」
嘘かほんとか、そんなことを言う。
しかし、自分の行為に「わざわざ」をつけるのは変なんだけどね。
タイガー「これに宇宙刑事シャリバンの全能力データーが記録されております。ほんの手土産代わりです。どうぞ」
二人は武器の柄からチップを取り出し、惜しげもなくポルターに差し出す。
ポルター「すぐに分析を」
サイコ「よし、二人の歓迎の宴を開くのだ」
と言う訳で、どんちゃん騒ぎのシーンとなるのだが、

出てくる踊り子と言うのが、これがなかなかの別嬪さんなのである!!
以前のレビューでも書いたと思うが、なんか、寺沢武一の漫画に出てくるような、鏡獅子のような被り物&着物をアレンジしたハイレグビキニレオタードの組み合わせが、当時としてはかなりのハイセンスである。
さらに、

思いっきり足を上げてのラインダンスがこれまたエロい!!
特に、右端の女性など、下手したら「ミ」が出るんじゃないかと思うくらい、デリケートゾーン周りの露出がちびっ子向けドラマとは思えないほど過激なのである。
あいにく、画面が薄暗く、ほんの一瞬しか見えないのが遺憾だが。
他にも、全編通してこのシーンだけじゃないかと思うが、

コブラ「ああ、愉快、愉快、お前も飲め」
ミスアクマ2「……」
コブラのそばにコンパニオンよろしく侍っていたミスアクマ2が、コブラに酒を無理強いされるセクハラまがいのカットが出てくる。
ま、真面目な(?)ミスアクマ2、それを無言で押しのけてるけどね。
その宴会のシーンに続けて、

グランドバース内で静かにコーヒーを飲んでいる電とリリィの姿が映し出され、その簡素な佇まいが、妖しく退廃的なマドーの宴と見事な対比を成しており、それは同時に、「真面目な善」と「ふしだらな悪」と言うように、それぞれの精神性の違いをも内包した鮮やかな対照にもなっている訳である。
電「あの場所に小鳥を仕掛けておくなんて、ベンガルブラザースめ」
リリィ「マドーが情報提供したのよ、シャリバンが森林パトロールだったことを」
電「うん、そうに違いない」
と、彼らは断定するのだが、どう見ても、戦いの前に両者が接触した形跡は見られないので、電の動物好きの件は、事前にベンガルブラザースが独自ルートで入手していた情報だったのではあるまいか。
ただ、相手の内情について誤った判断をするというのは、実際の戦いや諜報戦においてもしばしば見られることなので、電やリリィがそう思い込むということ自体は、実にリアルな描写ではある。
一方、与えられた部屋でくつろいでいるベンガルブラザースであったが、

タイガー「噂どおりだ、魔王サイコは巨大な人工頭脳に支えられている。魔王の超能力もあの人工頭脳から発生されている」
コブラ「人工頭脳装置を破壊すれば魔王の超能力は半減する筈、兄貴、こいつは意外と脆いぜ」
タイガー「やるか」
案の定と言うべきか、彼らは何もマドーと愛と友情の仲良しごっこを演じに来たのではなく、大胆不敵にも魔王サイコのタマを取りに来ていたことが分かる。
この辺り、血も涙もない謀略と権力闘争を描かせれば天下一品の、いかにも上原さんらしい筆致である。
ただ、彼らが地球に来た目的はどう見てもシャリバンを倒すためとしか思えず、このタイミングでいきなり謀反を起こそうとするだろうかと言う気がしなくはない。
しかも、彼らがいるのはマドーの本拠地の中であり、仮にサイコを仕留めることが出来ても、その後、無事に幻夢城から脱出できると考えるのは、あまりに楽観的に過ぎはしないか?
それより、まずはマドーのバックアップを受けて、シャリバンの首級をあげることを優先させのが普通だと思うんだけどね。
しかし、まあ、こういう山っ気のある悪人は大好きなので、タイミングの当否はともかく、ベンガルブラザースの無謀ともいえる壮挙にはもろ手を挙げて賛成したい。
それにしても、彼らの野心の1/10でも、アハメス様が持ってくれていればなぁ……
だが、結局、彼らの計画は未遂に終わる。
再び広間に呼び出されたところで、

ポルター「もう一度尋ねる、お前たちが地球に来た目的は?」
タイガー「ですから、マドーのメンバーに取り立てていただく……」
ポルター「答えが違う」
タイガー「違う、どういうことで?」
ポルター「我がマドーが誇る巨大人工頭脳は機械を越えた超生命体である。その人工頭脳がお前たちの心を次のように解読した。ベンガルブラザースの野望は魔王サイコを倒し、マドーを乗っ取り、全暗黒宇宙を支配すること」
ガイラー「なんだと?」
いきなりポルターにその野望を見抜かれてしまったからである。
それに対し、

タイガー「……」
コブラ「……」
ベンガルブラザースがまるで「無の境地」に没入しているかのように、全力でしらばっくれるのが、かなりのツボであった。
ベンガルブラザース、あっさり馬脚をあらわすと、闇雲に魔王サイコに斬りかかろうとするが、そもそも、人工頭脳を壊せば勝てるかも……と言ってたのに、正面からまともにぶつかっても勝てる筈がないことくらい分かりそうなもんだけどね。
それに、彼らは実際に謀反を起こしたわけではなく、人工頭脳に見抜かれただけなのだから、ここはあくまで恭順を装い、ひたすら下手に出てサイコの宥恕を乞うのが長い目で見て得策であったろう。
けれど、堪え性のない彼らは暴発して自らの行動でそのことを証明してしまい、サイコに一太刀も浴びせられぬまま、電撃ビームで根絶させられてしまう。
まさに、短気は損気である。
ガイラー「トドメを刺してやる」
サイコ「待て、このまま殺すには惜しい二人だ」
ガイラー「どうなさるおつもりで?」
サイコ「ドクターポルター、この二人を洗脳し、コマンドサイボーグに作り変えてシャリバンと戦わせるのだ」
サイコはさらに、ベンガルブラザースが進呈したデータを元に、シャリバンの能力を上回るショウリビーストなる魔怪獣を作り出す。

その後、情け容赦なくサイボーグに改造され、身も心もマドーの忠実なしもべとなったベンガルブラザース。
悪人の末路とは言え、哀れである。
もっとも、普通にシャリバンと戦っていても、どうせ倒されていただろうから、死ぬのが遅いか早いかだけの違いであったろう。
CM後、地獄谷に呼び出され、ベンガルブラザースおよびショウリビーストと激しく戦うシャリバン。

ただ、この辺、あまりに芸がないので、ベンガルブラザースが千秋たちを誘拐し、それを助けにシャリバンが駆けつけ、戦いになる……くらいのお膳立てが欲しかった。
それに、ここで千秋たちを出しておけば、この後のシーンがより効果的になっただろうからね。

ちなみにベンガルブラザース、改造後も大してデザインに変化はないが、台詞をほとんど喋らなくなる。
要するに人格を消されたわけだが、人に倍する野心がその強さの原動力だったとすれば、強化された後の方が弱体化しているように感じられるのも当然であった。
人格が消えてしまえば、小鳥を囮にした罠なんてのも仕掛けられなくなるからね。
どうでもいいけど、シャリバンが孤軍奮闘してるとき、リリィは一体何してるんでしょ?
やっぱり、コーヒー飲んでるのかなぁ。

シャリバン「トドメだ!!」

ベンガルブラザース「ぐわあああっ!!」
ともあれ、本気を出した(?)シャリバンの前には、ベンガルブラザースは敵ではなく、クライムバスターの一撃で吹っ飛ばされる。合掌。
しかし、まぁ、良くこの程度の実力で魔王サイコに勝てると踏んだものである。
ここから幻夢界に舞台が移るが、さすがシャリバンのデータを元にして作られたというだけのことはあり、ショウリビーストは過去最強の難敵であった。
特殊な霧でサーチャースコープと高次元ソナーを無効にしたかと思えば、

シャリバン「うっ、ううっ」
強力な火炎放射で、シャリバンプロテクションさえ打ち破ってしまう。
と、珍しく、戦いの途中で魔王サイコが顔を出し、

サイコ「お前の全能力は全てベンガルブラザースが調べてくれた」
シャリバン「なにをっ」
しかし、考えらたマドーって、ベンガルブラザースから貴重なデータを貰っておきながら、ほとんど言いがかりのような難癖をつけて謀反に追い込み、あまつさえその体を改造してシャリバンへの捨て駒にし、血の一滴まで絞り取っているのだから、まさに悪魔のような集団である。

シャリバン「レーザーブレード!!」
シャリバン、ここで必殺のレーザーブレードを使う。
今更だけど、「シャリバン」のビジュアルって今見ても全然色褪せることがないんだよね。
映像技術云々以前に、センスが素晴らしいのだ。
ベンガルブラザースには見せなかったレーザーブレードであったが、マドーにはレーザーブレードに関する自前のデータがあるので、ショリウビーストはレーザーブレードでさえ易々とあしらい、必殺のシャリバンクラッシュまで弾き返してしまう。
サイコ「心に愛と優しさを持ったものは野獣には勝てぬ、お前の負けだ、シャリバン」
再びサイコの姿が空に浮かび上がり、言葉でシャリバンの心を挫こうとする。

ポルター「はははははははっ、これでわがマドーの勝利です!! シャリバンの能力は今が限度です!!」
幻夢城のモニターに苦しむシャリバンの姿を映して、思わず爆笑するポルター。
ここで、ガイラー将軍にも攻撃に参加させていれば、本当にシャリバンを倒せていたのかもしれないのに、ショリウビーストひとりに任せてしまったのがマドー痛恨の敗着であった。
つーか、そんなことせずともサイコ自身がトドメを刺せばいいんである!!
一撃でベンガルブラザースを悶絶させたあの電撃ビームを放っておけば、勝利はマドーのものであったろうに……
だが、この時、

シャリバンの脳裏に地球の美しい草花のビジョンが浮かび上がる。
さらに、

三人「電さーん!!」
手を振りながら笑顔で走ってくる千秋たちの姿。

千恵「電さーん!!」

シャリバン「俺にはこの美しい自然を……」

千恵「電さーん!!」

シャリバン「守り抜く義務が……」

千恵「電さーん!!」
シャリバン「うおおおおーっ、千恵ちゅわああああんっ!!」 途中から嘘だが、シャリバンの中で千恵ちゃんの占める割合がかなり高いことは確かである。
ま、実際は、千秋も明もアップになってるんだけどね。
ちなみに小次郎さんは0.01秒たりとも出てきません。
電にとって小次郎さんって、そんな存在だったのか……
あと、どうせなら花だけじゃなく、小動物の映像も入れるべきだったかと。
シャリバン「そうだ、俺はここで死ぬわけには行かないんだ。俺が死ねば、この地球は!!」 ともあれ、シャリバン、自分が守るべき自然や愛すべき人々の姿を思い描くことで、自らの心を奮い立たせる。

そしてコンバットスーツの目が、電の燃える魂のように赤々とした光を放つ。
シリーズ通しても、屈指のヒロイックシーンである。
こうしてシャリバンは大劣勢をひっくり返し、レーザーブレードでショウリビーストの胸を深々と貫いてから、渾身のシャリバンクラッシュで撃破する。
ポルター「あーああっ!!」 思わず唸り声を上げて悔しがるポルター。

ポルター「シャリバンのエネルギーはほとんど尽きていた筈です、シャリバンは完全に負けていた筈です、何故、何故立ち上がったんでしょう?」
目を剥いて問い掛けるポルターに、サイコは心なしか悄然とした声で答える。

サイコ「心のせいかもしれぬ」
ポルター「心?」
サイコ「人間には心と言うものがある、たとえ肉体的エネルギーは尽きても、心のエネルギーで立ち上がることが出来るのだ」
ポルター「心のエネルギー……そこまでの計算は」
……と言うことなのだが、そう言うポルター自身、かなり喜怒哀楽が豊富で、十分「心」を持ってると思うんだけどね。
ラスト、何の説明もないが、千秋、千恵、明たちと一緒に川のそばでちょっとしたキャンプを楽しんでいる電。
千秋「頑張ってよ」
電「ああ」
魚と一緒に桜の花びらが流れてくる春らしい清流に釣り糸を垂らす電であったが、餌を取られてばかり。
電「ありゃー」
明「へたくそー」
電「今に見てろよ」

千秋「釣れたの? おかずは?」
電(ふっふっふっ、おかずなら俺の横に立ってるじゃありませんかっ!!) じゃなくて、
電「……」
明「もう三匹も釣れたよー」
千秋「わー、凄い」

千恵「電さんは?」
電「えっ? あっはは、それがさっぱり……」

千恵「……」
電「おかしいなぁ」
トホホな顔をする電に、千恵が悪戯っぽい笑みを浮かべるのだが、ついカメラの方を見てしまうのが、いかにも子役っぽくてめっちゃ可愛いのである!!

千恵「私が教えてあげる」
電「えっ」
千恵「どいてよーっ」
やおら電の手から釣竿を奪うと、乱暴に電の体を押しのける千恵タン。
電、表面上は困ったような顔をしつつ、まるで幼な妻の尻に敷かれているような状況に、内心ではゾクゾクするような歓喜に打ち震え、思わず飛び跳ねたくなるような幸せな気持ちを噛み締めていたに違いない。
と、同時に、この、あってもなくてもどうでもいいようなシーンこそ、実は上原先生が一番書きたかったシーンではないかと思ったり思わなかったりする管理人であった。

千恵「そおれ!!」
得意そうに釣竿を振る千恵であったが、

電「あ、ああっ!!」
千秋「もう、二人ともドジなんだから、じっとしてなさいよ」
電「はい……」
口ほどにもなく針を電の襟に引っ掛け、千秋の手を煩わすことになる。
千秋「はい、とれたわよ」
電「これからは気をつけておくれよ、千恵ちゃん、俺、魚じゃないんだよ」
このまま何事もなく終わり……かと思いきや、番組から最後の最後に素敵なプレゼントが用意されていた。
千恵が釣り上げた魚を取ろうとして、あたふたしている電の後ろで、

前屈みになった千秋の胸元がくつろげ、ほとんどおっぱいが見えそうになるのである!!
しかも、ブラが全然見えないことから、「ひょっとしてノーブラ?」などと言う妄想を描けるのも美味しいのである!!
正直、今回はアクションシーンに偏り過ぎていて、ドラマ性は希薄なのだが、最後のこのちょっとしたやりとりで、管理人的には十分満足なのである。
ほんと、時間は短くてもいいから、毎回こういうほのぼのしたシーンを入れてくれると、レビューするほうもやり甲斐があるんだけどね。
以上、ベンガルブラザースとの戦い、マドー内の造反劇、ショウリビーストとの死闘と、ハードなストーリーとアクションでその8割方が埋め尽くされた力作であった。
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