第21話「豪よ聞け! 母の声を…」(1988年7月16日)
冒頭、性懲りもなく、三たびライブマンに戦いを挑もうとしていたオブラーであったが、仲間である筈のアシュラに襲われ、あえなくキャプチャーされる。
ケンプたちは、海辺の洞窟の中に設けた臨時の手術室にオブラーを連れて行き、その体にたくさんの電極をつなげ、頭脳獣のコアとなる二つの人工脳髄(?)にリンクさせると、

ケンプ「お前の体を元に頭脳獣を作るのだ、ガッシュ!!」

ガッシュ「カオスファントムエネルギー、放射!!」
オブラー「うわぁあああ、ぐおおおーっ!!」
そう、かつての仲間の体から頭脳獣を作り出そうと言う、ケンプたちの冷酷な企みだった。

苦悶の声を上げながら、瞬間的にオブラー、半獣人、人間へと変身サイクルを繰り返す豪。

やがて、オブラーそっくりの姿をしたオブラーヅノーが誕生する。
オブラー「お、俺が……」
アシュラ「はっはっはっはっ、くたばりやがった」
ケンプ「急げ、オブラーヅノー!!」
オブラーはがっくりしたように意識を失うが、アシュラたちは手当てもせずに放置して、早速行動を開始する。

オブラーヅノー「ライブマン、今日こそ貴様らを倒す!!」
ファルコン「やめろ、豪、これ以上お母さんを悲しませるのはやめるんだ!!」
すなわち、オブラーを助けたがっているライブマンには、声も姿も同じでオブラーと見分けのつかないオブラーヅノーとは本気で戦えないだろうと言う、ケンプらしい卑劣な策略であった。
ライオン「豪、お前はどれだけおふくろさんが悲しんでんのか、わかんねえのかっ」
オブラーヅノー「黙れーっ!!」
ケンプの狙い通り、勇介たちはなんとかオブラーに戦いをやめさせようと説得するばかりで、全く攻撃をしてこない。
しかもオブラーヅノーは本物のオブラー以上の戦闘能力を有しており、その衝撃で早くもライブマンの変身が解ける。
めぐみ「こんなにパワーアップしてたなんて」
勇介「豪!!」
その様子を草葉の陰から見詰めているケンプたち。
別にお亡くなりになったわけではなく、ほんとに木立の葉陰から見ているのである。

マゼンダ「計算どおりだわ」
ケンプ「ああ、ライブマンはあいつを本物のオブラーと思い込み、戦うことが出来ない」
アシュラ「ライブマンが戦い疲れたところで俺たちが一気に……」

ケンプ「ビアス様、宇宙人ごときの力を借りずとも、我ら地球人の天才が力を合わせればライブマンなど敵ではありませんっ!!」
ヅノーベースのビアスに、自分たちの能力をアピールするケンプたち。
いつもは競争心を剥き出しにして、隙あらばライバルを蹴落とそうとしていたケンプたちが、にわかに一致団結してことに当たっているのは、無論、新参のギルドスへの対抗心からであった。
そして、それは、

ギルドス「……」
ビアス「ふっふっふっ、ライバル出現の効果が早速あらわれたというわけだ。こうでなくてはならん!!」
ビアスが描いた青写真どおりの展開でもあった。
オブラーヅノーの熾烈な攻撃に追い詰められる勇介たちであったが、

オブラー「待てーっ!! ライブマンを倒すのは、この俺だーっ!!」
めぐみ「オブラーが二人!! どうなってんの?」
反対側から、死んだと思われていた本物のオブラーがあらわれ、勇介たちを混乱させる。
丈「どっちが本物なんだ?」
アシュラ「野郎、生きてやがった」
オブラーの生死をちゃんと確認しなかった、ケンプたちの凡ミスであった。
将棋や囲碁でもそうだが、こういう凡ミスをするかしないかが、超一流とそれ以下とを隔てる大きな壁なのである。
オブラー「俺があれぐらいのことでくたばると思っているのか? 真の天才、ドクター・オブラーの力を見せてやる」
オブラーはオブラーで、アシュラに手も足も出なかった癖に、なおもライブマンに無謀な戦いを挑もうとする。
だが、その出足をケンプの嘲笑が止める。

ケンプ「はっ、笑わせるな、天才とは俺たちのこと、貴様なんか天才のうちに入るものか」
マゼンダ「ボルトに入ったときのことを思い出させて上げましょうか?」
オブラー「やめろーっ、やめてくれーっ!!」
しかし、そもそもほんとの天才って、自分で自分のことを「天才」とは言わないと思うんだけどね……
想像できます? カントやパスカルやガウスやアインシュタインが、口癖のように「つーか、俺、天才だしー」なんて周りに言ってる姿?
それはともかく、ここで初めて、ケンプたちがボルトに勧誘されたときの具体的な方法が明かされる。

マゼンダ「ある夜、科学アカデミアで勉強してたときだったわ、突然、謎の暗号が送られてきたのよ」
ケンプ「なんと、それがビアス様のテストだったのさ。そして、それを解読したものだけがボルトへ招待されたのだ。俺たちはビアス様に選ばれたことに感激し、喜んでボルトへ行くことにした」
オブラー「あううっ」
初めて聞く話に、勇介たちも戦いを忘れて興味深そうに耳を傾けている。
ケンプ「ところが、だ……」
ケンプは意地の悪い笑みを浮べると、その続きを語り出す。

豪「大教授ビアス様、何故私に問題を与えて下さらないのですか? 私にだって剣史やルイに負けない才能があります。私もテストしてください、必ず解いて見せます!!」
ケンプたちがボルトに招待されたことを知った豪は焦り、自分にも問題を与えて欲しいとビアスに直訴したのであった。

ケンプ「お前はお情けで入れてもらったのだ」
オブラー「……」
一番言われたくないことを、それも敵の前で言われ、思わず目を泳がせるオブラー。
完全着ぐるみタイプでも、スーツアクターの目の動きでキャラクターの感情を表現できるのが、昔の特撮の良さである。
うーん、でも、お情けと言っても、豪はケンプたちに与えられたのと同じ問題を実力でクリアしたんだろう?
だとしたら、能力面で卑下することはないと思うのだが……
それに、ケンプたちの説明では、同じ問題は、科学アカデミアのほかのメンバーにも提示されたらしいのに、それを勇介たちが全く知らなかったと言うのは、少し変である。
勇介や丈はあまり成績優秀ではなかったらしいから候補にならずとも、めぐみには誘いが掛かっていた筈だからね。
また、豪は、ケンプが言うには「俺たちがビアス様に誘われたことを知って」ビアスに直訴したらしいのだが、だとすれば、ケンプはそのことを仲間内でべらべら喋ってたの?
だったら、あの事件の前から、ボルトのことを知っていた科学アカデミアのメンバーがいそうなものだが……
それ以前に、現に最高峰の教育機関・科学アカデミアに在籍していると言うのに、ボルトなどと言う正体不明の組織から勧誘されたからって、その身分を投げ捨ててホイホイついて行くだろうかと言う、根本的な疑問があるのだが、きりがないのでやめておこう。
マゼンダ「でも、所詮、私たちとは才能が違ったのよ、お前がいくら頑張っても私たちには及ばないのよ」

オブラー「黙れっ、ドクター・オブラーは、絶対に貴様らには負けん、ライブマンは俺が倒す!!」
オブラーヅノー「ほざくな、ライブマンを倒すのはこの俺だ」
ケンプたちに馬鹿にされて怒り狂ったオブラーが突っ込んでくると、オブラーヅノーも攻撃を再開する。
なにしろ声も姿もそっくりなので、両者が入り乱れると見分けがつかず、対応に苦慮するライブマン。

丈「どっちが本物だ、コロン?」
コロン「分からないわ、両方とも全く同じ反応を示しているの」
めぐみ「そんな……どうしたら良いの?」
丈「……」
勇介一人を戦わせて、岩陰から戦いを見物しているめぐみたち。
一瞬
「めんどくせえからどっちも殺せば?」と言いそうになった丈だが、何とか堪える。
色々あって、めぐみと丈はオブラーヅノーに押されて崖から転げ落ち、勇介のほうは本物のオブラーの攻撃に必死に耐えていた。

勇介「やめろ、豪、君はお母さんのことを少しでも考えたことがあるのかっ?」
オブラー「……」
勇介「やっぱりお前が本当の豪なんだ」
オブラー「違う、俺は豪なんかじゃない!!」
勇介「君の体は元に戻ったじゃないか、豪、君は人間に戻れるんだ。ボルトの果てしない恐ろしい競争なんかやめて人間の世界に戻るんだーっ!!」
勇介、相手の反応から目の前にいるのが豪だと確信して必死に説得を試みるが、オブラーは駄々っ子のように遮二無二襲い掛かってくるばかり。
最後は崖に追い込まれるが、足場が崩れて二人とも下の岩場に転落する。
オブラーはあえなく失神して横たわっていたが、勇介は、なんとか立ち上がってその場を離れる。逃げたのではなく、豪の母親を呼びに行ったのである。
俊子は家の裏手にある小さな稲荷神社の前にしゃがんでいた。

勇介「お母さん、豪を助けてやってください」
俊子「どうしろと仰るんですか? もうあんな子は私の子ではありません」
筋金入りの教育ママである俊子も、さすがに息子が目の前で化け物になるのを見せられては、息子への愛も醒めてしまったようである。

勇介「あのオブラーこそあなたの子なんです」
俊子「……」
勇介「あなたは豪は生まれつきの天才だと仰いましたね、違います、あなたが作った天才なんです!! オブラーを作ったのはあなたなんです!!」
俊子「……」
勇介、俊子の両肩を掴んで真っ直ぐ相手の目を見据えながら、糾弾するように叫ぶ。

勇介「前にオブラーの作った頭脳獣が急に遊び出したことがあるんです……」
勇介、19話に登場したベンキョウヅノーがオブラーのコントロールを外れて子供のように遊び始めたことを語り、
勇介「その時分かったんです、豪は、ほんとは遊びたかったんだって……」
俊子「……」
勇介「でも、お母さんは豪に勉強ばかりさせていた。豪も良い子だったんでしょう、お母さんの期待に応えようと一生懸命だったんです。いつも一番でいようと……科学アカデミアでも一番勉強していたのは豪だった、それもあなたのために……」
豪は天才などではなく、母親によって「天才」と言う鋳型に無理やり嵌め込まれてしまった孤独な努力家に過ぎないのだと勇介は喝破し、過度の負担によって、その肉体も精神も限界に近付いていることを告げる。

勇介「助けてやってください、あいつにはお母さんの愛が必要なんです!!」
俊子「……」
勇介の言葉に、俊子の目から熱い涙が零れ落ちる。
はじめて、自分の期待が息子を苦しめていたことを悟ったのであろう。
勇介「
生まれてこのかた一度も味わったことのない本当の親の愛で包んでやってください」
勇介にしてはなかなか巧みな弁舌であったが、最後のこの一言はいささか失礼だったかもしれない。
まるで俊子が生まれてから一度も息子に愛情を注いだことがないように聞こえるからである。
やがて、勇介の説得に動かされた俊子が、勇介に案内されてさっきの岩場にやってくる。
しかし、それほど場所は移動してないのに、勇介が尾村家を往復している間に、ケンプたちがオブラーの居場所を突き止められなかったのは、いささか間が抜けているようにも見える。
まあ、ケンプたちの標的はあくまでライブマンだから、勇介がオブラーのところに戻ってくるのを待っていたのかもしれない。

勇介「お母さん、あそこに!!」
俊子「……豪、許して、母さんが悪かったわーっ!!」
泣き叫びながら駆け寄る母の姿に、思わず目頭が熱くなる勇介であった。
そして、こんな感動的なシーンなのに、強い浜風に吹かれて俊子のスカートが足にへばりついて、股間や太ももの線があらわになるのを、股間を熱くして見ている管理人であった。
ほんっっっと、我ながら最低である。
あ、言い忘れていたが、俊子を演じるのは宗方奈美さん。
戦隊シリーズでは、屈指の美熟女女優さんである。
そう言えば、01にもゲスト出演してるんだよね。
俊子「もう誰とも競争なんかしなくていい、一番になれなんて言わないからーっ!!」
オブラー「母さん!!」
オブラーも、母親の声に目を覚まして起き上がろうとするが、そこへ横合いからオブラーヅノーがあらわれ、
オブラーヅノー「おのれ、余計な真似を!!」
斧を振り上げて、俊子に突進する。

俊子「ああーっ!!」
真っ二つにされそうになる俊子であったが、

オブラー「ああーっ!!」

その間に飛び込んで、自分の体で俊子を凶刃から守ったのが、漸く本来の心を取り戻したオブラーであった。
オブラー、最後の力を振り絞って口からビームを放ち、オブラーヅノーを牽制すると、その場に仰向けに倒れる。

俊子「豪、豪!!」
オブラー「母さん……人間に戻りたい!!」
俊子「豪ーっ!!」
10何年かぶりに俊子の白い腕に抱かれたオブラーの脳裏に、まだほんの幼い頃、愛情を込めて抱擁された時の記憶がありありと蘇る。
オブラー「母さん……」
そして、俊子の落とした一粒の涙が奇跡を起こし、

俊子「豪、豪!!」
その肉体も、尾村豪本来の姿に戻る。
そこへ、ケンプたちがあらわれ、
ケンプ「ケッ、戻りやがったか!! やれ、オブラーヅノー!!」
勇介「黙れ、豪はもう渡さんぞ!!」
アシュラ「たった一人で俺たちに勝てると思っているのか」
丈「待て、ところがどっこい生きてるぜ」
行方不明だった丈とめぐみも駆けつけ、ここからラス殺陣となる。
今回はなにしろオブラーヅノーに加え、ケンプ、マゼンダ、アシュラ、シュラー三人衆と、ほとんどオールスターキャストを相手の闘いになり、当然ライブマンは苦戦するが、それでも
なんとなく形勢を逆転させ、オブラーヅノーをバイモーションバスターで撃破して、巨大ロボバトルをこなすのだった。
しっかし、今回に限ったことではないが、三人がバイモーションバスターを構えている割と長い無防備な時間中、全くちょっかいを出そうとしないケンプたち、本気でライブマンに勝つ気があるのだろうか?
さて、戦いのあと、

俊子「豪、勇介さんたちよ……」
豪「……」
オブラーは人間の姿を取り戻したものの、その心は度重なるショックによって破壊され、廃人同様になっていた。

俊子「勇介さんの仰るとおりでした、この子は精神も肉体ももう完全に擦り切れてしまったんです」
丈「じゃあ、豪、お前、おふくろさんとこに戻ったこともわかんねえのか?」
豪「……」
悲劇的な結末に、絶望的な気持ちになる丈であったが、
勇介「いや、分からない筈がない、お母さんだと分かったからこそ元に戻ったんじゃないか」
俊子「これからはせめてもの罪滅ぼしにずっと一緒にいてやります」
豪は母親に支えられて、抜け殻のような足取りで歩き出すが、
めぐみ「豪、蝶々よ……」
豪「……」
めぐみに促されて傍らの野菊のまわりを舞う小さな白い蝶を見ると、その顔に穏やかな笑みを浮かべる。

豪がいつか正気になることを信じ、立ち去る二人の背中を見送る勇介たちであった。
以上、物語中盤での悪の幹部のリタイアを、情感豊かに描いた佳作であった。
オブラー、幹部としては明らかに落第であったが、散々屈辱的な目に遭った挙句に処刑されたザゾリヤ博士たちに比べれば、まだしもましな悪役人生だったと言えるだろう。
この後も、ちょくちょく出るしね。
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