第38話「謎の剣士 月ノ輪の正体!!」(1972年12月22日)
冒頭、ハヤテたち三人が天狗岳と言う山に向かって歩いている。
前回、月ノ輪とそこで会う約束をしたのである。
三人は目立たぬよう、それぞれ旅人の格好をしていたが、
これでは逆に目立つのでは? 富山の薬売りと越後獅子の子供と武士と言うめちゃくちゃな組み合わせであった。
と言っても、例によってビンボーな番組なので、擦れ違うエキストラなどひとりもいないので、怪しまれる心配は絶無であった。
一方、新たに出現した大魔神像に、久しぶりに魔神斎が顔を見せ、秘策があると言う。
魔神斎「長年石の下で修業を積ませておった、骸骨丸が必ずハヤテめを倒す」
悪魔道人「骸骨丸が? ふっふっ」
魔神斎「そうとも、既に石の下より骸骨丸を解き放ち、行動を開始させた」
もう視聴者もすっかり忘れていたと思うが、骸骨丸は度重なる敗北の責任を問われて、孫悟空のように巨大な石の下敷きにされていたのである。
しかし、「石の下で修業」って、さすがに無理なのでは?
再登場後も別に実力に変化はないので、せいぜい、その性根を叩き直したと言うことなのだろう。
その骸骨丸の配下が、とある民家を襲撃するが、ひとりで薬を煎じていた壮年の男に漏れなく斬り殺される。
それもその筈、男はかつて血車党にその人ありと言われた鬼目の源十郎と言う、凄腕の忍者だったのである。

源十郎「骸骨丸、俺を狙ってやってきたのか?」
天井に張り付いたまま、何もない空間に向かって問い掛けると、畳が燃えて、その中から骸骨丸があらわれる。

骸骨丸「はっはっはっ、さすがはかつて血車党随一の忍者、鬼目の源十郎よ、少しも腕は落ちとらんのう」
源十郎「抜け忍の俺を追い回すほど暇ではないはず」
骸骨丸「源十郎、良く知っているな、血車党は貴様も知っている谷の鬼十のせがれハヤテに手を焼いている」
源十郎「ハヤテか……元はと言えば魔神斎のやり方が悪いのだ。俺にはハヤテの気持ちがよう分かる」
再び魔神斎に仕えろと言う骸骨丸の命令を一蹴する源十郎であったが、骸骨丸は彼の弱点である二人の娘のことを持ち出して、源十郎を動揺させる。

源十郎「おのれ、企んだな、骸骨丸」
骸骨丸「そのとおり、貴様をうんと言わすためには手段を選ばぬ。娘二人は人質に取るぞ」
その娘、姉のカゲリに妹のツユハは、家の近くを歩いていたところを下忍たちに襲われるが、さすが源十郎の娘だけあって忍びの術にも長けており、変わり身の術であっさり逃れる。
だが、源十郎はてっきり娘たちが捕まったと思い込む。
骸骨丸「娘が大事ならハヤテを殺せ、そして天の巻を取れ」
源十郎「娘の命……骸骨丸、ハヤテは何処にいる?」
骸骨丸「ハヤテは今頃天狗岳に向かっている。いずれ会おうぞ」
骸骨丸はそう言って姿を消す。
源十郎は床の羽目板を外して、隠しておいた武器セットを取り出す。

源十郎「二度と使うまいと心に誓った、源十郎の血車忍法、ツユハ、カゲリのために、今一度だけ使う。ハヤテを殺す」
源十郎がそんな決意を抱いているとは知らぬハヤテたちは、いよいよ天狗岳の近くまで来るが、ツムジが「腹ごしらえしなきゃね」と言って、竹筒を手に川に水を汲みに降りていく。
ハヤテたち、あまりにビンボーで、どうやら近頃は水で空腹を紛らわせているらしい。
ううっ、書いてて泣けてしまうが、無論、嘘である。
でも、実際、ハヤテたちは生活費や路銀をどうやって得ているのだろう?
まあ、タツマキはれっきとした幕府お抱えの忍者なので、毎月の給料のほかに、血車党やっつけ手当てみたいなのを貰っているのだろう。
しかし、ヒーローであるハヤテが、そのおこぼれに預かっている姿を想像すると、やはり情けないものがある。

それはともかく、ツムジが水を汲んでいると、目の前の水面に、良く忍者が使う息継ぎ用の管が二本立っているのに気付き、緊張して身構える。
ツムジ「誰だ、西洋妖怪か? 血車忍者か?」

ツムジの叫びに応じて水中から勢い良く立ち上がったのは、言うまでもなくカゲリとツユハのくの一姉妹であった。

ツムジ「出たーっ!」
カゲリ「脅かしてごめんなさいね」
ツユハ「私たち追われているの、危ないから早く遠くへ行って」
水に濡れた前髪を若侍のように垂らしてツムジに優しく忠告する二人。
ツムジ「追われてる? 力になろうか?」

カゲリ「ありがと、でもだいじょぶよ」
ツユハ「姉さん、父さんの身の上が心配だわ、家へ戻ってみない?」
カゲリ「いいわ」
カゲリを演じるのは、以前、悪役としてゲスト出演したこともある、かぐや姫先生こと菊容子さん。
ツユハは、佐伯美奈子さん。
二人はこのまま終盤のレギュラーとなるのである。
どうせならもっと早く登場して欲しかったが、贅沢は言うまい。
ぶっちゃけ、菊さんが終盤に参加してなかったら、この作品のレビューをしようとは思わなかっただろう。
二人はその場でジャンプすると、

一気に、ツムジの背後の崖の上に飛び上がる。
ツムジ「あれ、忍者だぞぉ、女の癖に、おいらより上手だ」
ツムジ、ちょっぴり悔しさを滲ませつつ、二人の技量を認める。
しかし、「忍者だぞぉ」って、その格好見たら一発で分かるだろうが。
だが、二人はすぐ血車の下忍たちに見付かり、取り囲まれる。

カゲリ「離れないで」
ツユハ「ええ、だいじょぶよ」
頼もしく答える妹であったが、佐伯さん、はっきり言って殺陣は素人なので、その戦いぶりはどう見ても「だいじょぶ」じゃなかった。

カゲリ「とぉっ!」
それに対してカゲリのほうは、なにしろ世界初と言っていい女性変身ヒーローを演じていた菊さんなので、その動きも実にサマになっていて、まさに頼もしいお姉様と言う感じである。
もっとも、初回と言うことで、二人は刀も持っておらず、それほど本格的なチャンバラは見られない。
下忍「さすがは鬼目の源十郎の娘、腕が立つのう」
下忍「しかし所詮は女だ、血車忍法しびれ毒水」
下忍のひとりが竹筒から毒水を水鉄砲のように発射し、二人の動きを封じて連れて行こうとするが、そこへ駆けつけたのがハヤテたちであった。

タツマキ「悪いことは言わん、その娘を置いてとっとと消え去れ」

下忍「人質を連れて行かねば、殺されるのだ」
ハヤテ「任務を果たせん時は仲間でも殺す、そんな血車党から逃げ出すことだ」
下忍「逃げられるものならとおの昔に逃げてるわ」
今回、珍しいのは、今までそんな会話を交わしたことのない下忍とハヤテたちが、割と深刻な話をすることだ。
まぁ、血車党編も次回で終わりだから、滅ぶ前に、なんとなくそんなやりとりを入れたかったのだろうか。
大魔王サタン編になると、いわゆる戦闘員というものが一切出てこなくなるしね。
ともあれ、結局斬り合いとなり、その隙にカゲリたちは逃げおおせる。
だが、代わりにハヤテたちと離れたところにいたツムジが、源十郎に捕まってしまう。
下忍を片付けたハヤテたちが、ツムジの助けを求める声を聞き、秋色に色づく四方の草むらを眺め回していると、
声「ハヤテ殿に申し伝える……」
頭上から、若い男の声が聞こえてくる。

ハヤテ「なにもんだ?」
声「血車党の抜け忍・鬼目の源十郎、ハヤテ殿の父・谷の鬼十とは親友だった男……」
だが、それは、源十郎の右手に持ったフィギュアから出る、一種の腹話術であった。
……
正直、なんでそんな方法で語りかけねばならないのか、良く分からないのである。
ちなみにこの人形は、市販の人形をそのまま使っているようだが、当時、この番組のキャラクター商品で、こういうのが売られてたのかなぁ?
あと、この人形の声は、どうも、ナレーターの中江さんが作り声で演じているようだが、良く分からない。
ハヤテ「源十郎殿? 亡き父から聞いているが、その源十郎殿が俺に何を言いたいんだ?」
声「まず第一に、お手前になんの恨みもないが、ある事情により、戦わねばならぬ。人質として攫った小童の命は安全でござる。小童をお渡しする場所で生死を争いたい」
ハヤテ「その場所は?」
声「峠を越えた山の一角の神社、道案内はカラスがいたそう」
源十郎の言葉に、巨大な化けガラスがあらわれ、ハヤテを誘うように飛んでいく。

タツマキ「源十郎と言う忍者、並みの忍者ではありますまい」
ハヤテ「かつて血車忍者300人の中で誰も勝てない恐るべき忍者だった」
しかし、誰も勝てないのなら、魔神斎によりも強いってことにならないか?
その源ちゃん、神社の拝殿の中で、指揮下に入った下忍たちを前に訓示を垂れていた。
傍らには縛られて猿轡をされたツムジが座らされている。

源十郎「忍者と忍者の勝負は、力だ、体力だ。まず相手の力を奪うことだ」

源十郎「力を使わせることだ、疲れさせることよ……精根尽き果てさせることよ、グロッキーにさせることよ……いや、やっぱりシンプルに疲れさせるの方がいいかな?」
下忍たち(どっちでもええわっ!!) 途中から嘘だが、源十郎が、同じような言葉を繰り返して目玉を引ん剥いて見せる姿がちょっとツボなのは事実である。
CM後、罠を承知で神社に向かおうとするハヤテを、これもいつもとは違って妙に深刻な口調でタツマキが諌めている。
実はタツマキも、血車党編の終了と共に降板してしまうので、最後にハヤテとがっちり絡むシーンを撮ってやろうというスタッフからの餞(はなむけ)だったのかもしれない。

タツマキ「ハヤテ殿、それがしもお連れ下され」
ハヤテ「くどいぞ、タツマキ!」
タツマキ「……」
自分はそんなに頼りにならないのかと項垂れるタツマキであったが、次のハヤテの言葉で顔を上げる。
ハヤテ「お前は残って万が一の時に備えるんだ」
タツマキ「万が一などと、不吉なことを」
ハヤテ「不吉ではない、人間、生まれたときには必ず死ぬ、それが早いか遅いか……」
タツマキ「そんな、ハヤテ殿が死んでしまったら」
ハヤテ「たとえ俺が死んでも、平和を愛し、正義を守る人間は後から出てくる。ツムジも大きくなればそうなる。なあ、タツマキ、俺もお前もツムジをそう言うように教えてきた筈ではなかったか」
タツマキ「はぁ……」
ハヤテ「分かってくれ、タツマキ」
ハヤテに諄々と説かれて、タツマキも遂に折れ、涙ぐみながらハヤテを見送る。
さて、ハヤテは最初の罠「火炎陣」に差し掛かるが、嵐に変身してあっさり切り抜ける。
タツマキは、その場に座って印を結び、ハヤテの無事を祈っていたが、

ツムジ「おやじ」
タツマキ「ツムジ、無事だったのか、お前?」
ツムジ「そうだよ、おいらに用はないって帰してくれたんだ」
そこへのほほんと無事な姿を見せたのが、捕まっている筈のツムジであった。
まあ、源十郎自身が言ってるように、ハヤテたちには何の恨みもないからであろうが、それにしても、ちょっとツムジを解放するのが早過ぎるような気もする。
もしここでハヤテが忘れ物でも取りに帰ってきたら、作戦がおじゃんになってしまうではないか。
ともあれ、タツマキはツムジに案内させてその神社へ向かい、茂みから見ていたカゲリたちもその後を追う。
一方、嵐は木遁陣、土遁陣と、立て続けに源十郎の仕掛けた罠を破り、遂に神社の中に踏み込む。
嵐「捕らえた子供はどうしたんだ?」
源十郎「タツマキの元へ無事に届けた」
嵐「さすがだな」
源十郎「忍者大秘巻、天の巻は?」
嵐「いや、人質もいないのに、なんでそんなもん渡さにゃならんのだ?」 源十郎「……」
源ちゃん、痛恨のミス!! そうなんだよね。人質がいなかったら、そんな要求を出せる筈がないんだよね。
まあ、源十郎としては実力で嵐を倒して奪うつもりだったのだろうが。
話を戻して、
嵐「天の巻? そうか、狙いはそれか。せっかくだが、持っているのはタツマキだ」
源十郎「タツマキ? そうだったのか」
ちなみにこの時点で、既に源十郎は魔神斎と入れ替わっていると思われる。
魔神斎ならそんなに早くツムジを逃がすとは思えないので、源十郎はツムジを解き放した後で、魔神斎に殺されてしまったものと見える。
ただ、肝心のそのシーンが省略されているのは、いかにも物足りない。
一方、神社に向かっていたタツマキたちの前に、骸骨丸が立ちはだかる。

骸骨丸「伊賀のタツマキ、久しぶりだな」
なんか、礼服の人が上着を脱いだようなコスチュームで、その無骨でグロテスクな顔と釣り合わないこと甚だしい。
これはこれで好きだけどね。

タツマキ「はっ、骸骨丸!」
ツムジ「オヤジの苦手が出た!」
骸骨丸「おとなしくうぬが持つ、天の巻を出せ」
タツマキ「なんじゃと」
骸骨丸「イヤと言ったら殺す!」
タツマキが天の巻を持っていることを、骸骨丸が知っていると言うのは、魔神斎(源十郎)と骸骨丸は、仮面ライダー同士のように離れたところにいても意思の疎通ができるからであろう。
その魔神斎こと源十郎と激しく斬り結んでいる嵐。

嵐「一度は血車党を捨てたお前が、どうしてまた血車党のために働くんだ?」

源十郎「俺は娘のために一度は抜けた、しかし、今娘のためにお前と争う。俺の手に掛かれ」

狭い拝殿の中を、残像を作りながら素早くちょこまか動く源ちゃん。
キャプでは伝わらないが、この動き、なんか
お父さんの反復横跳びみたいで笑えるので、是非実際に映像をご覧頂きたい。
それでもやはり嵐には勝てず、刀を落とされ斬られそうになるが、

カゲリ「待ってください」
ツユハ「父さんを殺さないで!」
源十郎「カゲリ、ツユハ!」
そこに飛び込んできて健気に身を以て父親を庇ったのが、カゲリたちであった。
嵐「お前の娘はこの二人だったのか……」
嵐は刀を鞘におさめると、

嵐「源十郎殿、戦う意味がなくなったようだな」
和睦を申し出るが、その途端、部屋の中が暗くなり、魔神斎の声が聞こえてくる。
魔神斎「そうかな、嵐、いや、血車党の裏切り者よ」
嵐「魔神斎!」
嵐が緊張して周囲の闇を見透かしていると、

源十郎「ふっふっふっふっ」
源十郎が青白く照らされ、その口元が不気味に歪む。
嵐「まさか?」
源十郎「俺はこの日を待っていたのだ。鬼目の源十郎は既に魔神斎が殺した」
カゲリ「父さん?」
ツユハ「そんな……」
ちなみに「ふっふっふっふっ」から、声も納谷悟朗さんの声にチェンジするのだが、最初は俳優本人の声っぽく演じているのが、さすが納谷さんである。
うーん、しかし、これでは、嵐と互角に斬り合っていたのも魔神斎と言うことになり、
「源十郎、実は大したことなかった」と言う、トホホな結論に達してしまい、オヤジの面目丸潰れだし、魔神斎が化けられるのなら、最初から源十郎に頼まず、自分たちだけで作戦を行えば良かったと言うことにならないか?
要するに、これでは源十郎を無理矢理仲間に引き入れる意味がなかったことになるのである。
それはともかく、正体を明かした魔神斎は、カゲリとツユハを両手に抱えて、「天の巻を持って地獄谷へ来い」と告げて壁の中に吸い込まれる。
さて、タツマキたちを襲っていた骸骨丸だが、そこへ月ノ輪があらわれたので一戦も交えず姿を消す。
燃え盛る神社からなんとか逃げ出したハヤテは、タツマキたちと合流する。
タツマキ「だいじょぶでござるか?」
ハヤテ「タツマキ、天の巻は?」

タツマキ「はぁ、このとおりでござる!」
満面の笑みを浮かべ、懐から天の巻を取り出して掲げるタツマキ。
このシーンが、妙におかしい……

と、次の瞬間、逃げた筈の骸骨丸が忽然とあらわれ、油断していたタツマキの手から天の巻を掻っ攫う。
このまますぐ姿を消していれば、骸骨丸、まさかの大金星であったが、

なにしろ、頭がアレなもんで、
骸骨丸「もらったぁっ!」
その場で勝利の雄叫びを上げているところを、

ハヤテ「くそぉっ」
骸骨丸「あ゛っ……?」
ハヤテが咄嗟に投げた刀がまともに体を貫き、ユーサクが殉職した時のような格好になる。

それでも不屈の闘志で立ち続け、刀を抜いて投げ捨てる僕らの骸骨丸であったが、

骸骨丸「ぐわっ!」
画面外から飛んできた月ノ輪に、容赦なくトドメを刺される!!
……
「お前らには情ってもんがねえのか?」by骸骨丸featuring牙一族
以前から管理人が言っているように、「悪の組織」のメンバーより、正義を標榜するヒーローの方が時として残酷であるという説の好例であり、同時に管理人が思わず吹いたシーンでもあった。
いくらなんでもそりゃないよね。
ともあれ、復帰した直後に斬り殺されてしまうと言う不運に見舞われた骸骨丸であったが、

骸骨丸「最後の頼みだ」
ハヤテ「言ってみろ、骸骨丸」
骸骨丸「月ノ輪、お前の正体は?」
意外にも、月ノ輪の正体を教えて欲しいという、およそ「悪の組織」の大幹部らしからぬ願いだった。
月ノ輪もちょっと戸惑っていたが、
月ノ輪「ようし、俺の顔を見せてやるぞ、骸骨丸」
悪とは言え、せめて死に際の願いは叶えてやろうと思ったのか、月ノ輪はそう言って両手を顔の前でクロスさせる。
骸骨丸のみならず、ハヤテたちが固唾を飲んでその正体が明らかになるのを待っていると言う、特撮としては珍しい「引き」のシーンで39話へ「つづく」のだった。
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