第19話「ガリ勉坊やオブラー」(1988年7月2日)
今回も、のっけからビアス様がえらい怒ってはる。
対象は自分の弟子たち全員で、

ビアス「甘い! どれもこれもみな甘い! こんな計画で地球を征服できると思っているのか?」
間違えて甘味処に入ってしまった筋金入りの左党のように叫ぶと、提出された作戦計画ファイルを床に叩きつけて怒鳴る。
ただ、そのファイルと言うのが、何の変哲もないコクヨのファイルなのがちょっとダサい。
ここはもうちょっと近未来っぽいデザインのファイル、あるいは、光ディスクにして欲しかった。

その剣幕に、まるで、体育教師で生活指導の池田先生(誰だよ)に日頃のだらけきった生活態度を手厳しく叱られている3年1組の生徒のように、小さくなっているケンプたち。
ビアス「お前たちを天才中の天才と見込み、ボルトに呼び寄せたと言うのに……何が天才だっ! お前たちの才能はこの程度か、脳細胞を活性化してやる」
ビアス先生はそう言うと、指先から細い針を飛ばし、

ケンプ「うわあああっ!」
ケンプたちの頭に突き刺して電気ショックを与え、文字通り脳を刺激してやる。
ま、要するに、お仕置きしているのである。
ビアス「良い知恵を搾り出せ!」
やがて、オブラーが「こんなことやってられっかーっ!」とでも言いたげに、自分の頭に刺さった針を引き抜き、ビアスに向かって投げつける。
ビアス「オブラー、逆らう気か?」
オブラーはよろけながらビアスの足元に跪くと、

オブラー「ビアス様、私は我が身から分身頭脳獣を……」

オブラー「……作り出して見せます!」
悲壮な決意を語りながら、ビアス様のデリケートゾーンにタッチする。
ビアス(いや~んっ!!) サブタイトル表示後、夜道をバイクで走っていた勇介の前を、いきなり小学4年生くらいの男の子が横切ろうとしたので危うく事故りそうになる。
勇介「だいじょうぶか?」
裕太「ごめんなさい」
勇介「それにしても、どうしてこんな夜遅くに?」
裕太「塾の帰りなんです」
勇介「塾?」
子供に言われて振り向けば、背後のビルの窓に「新秀英塾」と言う文字が見えた。
勇介「どうだ、塾は愉しいか?」
裕太「……」
何気ない勇介の質問に、裕太の脳裏に、塾のスパルタ式勉強についていけず落ちこぼれている自分の姿がフラッシュバックする。
裕太の浮かない顔を見た勇介は事情を察し、

勇介「そっか……あ、そうだ、明日、お兄ちゃんたちと野球やろうか?」
裕太「えーっ?」
勇介「よし、決まり、よく遊びよく学べって言うもんな」
そう言って子供を喜ばせると、バイクの後ろに乗せて家まで送ってやる、ヒーローの鑑のような勇介であった。

だが、その様子を、巨大な万年筆を持ち、大脳が剥き出しになったような頭を持つベンキョウヅノーと言う頭脳獣が物陰からじっと見詰めていた。
それこそ、オブラーが我が身を削って作り出した分身頭脳獣であった。
どうでもいいが、「バトルフィーバーJ」に、こんな怪人いなかった?
翌日、約束どおり裕太やその友人たちと一緒に、空き地で野球をしている勇介、丈、めぐみ。

丈「ったく、張り切ってんなぁ」
黄色と黒のボーダーのタンクトップと言う、およそ正気とは思えない服を着て参加している丈、裕太のハッスルぶりに目を細める。

まあ、めぐみもボーダーシャツなので、当時、流行っていたのだろう。
そう言えばほぼ同時期の「Black」「RX」にも、良くボーダーシャツが出てきたな。
めぐみ、見事なランニングホームランをかっ飛ばすが、ボールを追って友達と一緒に森の中に入った裕太の目の前に、あのベンキョウヅノーがあらわれる。

ベンキョウヅノー「遊んでる奴は大嫌いだ!」
ベンキョウヅノー、体を前傾させると、背負っていたランドセルの中から赤い表紙の本を飛ばし、裕太の手に強制的に持たせると言う、奇妙なことをする。
ベンキョウヅノー「勉強しないとその本は手から離れないのだ」
裕太「ええーっ?」
ベンキョウヅノーは同様に他の子供たちの手にも本を持たせる。

子供たち「今日も勉強、明日も勉強……」
ほどなくして、裕太たちが両手に本を乗せてそれを読み上げながら、森の中から出てくる。

なかなか帰って来ないので心配していた勇介たちはそれを見て愁眉を開き、
勇介「おーい、遊んでる時ぐらい、勉強忘れろよーっ!」
朗らかに呼びかけるが、
裕太「愚かな人間に生きる資格無し」
子供「この世は天才だけのもの」
子供「天才の中の天才は大教授ビアス」 子供「この世を治めるのはビアス様」
あ、ちなみに、太字の台詞を読んでる子供、どっかで見たことあると思ったら、「RX」の茂だった。
ビアスと聞いて勇介たちも顔色を変え、慌てて裕太たちに駆け寄る。
丈「君たち、何読んでんだ?」
勇介「ボルトバイブル?」
表紙にはボルトバイブルと英語で書かれ、ボルトの紋章まで入っていた。

勇介「よせ、こんな本読むの……うっ、うわっ」
裕太「やめて!」
めぐみ「勇介!」
勇介、その本を裕太の手からもぎ取ろうとするが、その途端、本から激しいエネルギーが放出され、勇介の体がバネのように後ろに吹っ飛び、裕太も後ろに倒れる。
裕太「この本を読まないと取れないんだ」
めぐみ「なんですって?」
勇介「なんてひどいことを……」
被害者は裕太たちだけではなく、大人も子供も次々とボルトバイブルの「愛読者」にされてしまう。
勇介「みんな頑張るんだ、必ず助けてやるからな」
裕太「……」
しかし、住民に対するイヤガラセにはなっているが、いかにもスケールの小さい作戦で、こんな企画書ばかり提出されたビアスが癇癪を起こしたのも無理はない。
ベンキョウヅノーは続いて、戦隊ヒーローの聖地とも言うべき後楽園ゆうえんちにあらわれる。

ベンキョウヅノー「ええい、どいつもこいつも遊んでばかり(註・当たり前だ)、許さん、遊んでる奴は絶対許さん」
ベンキョウヅノーが一人で気張っていると、横から飛んできた勇介の足がその万年筆型の武器を弾き飛ばす。

勇介「頭脳獣、一体何を企んでるんだ? みんなの手からボルトバイブルを外せ」
ベンキョウヅノー「ボルトバイブルを読んだ人間は、ビアス様を讃え、ボルトを信じる人間となるのだ」
勇介「なんだと?」
丈「なにぃ?」
と、頭上で爆発するような笑い声がしたので振り仰げば、

オブラー「これぞベンキョウヅノーの洗脳教育、分かったか、ベンキョウヅノーの恐ろしさ!」
オブラーが、スカイフラワーのゴンドラに乗って降下しながら、自慢げに叫ぶ。
楽しそうだ。

その隙にベンキョウヅノーが勇介から万年筆を奪い返すと、

ベンキョウヅノー「ええいっ」
勇介「ああっ!」
それで思いっきり勇介を殴り飛ばし、

丈「うわっ」
めぐみ「ああっ」
勇介の体を支えようとした二人もその場に尻餅を突く。
……
嗚呼、めぐみのコスチュームが従来のようなミニスカだったら、実に感動的な、特撮史に残るような素晴らしいシーンになっていたであろうに……
かえすがえすも不粋な衣装チェンジが悔やまれる。
オブラー、地面に飛び降りると、

オブラー「なにしろただの頭脳獣ではないのだ、俺の命を削って出来た、まさに俺の分身とも言うべき頭脳獣なのだ」
オブラーの言葉に合わせて、オブラーが苦しみながらベンキョウヅノーを作り出した時の様子が映し出される。
具体的にどうやったのか不明だが、恐らく、前回のツインヅノーのように、オブラー自らの脳細胞を元に作ったと言う意味なのだろう。
勇介「お前はそんなにまでして頭脳獣を作ったのか?」
オブラー「黙れっ!」 勇介(いや、黙れって……) 自分で吹聴しておいてその返しはねえだろうと、心の中で異議を唱える勇介であったが、嘘である。
オブラー「ベンキョウヅノー、こいつらにもボルトバイブルを読ませてやれ」
勇介たちもすぐにライブマンに変身し、水を得た魚のように活き活きとベンキョウヅノーたちと戦うが、さすがにオブラーの分身だけあってその実力は侮れず、かなりの苦戦を強いられる。
それでもファルコンは、苦しんでいる裕太たちの姿を思い浮かべて自らを奮起し、砲火をかいくぐってファルコンソードをベンキョウヅノーに真っ向から振り下ろす。
ベンキョウヅノーもそれを万年筆で受け止めるが、互いのパワーが拮抗して爆発し、ファルコンは変身が解け、ベンキョウヅノーも吹っ飛ばされて、走行中のジェットコースターの座席に偶然収まる。
そしてそのことが、予想外の展開をもたらすことになる。

ベンキョウヅノー「何処だ、ここは? ううーっ、なんだなんだこれは? 一体これはなんなんだ?」
名前どおり勉強のことしか頭にないベンキョウヅノー、初めて乗るジェットコースターの上でひどく混乱し、戸惑っていたが、
ベンキョウヅノー「おおお、世の中にこんなものがあったとは……」
オブラー「ベンキョウヅノー!」

ベンキョウヅノー「おおーい、やっほーっ! た、楽しくなってきたぞ」
オブラーの叫び声も耳に入らず、いつしかジェットコースターに夢中になってしまう。
その後も、戦いのことなどすっかり忘れ、さまざまなアトラクションに乗って遊園地を満喫するベンキョウヅノーであったが、

ベンキョウヅノー「いやー、楽しいなー、これは面白いー」
これなんか、ぽっちが遊園地に来て意地でも楽しんでやろうとしているようで、なんかつらい。
CM後、さっきと同じ森の中の原っぱにやってきたベンキョウヅノー、そこで子供たちが泥だらけになってラグビーをしているのを見ると、自分もその中に飛び込んで、ルールも分からないままにボールを投げたり泥水の中に突っ込んだり、無邪気な子供のように体を動かす。
それを見ていた勇介は、会心の笑みを浮かべ、

勇介「分かったぜ、ベンキョウヅノーは遊びたいんだ」
オブラー「なにっ?」
その言葉に、少し離れたところにいたオブラーが思わず叫ぶ。

勇介「ベンキョウヅノーはお前の分身だと言ったな」
オブラー「そうだ」
勇介「その分身がまるで子供のように遊び出したと言うことは、おまえ自身の心の何処かにも遊びたいと言う気持ちがあったからだ」
オブラー「なにをバカな」
丈「ベンキョウヅノーはお前の幼い時の素直な心に戻ってるんだ」
勇介「オブラー、いや、尾村豪、俺は今、お前と言う人間が見えてきたような気がするぜ」

勇介の指摘に、

痛いところを突かれたように、目を泳がせるオブラー。
オブラー、顔こそ出してないものの、目だけはスーツアクター自身の目で演技できるのが、キャラクター造型に深みを与えているように思う。
ま、やっぱり、戦隊シリーズの悪役は、顔出して変なメイクしてナンボだよね。
勇介「お前はきっと幼い頃から勉強ばかりしてきた、でも、本当はみんなと一緒に遊びたかったんだろ、そうだろ、尾村?」
オブラー「……」
勇介に言われて、封印した筈の忌まわしい記憶がオブラーの脳裏にまざまざと蘇る。

母親「あなたは天才なのよ、天才のあなたにとってこんな問題決して難しくないのよ、さ、やるのよ、あなたには特別な才能があるの、うふ、今夜はママがセーラー服コスプレしてあげるから頑張るのよ」
豪(もう勘弁してくれーっ!) じゃなくて、
母親「うふ、今、ジュース入れてきてあげるから頑張るのよ」
豪「……」
それは、絵に描いたような教育ママに、絵に描いたようなスパルタ教育を受けている、絵に描いたような勉強漬けの子供だった頃の豪の姿であった。
オブラー「おお……黙れ、黙れ! ベンキョウヅノー、遊んでいる場合か、使命を思い出せ」
オブラー、必死に過去の記憶を振り払うと、ランドセルを投げつけてベンキョウヅノーにカツを入れ、ビームを放って正気に戻そうとする。
だが、どういう仕組みか、ビームはオブラー自身に作用して、オブラーはその場に倒れて悶え苦しんでいたが、やがて、オブラーの前身、尾村豪の姿に戻ってしまう。
これには勇介たちも目を丸くするが、真っ先に喜びをあらわして駆け寄ったのが、豪とは仲良しだった丈であった。

丈「豪が人間に戻った! 豪!」
豪「……」
丈「やっぱりお前は人間なんだ、豪!」
だが、豪は悔しそうに顔を歪めてその手を振り解くと、松の根元に背中を預けるようにして立ち、

豪「ちくしょう、とうとう俺のパワーも尽きてしまったのか……」
絶望の表情を浮かべ、その場に座り込む。

丈「何言ってんだ、良かったじゃねえか、人間に戻れたんだぞ」
豪「黙れ、黙れ、黙れーっ!」
血を吐くような絶叫を迸らせると、抑え切れない怒りを拳に込めて、樹幹を何度も殴りつける。
丈「豪……」
いたわるような目で豪に近付こうとした丈であったが、突然、その周囲で激しい爆発が起きる。

丈「うわっ!」

思わずその場に倒れ込む三人。
……
嗚呼、ここも、めぐみのコスチュームが従来のミニスカだったら、特撮の進むべき未来と、その無限の可能性を示唆したエポックメーキングなシーンになっていたであろうに……
攻撃して来たのは、木の上に立ってふんぞり返っているアシュラであった。
アシュラ「不様な姿を晒しおって、お前の科学はその程度だったのか?」
豪「うう、うう~」
勇介「アシュラ!」
アシュラ「サイバー分身!」
アシュラは久しぶりにサイバー分身を行い、シュラー三人衆を作り出す。
アシュラ「ベンキョウヅノーには俺たちが根性入れてやるぜ」
勇介たちもすかさず変身して応戦するが、アシュラたちはオブラー以上に手強く、簡単に蹴散らされる。
アシュラは宣言どおり、頭脳獣らしさを忘れたベンキョウヅノーに攻撃を加えてショックを与えるが、この時、上空で稲光が走ったかと思うと、炎のようなエネルギーの塊が飛来して、一同の前に降下、

驚いたことに、敵も味方も誰も見たことのない異形の戦士の姿となる。
戦士は全身から衝撃波を出してアシュラたちを吹っ飛ばすと、得体の知れない言語を喋りつつ、十字架のような短剣を取り出して翳し、そこからビームを放って豪とベンキョウヅノーに浴びせる。
すると、豪は再びオブラーに、ベンキョウヅノーも童心に目覚める前の凶暴な頭脳獣に戻る。
謎の戦士はその為だけに来たらしく、光の塊となって飛び上がり、空中に吸い込まれるように消える。
ドルフィン「一体あいつは何者なの?」
アシュラ「えっ、うっ、なんだあの野郎!」

マゼンダ「はっ」
ケンプ「なんなんだ、あいつは、俺たち以外にあんな科学を持っている奴がいるとは……」
その出現にはその場にいたものは勿論、ヅノーベースのケンプたちも激しいショックを受ける。
マゼンダ「しかもアシュラより強いなんて」
ビアス「……」
ただひとり、窓際に立ち、虚空を見詰めているビアスを除いて……
ここからラス殺陣となるが、直前に、あんな無邪気に遊んでいる姿を見せられた後だけに、ライブマンも戦いにくいのではないかと言う管理人の観測をものの見事に裏切り、ライブマンは何の躊躇も罪悪感もなくベンキョウヅノーにバイモーションバスターを撃ち込み、粉砕するのだった。
ひでー。
巨大ロボバトルの後、三人は、丘の上から、力のない足取りで遠ざかるオブラーの後ろ姿を見て、
ライブマン「バイモーションバスター!」
オブラー「ギャーッ!」
じゃなくて、

丈「あいつが元に戻ったなんて……あいつはきっと元の完全な豪に戻るかもしれないぜ」
勇介「うん、幼い時の心の一片まで暴露したんだからな」
丈「遊びたい気持ちがあったなんて……あいつ、ほんとに淋しい子供時代を送ったんだな」
一時的とは言え、豪の姿に戻ったオブラーを攻撃しようなどとはさすがにライブマンも考えず、黙って行かせてやるのだった。
めぐみ「それにしても……あいつ何者かしら?」
オブラーの行く末、そして、得体の知れない新たな敵の出現に、一様に険しい面持ちとなる三人であった。
どうでもいいが、ボルトバイブルに苦しめられていた子供たちが解放されるシーンがないのは、ドラマとしては完全な手落ちであろう。
※編集後記 今回下書きを清書していたら、中盤の「オブラー」と言う名前が、全部「オヨブー」になっていたのには笑いました。
それに気付かなかった自分の迂闊さは置いといて、紛らわしいネーミング!!
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