第18話「罠! 丈の愛した頭脳獣」(1988年6月25日)
冒頭、ビアスがマゼンダを呼び出す。
マゼンダ「ビアス様、何か?」
ビアスは、跪くマゼンダの足元に、標本を入れるのに使うような透明なガラス瓶を転がすと、

ビアス「マゼンダ、それが何か分かっているな?」

マゼンダ「はい……」

唇を噛んで答えるマゼンダの視線の先には、白黒まだらでハート型をしたイヤリングのような奇妙なアイテムがあった。
ビアス「お前は自己改造した時、人間・仙田ルイを捨てた、微かに残っていた優しさと愛する心の遺伝子もな……」
マゼンダ「はい……」

ビアス、靴の裏で瓶を踏みにじると、

ビアス「では、何故、優しさと愛する心のこの遺伝子が、お前の実験室に大切に保管してあったのだ?」
いつになく厳しい口調でマゼンダの行為を責め、その真意を糾問する。
ビアス「人間と地球を支配しようと言う超天才にあるまじき行為、許し難い!」
ビアスに蹴られたガラス瓶が壁に当たり、甲高い音を立てながら床に転がる。
返事次第では、その場で処刑されかねない剣幕であったが、マゼンダは屹然と顔を上げ、

マゼンダ「私は、
こんな格好してますけど、愚か者ではありません!」
ビアス「では何のために、このくだらぬ遺伝子を保管しておいた?」
マゼンダ「それは……その瓶に入っている遺伝子のカオスで頭脳獣を作り、ライブマンを倒すため!」
マゼンダ、やっとビアスの問いに答えると、その場限りの言い逃れでないことを示すため、即座に頭脳獣の脳髄を取り出して見せる。
ビアス「面白い作戦だな、マゼンダ」
ビアスが手にした瓶を落とすと、それが木っ端微塵に砕け散る。
その後、丈が子供たちとスケボーして遊んでいると、子供の一人がスケボーに乗ったまま木にぶつかり、路上に投げ出される。
と、すかさず白いブラウスとスカートを履いた大柄な女性が駆け寄り、怪我をした子供の腕に包帯代わりのハンカチを巻いてくれる。

レイ「もうだいじょぶよ」
子供「ありがとう、お姉さん」
レイ「ばいばい!」
女性は丈には見向きもせず行ってしまうが、それはどう見てもマゼンダが人間に化けているようにしか見えなかった。
丈「マゼンダの奴、一体何考えてんだ?」
しかも、およそマゼンダらしくない行為に、てっきり何か企んでいるのだろうと睨んだ丈は、そのまま女性を尾行する。

レイ「おばあちゃん、だいじょぶ? 手伝いましょう」
だが、続いて階段をよたよた歩いていた老婆を見掛けると、実に自然な態度で話し掛け、その手を引いて介助してやる。
ちなみに演じているのは勿論、来栖さんだが、声はいかにもキャピキャピした感じの声で、どうも別人が吹き替えているようである。
丈「変だな、顔形はルイだが、でもその心は優しさと愛に溢れ、まるで正反対……」
それはともかく、女性の行く先々には、実に良いタイミングで小さなトラブルが起き、その都度女性がイイ人を演じられるようになっていた。
最後は、坂道を猛スピードで下るベビーカーと言う、大変わかりやすい事案が発生し、

レイ「ああーっ」
今度はそれを、丈と二人掛かりで助けることになる。

赤ん坊が無事だったことを、我がことのように喜ぶマゼンダそっくりの女性。

丈(人のために優しく、涙まで流す……この人はルイじゃない、ルイによく似た別人なんだ)
丈が、女性の言動をつらつら観察して出した結論は、その女性がマゼンダとは瓜二つの別人だと言う、いかにもお調子者の丈らしい甘いものだった。
その後、なんとなく公園のベンチに並んで腰掛けている二人。

丈「君って優しいんだね」
レイ「うふっ、あなたも……」
丈「ふっ……俺、大原丈、君は?」
レイ「私、レイ」
丈「レイ?」

名乗ってから、幸せそうに丈を見上げるレイ。
まあ、可愛いと言えば可愛いのだが、来栖さんって基本的に、クールビューティーor悪女タイプの顔立ちで、しかもモデル並みに背が高い……と言うか、大柄なので、正直、こういう典型的なお嬢様タイプは似合わないと思う。
ともあれ、丈はレイの天真爛漫な笑顔にコロッと参ってしまう。
だが、そんな二人のラブラブぶりを冷ややかな目で見ているものがいた。
本物のマゼンダである。
マゼンダ「完全に気を許したな、丈、ツインヅノー、丈を早くアジトに誘い込め」
その女性の正体は、マゼンダが自らの遺伝子で作り出した人工生命体であった。
二人はその後もデートを続け、丈はハート型の小さなネックレスをプレゼントしたりする。

丈がアイスクリームを買いにその場を離れた後、ベンチに座って嬉しそうにネックレスを弄んでいたレイの顔を、マゼンダがいきなり引っ叩く。

マゼンダ「つまらぬものを貰って喜んでる時か、さっさとアジトに連れ込め」
レイ「は、はい……」
創造主には逆らえないレイは、丈を海辺に建つ自分の家に誘う。

丈「あれが君の家かい?」
レイ「ええ……」
この家、「ジェットマン」にも出て来た家だよね。
丈は、レイが浮かない顔をしているのを見て、

丈「どうしたの?」
レイ「丈、私のレイって名前、冷たいって書くの」
丈「えっ?」
レイ「私は……私は……さよならっ」
レイは泣きながらいきなり走り出し、自宅に向かう。
当然丈はそれを追って家の中に入るが、その家こそ、マゼンダが丈の為に用意したアジトであった。
油断し切っていた丈、あえなく落とし穴に落とされてしまう。

レイ「うっ、うう……許して、許して丈」
丈の落ちた穴の前に体を投げ出し、泣き腫らした目で許しを乞うレイ。
マゼンダ「良くやったな、レイ」
2階からマゼンダが降りてくると、レイの体にビームを浴びせ、レイとは似ても似つかぬ恐ろしげな頭脳獣ツインヅノーの姿に変える。
その体から滑り落ちたペンダントを見て、丈はレイの正体を知る。

丈「レイ!」
マゼンダ「丈、お前に高性能液体火薬を注入し、人間爆弾に改造してライブマンの基地に送り返し……」
丈「イエローライオン!!」 ツインヅノー「変身されちゃいましたね……」
マゼンダ「……」
途中から嘘だが、ツインブレスを持たせたまま罠に嵌めたところで何の意味もないことに気付かなかったマゼンダ、ビアスが喝破したとおり、やはり
バカだったのではあるまいか?
この程度の罠に掛けるだけなら、わざわざ自分の分身を作り出す必要はないし、どうせやるなら、事前に丈からツインブレスを巻き上げるくらいのことはさせないとね。
話を戻して、
マゼンダ「丈、お前に高性能液体火薬を注入し、人間爆弾に改造してライブマンの基地に送り返してやる、ツインヅノー!」
マゼンダの命を受け、額から細長い管のようなものを伸ばして丈の体に突き刺すツインヅノー。
ちなみに、その前のシーンでは丈は普通に立ち上がっているのに、何故か、このシーンでは刺しやすいように穴の底に仰向けに倒れてます。
マゼンダ「あっはっはっはっはっ……」
ツインヅノー「へぶっ」
苦しむ丈の姿を見て高らかな笑い声を上げるマゼンダであったが、横から飛んできたヤクザキックが、ツインヅノーの脳天に炸裂する。
来栖さん、笑うのが苦手なのか、この笑いも、腹に力の入らない弱々しいものになっている。
でも、てっきりモデル上がりだろうと思ったら、れっきとした女優さんで、意外にも……と言うと失礼だが、その後も長く芸能活動を続けられているのはえらい。
ちなみに、現在の芸名は朱花伽寧である。
読めんのよ……
話が逸れたが、無論、蹴りを入れたのは丈を助けに来たレッドファルコンであった。
丈もイエローライオンに変身し、砂浜の上でバトルとなるが、

ファルコン「バイモーションバスターだ」
ライオン「駄目だ、バイモーションバスターはやめてくれ、頼む」
ドルフィン「何故?」
ツインヅノーを殺したくない丈が必殺技を使うのを拒んだ為、決着がつかないままCMへ。
CM後、一旦グラントータスに引き揚げた三人が、激しく言い争っている。

勇介「バイモーションバスターを使わない限り、頭脳獣は倒せないんだぞ!」
丈「分かってるさ、だけどあの頭脳獣はレイって人なんだ」
めぐみ「人間なの?」
丈「顔形はルイそっくりなんだけど、その心は優しさに溢れてる人なんだ……そのレイをマゼンダの奴が頭脳獣にしちまったんだ」
勇介「良いか、丈、そいつは全部マゼンダの罠だ」
丈「違う、レイの優しさは本物だよ。俺はそう信じてる。俺はなんとしてもレイを助けるぜ」
呆れたように顔を見合わせる勇介とめぐみを残して、丈は一人で飛び出す。
なお、前回書いたように、大変悲しいことに、今回から、僕たちにたくさんの夢を与えてくれためぐみのミニスカが、ハイウエストのショートパンツ、それもハーフパンツと言っても良いくらい丈の長い、別名「夢もチボーもないパンツ」にチェンジしてしまうのである。
夏場に向けて、もっと露出度の高い衣装になるなら分かるけど、その逆って……スタッフは一体何を血迷ったのだろうか?
滑り出しは良かったけど、途中から敵味方とも新キャラを出し過ぎて収拾がつかなくなった感じのするこの作品の最初の躓きは、このコスチューム変化にあったのではないかと管理人は睨んでいる。
一方、マゼンダたちは引き続きあのアジトに留まっていた。

何故か再び人間の姿に戻されたレイが、悲しそうな目で海を眺めているのを、

2階のベランダから、マゼンダが潤んだ目で見詰めていた。
マゼンダ「私の捨てた、優しさと愛する心……」
そこへふらりとケンプがあらわれ、

ケンプ「もう正体のバレたレイは役に立たん、破壊して凶暴なだけのツインヅノーにするんだ。それがマゼンダ、お前には一番良く似合ってる」
それは、ケンプなりの親切な忠告であったが、

マゼンダ「……」
振り向いたマゼンダの瞳は、レイと同じく、切なそうに濡れていた。
ケンプ「どうした、マゼンダ? お前、まさか、レイを見ていて人間としての自分を取り戻したくなったのか?」
マゼンダ「黙れ、ケンプ! 私はライブマンを倒す!」
本気で心配するケンプに対し、涙を振り捨て、気丈に叫ぶマゼンダであった。
建物の中にはアシュラもいて、彼らの会話を思い詰めた顔で聞いていた。
やがて、砂浜を歩いていたレイのもとへ、丈がやってくる。

レイ「丈、来てはいけない」
丈「レイ、逃げるんだ、マゼンダの手の届かないところに逃げて平和に暮らすんだよ」
レイ「丈、そんなこと……出来ないのよ!」
丈「何故?」
レイ「私が何故、仙田ルイにそっくりなのか、分かる?」
丈「……」
レイ「私は仙田ルイが捨てた優しさと愛する心の遺伝子のカオスで作られた頭脳獣だからよ」
丈「ルイの優しさと愛する心の遺伝子?」
レイ「だから、マゼンダからは逃げられない」
丈「そうだったのか……」
二人が話していると、勇介とめぐみも駆けつける。

レイ「丈、私はツインヅノーになって、あなたたちと戦いたくない、だから、早く帰って!」
涙ながらに訴えるレイに、丈はあのペンダントを取り出し、その手に握らせる。
丈「レイ、このペンダントは俺が君の優しさを信じた証だ、たとえ君が頭脳獣だったとしても……」
丈の言葉に耐え切れなくなったようにその場に突っ伏し、泣きじゃくるレイ。
彼らの背後では、白く泡立つ波が無心に打ち寄せ続けていた。
と、そこへ、マゼンダが戦闘員を引き連れあらわれる。
丈「マゼンダ、レイがお前の捨てた優しさと愛する心なら、俺は意地でも守り抜くぜ」
マゼンダ「くだらぬ意地だ、かかれ!」
勇介とめぐみは自分たちが防波堤になって二人を逃がそうとするが、その行く手にマゼンダが立ちはだかる。
マゼンダ、例のビームを放って再びレイをツインヅノーに変えようとするが、丈は自分の体でレイを庇う。

丈「やめろ、マゼンダ、お前に人間の心が少しでも残ってるなら、レイを頭脳獣に戻すな!」
丈は一縷の望みに縋って、マゼンダの良心に呼びかけるが、

マゼンダ「さらばだ、レイ!」
今度こそレイの体にビームを浴びせ、レイをこの世から消し去り、破壊と殺戮だけのツインヅノーに変えてしまう。

丈「レイーっ!」
マゼンダ「あはははははーはっ、はっはっはっはっはっ……」

マゼンダ「あーっはっはっはっはっ……」
笑いながら、くるっと背中を向け、溢れる涙を見せまいとするマゼンダ。
それを、今回はいつになく男前のアシュラが遠くからじっと見詰めていた。
アシュラ「マゼンダ……」

丈「マゼンダ!」
マゼンダ「はっ!」
丈の声に、慌てて涙を拭って振り向くマゼンダ。
丈「どうして分かってくれなかった? よくもレイを……許さん! イエロー、ライオン!」
悲しみを怒りに変えて、渾身の気合でイエローライオンに変身する丈。
この後、いつもより短めのラス殺陣&巨大ロボットバトルでちびっ子とスポンサーへの義理を果たし、事件は終わる。
マゼンダが、ひとり、ヅノーベースのブリッジでアンニュイしていると、アシュラが来て、無言であのペンダントを取り出し、投げ渡すと、そのまま去って行く。
アシュラが、シリーズで一番男前になった瞬間である。

マゼンダ「アシュラ……」
なんとなく、この後、二人が良い感じになったり、マゼンダが改心したりしそうな雰囲気であったが、結局どちらも実現することはなかった。
戦いに勝利したライブマンだったが、その顔に笑みは見られない。
勇介「マゼンダの奴、どうしてるルイの優しさと愛する心の遺伝子を取っといたのかな?」
勇介がふと漏らした疑問に、

めぐみ「分からない、でも私、マゼンダがツインヅノーを作るためだけに取っておいたと思いたくないわ」
めぐみは祈るようにつぶやくのだった。
海を見詰めていた丈の目に、ふと、波打ち際に立ってタンポポの種を吹いて飛ばしているレイの穏やかな姿が映る。

レイ「あっはっはっはっ」
丈「レイ!」
ごく当たり前のようにレイに向かって駆け出し、恋人同士のようにたわむれる丈であったが、それは、丈が見た悲しい幻影に過ぎなかった。

ナレ「丈は願った、優しさと愛する心の遺伝子で作られたレイが、微かでもマゼンダに残っていることを……」
以上、戦隊シリーズでもひときわ切ない恋の顛末を描いた佳作であった。
しかし、スルーした15話からこの18話まで、悲しく湿っぽい話が続くのは、ストーリー構成上、ちょっとどうかと思う。
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