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「熱中時代」傑作選 第18回「三年四組学級閉鎖」 後編


 第18回「三年四組学級閉鎖」(1979年2月2日)
 の続きです。

 翌朝、3年4組の教室では、ズル休みがバレた足立がみんなから吊るし上げられていた。

 
 藤森「お前、昨日、ズル休みしたんだよな?」
 男子「知ってんだぞ、みんな」
 男子「いいことしたよなー、お前」
 男子「1組の中川君たち、学級閉鎖になったから二子玉川の遊園地で一日中遊んだんだって」
 藤森「早く……ああ、あと二人なのにな、早く学級閉鎖にならないかな」
 一同(トチッたぁっ!!)

 と言うのは嘘だが、このドラマに出てくる子役、一部を除いて素人に毛が生えた、ただし実際には毛の生えていない子供たちが多く、この程度のミスは日常茶飯事なのである。

 藤森「誰か風邪引いてる奴いないかなぁ」
 男子「げほっ」

 藤森のさもしい発言に、男子の一人が空咳をするのだが、これがまたヘタクソで、逆に、藤森をからかうために風邪を引いたふりをしているのかと思ってしまうほどだ。

 
 藤森「あるんじゃねえか、熱」
 男子「ないよぉ」

 その子の額に手を当て、無理やり病人にしようとする藤森。

 この右端にいるのが、はい、もう覚えましたね? 管理人イチオシの平山君子ちゃんです。

 広大が職員室で教頭の通達を受けたあと、教室に入ってくると、足立とさっきの男子の姿が消えていた。

 広大「欠席者が増えたようだけれども……おい、足立はどうした?」

 
 男子「欠席です」

 広大の問いにしれっと答える男子。

 広大「欠席? ほんとに欠席なのか? おい、どうなんだ、来てたんじゃないのか、足立は」

 足立が自分との約束を破ったとは信じたくない広大、重ねて問うが、

 男子「目が痛いって早引けしました」
 広大「目が? ほんとにそう言ったのか」
 藤森「言ってた」

 広大、足立のものもらいが嘘だと知っているので不審顔になるが、「主犯格」の藤森たちは何も知らずに断言する。

 男子「谷田君も熱があるって」
 広大「おいおい、なんだ、谷田も早引きしたのかー?」
 藤森「先生、僕たちのクラスも学級閉鎖ですかー?」

 
 広大「あー、それは、クラスの1/5、8人以上の欠席者があればだなぁ……」

 そう前置きして、実際に欠席者の数を数える広大を、ドキドキしながら見ている藤森たち。

 そう、彼らは足立と谷田を無理やり早引けさせて、学級閉鎖に必要な欠席者を確保しようと企んでいるのである。

 ただ、昨日、広大はインフルエンザによる欠席者があと二人いれば……と話していたので、谷田はともかく、足立はものもらいが原因だと言っているのだから、成立しないのではないかと言う気もするのだが……

 と言うか、もし藤森たちが計画的に学級閉鎖を起こそうとしているのなら、足立についても風邪で早引けしたと言うと思うんだけどね。

 ともあれ、広大は校長たちの指示を仰ぐため、一旦教室を出て行く。

 その途端、藤森やその仲間たちが椅子の上に立って、おおっぴらに作戦の成就を喜ぶ。

 
 由美子「知らないわよ、あとで先生に怒られても」
 藤森「だいじょうぶだよ、あっちいけよー」

 正義感の強い由美子だけは、真っ向から藤森を非難するが、藤森たちは平気であった。

 まあ、それなら由美子が直接広大に訴えそうな気もするが、密告するみたいでイヤだったのかもしれない。

 今回のストーリーの欠点は、藤森たちの悪巧みについて、他の子供たちが実際にどう考え、どう言う反応を示したのかが良く分からないことである。

 結果から言えば、消極的に賛成したことになるのだろうが、昨日、ほとんどの子供たちがあれだけ学校が楽しいと言っておきながら、その手のひら返しはちょっとどうかなぁと言う気はする。

 それだけ人間、いや、日本人と言うものが、周りに流されやすい生き物だということなのかもしれないが……

 一方、広大、校長と話し合い、理由はどうあれ欠席者が規定の数に達したと言うことで学級閉鎖と言うことに決まる。

 
 天城「こうなると、いよいよ学年閉鎖ですかね」
 教頭「それより学校閉鎖の場合も考えておいた方が良さそうですな」

 などとやってると、足立の母親から電話が掛かってくる。

 
 母親「たった今、学級閉鎖になったって帰ってきたんですけど、ほんとになったんでしょうか?」
 広大「ただいま、そう決定しました」
 母親「そうですか、それじゃ安心しました。どうもすいません」
 広大「はい……あ、いえ、もしもし!!」
 
 何の気なしに答えてから、不意におかしなことに気付く広大であったが、既に電話は切られた後であった。

 そう、先に早引けした足立が、自分のクラスが学級閉鎖になったことを知っている筈がないのである。

 天城「どうしました?」
 広大「あ、いえ」

 と言って、今更決定を覆すことも出来ず、すぐに子供たちを帰す広大であった。

 
 広大「はい、そこの三人待った、おい、谷田も、足立も、本当に熱があると言ってたんだな」
 男子「言ってたよなぁ」
 藤森「うん、先生さようなら」

 広大、藤森たちを呼び止めて確認するが、藤森たちは言葉少なに答えると、逃げるように帰っていく。

 しかし、足立についてははっきり「目が痛いから」と説明していたのだから、広大の台詞はちょっと変である。

 一方、天城家では、風邪を引いて学校を休んだ八代が、姉の綾子に看病されていた。

 
 綾子「別に熱はなさそうねえ」
 八代「熱なんてありっこないじゃないか、風邪なんて引いてないんだから」
 綾子「あれえ、じゃあ、あなた仮病なの? ちょっと、ちゃんと説明して頂戴、登校拒否の理由、あなた本気で塾の先生なるつもりなの?」
 八代「あれ、僕そんなこと言ったけなぁ」

 布団に半身を起こして、すっとぼけたことを言う八代。

 
 綾子「言ったじゃないの、昨夜、やあねえ……ねえ、何があったの?」
 八代「……」

 八代、渋い顔で紅茶を飲み干すと、

 八代「実はさあ、塾を経営してる友人にね、お前たち教師が生徒をダメにしてるんだってこっぴどくやっつけられちまってね、それですっかり弱気になったって訳さ」
 綾子「そう、そうだったの……」
 八代「ゴミを救えぬゴミ教師か……しかし俺だってもう40だからね」

 今更指導方針を変えるわけにも行かないと言いたげの八代に対し、

 
 綾子「ね、四十にして惑わずなんて、あれ嘘よ、人間、死ぬまでね、大いに惑いなさい、惑え、惑え」
 八代「ふっ」

 煙草に火をつけてやりながら、彼女らしい言い草で励ます綾子であった。

 しかし、これ、姉と弟と言うより、まるっきり夫婦か、あるいは、バーのホステスと客みたいだよね。

 その頃、こちらも大いに惑い中の広大は、足立の家を訪ね、誰もいない部屋で明かりもつけずに座り込んでいた。

 遊びに出たまま帰らないと言う足立を、その部屋で何時間も待っているのである。

 と、足立の母親が様子を見に来て、ついで足立本人があらわれる。

 母親「何処行ってたのよ、こんな遅くなるまで」
 足立「遊園地だよ」
 広大「おい、お帰り、面白かったか、え、遊園地?」
 足立「うん」
 母親「うんじゃないでしょ」
 足立「はーい」

 不貞腐れた返事をして逃げようとする足立を、母親が無理やり広大の横に座らせる。
 
 
 母親「さあ、先生の前ではっきり白状なさい、どうして熱があるから早引きしたなんて嘘ついたの?」
 足立「……」
 母親「ママには分かってんですよ、風邪引いて早引けしたって言ったら学級閉鎖になると思ったんでしょ」
 足立「……」
 母親「いいこと、あんたが学級閉鎖になったって帰ってから藤森君か遊びに行こうって誘いに来たわよね? その時聞いちゃったんだから……お前が早引けした後、ちゃんと学級閉鎖になったからお前安心しろよなって言ってんの……これでも黙ってるの?」
 足立「……」
 母親「サトシ!!」

 母親にいくら責められても足立はひたすら無言であった。

 これはまあ、子役の演技力がおぼつかないので、あまり台詞を言わせないようにしていると言う面もあるのだろう。

 広大「足立、先生な、君が風邪でもないのに熱があるって先生を騙したことを怒ってるんじゃないんだぞ、ただなぁ、先生はな、どうしてお前があんな嘘をついてまで先生との約束を破ったのか、それが知りたいんだなぁ……どうしても先生には分かんないんだなぁ、だってお前さあ、先生と約束したよなぁ? 先生がほんとに眉毛を剃るんだったら、僕も学校に行くって……先生な、あの時ほんとに嬉しかったんだぞ」

 広大、あくまで優しく友達同士のように語り掛けながら、眼帯を外し、昨日、ラーメン屋のトイレで自分の眉毛を剃った時のことを足立に思い出させる。

 
 母親「サトシ、あんた、それほどまでにして頂いた先生、裏切ったのよ? 分かってんの? 先生が自分のクラスの子供に騙されて学級閉鎖したなんてことが分かったら、先生の立場、どうなんのよ? ママ、なんて校長先生にお詫びしたら良いの? もう、ほんとにそんな恐ろしいこと考えるなんて……」

 母親がいかにも大人らしい角度から息子の不実を叱り付けると、お地蔵さんのように黙りこくっていた足立が、やっと声を絞り出す。

 足立「僕が考えたんじゃないもん、みんなで相談して決めたんだもん」
 広大「みんなで? おい、みんなで相談して学級閉鎖にしようって決めたのか?」
 母親「あんた、誰かに言われて早引きしたのね? 藤森君?」
 足立「……」
 母親「分かった、口止めされたのね、あんた?」
 足立「ううーっ!!」

 図星を差されたのか、不意に足立が両手で顔を覆って激しく泣き出す。

 広大「お母さん、事情は良く分かりましたから……おい、泣くな足立、こら、おい、明日さ、学校遊びに来ないか? 先生、休みでも学校行ってるから」
 足立「ううーっ!!」

 広大、内心ショックだったに違いないが、あくまで笑顔を絶やさず、足立に気楽に誘いかけるのだった。

 しかし、足立は「みんなで相談して……」と言っているが、実際は、ガキ大将格の藤森たちが強引に押し切ったというのが実情だろう。

 それに、いくら由美子たち正義派が反対しても、足立と谷田本人が(インフルエンザと称して)早引けしてしまえば、どうしようもないからね。

 特に足立は、前日にもズル休みしたことが発覚していたので、余計藤森たちの要請を断れなかったものと見える。

 さらに敷衍すれば、子供たちの心の中に、「足立だけ良い思いをしたのはけしからん」と言う、一種のやっかみのようなものがあって、それが無形の圧力となって藤森たちの「陰謀」を後押ししたという側面もあったかもしれない。

 その日、広大は9時前になっても下宿に戻らなかった。

 それもその筈、誰もいない3年4組の教室の後ろの方の席に座って、明かりもつけずにぼんやり考え込んでいたのである。

 と、急に教室が明るくなったかと思うと、後ろ側の戸が開いて、黒いコートに白いマフラーを巻いた恵子がホッとしたような顔で現れる。

 
 恵子「やっぱりここでしたのね」
 広大「花井先生」
 恵子「校長先生がね、たぶんここだろうから見てきてくれって」
 広大「あれえ、どうもすいません、ご心配かけて」

 恵子、広大の隣の席に腰掛けると、

 
 恵子「分かるわ、割り切れない気持ち……信じていた子供たちに凄い竹箆返しを喰ったわけですからねえ。でもねえ、先輩ぶってるみたいでいやなんですけど、こういうことってね、いつかは必ず教師がぶち当たる壁なのね、自分のクラスだけはしっかり掴んでるって自信がある日、ある事件をきっかけにガラガラと崩れ出す。子供たちの純真さなんてものも、考えたほどでもなかったりしてねえ。逆に子供たちの残酷ささえも見えてくる……私なんてねえ、子供たちを憎いとさえ……」
 広大「僕はさっき!! クラスの子供たち、一人ひとりに会って来ました」

 先輩教師らしく、自分の経験もまじえて諄々と説いて聞かせていた恵子の言葉を鋭く遮ると、そんな告白をする広大。

 
 恵子「あら、ひとりひとりに? それで?」
 広大「何も言えませんでした。いや、何にも言えないことは分かってたんです。でも会って顔さえ見ればいつもの僕と子どもたちになれると思ったんです」
 恵子「……」

 と、広大は言うのだが、実際問題、こんな時間に40人の子供……まあ、ほんとに風邪で休んでいる子を除いても30人以上の子供たちの家を回って歩くなど、おそらく物理的に不可能だろうし、非常識と言うものだろう。

 まあ、ドラマだからありなのだが、ここは、一軒一軒電話したくらいのほうが現実的だったような気もする。

 
 広大「でも、子供たちはまるで犯人を捕まえに来た刑事を見るような目で、僕のことを見ました。僕は思いました。僕はもしかしたら子供たちの敵なんじゃないかなって……もしかしたら、子供たちの味方のふりをしているだけなのかもしれないなぁって……」

 広大、前を向いたまま、ほとんど独り言のように、およそ広大らしくない悲観的な言葉を口にする。

 昨日、八代に言われことも多少頭の隅に残っていたのかもしれないが、広大が教師になって初めてと言っていいくらいの絶望的な気持ちに陥っているのは確かであった。

 恵子「そんなぁ、そこまで考えるのは……」
 広大「ねえ、花井先生」
 恵子「……」
 広大「先生、勉強好きでした?」
 恵子「……」
 広大「僕は大っ嫌いでした。勉強なんか嫌いでした。それは今の子供だって勉強より遊びの方が好きに決まってます。僕なんか遊ぶのだけが大好きで……そうそう、職員室に呼び出されたりなんかするとそれこそ蕁麻疹が出来ました。その僕が、こうやって教師になる、なんか、ははっ、おかしいですねえ」
 恵子「……」

 表面上は笑って見せながら、広大の顔は自殺でもしそうなくらいに寒々としたものだった。

 しばらく後、恵子に付き添われるようにして広大が下宿に戻ってくる。

 八代「残業ですか、こんな時間まで」
 広大「ええ、いや、まぁ……」

 綾子たちがいそいそと広大の食事の準備をしていると、玄関から桃子たちの声が聞こえてくる。

 
 綾子「あら、お帰りなさい」
 早苗「もう少し早いバスにしようと思ったんですけどね、小嶋田先生が最後に直滑降なんていきがって、捻挫しちゃったんです」
 綾子「あら、あ、それで入院か何か?」
 桃子「それほど大したことじゃないんですけどね」

 桃子のウェア姿、とっても可愛いのだが、魚津先生と全く同じウェアと言うのは、いかにも変だなぁ。

 
 広大「……」
 恵子「……」

 一方、食事(カレー)には一切手を付けず、ひたすら黙りこくっている広大と、つらそうな顔でその横に座っている恵子。

 管理人、ここで、スプーンがないので食べたくても食べられない……みたいなギャグを書こうとしたが、寒くなりそうなので断念した。

 やっぱり、コメディータッチのドラマにギャグを入れるのは至難の業である。

 と、その異様な様子を見兼ねて八代が努めて明るく声を掛ける。

 
 八代「どうしたんですか、広大君、何か悩みでもあるんですか?」
 広大「……」
 八代「また教師を辞めたいなんて言い出すんじゃないでしょうね」
 広大「……」

 冗談めかして言うが、広大はニコリともせず、むしろ心を見抜かれたような顔になる。

 広大、教師に成り立ての頃(と言っても、教師になってまだ三ヶ月しか経ってないのだが……)、教師をやっていく自信をなくして、天城に拳でカツを入れられたことがあるのだ。

 あんまり良く覚えてないが……

 広大、ほんとにまたそうしてもらおうと立ち上がるが、

 天城「せっかくですが、ご遠慮しましょう。あなたはもう既に立派な教師なんですから」
 広大「……」

 やんわりと断ると、さっさと書斎に引き揚げてしまう。

 言葉遣いは丁寧だが、まるで「甘ったれるな!!」と怒鳴りつけられたような気持ちになる広大。

 師と仰ぐ天城に突き放され、広大が途方に暮れて突っ立っていると、

 八代「北野さん、もしもね、どうしてもってことだったら、僕が代わりに殴ったげましょうか?」

 八代がそう言いながら北野のそばに移動する。

 
 綾子「なんてこと言うの」
 八代「いや、勿論、こりゃ冗談です」

 思わず立ち上がろうとする姉をなだめると、

 八代「しかし、どうなんでしょうかね、我々教師に落ちこぼれのゴミが救えますか?」
 広大「……」
 八代「所詮落ちこぼれは落ちこぼれ、ほっときゃいいんですよ、ゴミはゴミですよ」
 広大「ゴミ……そりゃあの、ゴミかもしれません、それは、まー、僕もゴミですから、だけどそう言うのはゴミって言うのはやっぱりゴミなりに……」

 悟り切ったような顔で言う八代に、広大もなんとか反論しようとするが、

 八代「いや、なんとかなる、そう思いたいんでしょう? 僕だってそう思いたいですよ。しかし、それ誤魔化しじゃありませんか? 早い話があなただって誤魔化してる、誤魔化しきれなくなってる。それでそんなに悩んでんじゃないですか? 違いますか?」
 広大「……」

 八代に畳み掛けるように問われると、咄嗟に何も言い返せなくなるのだった。

 八代「いいじゃありませんか、僕たちゴミ同士、僕の部屋行って一杯やりましょうよ、ゴミのことなんか忘れちゃってさぁ、ね、ね」

 八代、広大の肩を叩いて、気楽な、しかし捨て鉢になったような口調で誘うが、

 
 恵子「……」

 八代の言葉を黙って聞いていた恵子が突然立ち上がり、八代の頬を思いっきりビンタする。

 
 突然の「修羅場」に、思わず固まる女性軍。

 殴った恵子本人も自分のしたことにびっくりした様子だったが、

 
 恵子「ごめんなさい……でも私、どうしても我慢できなかったんです!!」

 一応謝罪の言葉を述べると、そう叫んで自分の部屋に引っ込む。

 八代も、言い過ぎたとの自覚があったのか、さして怒りもせず、自分で頬を左右から叩くと、広大の肩に手を置いてから食堂を後にする。

 それと入れ違いに育民が来て、

 育民「どうしたの? 喧嘩でもやってんの?」
 綾子「喧嘩じゃありません」
 育民「じゃあなんだよ、喧嘩じゃなきゃ」
 綾子「ただのお芝居です……」

 広大はまるで自分が殴られたかのように神妙な顔で立ち尽くし、事情が分からない桃子と早苗は不思議そうに首を傾げるだけであった。

 その後、広大が自分の部屋でぼーっとしていると、桃子がお盆を手に入ってくる。

 
 桃子「どうぞ、これお土産です、越後の笹団子」
 広大「あ、いや、どうもすいません、わざわざ」

 ……

 考えたら、こんなに気立てが良くてサービス精神旺盛な美女と同じ屋根の下に住んでるんだから、それだけでもう広大って勝ち組だよな。

 他にも早苗、恵子、そして熟女マニアには綾子までいるんだから、まさにパラダイスである。

 これであと、何かの都合で由美子ちゃんか君子ちゃんが一緒に住んでたら、完璧なんだが……って、どっかのロリコンが言ってました。

 広大「あの、どうでしたスキーは?」
 桃子「ええ、でも、なんだか学校のことばっかり気になっちゃって……何かトラブルでもあったんですか、学校で」
 広大「いえいえ、別に」
 桃子「花井先生に聞いても何も言ってくれないし……でもびっくりしました、花井先生があんなことするなんて」

 桃子が改めて驚きを噛み締めていると、

 
 広大「あの、花井先生、本当は、僕のこと叩きたかったのかもしれません」
 桃子「えっ?」

 広大、団子を頬に入れたまま、ぽつりとつぶやく。

 いかにも広大らしい穿った見方だが、恵子は八代が生徒のことを「ゴミ」呼ばわりしたから怒ったのであって、広大を叩きたかったというのは考え過ぎだろう。

 今回の件について、広大はあくまで「被害者」なのであって、単に教師としての自信を失いかけて揺れ動いているだけなんだから……

 もっとも、彼女が、「うじうじ考えてないでシャキッとしろ!!」みたいな発破を、広大に掛けたかったのは事実かもしれない。

 翌朝、食堂で顔を合わせた広大と八代は、なんとなく晴れ晴れとしたような顔で頷き合う。

 そして他のものより早く出掛けていくが、それを恋女房のように笑顔で見送ってやる恵子であった。

 早苗「ほんとに学校に行ったのかしら」
 天城「他に行くところがありますかな、あの二人に」

 八代も、恵子のビンタが良い薬になって、結局教師を続ける気になったのだろうが、これってよくよく考えたら、日本の学校教育が抱える根本的な問題を教師一個人の問題に矮小化することで、その本質から目を逸らさせているという点では、昨夜八代が言っていたことと、あんまり違わないんじゃないかなぁと言う気はする。

 さて、ここから、今回のクライマックスにして、シリーズ中でも一際印象的なシーンとなる。

 
 ひとり、いつのジャージ姿で3年4組の教壇に立ち、誰もいない教室と向かい合っている広大。

 そう、広大、もう一度子供たちに賭けてみる気になったのである。

 おそらく、辞職を覚悟の上で……

 もっとも、前日に何も言わずにいたら、いくら待っていても子供たちが来る筈がないので、たぶん、足立と同様、他の子供たちにも「良かったら、明日学校に遊びに来ないか」とでも言っていたのだろう。

 そんな広大の様子を教室の外から見守っていた桃子だったが、

 
 そこへ、藤森、足立たち、今回の「首謀者」が、姿勢を低くしたまま廊下を這うようにやってきて、後ろ側の戸を少し開け、中の様子を窺う。

 男子「いたな」
 男子「いた」
 男子「どうする?」

 4人はごにょごにょ話し合いながら引き揚げていく。

 この辺も説明不足なのだが、藤森たちも自分たちの行いを反省して、広大が来ているかどうか見に来たのだろう。

 一方、5年2組の担任の恵子は、普段と変わらず授業を行っていた。

 
 恵子「休み時間もあのまんまなの?」
 桃子「3時間目の終わりにね、トイレに立ったきりで……私、なんだか凄く気になっちゃって」

 職員室で、広大のことについて話している二人。

 
 恵子「でも仕方ないわね、他人がやきもきしたってどうなるもんでもないし……」
 桃子「……」

 今どんな気持ちでいるだろうかと、広大のことに思いを馳せる桃子タン。

 そうじゃ、貼りたいだけなんじゃ。

 ただ、桃子は広大のクラスの男子が来ていることを知っているのだから、それを恵子に話さないのはちょっと変なような気もする。

 その広大、朝と同じ姿勢で、延々、教壇に立ち続けていた。

 
 と、再び子供たちがやってきて教室の中を覗くが、今度は、由美子と上野も一緒だった。

 この辺も分かりにくいのだが、あれから藤森たちがクラスメイトに電話して、それで由美子たちも来たと言うことなのだろうか?

 それはともかく、

 
 何事か示し合わせて一旦その場を離れる際、由美子タンも四つん這いになって進むのだが、その後ろにいる男子たち、きっと、由美子タンのスカートの中が気になって仕方がなかったに違いないっ!!

 あるいは、実際にチラッと見えたという可能性もありうる。

 やがて午前中の授業が終わり、給食の時間となるが、広大は空腹に耐えながらなおも立ち続けていた。

 その頬は凍りついたように引き攣って、半ば諦めかけているようにも見えたが……

 
 ここで急転直下、子供たちの機転で広大の労苦が報われることとなる。

 白衣を着た上野たち給食当番を先頭に、他の生徒たちが全員登校してきたのである!!

 
 男子「みんな早く入って」
 藤森「みんな早く入って、早く、順から」
 
 藤森たち「首謀者」の指示に従い、テキパキと給食の用意を始める子供たち。

 そう、何事もなかったように給食の時間にして、なし崩し的に学級閉鎖の一件をチャラにしてしまおうという、子供たちにしてはなかなかクレバーな作戦であった。

 ただ、

 
 男子「どんどん、自分の机を片付けて」
 男子「机を並べた人から席についてください」
 広大(お前が言うな……)

 藤森たちのエラソーな態度に、若干広大がムカッとしていた可能性は否定できない。

 広大、戸惑ったような顔で立ち尽くしていたが、

 藤森「お待たせしました」
 男子「牛乳どうぞ」
 広大「どうもありがとう」

 藤森たちが手ずから給食を運んでくると、初めて口を開いて自分の席に着く。

 無論、それは、藤森たちの遠回しの謝罪であり、広大はそれを快く受け入れたのだった。

 給食が配り終えられた時には、広大はすっかりいつもの調子を取り戻していた。

 
 子供たち「いただきます」
 広大「いいか、みんな、良く噛んで食べるんだぞ」
 子供たち「はーい」
 広大「2月2日、金曜日、晴れ、今日も一日、楽しく勉強しような」
 子供たち「はーい」

 なんとなく、自分も童心に帰ったような顔で給食を頬張りつつ、愛すべき子供たちの様子を見詰めている広大の姿を映しつつ、幕となる。

 実に感動的で爽やかな幕切れだが、どうせなら、桃子先生たちの反応も描いて欲しかった気もする。

 あと、不粋を承知で突っ込ませて頂くと、今日はあくまで学級閉鎖なのだから、3年4組の給食も用意されてない筈なんだけどね。

 以上、学級閉鎖をきっかけに、広大と子供たちの信頼関係が壊れそうになった顛末を、八代の
進退問題に絡めて巧みに描いた、シリーズ中屈指の名作であった。
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Author:zura1980
70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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