第39話「あゝ嵐!死す!」(1972年12月29日)
冒頭、前回のあらすじが簡単に紹介されるのだが、源十郎に化けていた魔神斎がカゲリ、ツユハを左右に抱えてジャンプする、前回の本編にはなかったシーンがあって、

その際、右側のツユハが、明らかにタイミングを間違えてひとりで先に飛んでいるのが、いかにも新人の佐伯さんらしくて可愛いと思いました。

さて本編、もうもうと蒸気の吹き上げる地獄谷の噴火口の上に、姉妹仲良く縛られているカゲリとツユハ。
一方、瀕死の骸骨丸のたっての願いを聞き入れ、今まさに謎の剣士・月ノ輪が、その正体をハヤテたちにも見せようとしていた。

4人の視線が集まる中、月ノ輪は変身を解きながら空中で一回転して骸骨丸の前に着地する。
ハヤテたちは急いでその人物に駆け寄り、素顔を確かめるが、
骸骨丸「やっぱり思ったとおりだ……」
そこに立っていたのは、なんと、ハヤテに瓜二つの若者であった。
タツマキ「あなたは?」
ツムジ「ハヤテさん! 二人いる……」
ハヤテ「……」
思わず二人の顔を見比べるとタツマキとツムジであったが、ハヤテもさすがに自分そっくりの顔を前にして、動揺を隠せない。

フユテ「俺はハヤテと双子の兄、フユテだ」
ハヤテ「兄さん? 俺に兄さんがいたのか」
フユテ「うん、悪魔道人を追って懐かしい日本の土を踏んだ、見ろ、ハヤテ、お前が魔神斎と争って受けた腕の傷……双子の俺たちは一方が傷付けば一方も傷付く宿命なのだ」
タツマキ「なるほど、不思議なもんでござるの」
自分の腕をまくってハヤテと同じ場所に出来た刀傷を見せ、自分が紛れもないハヤテの双子の兄だと示すフユテ。
しかし、いきなり何の伏線もなしに主人公の双子の兄を登場させるのは、さすがに乱暴な話である。
さらに、
ハヤテ「兄さん、これからは晴れて兄弟として悪と戦おう!」
フユテ「勿論だ」
その生い立ちや、何故ハヤテと離れて異国にいたのか、どうやって化身忍者になったのか、ハヤテたちがその点についてまったく聞こうとしないのは、いくらなんでも人に興味がなさ過ぎである。
あと、双子だからって同じところに傷が出来るって言うけど、今までそんな描写、一度もなかったぞ。
どうせすぐ二人はこの後すぐ合体してしまうのだから、最初から要らない設定だったように思う。
ちなみにフユテの声は、月ノ輪と同じく、市川治さんがあてている。
それはともかく、ここで意外なことが起きる。死んだと思われていた骸骨丸がむくっと起き上がったのだ。

フユテ「死ななかったのか」
骸骨丸「バカめ、この骸骨丸は不死身の忍者と知れ! まんまと俺の言葉を真に受けて、正体を見せたな月ノ輪、いや、ハヤテの兄フユテ、正体が分かればおそるるに足らず」
そう、骸骨丸、死んだふりをしていただけだったのだ。
でも、正体が分かったからって、なんで「おそそるに足らず」になるのか、良く分からないのである。
嵐だって、その正体がハヤテだと第1話から分かっているにも拘らず、ずーっと負け続けてるんだから。
骸骨丸は下忍たちを呼び寄せるが、ハヤテはその場を兄とタツマキに任せ、自分は天の巻を持って地獄谷へ向かう。
魔神斎も、必死になって下忍を差し向けるが、無論、ハヤテの敵ではなく時間稼ぎにしかならない。
いや、魔神斎はハヤテを地獄谷に連れ出して天の巻とカゲリたちを交換し、ついでにハヤテを殺そうとしているのだから、なんでわざわざ下忍を差し向けて、それを妨害せねばなせないのだろう?
それに、ハヤテの到着を下手に遅らせると、フユテたちが骸骨丸を倒してハヤテの加勢に駆けつけてしまうかもしれないではないか。
かと言って、この期に及んで下忍たちがハヤテを倒すなどと言う甘い夢を抱く魔神斎ではあるまいに。
今回は文字通り時間稼ぎのようにアクションシーンが多く、タツマキとツムジは火薬を使って下忍たちを殲滅すると、ついで、月ノ輪と骸骨丸の一騎打ちとなる。
奮戦する骸骨丸であったが、やはり月ノ輪には勝てず、刀を弾かれ勝負あり。
だが、往生際が悪過ぎる骸骨丸は、

骸骨丸「俺を殺してみろ、魔神斎様の秘密が分からなくなるぞ」
月ノ輪「魔神斎の秘密だと?」
骸骨丸「どうだ、取り引きをせぬか?」
月ノ輪「……」
骸骨丸「俺を見逃す代わりに魔神斎の秘密を教えてやる」
月ノ輪「わかった、命は助ける。言え、魔神斎の秘密を」
なんと、自分の命と引き換えに、首領の秘密を売ると言う、「悪の組織」の大幹部にあるまじき醜行に走る。
まあ、特撮番組において、幹部が首領を裏切るケースはままあるが、これだけみじめったらしくせせこましい裏切りの仕方も、なかなかあるまい。
……
てかさ、
あんた不死身ちゃうの? さっき自分で豪語してたやん。
だったら月ノ輪にいくら斬られても平気だと思うのだが。
あと、特撮あるあるじゃないけど、普段はテレポーテーション能力が使えるのに、いざとなったらそれを使って逃げようとしないのも相当に変だよね。
それはさておき、月ノ輪も魔神斎の秘密と聞いて心が動き、骸骨丸の提案を容れようとするが、そんな卑劣な行為をヒーローが許しても、悪がお許しにならなかった。
突然、大地が揺れ出したかと思うと、

悪魔道人「ええい、裏切り者、貴様の不死身の魂は消え、地獄の業火で燃え尽くしてやる、ううっ」
大魔神像の中の悪魔道人が両手をこねくりまわすと、水鏡が真っ赤に燃え、その炎が骸骨丸の足元から噴き上げてくる。
骸骨丸「うわっ、燃える」 「悪の組織」の大幹部の最期の言葉としては、最底辺に属する情けない台詞を残して焼死する骸骨丸。
しかも仲間のネタを売って命乞いしようとしたところを仲間に処刑されると言う、最低の死に方であった。
ただ、骸骨丸はあくまで魔神斎の子飼いの部下なのだから、その不死身特権を異国の協力者である悪魔道人が剥奪するというのは、なんとなく腑に落ちない。
ついでに、骸骨丸の売ろうとした魔神斎の秘密だが、結局なんだったのだろう?
まさか、骸骨丸が、魔神斎が機械仕掛けの人形だと知っていたとは思えないので、苦し紛れのブラフだった可能性が高い。
月ノ輪「おのれ、悪魔道人」
悪魔道人「月ノ輪、貴様もやがて死ぬ、ハヤテを殺せば、貴様も死ぬ運命……見てるがいい、今までの恨み晴らしてやる」

月ノ輪「俺たち兄弟の秘密を知られた。
ハヤテが狙われる!」
いや、それは第1話からずーっと狙われてると思うんですが……
色々あって、ハヤテはやっと地獄谷の魔神斎の元に辿り着く。
ハヤテ「カゲリ、ツユハの姉妹は何処だ?」
魔神斎「その前に、まず忍者大秘巻・天の巻は?」
ハヤテ「ここにある!」
魔神斎「天の巻を渡すが良い、姉妹は返してやる」
ハヤテ「信じられるもんか」
こともなげに言う魔神斎であったが、ハヤテも「はいそうですか」と渡せる筈がない。

魔神斎「ハヤテよ、この魔神斎、血車党300の首領だ、信じねば天の巻を持って帰るがよい」
ハヤテ「じゃ、さよなら」
魔神斎「ああんっ、ちょっと待ってぇえええーっ!」 じゃなくて、
ハヤテ「忍者大秘巻、いかに大事な品であろうとも、人の命には換えられん、受け取れ!」
ハヤテ、やむなく天の巻を魔神斎に向けて放り投げる。
しかし、血車党300って言ってるけど、既にハヤテとの戦いでかなりの人数が倒されているから、実際はほとんど残ってなかったんじゃないかなぁ?
それはともかく、実にあっさり天の巻をゲットした魔神斎は、
魔神斎(あれ、もっと早くこうすりゃ良かったのでわ?) この大詰めに来て、やっとそのことに気付いてた。
そうなのである、今回の人質がハヤテたちとはほぼ初対面の人間であったことが示しているように、正義のヒーローを標榜しているハヤテたちには、人質との親疎は関係なく、それが誰であろうと、天の巻と引き換えに命が助かるなら、差し出さざるを得なかった筈なのである。
つまり、毎回適当な人間を攫って人質にしてハヤテたちを脅せば、(前々回のように)一度や二度は失敗しても、いつかは必ず天の巻をゲット出来ていたに違いないのである。
閑話休題、念願の天の巻を手に入れてご満悦の魔神斎にハヤテが鋭く問い掛ける。
ハヤテ「魔神斎、姉妹は?」
魔神斎「噴火口の底を見るが良い」
ハヤテ「噴火口?」

ハヤテ「おっ」
ハヤテが言われたとおり噴火口の淵に立って底を見ると、

ぐらぐらと煮え滾るマグマの上に突き出た岩棚の上に、カゲリたちが縛られている姿が見えた。
ハヤテ「カゲリさん、ツユハさん、無事かーっ?」
魔神斎「ハヤテ、助けに下りて行け」
ハヤテ、やむなく縄梯子を下ろして二人のいるところまで降りようとするが、すかさず魔神斎が雷を発して縄梯子を焼き切り、ハヤテは叫びながらまっさかさまに溶岩の中に落ちていく。
CM後、どう見ても溶岩の海に落ちたとしか思えないハヤテであったが、割と無事であった。
ハヤテ、二人の縄を切って意識を取り戻させるが、

魔神斎「はっはっはっはっ、ハヤテ、どうやってその中から出る? うん?」
噴火口を見下ろしていた魔神斎が、愉しそうに問い掛ける。
ハヤテ「魔神斎、騙したなーっ?」
魔神斎「騙しはせぬ、姉妹は返した。しかし、連れて行けとは言わぬ筈だ」 ……
セ、セコい、いくらなんでもセコ過ぎる。
自分も言ってるように、仮にも300人の組織の頂点に立つ人間なのだから、この屁理屈としか言いようのない言い草は是非やめて頂きたかった。
まだしも、
魔神斎「バカめ、忍者と忍者の戦いは騙しあい、騙される方が悪いのよ」
くらいのことは嘯いて欲しかったところだ。

ハヤテ「諦めるな、最後の最後まで希望を持つんだ」
カゲリ「でも、この底からどうやって?」
カゲリの現実的な質問に、ハヤテはとりあえず嵐に変身すると、

嵐「忍法、空駆けの術!」
二人の体を左右に抱いて、一気に噴火口の淵まで飛び上がろうとする。
ちなみに南城さんの声は、この変身シーンでの掛け声が最後となってしまう。
何故なら、この後、月ノ輪と合体した後は、人間の姿に戻っても声が市川治さんの吹き替えになってしまうからである。
魔神斎「逃がしてなるものか、魔神斎の雷を受けてみよ」
宿敵を倒す絶好の機会をむざむざ指を咥えて見逃す筈もなく、魔神斎、再び雷を落とし妨害する。
と、地獄谷の近くまで来ていた月ノ輪がその場に膝を突く。

タツマキ「どうなされた?」
月ノ輪「ハヤテが、嵐がやられている。早く行かなければ……頑張れ、弟よ」
タツマキ(めんどくせえ兄弟だなぁ……) 今までそんな設定がなくて、ほんとに良かったと心から思うタツマキであったが、嘘である。
嘘であるが、ウザい設定なのはほんとである。
ストーリーにも関係ないし。
雷を浴びて墜落しそうになった嵐であったが、なんとか岩肌に取り付き、なにはともあれカゲリたちを先に逃がす。
だが、二人を噴火口の上に押し上げた直後、再び魔神斎が雷を放ち、嵐は遂に噴火口の中に落ちていく。

嵐「どわーっ!」
カゲリ「ああっ!」
……
やっぱり菊さんは綺麗だなっと。
ちなみにこの作品を最初見たときは、まだ「魔女先生」を知らなかったのだが、菊さんの魅力がまったく分からず、もっぱらツユハの佐伯さんのことしか印象に残らなかったのだから、自分の鑑識眼のなさに呆れ返る思いである。
時を移さず、月ノ輪たちも駆けつけるが、

月ノ輪「弟の命が燃え尽きようとしている、しかし、双子の俺の生命力とひとつになれば……タツマキ、ツムジ、嵐は、弟は救って見せる」
月ノ輪、そう言うと、いきなり噴火口の中に身投げする。
でも、一方が怪我すると他方も同じところを怪我するのであれば、今、月ノ輪は全身大火傷を負って、とてもじゃないが落ち着いて喋れる状態じゃないと思うんだけどね。
だから、最初から、傷を共有するという設定なんかやめときゃ良かったんだ。
それはともかく、月ノ輪の自殺行為にしか見えない無謀な行動に、

タツマキ「月ノ輪殿!」
ツムジ「これで終わりだ、何もかも……」
さすがのタツマキたちも、絶望のあまり、その場に突っ伏せる。
カゲリ「私たちを助けようとなさったばかりに」
ツユハ「お二人とも亡くなってしまった……」
悲嘆に暮れ、その無事を祈ることしか出来ないタツマキたちに、魔神斎の部下が容赦なく斬りかかる。

カゲリ「とぉっ!」

さすが元アンドロ仮面の菊さん、岩の上から飛び降りて下忍を思いっきりぶっ飛ばすと言う、見事なアクションを決められる。
ちなみに、予告編では、

同じアクションのNGテイクが見られる。
着地に失敗して転んでしまっているが、その際、ほんの、ほんの一瞬だけ、菊さんの「素」の笑顔が見えるような気がするのである。
ごく僅かの時間だし、影になっているのではっきり見えないが、メイキング映像などのない昔の特撮においては、かなり貴重なカットではないかと思量する。
一方、嵐も月ノ輪も、溶岩の海の中でもがきながら、なおも原型を留めていた。

月ノ輪「弟よ、手を、手を伸ばせーっ!」
嵐「くっ、うう……」
月ノ輪の叫び声に、必死に左手を上方に伸ばし、月ノ輪の手を掴もうとする嵐。
そしてついに二人の手ががっちり組み合わさった瞬間、奇跡が起きる。
ナレ「嵐、月ノ輪の兄弟が合体すれば、二人の体内に蓄えられた不滅のエネルギーが作用する!!」 んだそうです。
しかし、ナレーションだけで奇跡を起こされてもねえ……
一方、タツマキたちは不甲斐なくも全員捕まり、木の杭に縛られて処刑の時を待っていた。
魔神斎の横には、珍しく屋外に出た悪魔道人の姿もあった。
タツマキ「見ておれ、必ずその二巻は取り返す」
ツムジ「正義が許さないんだ」
そんな状況でも鼻息の荒いタツマキたちであったが、当然ながら、悪魔道人たちはせせら笑うばかり。

悪魔道人「喚け、吠えろ、ふぁーはっはっはっはっ」
魔神斎「嵐なく、月ノ輪もなく……」
悪魔道人「さぁ、日本征服の出陣の血祭りに4人を殺せ!!」
そうなんだよねえ……忍者大秘巻にはあくまで日本各地の城のデータや抜け道などが記されているだけで、彼らはこれから、その城を一つ一つ落としていかねばならないんだよねえ。
なんか、気が遠くなりそうだが……
下忍たちが槍をツムジたちの目の前に構える。
ツムジ「嵐さーん!」
悪魔道人&魔神斎「ふぁっはっはっはっはっ」
嵐「はーっはっはっはっはっはっ」
悲鳴を上げるツムジに仲良く哄笑する二人であったが、そこに第三の高らかな笑い声が降って来る。
魔神斎「誰だ?」
悪魔道人「笑うのは誰だ?」
嵐「悪がはびこる限り、正義は不滅と知るが良い!」
悪魔道人「かっ……あの声は?」
ここで溶岩の中から嵐が飛び出してくる。
ナレ「合体した嵐と月ノ輪はさらに超能力を備えた新生・嵐として誕生したのである!」

嵐「嵐、見参!」
空中で一回転し、岩の上に立つニュー嵐。
もっとも、なにしろお金のない番組なので、生まれ変わったといっても、スーツなどは従来と全く同じである。
声も、池水さんのまま。

嵐「これを受けてみろ」
ただし、その戦闘能力は格段にアップしていて、金属製の筒のようなものを振るうと、

悪魔道人「あ゛あ゛あ゛あ゛……」
ビビビビビとオレンジ色のビームが発射され、悪魔道人の体を痙攣させる。
これが嵐の新武器の一つ、バトンなのである。
時代劇なのにバトンである!!
もっとも、さすがに劇中でその名前が呼ばれることはなかったと思うが。
ちなみにこのエネルギーの源は、危うく死に掛かったマグマのエネルギーを逆に吸収したものなのかもしれない。
悪魔道人もこの攻撃にはひとたまりもなく、崖を転がり落ちて爆死する。
あまりにあっけない最期であった。

タツマキ「嵐殿、魔神斎が逃げますぞ!!」
嵐に注意を促すタツマキであったが、その後ろのツユハちゃんが、とても九死に一生を得た直後とは思えぬ穏やかな笑みを浮かべているのが割りとツボである。
魔神斎、泡を食って空中に飛び上がるが、

嵐「血車党・魔神斎の最期だ! とぉりゃあああーっ!」
同じく飛び上がった嵐に斬られ、落下しながら爆発するが、

なんと、その正体がからくり仕掛けの人形、つまりロボットだったことが分かる。
まぁ、そこまでは良いのだが(註・ほんとは良くない)、
魔神斎「死ぬ、死ぬぅ~」 最後に、特撮ドラマ史上最低と思われる断末魔の呻き声を放ってしまい、その晩節を汚したのは残念だった。
衝撃の事実を知ったタツマキたちは、
ツムジ「魔神斎は機械人形だったのか」 一言で済ますな!! しかし、真面目な話、今まで何の伏線もなかったのに、首領の正体はロボットでした、てへっ!! では、さすがに公正取引委員会も許してくれないのではないかと思う。
ともあれ、強敵二人を矢継ぎ早に倒した嵐は、彼らの持っていた忍者大秘巻を回収し、

嵐「タツマキ、天地二巻は遂に取り戻したぞ!」
タツマキ「これで万々歳でございますのう」
ツムジ「西洋怪人は全滅だね」
夢にまで見た完全勝利に、思わず感動するタツマキたちであったが、
サタン「悪は滅びぬ」
突如、頭上からしゃがれた男の声が聞こえてくる。

サタン「魔神斎のからくり人形はサタンが使って動かし、悪魔道人すらもサタンの命令で働いていたに過ぎぬ。我はサタン、大魔王サタン!」
見上げれば、空に銀色の三角錐のような物体が底から炎を噴き上げながら飛んでいるではないか。
それを見たタツマキは、
タツマキ「さ、ツムジ、相手にしないで帰るぞ」
ツムジ「うん」
サタン「待ってぇええええっ!! 話だけでも聞いてっ!! 話だけで良いからっ!!」 と言うのは嘘だが、空を見上げているタツマキたちの顔が心底ウンザリしているように見えるのは事実である。
そう、これまた唐突だが、ラスボスの背後にはさらなる黒幕がいたと言う、バトル漫画ではありがちの展開となるのである。
サタンの船はそのままどっかの火山の噴火口の中にある、妖怪城と言うアジトに降下する。
で、そのサタンだが、気になる俳優は、

サタン「サタンが住む妖怪城を根城に、日本中を手に入れてやる。見ておれ、見ておれよ。あっははははははっ……」
……
誰、いま、
「またか」って言ったの?
まあ、自分もちょっと思ったんだけど、死神博士の天本さんなのだった。
しかし、これだけ金髪の似合わない役者もいないだろうという天本さんに、堂々と金髪のカツラを被せるとは、当時のスタッフのイヤガラセも、なかなか堂に入ったものである。
ラスト、ハヤテたちにひとつの別れが訪れる。

タツマキ「必ず伊賀の里に届けます」
ハヤテ「頼むぞ、ツムジ、良いか、タツマキの言うことを良く聞いて立派な大人になるんだ」
ツムジ「きっとまた会えるね」
ハヤテ「そんな顔するな、会えるとも、大魔王サンタを倒したら伊賀の里に会いに行く」
ツムジ「ほんとだよ、ほんとだね」
タツマキ「その日を首を長くして待っておりますぞ」
そう、タツマキとツムジが、忍者大秘巻を届けるため伊賀の里に帰ることになるのである。
もっとも、タツマキはこのまま物語からフェードアウトしてしまう(最終回にちょこっと出る)が、ツムジはすぐに戻ってきてハヤテと一緒に戦うことになる。
よって、「魔女先生」で共演していた菊さんと牧さんは、この番組ではがっちり絡むことがないまま終わってしまうのである。
ちなみに、前述のように、このシーンからハヤテの声が、南城さんではなく、月ノ輪の声を演じていた市川治さんの吹き替えに変わる。
もともと南城さんは発声に問題があったというが、当時、変身時の掛け声などで喉を酷使して痛めてしまい、やむをえず池水さんや市川さんが吹き替えることになったらしい。
以上、新年一発目から大魔王サタン編をスタートさせるため、年内に無理やり血車党編を終わらせたかったのだろうが、さすがにちょっと急ぎ足過ぎた感のある、血車党編最終エピソードであった。
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