第6話「先生に化けたクラゲ奇械人!」(1975年5月10日)
冒頭、今見るとそれだけで貴重な文化財になる、雰囲気ありすぎの木造校舎の職員室で、松本先生がテストの採点をしている。
しかし、いくら経費節減のためとは言え、職員室に教師がひとりしかいないというのも変な話である。

当時としてはなかなか綺麗な女教師を演じるのは、村松美枝子さん。
「仮面ライダー」80話で、粛清されたショッカー戦闘員の死体を発見した女性グループの一人を演じていた人ね。
ちなみに一瞬だけ映る中島と言う生徒の答案で、それが6年2組のテストだと分かる。
なお中島くん、野球のし過ぎか、最初から最後まで全部バツをつけられてました。合掌。
と、水道の蛇口を伝って、白い粘液のようなものが這い出て来たかと思うと、先生の目の前でクラゲのお化けに変わる。

クラゲ「ぶよぶよぶよぶよ……」
ブラックサタンのクラゲ奇械人である。

先生「な、なんです、あなたは?」
で、それに対する松本先生の反応が物凄くフツーなのが、かなりのツボなのだった。
普通なら、悲鳴を上げて腰抜かすか、とっとと逃げ出してるよね。
クラゲ「ブラックサタンのクラゲ奇械人」 さらに、人をコケにしたような外見と裏腹に、クラゲの声が仮面ライダーや変身忍者嵐の声を演じたこともある市川治さんの渋い声だったので、管理人、そのギャップに早くも轟沈する。

先生「クラゲ奇械人?」
よっぽど鈍いのか、それとも肝が据わっているのか、まだ逃げようともせず、困った犬のような眉をしながら鸚鵡返しに聞く松本センセ。
クラゲ「何も怖がることはない、私はお前のその体をちょっとばかり拝借したいだけだ」
クラゲ、相変わらず男前の台詞を口にしながら先生に抱きつき、その体を乗っ取ってしまう。
先生「100点か、堀文夫、こいつだ」
先生の姿をしたクラゲ奇械人、100点満点の答案を見つけて舌なめずりをする。

子供「助けてーっ」
子供「お母さーん」
アジトでは、4人の子供が首から下を箱の中に入れられ、その頭に電極を付けられて、何やらされていた。

タイタン「黙れーっ!! お前たちは日本中から選ばれた秀才だ、その若くて優れた脳味噌を取り出して我が奇械人に植えつけてやるのだ。スイッチを入れろ」
相変わらず抱かれたくなるほど頼もしいタイタン様、えげつない計画を放言し、即座に子供たちの脳を外科手術で取り出すのかと思いきや、クラゲから電話が掛かってくると、

クラゲ「ミスター・タイタン、ただ今、松本先生の体を乗っ取りました」
以前のレビューでも突っ込んだと思うが、仮にも悪党が「松本先生」はないよなぁ。
ま、ちびっ子への教育的配慮と言う奴であろう。
タイタン「よろしい、ではその学校の秀才は誰だ?」
クラゲ「堀文夫とか言う小僧が100点を取っておりますが……」
タイタン「ようし、直ちにそいつを生け捕りにしろ」
しかし、高校ならともかく、小学校で100点なんて珍しくも何ともなく、それくらいで秀才認定されるのなら、いくら捕まえても切りがないほどいるだろう。
それに、テストと言っても算数だけだし、せめて全教科100点とかならまだ分かるんだけどね。
その後、タイタンの指示で、クラゲが文夫の写真を電送してくるのだが、普通は逆だよね。
現に今、子供を攫おうとしている奴が、なんで本部に写真を送ってこなきゃならんのだ。
ついでに、その写真がストーリーには全く関与しないという、もはや「ストロンガー」序盤では、既視感なしでは見るのが困難になりつつあるトホホな展開が、これから君たちを待っているのだよ。
続いて、仲良くバイクを走らせていた茂とユリ子の前にいきなり子供が飛び出してきて、危うく轢き殺されそうになる。

ユリ子「大丈夫?」
文夫「お兄ちゃん、お姉ちゃん、助けて、僕、殺される」
それが問題の文夫であったのは言うまでもない。
演じるのは、今も現役の長谷川誉さん。
当時8才なので、6年生を演じるのは無理があり過ぎる。
穏やかならぬ言葉に、思わず目を見交わす茂とユリ子。
茂「一体どうしたんだい? 殺されるってのは?」
だが、文夫が何か言う前に、横から声が飛んでくる。

先生「堀君」
茂「あなたは?」
先生「この子の担任の松本です。さ、堀君、先生と一緒に行くのよ」
文夫「やだ、お前なんか松本先生じゃないや」
先生「……まあ、しょうがない子ねえ」
文夫「松本先生の手、そんなに濡れてないもん」
文夫の言葉に先生の手を見ると、確かに不自然なくらい濡れていた。
言うまでもなく、クラゲ奇械人に乗っ取られているからなのだが、クラゲはサタン虫となって入り込んでいるのだから、乗り移ったからってその特質が人間の肉体にダイレクトに現れるというのは、ちょっと変である。
ユリ子「一体どうしたんです」
先生「この子、怠けたがってるんですわ」
茂「君、駄目だぞ、いくら勉強が嫌いだからって殺されるなんて嘘をついちゃ」
ユリ子「そうよ、びっくりするじゃないの」
文夫「でもぉ」
で、茂がその目で先生の濡れた手を見るカットが挿入されながら、茂が何事もなかったように逆に文夫を叱りつけるのが、これまた膝カックンの謎展開。
結局、そのまま文夫を先生と行かせてしまうのだが、先生の立っていた場所が足の形に濡れているのを見て、漸く異常に気付く。
うーん、でも、手が濡れるのならまだしも、足と言うか、靴の裏が濡れていると言うのはなぁ……
つーか、だったら、全身がずぶ濡れになってないとおかしいのでは?
あと、ブラックサタンの存在を疑いつつ、茂がユリ子ひとりに任せるのも納得いかない。
ともあれ、クラゲ奇械人に憑依された松本先生は人気のない海辺まで文夫を連れて行くと、たちまち本性を現して乱暴に文夫を扱う。
そこへユリ子があらわれると、あっさり正体を暴露して、先生の体から抜け出る。
……
いや、先生の体内に留まっていれば、ユリ子も迂闊に手出しが出来ないから、簡単に文夫を連れ去ることが出来たのでは?
1話から見てて思ったのだが、ブラックサタンって、サタン虫の侵入による憑依能力を、あまり活用できていないような気がするのである。

クラゲ「私の正体を知ったやつは、死ぬ」
ユリ子「おっと、それはこっちの台詞よ」
ユリ子、戦闘員を素手でぶっ飛ばし、タックルに変身してクラゲから文夫を奪い取ろうとするが、控え目な泡を浴びせられて崖から転落する。

ここでやっと、毎回シャツの色が違う移り気な茂があらわれるが、来るんなら最初から来いよ!!
意味もなくもったいぶったお陰で、もう少しで相棒が死ぬところだったぞ……

クラゲ「貴様は何者だ?」
ええっ、またそれ聞いちゃう~? さすがにもうそろそろ、自己紹介タイムはやめた方がいいと思うんですが……
茂「知りたければ教えてやってもいいぜ」
クラゲ「やかましい」
茂「ブラックサタンと戦う城茂たぁ、俺様のこったい!!」
クラゲ「おのれ、畳んでしまえ!!」
今回も今まで同様、面白いとは言えないシナリオだが、このように、多少は台詞回しに工夫が見られるのが救いである。
茂、逆にピカチュウ戦闘員を畳んでしまうと、文夫ががっつり見ているのも構わず、ストロンガーに変身する。
何気にストロンガーって、アマゾンと同じく、おやっさん以外の人間に変身シーンを見られるのを気にしないタイプのライダーだったんだね。
しばらくストロンガーとどつき合った末、クラゲ奇械人は「狙った獲物は必ず手に入れる」と捨て台詞を残して退散する。

立花「おい、おい、おい、どうしたんだ」
一方、崖下の岩の上に体を横たえて失神していたユリ子を発見したのが、我らがおやっさんであった。
ヘルメットを被っていたせいか、岩に叩きつけられても大した怪我はしていないようであった。

やや乱暴な手つきでヘルメットを叩いていたおやっさん、良く見れば、かなりの美少女であることに気付くと、

立花「これぞまさしく天が与えてくれた千載一遇のチャンス!! 今のうちに裸にひん剥いて恥ずかしい写真を撮って……」(註1)
……などと言うゲスなことを、元ライダー少年隊会長のおやっさんが考える筈もなく、
立花「しっかりしろ!!」
慌ててユリ子を介抱するのだった。
註1……ほんとはこの後に、もっと下品なことを長々と書き連ねていたのだが、なんかクレームが来そうな気がしたのでカットした。
ふっ、我ながら日和っちまったもんだぜ……
一方、茂、行方不明のユリ子を捜そうともせず、文夫をバイクに乗せて家まで送り届ける。
これも、随分薄情と言うか、不自然な行動である。
文夫の家はなかなか立派な神社であったが、バイクのエンジン音を聞くと、家の裏手から割烹着を着たリアル・フネみたいな母親が出て来て、
母親「今まで何処ほっつき歩いていたのよ、勉強もしないで」
文夫「あ、母ちゃん、この人」
母親「しょうがない子だねえ、いいから早く勉強するの」
茂には礼どころか、視線すら向けず、文夫の手を引っ張って家の中に連れて行く。
ちなみに、最初はゴム手袋を嵌めているのだが、文夫の手を引くときは手袋を外している。
このことを良く覚えておいて頂きたい。
茂「チッ、凄い教育ママだなぁ」
ところが、文夫が自分の部屋に入ると、そこに松本先生が立っていて、にっこり笑って「さあ一緒にお勉強しましょうね」と、語りかけてくる。
さっきのことがあるので、当然文夫はニセモノだと思って逃げようとするが、

母親「こら、文夫!!」
文夫「だって母ちゃん、こいつは松本先生じゃないんだよ、ブラックサタンの奇械人なんだ」
母親「ブラックサタンだか、サンタクロースだか知らないけどね、そんなこと言ってサボろうったってそうはいかないよ」
どうでもいいけど、お母さん、髪の毛の量、いくらなんでも多過ぎません?
そうそう、言い忘れていたが、母親を演じるのはこのブログではお馴染みの中真千子さん。
文夫は母親の横をすり抜け逃げ出すが、

松本「どうしたのかしら、文夫君?」
ひとりになった松本先生の態度から、それが本物の……と言うか、クラゲ奇械人に憑依されていない松本先生本来の人格だと分かる。
文夫が勘違いするのは面白いが、でも、冷静に考えたら、岩場で気絶してる筈の松本先生が、先回りして文夫の部屋に上がり込んで待っているというのは、めちゃくちゃ不自然である。
そもそも、人の部屋に勝手に上がりこむなんて、非常識と言うものだろう。
せめて、文夫が劣等生とかなら分かるが、あいにく、ブラックサタンに狙われるほどの秀才だからねえ。

と、背後の窓が開いて茂が飛び込んでくる。
……
どいつもこいつも常識のない奴ばっかりだ!!
あと、なんとなく、空き巣同士が鉢合わせしたようにも見える。
先生「あなたははどなたですか?」
茂「失礼」
茂、念のため、先生のボディーチェックをして、奇械人に憑依されていないことを確かめる。
ついで、敷居の上に母親のしていたゴム手袋が落ちているのに気付くが、それがたっぷり水気を含んでいた。
茂「そうか、奴は今度は文夫君のお母さんに……」
そう、奇械人は先生ではなく母親の体に入り込んでいたのである。
ただ、ゴム手袋が濡れているのはむしろ普通だし、母親に素手で手を掴まれた時点で、文夫が気付いてないとおかしいんだけどね。
クラゲ奇械人が、バレないように文夫の手をゴム手袋のまま掴むのなら辻褄が合うが、最初から外していたのでは、そもそもゴム手袋の意味がないではないか。
だから、母親はゴム手袋をつけたままにして、茂がその正体を見抜くのは、さっきと同じ、その足元が濡れていた……で、良かったんじゃないかと思う。
あるいは、ずっとゴム手袋を付けていることに不審を抱くとかね。
CM後、浜辺をバイクで走っている茂に、タイタンがブラックオートバイ部隊を差し向ける。
海辺でドカンドカン爆発が起こるのだが、それこそOP映像で使われているカットだった。
つまり、この6話を撮ってる時点では、まだオンエアが始まってないことになる。
まあ、今までも、背景にちょくちょく残雪が見えることから、3月に撮ってるんだろうなぁとは予想がついたが……
で、肝心のオートバイチェイスだが、相変わらず世界一バイクに優しいアクションシーンとなっていて、バイク同士が適切な車間距離を保って走るだけなので、マシンが接触することすらなく、

戦闘員「チュウッ!!」
戦闘員「チュウッ!!」
パッと見、仲良くツーリングしているようにしか見えないのだった。
それでも、今回はバイクが柔らかい砂地の上に横倒しになるカットもあるので、そこそこ迫力がある。
一方、母親は文夫の手を引いて(いい加減、気付けよ……)、裏手の雑木林の中を歩いていたが、

文夫「どうしたんだよ、こんな寂しいとこ連れて来て」
母親「怖いかい?」
文夫「別にこわかないけどさぁ」
母親「そうだね、こわかないわね、お前は勇気があるから、ふふふふ」
意味ありげな台詞を口にしながら、文夫の額にずぶ濡れの手を置くが、

母親「ヒヒヒヒ」
文夫「……」
文夫は、自分の額に手をやるだけで、頑として母親の正体に気付こうとしないのだった。
……
母親「お前、わざとだろ?」 文夫「うん!!」
と言うのは嘘だが、実際問題、先生の異変にはすぐ気付いたのに、母親の異変には全く気付かないって、普通は逆だと思うんだけどね。
クラゲ奇械人も焦れったくなったのか、文夫が何も言わないのに自ら母親の頭から抜け出て正体を見せる。
ストロンガーとブラックオートバイ部隊の死闘、クラゲ奇械人から必死で逃げる文夫の姿を挟んで、

ユリ子「どうもありがとう、お陰で助かったわ」
立花「あんたは運がいいよ、もし俺が通り掛からなかったら、今頃どうなってたか……ひょっとしたら、悪い奴に裸にされていやらしい写真を撮られていたかも知れないぜ、ヒヒヒ」
ユリ子「え、おじさん、それどういうこと? まさか……」
立花「ふふ、そのまさかさ、お前さんはもう俺の言いなりになるしかないんだよぉ!!」
などと、途中から管理人がアホな妄想を膨らませていると、助けを求める子供の声が聞こえてくる。
見上げれば、崖の上に文夫がいて、クラゲ奇械人に追い詰められているところだった。
ユリ子「文夫君、じゃ、おじさんまたね、えい、やっ、とぉっー!!」
ユリ子、おやっさんが見ているのも構わずタックルに変身すると、ひと飛びで崖の上に飛び上がる。
立花「おい、あれで女か?」
だが、タックルが戦闘員と戦っている間に、結局文夫を連れ去られてしまう。
しっかし、たかが子供一人捕まえるのに、どんだけ時間と手間をかければ気が済むのだ?
で、さっきの子供たちはとっくに脳を抜き取られているものと思ったが、

全員ピンピンしていた。
そんなこったろうと思ったよ!! いやさぁ、なんで文夫が連れて来られるまで待ってるの?
5人揃わないと手術できないとか、そんなことないでしょう?
まあ、子供向け番組でそんな残酷なシーンが許される筈もなく、最初から期待するほうが間違っているのだが。
と、手術を開始する間もなく、いつもの口笛が聞こえてくる。
タイタン「あの口笛は、城茂!!」

文夫「やっぱりお兄ちゃん、助けに来てくれたんだ。みんなもう大丈夫だぞ」
文夫、すっかり安心して他の子供たちを励ますが、

子供「ほんと、良かったーっ!!」
子供「良かったね」
茂のことなど全然知らない子供たちまで、こんな状況なのに、もうまるで救出されたかのように底抜けに安堵してしまうのが、かなりのツボなのだった。
この後、笑いながら子供の頭がカチ割られたら、特撮史に残る
爆笑残酷シーンになっていただろう。

と、鋼鉄製の扉が突然火を吹いたかと思うと、

円形に切り抜くようにして、ストロンガーが飛び込んでくる。
ツッコミどころだらけのシナリオだが、このシーンはスカッとして気持ちが良い。
タイタン「お前は仮面ライダーストロンガー」
クラゲ「ううん、どうしてここに?」
ライダー「改造液体人間、お前の後をつけてきたんだ」
この後、ラス殺陣となるが、ストロンガーの蹴りで戦闘員の体に火花が飛ぶところや、一部広角レンズを使ったような映像など、ビジュアル的には工夫の跡が窺える。
ただ、電キックを食らったクラゲの頭がもげて、

その下から、地味なデストロイヤーみたいな素朴なマスクを付けた普通の人間の頭が出てくるのは、なんかドラマの舞台裏を見せられているようで、あまり感心しない。
で、今回も、最後は海に逃げたクラゲの体に、電気ストリームで高圧電流を流して爆死させるという、非接触型フィニッシュで仕留めるのだった。
こうして今回も、ブラックサタンは何の成果も上げられず、空しく敗退するのであった。
事件解決後、浜辺で文夫やその母親たちと別れの挨拶を交わす茂、ユリ子であったが、そこへおやっさんがやってきて、

立花「おい、俺も仲間に入れてくれ。立花藤兵衛だ」
茂「立花藤兵衛?」
立花「うん、こないだ名乗ったじゃないか、そっちもよろしく頼むぜ。俺も君たちと一緒にブラックサタンと戦うんだ。ふんっ」
茂「はははっ」
ほとんど押し掛け女房のように茂たちに共闘を申し込み、茂も、成り行きと言う感じで差し出された手を握るのだった。
こうして6話目にして、やっとおやっさんが正式にライダーの仲間となるのだった。
以上、今回も突っ込みどころが多くて書くのに疲れたが、少なくとも前回よりは面白いと言える内容だった。
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