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「気まぐれ天使」 第12回「めざめた朝」 後編


 第12回「めざめた朝」(1976年12月22日)
 の続きです。

 さて、部長の藤平が、珍しく社に来ている社長(虹川清子)に社長室に呼び出されるが、

 
 社長「あんたの部の大隅妙子のこと」
 藤平「大隅君が何か?」
 社長「あの子、ボーイフレンドいる?」
 藤平「は? いいえいえ、彼女はこの、いたって身持ちの固いほうで」
 社長「縁談は?」
 藤平「そんな話はまるっきり聞いておりませんが……社長、何か?」
 社長「この明がね、目をつけたらしいのよ。近頃会社に良く遊びに来ると思ったら」
 藤平「へーっ、お坊ちゃまが? はっはっはっはっ」
 明「ママ、早く頼んでくれよ」

 そう、はた迷惑なことに、社長の御曹司が妙子に一目惚れしてしまったのである。

 上に媚びへつらうことしか頭にない藤平は、すぐに妙子を呼びに部屋を出て行く。

 
 社長「あーちゃん」
 明「ママーっ!」

 二人きりになるや、猫撫で声を出して息子に抱きつく社長と、でれでれと甘える息子。

 そう、息子を溺愛している金と権力を持った母親と、マザコンのどら息子と言う、最悪の取り合わせであった。

 しかし、正直、清川さんとうえだ峻さんの組み合わせでは、普通に気持ち悪いだけなので、うえださんはミスキャストだろうなぁ。

 時代劇では、たまになよなよした若旦那役を演じることもあるけどね。

 で、意中の女性を手下に襲わせ、そこを助けてイイところを見せようとするが、通り掛かった助さんか弥七に先を越されて作戦失敗するというのが、だいたいのパターンである。

 ちなみに「石立鉄男シリーズ」には、やたらマザコンが多く、他にも本作では岡本信人、「気まぐれ本格派」では、風間杜夫がマザコンを演じていた。

 さて、渚、ふらふらと忍の職場に入ってきて、「おっちゃん」といつものように呼びかける。

 
 忍「……」

 忍、なんとなく気持ち悪い目で反射的に手を上げて応じるが、

 
 忍「!」

 ここが会社だと気付いて、教科書どおりの「二度見」をして驚く。

 
 妙子も、まさか「恋敵」がいきなり押しかけてこようとは夢にも思わず、ギョッとする。

 渚「こんちはー」
 妙子「……」

 それでも渚の挨拶に、笑顔で頷くと、冷ややかな目を忍に向ける。

 
 渚「奇麗ねー、デパートみたい。みんななにしてんの?」
 忍「渚ちゃん」
 渚「栗持ってきたのよ、おっちゃん好きでしょ」
 忍「おいおいおい」
 渚「まだあったかいよ、ゆうべさ、おっちゃんお布団の中で栗と柿が食べたいって言ってたじゃない」
 忍「ちょっちょっと渚ちゃん……」

 思いっきり誤解されるようなことを大声でまくしたて、ほとんど核弾頭並みの破壊力で忍の人生を壊しに掛かる渚を、忍は慌てて部屋から連れ出す。

 妙子を除く、他の同僚たちは渚の強烈なキャラクターにあっけにとられ、

 
 信子「なーに、あの子?」
 由利「おっちゃんだって、加茂さんのこと」
 朝子「ちょっとここおかしいんじゃない?」

 鉛筆を自分の頭に当て、差別的発言をする朝子。

 ちなみについ最近知ったのだが、朝子役の津山登志子さんは、シリーズ第1作の「おひかえあそばせ」では、石立鉄男と同じ家に住むことになった6人姉妹の末っ子を演じていたのだった。

 榎本も気になって妙子のデスクに近寄り、

 榎本「なあ、誰だい、あの子?」
 妙子「知りません」

 と、そこへえびす顔をした藤平がやってきて、妙子を手招きする。

 忍はそのまま渚を連れて社の外へ出て、

 
 忍「何故会社に訪ねてくるのよ?」
 渚「来ちゃいけないの?」
 忍「当たり前じゃないか」
 渚「だって私ぐらいの女の子、何人もいるじゃないのよー」
 忍「あれはね、うちの女子社員なの」
 渚「監獄だって面会行けるわよ」
 忍「あのねー」
 渚「私ねえ、おっちゃんに会いたくなったのー」
 忍「ええっ?」

 綾乃の謀略で、荻田家では自分が渚に惚れていることになっているとは知らない忍、甘えるように体を預けてくる渚に、戸惑いの声を上げる。

 忍「あの、悪いけど帰ってくんないかな、来ていいって時はいいって言うからね」
 渚「つまんなーい」

 忍の言葉にたちまち泣き出して胸に顔を押して当ててくる子供のような渚に手を焼き、忍は、2時からテアトル東京で映画を見ようと約束し、とにかく渚を帰らせる。

 再び社長室。

 
 明「結婚を前提にして付き合いたいなぁ……ぷっふふふふっ」
 社長「自分で言えばいいじゃないの」
 明「言えないよー、眩しくてあの人」
 社長「なっさけないわねえ、あーちゃんいくつなの?」
 明「ママ、言ってね、ね、ね、そのかわりさ、100万ぐらいのダイヤ、プレゼントするからさ」
 社長「どうせママのお金じゃない」

 この明の図々しい台詞だけ、ちょっと半平っぽくて笑える。

 ただ、それに続く、

 社長「50万くらいで十分よ。いいところの娘さんと違うんだから」

 と言う台詞は、ちょっと変じゃないか?

 明は、代わりに言ってくれるお礼に母親にダイヤをプレゼントすると言ってるのに、社長の言い方では、妙子にプレゼントする話に摩り替わっている。

 ともあれ、ノックの音がして、妙子がひとりで入ってくる。

 
 社長「藤平さんから聞いてくれた?」
 妙子「はい、それで社長室へ行ってお返事してくれるように言われました……お断りに来たんです」

 
 明「はあっ?」

 妙子の思い掛けない返事に、思わず声を上げる明。

 あ、念の為、大竹さんじゃありません。

 妙子「お気持ちは嬉しいんですけど、今の私は仕事第一で別に男の友達が欲しいと思いませんので」
 社長「私の息子でも?」
 妙子「社長の息子さんだから、なおイヤなんです」
 社長「なんですって?」
 妙子「いえ、それはつまり……」
 社長「出て行きなさい!」

 烈火のごとく怒った社長は妙子を下がらせ、この話はあっさりおじゃんとなる。

 藤平「ねねねね、あのぼっちゃまはね、車を三台も持ってらっしゃるんだよ、君は全く運が良いねえ。社長、ご機嫌だったかい?」

 藤平の思考回路の中には、平の女性社員が社長の息子に求愛されてそれを断るなどと言う選択肢は存在しないので、戻ってきた妙子にニタニタしながら話しかけるが、

 
 妙子「カンカンです」
 藤平「カンカン? どうして」
 妙子「あんなこんにゃくみたいなドラ息子、やだって言ったんです」
 藤平「こんにゃく?」

 妙子は社長室で言えなかった本音をぶちまけると、さっさと自分の職場に帰っていく。

 渚は一旦下宿に帰り、映画のことを綾乃に話す。

 
 綾乃「活動写真か、良いねえ」
 渚「ねえ、おばあちゃんも一緒にいこ」
 綾乃「何言ってんの、せっかく二人きりになれるのに……ねえ、渚、活動小屋で加茂さんが手ぇ握ってきたら、じっとしてなきゃだめよ、びっくりして手ぇ引っ込めたらいけないのよ」
 渚「やだぁ、なにそれ?」
 綾乃「そういうことしたがるものなのよ、男の方ってのは……」

 超奥手(もちろん処女!!)の孫に嬉しそうに恋愛指南をする綾乃。

 ちなみに手前に映っている大量のまつぼっくりは、アクセサリーの素材として渚が拾ってきたものなのである。

 綾乃「加茂さんみたいにあんな親切で面倒見の良い方と結婚したら一生安心でしょうが。私だって色々とお世話になれるし」
 渚「おっちゃんと私が結婚? ふふふふ、面白いこと言ってらぁ、おばあちゃん!」
 綾乃「駄目ねえ、まるっきし子供なんだから」

 
 綾乃「お前ねえ、男の方に誘われたら、もう少しこう、おめかしして出て行かなきゃ駄目よ」
 渚「お化粧しないと嫌われるかな」
 綾乃「そりゃあ、奇麗な方が喜ばれるでしょう」

 それでも祖母に言われて、素直にもと子に化粧道具を借りに行く渚であった。

 綾乃「ほんとに渚のこと好きなんだわ、加茂さん……ああ、良かった。私だってそろそろ老後の生活方針を立てとかなきゃねえ」

 僅か半日のうちに、忍が渚を映画を誘うところまでこぎつけて、「策士」の面目躍如と言った感じの綾乃。

 その最終的な野望は、忍と渚をくっつけて、自分もついでに死ぬまで忍の世話になろうという、つつましくも厚かましい企みであった。

 再びプリンセス下着。

 忍、榎本に呼ばれて屋上に上がる。

 榎本「先輩、ターコに一体何をしたんですか?」
 忍「俺が? 俺、別に何もしちゃいねえよ」
 榎本「じゃあ、何故婚約を解消したって言うんですか、彼女は」
 忍「あれはな、あの子の口癖なんだ、俺たち喧嘩するたびにああなっちゃうんだ」

 
 榎本「先輩、さっき来た女の子は誰ですか?」
 忍「ああ、あれは俺が預かってるバサマの孫娘だよ、どうも生まれっぱなしでね、なんか発育不全で困ってんだよ」

 榎本は、その孫娘の存在こそ原因ではないかと指摘するが、

 忍「よせやい、俺があの子にどうするってんだよ」
 榎本「だって向こうは好きなんでしょう、さっきの様子を見てると」
 忍「いや、それはね、あの子が俺のことをおに、お兄さんに対する気持ちみたいなもんなんだよ」

 榎本、不意に右手を忍の右肩に回し、左手で忍の腕を掴み、顔を近付けると、

 
 榎本「先輩、恋をしてる女は敏感ですからね、ターコは何かを気にし始めてるんじゃないですか?」
 忍「なんだ、気にし始めてるって?」
 榎本「いや、それは二人であとでゆっくり話してくださいよ、まあ、勿論、婚約を解消してくれた方が僕はバンザイの気持ちですけどね。でも知らん顔はしてられませんからね」
 忍「てやんでえ、お前だって妹(真紀)と年中会ってる癖しやがって」
 榎本「三、四回だけですよ」
 忍「そうか、俺たちのこと真紀ちゃんに聞いたのか?」

 榎本、真紀との約束があるのでその質問には答えず、

 榎本「ターコがさっき社長に何か言われたらしいですよ。ますますクサクサしてると思うな、でもね、こういうときこそ力になってあげなきゃ、ほんとに婚約者失格ですよ!」
 忍「……」

 柄にもなく説教してから、照れ隠しのように笑うと、

 榎本「はっ、それにしても先輩、モテますねえ。見直しましたよ」

 忍のネクタイを直してから、爽やかに去って行く。

 絶交したと言いつつ、二人の絆はそう簡単には破れないのであった。

 もっとも、次回、またしても綾乃の虚言によって、再び榎本が忍に絶縁状を叩きつけることになるのだが。

 なお、その日は土曜なので、昼過ぎにはみんな帰ってしまう。

 週休二日が定着した今となっては、若い人たちにはピンと来ない話だろうが、どうせこんなブログ若い人が読んでる訳がないのでどうでもいいことであった。

 
 忍「ねえ、社長、なんつってた?」
 妙子「なんでもないわよ」
 忍「あとで、いつものとこで待ってる」
 妙子「どうぞご自由に、朝まで待っても私行きませんから」

 忍、榎本に言われたことが気になって、つとめて穏やかに話しかけるが、妙子はドライアイスのように冷たい態度を示すと、ひとりでさっさと帰って行く。

 忍「勝手にしやがれ!」

 小さく悪態をつく忍であったが、由利たちの話を聞いて事情を知るや、慌てて妙子の後を追いかける。

 
 忍「ターコ」
 妙子「しつこいわねえ、もう」
 忍「いや、俺たち色々話すことがあるだろ?」
 妙子「そうね、いろいろあるわね、ゆうべあの子とホテルで栗を食べたいって話したことやなんか」
 忍「えっ? なんだい、その話は?」
 妙子「あら、とぼけかたも上手くなったじゃないの、栗のイガみたいな頭しちゃって」

 路上で追いつき、あれこれ話しかける忍だったが、忍の浮気を確信している妙子が耳を貸す筈もない。

 忍「ターコ、ちょっと待って……ゆうべ? ホテルで? 栗? どうして知ってるんだよ?」

 一方、渚は、忍に言われたとおりテアトル東京の前で待っていた。

 ちなみに映画はデヴィッド・リーン監督の名作「ドクトル・ジバゴ」である。

 勿論、管理人は見たことありません!!

 
 渚「おっちゃん、美人って言うかなぁ」

 もと子から借りたコンパクトを見ながら、化粧を直している渚が可愛いのである!

 だが、忍はそんな約束のことはころりと忘れ、妙子を追いかけてそのままマンションまで上がり込んでいた。

 
 妙子「社長のドラ息子と一緒になっちゃうから」
 忍「バカなこと言うなよ」
 妙子「可愛いもんね、あの子、年も若いし」
 忍「やめろよ、バカ!」
 妙子「バカバカ言わないでよ、まだ結婚したわけじゃないのに」
 忍「ねえ、誰に話を聞いたか知らないけどね、俺と渚ちゃんがホテルに行った訳はね……」
 妙子「好きだからでしょ?」
 忍「そうなんだよ……何言ってるんだよ、落ち着いて話を聞けっつってんだ……あっつ、あいてー」

 妙子の問い掛けにうっかり頷いたり、座ろうとして床に尻餅を突いたり、まるで寅さんのような小ボケを連発する忍に、

 妙子「そっちこそ落ち着きなさいよ、バカ!」

 ぶっきらぼうに毒づきながら、軽蔑の眼差しを注ぐ妙子であった。

 それこそ、寅さんなどではおしとやかな女性を演じて、そのイメージが定着している大原さんだが、昔はスケバンとか演じてた人だから、こういう台詞もお手の物なのである。

 同じ頃、榎本は待ち合わせていた真紀と会い、妙子のことについてあれこれ話していた。

 榎本は、妙子がパリ行きを渋っているのは、真紀のことが心配だからではないかと自分の推測を話すが、

 真紀「私は大丈夫よ、一人でちゃんと暮らせるもん。頭っから子ども扱いはイヤ」

 例によって、子ども扱いされることを極端に嫌う真紀は、それこそ子供のように拗ねて見せる。
 
 
 榎本「どうやって生活するんだい?」
 真紀「働くわ、今までだってバイトしたことあるし」
 榎本「君の小遣いぐらいは稼げるさ、でもな、生活するってのは大変なんだよ」

 榎本が人生の先輩として現実的な忠告をするが、

 真紀「辞めちゃうわ、大学なんか」
 榎本「そうはさせたくないんだよ、ターコは!」
 真紀「私ね、今まで散々お姉ちゃんに苦労かけてきたの……そりゃ口では言えないぐらい」

 いつになくしんみりした口調で、早くに両親に死に別れて以来、自分の親代わりをしてきた姉への感謝と申し訳なさを訴える。

 榎本「君の犠牲になったなんて思っちゃいないよ、ターコはそんな人じゃない」
 真紀「だから、なおさらなんとかしてあげたいのよ……私、これ以上足手まといになりたくないの」
 榎本「良いな、兄弟って……」
 真紀「榎本さんも兄弟いるんでしょ?」
 榎本「うん? ああ、兄貴は榎本財閥の跡継ぎだ、俺は勘当された不肖の次男坊、最近は世間話もしたことねえよ」

 
 真紀「私ねえ、榎本さんのそう言うところに興味持ったの……ただのお金持ちのお坊ちゃまじゃなさそうだったから」
 榎本「で、どうだった、会った印象は?」
 真紀「うーん、まだわかんない、あったま悪いからね」
 榎本「はっはっ、君は子供だなぁ、図体ばかりでかくて」
 真紀「むー」

 榎本、改めて、自分も妙子のことは考えておくと約束すると、最後に思い出したように、

 榎本「パリの方はともかく、栗の方はどうなったかな?」
 真紀「えっ?」

 渚は、約束の2時を過ぎてもずーっと「ドクトル・ジバゴ」の看板の前に座って忍が来るのを待つのだが、

 
 その暇つぶしの方法が「あやとり」って、可愛過ぎるんですけどぉ!

 さて、忍がなんとか渚との関係を妙子に説明し終えたのは、そろそろ部屋の明かりをつけねばならない頃合だった。

 
 妙子「でも、まるでなんでもないことはないんでしょ、さっきの様子じゃ」
 忍「そうじゃないんだよ、あの子がねえ、俺のことをねえ、父親か兄貴のように思ってるんだよ、だから会社なんか来たり出来るんじゃないか」
 妙子「そうかしら」
 忍「焼いてるのかい、あんな子供に」
 妙子「そうじゃないの、あの子ね、ニンちゃんが考えてるよりずっと進んでるかもよ……もしニンちゃんのこと本気で好きになっちゃったとしたら……かわいそうだもん」
 忍「そんなもの、ほっぽっときゃいいじゃないか」

 妙子はこともなげに言う忍の顔を振り向き、じっと見詰めていたが、

 
 妙子「できる、あなたに?」

 
 忍「……」

 面と向かって訊かれると、咄嗟に何も言い返せない忍であった。

 と、同時に、妙子は、忍が心のどこかで渚と言う娘に惹かれていることに気付くのだった。

 妙子「詩人とか童話の世界に生きてるような人は普通の人とどっか違うような気がするの……ニンちゃんてどんな人にも冷たく出来ない人だと思うの……それが特に子供みたいな人ならなおさら……あのおばあちゃんがそうでしょ、それからあの渚ちゃんも」
 忍「そんなことないったら」
 妙子「あの人たちも童話に出てくるような人たちね。私、とても勝てないような気がする」
 忍「……」

 恋の終わりを匂わせるような妙子の物言いに、言葉すくなになる忍であったが、ふと時計を見て、それがもう5時を回っているのを見て、やっと渚との約束を思い出す。

 
 忍「しまったぁ、忘れてた」
 妙子「なぁに?」
 忍「うん……」

 冬の日は短く、忍と妙子がテアトル東京に向けてタクシーを飛ばす頃には、街はすっかり夜の中に沈んでいた。

 
 忍「大丈夫だよ、行かなくても」
 妙子「だって約束したんでしょ」
 忍「だって3時間も遅刻だぜ、帰っちゃったかね、ひとりで映画見てるよ。とにかく行っても無駄だよ、だからさー、帰りにケーキでも買って帰りゃご機嫌直るよ」
 妙子「約束は果たさなきゃダメ!」
 
 当の忍がいい加減なことを言ってしきりに帰りたがるが、生真面目な妙子は許そうとしない。

 忍「小姑みてえなんだよなぁ、まったくもう……」

 だが、案の定と言うべきか、渚はまだ看板の前に座って忍を待っていた。

 
 忍「……」
 妙子「……」

 立ち尽くしている忍を、妙子が無言で押し出す。

 忍、ゆっくりと歩み寄ると、

 
 忍「バカだなぁ、この寒いのに……」
 渚「だってきっと来ると思ったもん……待ってて良かった」

 文句ひとつ言わず、涙を堪えて笑う渚を、遠くから見ていた妙子は、

 
 妙子「……」

 なんとも言えない悲しそうな表情になり、黙って踵を返し、夜の街へ消えていくのだった。

 妙子、忍に対する思いの深さでは到底渚に勝てないと認めたのだろう。

 と、同時に、忍と妙子の関係が遂に終わりを迎えつつあることを示していた。

 さて、13話はレビューしない予定なので、簡単に二人の恋の結末を書いておくと、妙子はやはり忍との婚約を解消し、パリに旅立つことになる。

 もっとも、二人は喧嘩別れしたのではなく、あくまで円満な話し合いの結果であり、忍は依然として妙子への恋心を抱き続けるのだが、やがて妙子には現地で恋人が出来てしまい、忍の……そして榎本の手からも、妙子は完全に失われてしまうことになる。

 まあ、それはちょっと先の話なのだが、妙子がパリに行くという形で物語からいなくなるのは、ぶっちゃけ大原さんのスケジュールの都合によるもので、この降板は最初から決まっていたそうである。

 で、16話から酒井和歌子さんが新たなヒロインとして登場するのだが、個人的には大原さんより酒井さんのほうが好みのタイプなので、この交代は歓迎すべきことであった。
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コメント

なかなかツラい…。

こういう展開の話…結末を知ってると色々と噛みしめて見れるんですけど、そうじゃないとイライラしたり、やきもきして焦れったいですねぇ…。(^◇^;)

Re: なかなかツラい…。

そうですか。エピソードの選択を間違えたかもしれません。

あと、記事が長過ぎですね。もっと省略しないと……

「気まぐれ天使」のレヴューいつも楽しみにしてますよ。

皆さん、あまりコメントなさらないので激励をこめて。
私も酒井さんの方が好きなので期待してます。

Re: 「気まぐれ天使」のレヴューいつも楽しみにしてますよ。

ありがとうございます。

そう言って頂くと、ほんと助かります。

ペースは落ちると思いますが、引き続きレビューして行きたいと思います。

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zura1980

Author:zura1980
70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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