第18話「南海に咲くロマン」(1980年5月31日)
冒頭、砂浜の映像に、重々しいナレーションが被さる。
ナレ「遠い遠い昔、魚のように海の中でも生きることの出来た人間がいたと言われている。誰もその姿を見たものはいないが、その人々のことは海彦一族と呼ばれて、ある海辺の村の昔話の中に語り継がれている」
それを踏まえて、ヘドラーが作戦のプレゼンを行う。
ヘドラー「海彦一族は伝説ではありません、海を奪われて絶滅してしまったのです」

ヘドラー「しかし、ごく少数のものは陸に上がり、今日まで生き残っております」
ヘドリアン「ほっほう、どこに、どれくらい」
ヘドラー「その者たちすらも、もはや自分たちが海彦一族であることを知らないのです」
ヘドリアン「……」
……
本人も知らないことを、なんでお前が知ってるんだーっ!! と、突っ込みたいのは山々のヘドリアンであったが、ヘドラーの顔を立てて我慢する。
ただ、実際、人間ですら知らないそんな一族のことを、どうやってヘドラーが知ったのか、それが今回のストーリーの最大の謎である。
どうでもいいが、悪の役者さんたち、撮影中、ふと我に返って、お互いの珍妙な格好に思わず吹き出しそうになったことが、一度や二度じゃないんだろうなぁ。
ヘドラー「だが、ご安心召され、その海彦一族が蘇る時が来たのです」
ヘドリアン「……」
誰も心配しとらんわっ!! と、全力で突っ込みたいのは山々だったが、ヘドラーの顔を立てて黙っているヘドリアンであった。
ともあれ、既にヘドラーが、カイガラーと言う、海彦一族を覚醒させることの出来るベーダー怪人を製造していたので、ヘドリアン、なんだかよく分からないが、その作戦にゴーサインを出すのだった。
ちなみに、この海彦一族の基本設定、マジョリティーに虐げられ、住処を奪われた先住民族の反撃と言う、沖縄出身の上原さんらしいプロット……だと思ったら、これ、上原さんじゃなくて曽田さんが書いてるんだった。
やべえ、もう少しで赤っ恥掻くところだったぜい。
夜、アスレチッククラブのプールに勝手に入り込み、泳いでいる青年がいた。
それは、海原洋太郎と言って、あきらの同級生だった。
あきら、洋太郎を仲間に紹介しようとするが、

あきら「海原与太郎……あっ、また間違えちゃった」
言いかけて、思わず口に手をやるあきらが激烈に可愛いのである!!
洋太郎「いいよ、誰も洋太郎なんて呼んでくれやしないんだから……でも本当は海のように広く大きな海原洋太郎です!!」
青梅「あ、はは……」
声を張り上げて元気よく自己紹介する洋太郎に、困ったような笑みを浮かべる青梅。
あきら「小学生の時の同級生よ」
赤城「一体、何が目的なんだい」
洋太郎「ああ、水泳の練習を……俺、泳げないと困るんだ」
赤城たちは、洋太郎がベーダーの一味ではないかと警戒の目で見ていたが、

洋太郎「あんまりみんながバカにするもんだから、つい口が滑っちゃって、彼女と一緒に泳ぐところを見せてやるって言ってしまったんだ」
青梅「カナヅチの癖に?」
洋太郎は、見た目どおりの、正真正銘の負け組青年なのだった。
青梅「それで彼女の方は?」
洋太郎「うう……はっ」
あきら「えっ?」
洋太郎「そうだ、あきらちゃん!!」
洋太郎、身の程知らずにも、あきらに彼女の役をして欲しいと言い出す。
そんなある日、川原で子供たちをジョギングさせていた体育教師・海野が、カイガラーの吹く笛の音を聞くと、

足や背中にひれが生え、指の間には水掻きが出来、顔には鱗が生えて、中途半端な半魚人のような姿になる。
海野「助けてくれ……」
海野を演じるのは毎度お馴染み、高橋利道さん。
そう、彼こそ、ヘドラーの言う、自分が海彦一族であることを忘れて陸上人と同化していた人間だったのである。
子供たちは助けるどころか、恐れをなしてとっとと逃げ出す。
続いて、千恵子たちと話していた内海と言う警官が、海彦一族の姿になる。

内海「うわぁあああーっ」
千恵子「きゃああっ」
めっちゃ楽しそうな驚き顔で逃げ出す千恵子。
しっかし、みんな薄情だなぁ……まさに人情紙風船。
ついで、酒屋の店員が海彦一族となる。
何でも知ってるアイシーは、海彦一族のことは勿論、彼らが蘇りつつあることを逸早く見抜き、赤城たちに調査させる。
内海巡査が飛び込んだ川のそばに千恵子たちが立ち、それを大勢の野次馬が見物している。

青梅「小学校の先生は海野」
黄山「酒屋さんは海部」
緑川「お巡りさんは内海」
赤城「みんな苗字に海と言う字が付いている」
と言うのだが、海彦一族が存在していたのは、少なくとも数百年以上前のことだと思われるのに、明治時代まではなかった(庶民の)苗字に、その痕跡が残っていると言うのは非論理的である。
それに、彼らが海彦一族なら、彼らの親や兄弟だって一族の筈なのに、これ以外には海彦一族が出て来ないと言うのも理屈に合わない。
赤城「おい、待てよ、そう言えばあいつも……」
赤城たちは、つい最近出会った怪しい男の名前にも「海」が入っていたことを思い出す。
その頃、洋太郎はあきらと一緒に小さな池でボート遊びに興じていた。

あきら「うふふ」
幼馴染と言うだけで、イヤな顔ひとつ見せずに付き合ってくれる、女神のようなあきらタン。
生まれてこの方一度も良いことのなかった洋太郎が、世界をその手に握ったように勝ち誇った笑いを浮かべたのも無理はなかった。

洋太郎「このまま南の海に行けたらいいのに」
あきら「南の海?」
洋太郎「俺の夢なのさ、いつかお金をためて誰もいないエメラルドグリーンの南の海へ行くんだ」
あきら「どうして?」
洋太郎「き、嫌いなんだ、人間の世界が……なんでも競争だろ、俺は不器用だから人の半分も仕事が出来ない、それにガールフレンドを見つけるのも競争」
あきら「あら、あたしじゃだめなの?」 洋太郎の嘆きに、まるでエロビデオの導入部みたいな都合の良い台詞を口にするあきらタン。
念のため、言っときますが、現実に、こんな菩薩様のような女性は実在しません。
もっとも、あくまでガールフレンドであって、恋人になるとは言ってないんだけどね。

洋太郎「ま、まさか」
あきら「本気よ、だから南の海に行きたいなんて言わないで、ね、頑張りましょうよ」
洋太郎「う? うん……あっはぁ、そうだなぁ」
嬉しさのあまり一瞬魂が抜けていた洋太郎、優しいあきらの励ましに夢から醒めたように頷く。
思うに、戦隊シリーズの歴代ヒロインの中で、あきらほど母性愛に溢れた女性はいないのではあるまいか。
お姉さんキャラと言うより、お母さんキャラだよね。
だが、有頂天になった洋太郎、ここからジェットコースターのように一気に奈落の底へ突き落とされることになる。
例の笛の音が聞こえて来たかと思うと、洋太郎の体が海彦一族仕様に変わる。
カイガラー「デンジピンクを殺せ」
だが、洋太郎は海彦一族としても役立たずで、バランスを崩して水に落ちてしまう。
おまけに泳げないらしい。

あきら「手に捕まって!!」
ここで我々は、かなり貴重なあきらのジーパンに包まれたヒップを目撃することになる。
いやぁ、ジーパン越しにも、その途方もない巨尻ぶりが手に取るように分かりますなぁ。

あきら「早く、早く、あっ!!」

あきら「ああーっ!!」
さらに、近くに潜んでいた海彦一族に引っ張られ、自らも池にダイブするという、小泉さん的には、たぶん、一世一代の覚悟が必要だったと思われる、激しいアクションを披露する。
つまり、珍しくジーパンを履いていたのは、このシーンに備えてのチョイスだったのだ。
また、水中のあきらが、お尻を撫で回されるようなカットも見えるが、本人かどうか不明だし、あまりはっきりとは見えない。
そこへ他の仲間が駆けつけ、あきらを水中から助け、ベーダーや海彦一族を撃退する。
だが、洋太郎はベーダーに連れ去られてしまう。
CM後、洋太郎が海彦一族のひとりだと知らされ、動揺するあきら。
ただ、
あきら「あの優しい、人の良い洋太郎君に限って……」
と言ってるけど、海彦一族は別に悪魔の集団ではなく、カイガラーの笛に操られて悪事を働いているだけなので、人柄は関係ないと思うんだけどね。
その洋太郎、別の場所で、泳ぎの特訓をさせられていた。

ヘドラー「いくらカナヅチとは言え、海彦一族になっても横泳ぎしか出来ぬとは呆れた奴だ」
カイガラー「あいつさえしっかりしてれば、デンジピンクを殺せたものを……」
悪の人たちからも見放される洋太郎、戦隊シリーズ通しても、三本の指が入るトホホキャラであったが、管理人、まるっきり自分を見ているようで物凄い親近感を覚えるのだった。
つーか、あきらという幼馴染がいる分、洋太郎の方がマシじゃねえかっ!!
なんなんだ、俺は……
ま、それはともかく、カイガラーは、洋太郎を除く海彦一族に臨海コンビナートのテロ攻撃を命じるが、

三人はデンジマンが何もしてないのに勝手に死に、揃って岸に打ち上げられる。
三人(うう、みじめだぁ、あんまりだぁ……) ちゃんとした人生を送っていたのに、ヘドラーのしょうもない思い付きで生まれもつかぬ体にされた挙句、こんな間抜けな死に様をさらし、ついでにテロリストの汚名まで着せられた彼らこそ、戦隊シリーズ史上、もっとも運の悪い被害者だと言えるだろう。合掌。

青梅「コンビナートを襲撃する途中だったようだが……どうして死んじまったんだ?」
黄山「海彦一族が生きていたと言われる時代は、海も空気もとても綺麗だった、きっとこの汚れた世界では生きていくことが出来なかったんだよ」
青梅の疑問に、科学者の黄山が推測を述べる。
現代文明の負の遺産が、逆に人類を助ける結果になったという皮肉なオチであった。
ただ、海彦になる前は、三人ともその汚れた世界でしっかり生きていたのに、海彦一族になったからって死んじゃうと言うのはねえ……
あと、改めて見ると、黄山の眉毛、ありえないほど太い。
なんか、コントをやってる時のウッチャンみたいな顔になってる。

ヘドラー「バカモノ、何たる失敗の連続、ワシはヘドリアン女王様に合わせる顔がない」
度重なる失態にヘドラーは激怒するが、そもそもこの作戦自体、あまり意味がなかったような気がする。
何しろ海彦一族はたった三人しかいないのだから、いくら海中を自在に動けるにしても、大した戦力にはならなかっただろう。
コンビナートの破壊なんて、ベーダーの通常戦力で十分やれることだしね。
カイガラー「まだ、まだ一匹、海彦一族は残っております」
ヘドラー「あんな落ちこぼれ、何が出来る」
カイガラー「お待ちください」
憤然と立ち去ろうとするヘドラーを呼び止め、カイガラーは何やらごにょごにょ話していたが、やがて、ごく少数の見張りを残して、全員その場から引き揚げてしまう。
チャンスとばかりに洋太郎は逃げ出すが、それは、わざと彼を逃がしてあきらをここにおびき出すための、カイガラーの策略であった。
洋太郎は罠とも知らず、道路わきの公衆電話からあきらに助けを求める。

あきら「洋太郎君!!」
洋太郎「俺はこのままじゃ死んでしまう、あきらちゃん、やっぱり俺は南の海へ行きたいんだ」
あきら「洋太郎君……」
洋太郎「あきらちゃん!!」
あきら「分かったわ、すぐ行く、頑張るのよ」
あきら、受話器を置くと、すぐに洋太郎の元へ向かおうとするが、険しい面持ちの赤城たちが通せんぼするように立ち塞がる。

赤城「ベーダーの罠かも知れん」
あきら「そんな」
緑川「彼がプールに来たのも、君を狙うためだったのかもしれないんだぞ」
洋太郎のことをよく知らない赤城たちは、容易にあきらの言葉を信じようとしない。
あきら、海彦一族は、本来、優しくて平和を愛する人たちだったと言うアイシーの言葉を引き合いに出し、
あきら「洋太郎君は子供のときから孤独な人だった、そして今は世界で一番孤独な人なのよ、世界で一人しかいない海彦一族、だから、私は行く!!」
そう叫ぶと、仲間を打ち捨てて、たった一人で出撃する。
もっとも、洋太郎が海彦一族の最後の一人……とは言えないと思うんだけどね。
だって、カイガラーは、日本中でその笛を吹いて、海彦一族を洗い出したわけじゃないのだし、日本ではなく、海外に逃げ延びた海彦一族だっていると思うんだよね。
つーか、うっかり見過ごしてしまっていたが、そもそも、カイガラーはどうやって海野や内海たちが、海彦一族の生き残りだと言うことを突き止めたのだろう?
名前に「海」が入ってる人間なんて、掃いて捨てるほどいるんだから、特定する手掛かりにはなるまい。
それはともかく、近くの森の中で再会したあきらと洋太郎に、待ち伏せしていた戦闘員たちがマシンガンを撃ちまくる。
あきら、超人的な身体能力で銃弾の雨をかいくぐると、マシンガンを奪って撃ち返す。
それでも、足元に威嚇射撃するだけなのが、またしてもあきらの天使のように度外れた優しさを表現しているように思う。
あきら、銃撃をさけるため、洋太郎の体に飛びつくようにして斜面を転がり落ちるのだが、実際にやっているのは、当然、男性スタントである。
それは仕方ないが、

スタントが、衣装はあきらのものをつけながら、肝心のパンツはガラモノの男性用トランクス(?)と言うのは、許しがたい手抜きであろう。
こういうのを、「仏作って魂を入れず」と言うのである。
もっとも、男性スタントが女性用パンツを履いたところで、こっちは全然嬉しくないのだが。
無駄に長い捜索シーンのあと、カイガラーたちは地面に洋太郎の足跡を複数発見するが、

ブルー「よし、もう一丁、よし、よっこらしょ!! くぅ、楽しい~」
それは、いつの間にか現場にやって来ていたデンジマンが、敵の目を誤魔化すために、特製スタンパーでつけたニセの足跡だった。
その隙に、あきらは森を出て、洋太郎を励ましながら砂丘を歩いていた。
ロケ地は、毎度お馴染み、中田島砂丘である。

洋太郎「もうダメだ」
あきら「何言ってるの、ここまで来て、しっかりして」
洋太郎「こんな姿で生きていたって仕方ないじゃないか」
絶望の呻き声を上げて、その場に倒れ込む洋太郎。
く~、いつもながら、この見えそうで見えない絶妙のアングルがたまりません!!
洋太郎も、あきらのパンツを見せて貰えば、たちまち生きる気力を取り戻したであろうに……
砂地に身を投げ出してむせび泣く洋太郎を、あきらがなおも力づける。

あきら「その姿を恥じることはないわ、海彦一族は綺麗な海を愛し、何よりも平和を愛した人たちなのよ」
洋太郎「……」

あきら「私たちは、その一番大切なもののために戦っているの……だから洋太郎君、君には生きていてもらいたい」
カールした髪が頬にかかって、お姫様のようになったあきらが可愛いのである!!

洋太郎「あきらちゃん!!」
感極まった洋太郎、あろうことか、あきらの胸に顔を埋めるようにして抱きつく、
あきら「元気出すのよ」
だいじょうぶです。
これで元気が出ない男性は、この世に存在しませんからっ!! それにしても、あきらの無辺際の優しさは、ほとんど国宝級である。

洋太郎に抱かれながら(……って書くと、すげーいやらしい)、不意に鋭い視線を砂丘の彼方に放つあきら。
あきら「ほら、聞いて、波の音よ!!」
洋太郎はあきらに助けられながら、何とか歩き続け、遂に広々とした海に辿り着く。
洋太郎「海、海だーっ!!」
故郷を目の前にして、洋太郎の目には希望が蘇る。
そして、調子こいて、白いワンピースドレスを着たあきらと二人、波打ち際で楽しそうにはしゃいでいる姿を思い浮かべる。

ほんの数秒のシーンなのだが、ふわりとジャンプしたあきらがいかにも楽しそうで、見ているだけで幸せに気持ちにさせてくれる。
さらに、

ほんの一瞬だが、ワキや横乳までサービスしてくれる!!
そりゃ、こんなもん思い浮かべたら、

洋太郎「……」
さっきまで死ぬとか言って奴も、こんなハッピーな顔になりますわな。
と、彼らのゆくてに、カイガラーと戦闘員たちがあらわれる。
カイガラー「海彦一族、最期だ!!」
あきら「海彦一族は命に替えても守って見せるわ」
いや、なんで海彦一族を滅ぼさにゃならんのだ?
目的はあくまでデンジマン抹殺だった筈だが……
この後、長い長いラス殺陣となり、カイガラーを倒して事件解決。
だが、カイガラーが死んでも、「仮面ライダー」のように都合よく洋太郎の姿が元に戻ることはなく、洋太郎はかねがね言っていたように、暮らしにくい日本を離れ、憧れの南の海へ向かって泳ぎ出すのだった。
あきらももう、洋太郎を止めようとはしなかった。

あきら「これで良い、これで良いのよね……洋太郎君は夢だった南の海へ向かっているんですもの。綺麗な南の海なら、あの人も生きていける」
それに応える形で、
洋太郎「さよならニッポン、さよならあきらちゃん、俺は今初めて自由になったんだ。のんびり気楽に南の海で暮らすさ。遠く南の海から地球の平和を祈ってるよ~」
洋太郎の、いまひとつ真剣味の感じられない別れの言葉が響く。
こうして、海彦一族になったとは言え、登場人物が本当に日本を捨てて別世界に行ってしまうという、なかなかショッキングな結末で物語は幕を閉じる。
以上、歴史の狭間に埋もれた一族を復活させて人類に復讐させようと思ったら、4人しかいなかったので困ったという、スケールが壮大なのか矮小なのか、良く分からない作品であったが、あきらの有形無形の魅力を存分に堪能できるという点では、大満足の一本であった。
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