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「気まぐれ天使」 第12回「めざめた朝」 前編


 第12回「めざめた朝」(1976年12月22日)

 完全に自分のためだけに書いている「気まぐれ天使」のお時間です。

 前回のラスト、インチキ臭い芸能プロダクションの社長にホテルで危うく手篭めにされたかけた渚であったが、間一髪駆けつけた忍に助けられ、ホテルから一緒に出てきたまでは良かったが、それをよりによって忍の婚約者の妙子に見られてしまう。

 
 こんな風に、仲睦まじい恋人同士のように抱き合っている二人を見て、

 
 鈴木「どうしたんだい?」
 妙子「……」

 渚と忍の関係を良く知らない妙子が穏やかならぬ気持ちになったのは想像に難くない。

 鈴木「ターコ?」
 妙子「鈴木さん、さっきの話聞かなかったことにして……私、考え直したわ、パリになんか絶対行かない、誰が行くもんですか!」
 鈴木「……」

 そして、さきほどまでデザインの勉強のためにパリに行こうかどうしようか迷っていた妙子の突然の変心の理由が、妙子がDJをしているラジオ番組のプロデューサーに過ぎない鈴木に推し量れよう筈もなかった。

 翌朝、妙子がいかにも機嫌悪そうに妹の真紀をせかしている。

 妙子「いつまで寝てんのよ、ぶぁわかみたいに……図体ばっかり大きくてまるで役にたちゃしない」
 真紀「……」
 妙子「あら、起きてたの?」

 妙子が襖を開けると、真紀はとっくに布団を畳んで大学に出掛ける支度を済ませていた。

 まるで泥棒猫のように、朝食も摂らずに逃げるように出て行こうとする真紀であったが、

 
 妙子「ご飯は?」
 真紀「ああ、いいの、なんだかこう、胃が重くて……」
 妙子「ダメよ、食べてかなきゃ……ほら、座んなさいよ」
 真紀「いえ、私、ほんとお腹空いてないのよ」
 妙子「変ねえ、ゆうべから私の顔見ると目ぇ反らして……なんか疚しいことがあるんじゃないの?」
 真紀「う、ううん、絶対無いよ」
 妙子「じゃあなんで私を避けるの?」
 真紀「う~ん、お姉ちゃん、昨夜からご機嫌悪いんだもん。おっかなくて」
 妙子「私だって年がら年中ニコニコしてらんないわよ」

 自分が、忍との関係を榎本にバラしてしまったことで姉が激怒しているのではないかとビクビクしていた真紀であったが、それが原因では怒っているのはではないと知るや、たちまち安堵の表情になる。

 
 妙子「やっぱり何かありそうね、疚しいことが」
 真紀「うん? ううん、ないない、私がお姉ちゃん裏切るもんですか」
 妙子「裏切る?」

 
 真紀「どうしたの、誰かになんか言われたの?」
 妙子「なんでもないわよ」
 真紀「言いなさいよ、たとえば加茂さんとの婚約がバレたとかさ」
 妙子「どうしてそれ知ってるの?」
 真紀「やっぱし……」
 妙子「真紀ちゃん、あんた」
 真紀「ううん、ただの勘よ、バレたっていいじゃない、いずれ分かることなんだからね」

 生まれつき隠し事が苦手な真紀、安心した拍子にうっかり口を滑らせるが、適当に誤魔化すと、いそいそと朝ごはんを食べ始めるのだった。

 同じ頃、忍が下宿の一階で朝飯を掻き込んでから、自分の部屋でスーツに着替えていると、綾乃が入ってくる。

 例によってなんのかんの話しかけてくる綾乃を追い立てようとするが、

 
 綾乃「ゆうべのお礼を申し上げようと思いまして……渚がほんとにありがとうございました」
 忍「そんなオーバーなこと言うなよ、俺はただね……」

 さすがに可愛い孫のことなので、滅多にないことだが、頭を深々と下げて礼を言う綾乃。

 綾乃「だけど世の中には悪い男っているもんですのねー」

 忍、勝手に座椅子に座りながら他人事のように言う綾乃に、

 忍「渚ちゃんの代わりにホテルに彼に会いに行って、その帰りにライターをポッポして(盗んで)きて、そのライターを返しに行った渚ちゃんがあんな目に遭ったそうだな」

 そもそもの発端が綾乃の盗癖にあることを再確認すると、

 
 綾乃「いえ、あれは廊下に落ちてたんですのよ」
 忍「嘘つけ、いいか、バサマ、渚ちゃんは年頃の娘なんだよ、たったひとりの肉親のあんたが気をつけてやらなきゃいけない立場にあるんだよ、それがなんだよ、あべこべじゃないか。渚ちゃんに迷惑ばっかりかけて……渚ちゃんがかわいそうだと思わないか?」

 初めて会って以来、口が酸っぱくなるほど繰り返してきた説教をまたするが、まさにカエルの面になんとやらで、

 綾乃「まー、そんなにまで渚のことを思ってくださるんですの?」
 忍「あたりめえじゃねえ、ここまで関わっちまったんだから……」
 綾乃「渚は素直で優しい娘でございますの」

 綾乃は、巧みに違う方向に話を持っていく。

 
 忍「うん、そりゃまあな、ま、ちょっと変わってるけど、顔だってまあまあだし、ははっ、バサマの孫にしちゃ大出来だな」

 結局口では綾乃に勝てない忍、まんまと相手の土俵に釣り込まれて渚のことを褒める格好になる。

 
 綾乃「やっぱり!」
 忍「なによ?」
 綾乃「いいえ、よろしんでございますのよ……」

 綾乃、何を早合点したのか、顔全体で幸せそうにほくそ笑む。

 渚が襖一枚隔てた部屋で自分の顔を鏡に映していると、綾乃がいそいそと戻ってきてコタツに潜り込む。

 
 綾乃「聞いたかい、今の話」
 渚「ううん、何話してたの?」
 綾乃「お前のことさ、加茂さんがね、お前のこと好きだって」
 渚「えーっ、おっちゃんが? ほんと?」

 綾乃、さっきの忍の答えを勝手に都合よく解釈して、とんでもないことを言い出す。

 まあ、まるっきりの出鱈目でもなく、当たらずといえども遠からずなのだが。

 もっとも、

 綾乃「『渚ちゃんみたいに美人で優しい子は見たことがない!』」

 それに続く台詞は完全な創作であった。

 
 渚「そんなこと言うかな、おっちゃん」
 綾乃「言わなくともちゃんと分かりますの、おばあちゃんには、私もね、色々男で苦労してるから……

 うーむ、樹木希林さんが言うと、物凄く重みがある台詞だ。

 ちなみにこの時点で既に裕也さんとは別居していたらしい。

 渚「信じられない」
 綾乃「鈍感だね、それでなくちゃ、ゆうべみたいにホテルまで飛んでったりしないわよ」
 渚「それもそうだなぁ、ゆうべのおっちゃん、かっこよかったっ!」

 昨日の忍の「雄姿」を思い出し、座ったまま飛び跳ねるように興奮している孫に目を細め、

 綾乃「あんたはどうなの?」
 渚「うん、大好き! いい人だもん」
 綾乃「あ、じゃあ問題ない。私、なんだかこうなるような気がしてたの」

 自分で無理矢理そう言う話にしておいて、図太いことを言う綾乃であった。

 だが、それこれ人を疑うことを知らない純真な渚は、綾乃の与太を真に受け、

 
 やっと支度を終えて部屋から出てきた忍の頬にいきなりチューをする。

 
 忍「あ゛あ゛ーっ!」

 ショックのあまり、そのまま階段を転げ落ちて行く忍。

 
 忍「なにすんだ、バカヤローッ!」
 渚「愛って、そんなものよ」

 これ、コメディタッチで撮ってるから笑えるけど、冷静に考えたら、単に頭のおかしい人である。

 ともあれ出社した忍は、ビルの前で妙子をつかまえ、

 
 忍「どうだい、結論は出たかい、フランス行きの」
 妙子「さあね」
 忍「行った方がいいかもしれないな、エノイチの言うとおり、こんなチャンスは二度とないかも知れん」
 妙子「そう言うだろうと思ったわ」

 忍は純粋に妙子のことを思って勧めたのだが、昨夜のことが頭にある妙子はそれを額面どおりには受け取れず、

 妙子「上手いこと言ってもダメ、残念でした、がっかりしないでね、私、何処へも行きませんから!」

 ほとんど喧嘩腰で言い捨てると、ひとりで先へ行ってしまう。

 そう、妙子は、忍が自分と別れて渚とくっつきたいがために、自分をパリに追いやろうとしているのだと邪推して、逆に依怙地になって日本に留まろうとしているのだ。

 忍、職場に行き、由利たちと駄弁っていると、榎本が頭ぼさぼさの二日酔いのような顔で入ってくる。

 
 忍「どうしたんだ、エノ?」
 榎本「ああ? あ、ちょうどいいや、この宣伝予算ね、経理部長に出しといてください」

 心配して忍が声をかけると、榎本はカバンから書類を出して忍に渡す。

 忍「お前、ひどい顔してるぞ」
 榎本「ええ、一晩中街をぶらぶらしてましたからね」
 忍「どうして?」
 榎本「そんなこと言わなくたって分かるでしょう! 先輩とは口も利きたかないんですよ、早く、これ書類出してきて!」
 忍「わかった、わかったよ」

 いつになく刺々しい態度を見せる榎本に、忍は逆らわずに書類を持って部屋を出て行く。

 そんな二人の様子を、気遣わしそうに見ている妙子。

 自分のせいであれだけ仲の良かった二人の関係を険悪にさせてしまい、気が咎めるのである。

 一方、真紀は岡崎と言うボーイフレンドと言うか、下僕と一緒に大学から出てきてあれこれ話していたが、それによって、忍と妙子の関係を初めて知った榎本がかなりのショックを受けたことが回想される。

 榎本「一年も俺を騙し続けてきたのか、あの二人は?」
 真紀「同じ会社の中で公になると色々不味いことがあるんじゃない?」
 榎本「ちきしょう、俺は裏切られたよ。あのターコが……」

 まるっきり失恋したように深い溜息をつく榎本の姿を思い浮かべ、

 
 真紀「ひょっとして、榎本さん、お姉さんのことを……」

 今更ながらそのことに気付いて青くなる真紀であった。

 恐らく、秘密をバラした件で、この世で一番怖い姉に叱られるのではないかとそればかりを考え、そこまで気が回らなかったのだろう。

 岡崎「そやけど、社内の女の子は絶対近寄せへんちゅうのやろ、自分の財産目当てや思うて」
 真紀「うん、だから私もこっそり身分を隠して近付いたのに……」
 岡崎「少々被害妄想やね、モテる男の自信過剰と言うか、あきれたもんや」
 真紀「その榎本さんのたったひとりの例外がお姉ちゃんだったってこと……ああーっ、考えられるぅ!」

 そのことに思い至り、今度は目の前が真っ暗なる真紀であった。

 ちなみに岡崎を演じているのは、若き日の岸部一徳さんなのである。

 なお、劇中では最後まで描かれていないが、結局、真紀は、この岡崎とくっつくことになったのではないかと思う。

 そう言えば、次の「気まぐれ本格派」で、石立鉄男に惚れていた筈の水沢アキが最後の最後に選んだのが、何故か岸部シローだった。

 さて、妙子が倉庫のような部屋で下着のサンプルをチェックしていると、榎本が来て、

 榎本「君がパリのルベールさんからの招待を断ったワケが分かったよ」
 妙子「……」
 榎本「一流デザイナーになれるチャンスを君が見逃す訳がないと思ったんだけどね」
 妙子「婚約なんて大袈裟なもんじゃないのよ、私たちのは……」

 妙子も、いまさら隠しても仕方ないと、忍とのことを遁辞めいた言い方で認める。

 
 榎本「そんな言い訳をすることはないだろう、人に自慢できるおめでたい話じゃないか。僕も心からおめでとうと言いたいけど……ふっ、正直言ってね、ちょっと抵抗があるんだな。君にふられたと言うより、なんかさみしんだよ」
 妙子「……」
 榎本「いい友達をなくしたって言う気持ちかな」
 妙子「だいぶ見当違いだわ、婚約解消を考えてるの、私」
 榎本「なんで?」
 妙子「つまり、色々と違うのよ、あの人とは」
 榎本「今更おかしいじゃないか、なんかあったのかい?」
 妙子「もうやめて、私、仕事して忘れたいの。クサクサしちゃうわ、なにもかも」

 まさか、忍が浮気しているからとも言えず、妙子は曖昧な言葉で誤魔化すしかないのだった。

 一方、渚が出掛ける際に、忍が彼女のことを愛してると聞かされた荻田はびっくり仰天。

 妻のもと子にそのことを話していると、ちょうど二階から綾乃が降りてくる。

 
 もと子「あ、ほ、ほんと、おばあちゃん?」
 綾乃「ほんとらしいですのね、私は良く存じますせんけど……」

 自分が火元の癖に、空っとぼけて白々しいことを言う綾乃。

 もと子「あら、びっくりした」
 荻田「いやー、気がつかなったよなぁ、そりゃ」
 もと子「いやーっ、そりゃなんかあると思いましたよ、そりゃそうですよ、そうでなきゃ見ず知らずの他人、そんな面倒見ようとするわけないもん」
 綾乃「これで渚のこと一安心ですわね、あと、お嫁入りの支度考えなきゃ……こう申しちゃなんですけど、私ども伊集院家ってのは遠くは平安時代の藤原氏の貴族で……」

 フェイクニュースとも知らず、その話題で盛り上がる荻田夫妻であったが、綾乃がいつものホラを吹き始めると、途端に白けた顔になってそそくさとその場を離れるのだった。

 もっとも、綾乃が作って広めた噂が全くのデタラメでなかったのと同様、最終回で、綾乃の自慢話も実は……と言うオチになるんだけどね。

 その渚が、幸せ気分で街をぶらつき、いつもの場所で自作アクセサリーの露天商をしながら自作の歌を歌っているシーンを挟み、

 
 珍しく学校での光政の様子が映し出される。

 生徒「本物か、これ?」
 光政「あたりまえだろ、読めないのか、君たち」
 生徒「ナンシーの素性は誰にも秘密なんだぜ、サインなんかくれるわけねえよ」

 光政、忍に貰った、ナンシー、つまり妙子のキスマーク入りサイン色紙を友達に見せて自慢している。

 
 光政「ふふーん、ところが俺だけは特別、会ったこともあるし、ナンシーお姉さまが何処の誰か、ちゃんと知ってるんであります。あしからず」
 生徒「嘘つけ」
 生徒「調子良いんだよ、お前は」

 嘘つき呼ばわりされた光政は、彼らにナンシーがプリンセス下着のOLだと教えてやる。

 それだけなら問題なかったが、その生徒のイトコが新聞記者だったことから、思わぬ波紋が生じることになる。

 ちなみに何故管理人が同じように画像を二枚も貼ったのか、それは各自で考えていただきたい。

 その後すぐ、光政の友人から話を聞いたのだろう、早速とある新聞社が、妙子に取材を申し込んでくる。

 まだデザイナーの卵に過ぎない自分に直接取材とは変だとは思いつつ、妙子は気軽に引き受ける。

 一方、仕事を終えた渚が、途中で焼き栗300円也を買って、初めてプリンセス下着にやってくる。

 
 渚「ここかー、おっちゃんの会社って……こんな牢屋みたいなとこ一日中閉じ込められてかわいそう」

 蜂の巣のように同じ形の窓が並んだビルを見上げ、いかにも彼女らしい感想を漏らすと、寅さんが持ってるような大きなカバンを提げて、トコトコ中に入っていく。

 後編に続く。
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70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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