第4話「涙の敵中突破 」(1977年2月23日)
舞台はとある農村。
沢村誠と言う朴訥な青年が、農道をトラクターで走っていると、

草むらの中からジージャン姿の若い女性が出てきたかと思うと、道の真ん中にぶっ倒れる。
無論、我らがみどりさんであった。

誠「どうしただ」
みどり(いや~ん) 誠ちゃん、慌ててトラクターから降りてみどりさんの体を抱き起こすが、その際、その汚れなき乳を思いっきり揉んでしまう。
特撮ヒロインにはありがちな受難であった。

誠「しっかりしろ、どうしただ? ……凄い熱だ」
ぐったりしているみどりさんの額に手を当て、その熱さに驚くと同時に、村ではとんと見掛けたことのないみどりさんの都会的な美しさに、思わず目を奪われる誠であった。
その後、誠がトラクターの荷台にみどりさんを乗せて自宅までお持ち帰りすると、間の悪いことに、このあたり一帯を縄張りにしている鬼勘一家の連中が来ていた。

誠「何の用だ、鬼勘」
鬼勘「相変わらず威勢がいいな、誠、いやな、てめえがちっとも博打場に来てくれねえんで、鬼勘一家の鬼の勘三様が自らご案内申し上げようと思ってな」
誠「よしてくれ、俺は村の衆のようなわけにはいかねえ、インチキ博打で負けて土地を取られるのはごめんだ」
よほどキモが据わっているのか、誠はヤクザたちを相手に堂々と渡り合う。
と、鬼勘がめざとくみどりさんに気付き、
鬼勘「誠、おめえ、後ろにおもしれえ荷物乗っけてるじゃねえか」
誠「この人は俺とは関係ねえ、それに病気なんだ、手はださねえでくれっ!!」
鬼勘「引き摺り下ろせ」
血も涙もない鬼勘は、相手が病人だろうとお構いなしに手下に命じ、みどりさんのジーパンを引き摺り下ろしたいのは山々であったが、自重して、荷台から引き摺り下ろさせる。

次のシーンでは、神社の境内に場所を変え、みどりさんが縛られて木に吊るされ、そのかたわらで誠がヤクザたちから袋叩きにされているという、およそちびっ子向けアクションドラマとは思えない生々しい修羅場が展開している。
いやぁ、長い髪の女性が縛られて吊るされるって、実にエロティックだよね。
みどりさん的には大迷惑だが、大城さん的にはなかなか美味しかったのではあるまいか。
そもそも昭和の特撮ヒロインなんてものは、悪にいたずら、もとい、いたぶられてナンボの存在だからね。
誠「やめろ、病人に何する気だ」
鬼勘「誠、てめえが俺の言うことを聞くって言うまで女は殴り続けるぜ」

みどり「あっ、ああーっ!!」
誠「やめろ!!」
木刀で、その張りのある可愛いお尻をペンペンされるみどりさん。
……
管理人が今、何を考えているか、読者の皆様には説明の必要はありますまい。
そこに例によって早川があらわれ、

鬼勘「なんだ、てめえは」
早川「泣く子も黙る鬼勘一家の鬼の勘三、なるほど、鬼が見てもその顔はカンにさわらぁ、はっはっはっ、だから鬼勘か」
せせら笑いながら鬼勘を挑発するが、

鬼勘「なんだとぉ」
上っ張りを脱いだ鬼勘の胸に、「D」の形をしたマークがあるのを見て、俄かに真剣な顔つきになり、

早川(また、あのマークだ……)
今まで倒して来た三人のボスの胸にも、同じマークがあったことを思い出す。
早川、軽く下っ端を片付けると、長ドスを投げて、みどりさんを吊るしているロープを切る。
と、派手な緑色の服を着た、中国人風の男があらわれ、ガムでも噛んでいるのか、くちゃくちゃと口を動かす。
誠「気をつけろ、そいつは凄い拳法使うだ」
早川「知っている、鬼勘一家の用心棒、ワルツ・リー、日本じゃ二番目の拳法使い」
鬼勘「二番目だと、若造、このワルツ・リーより腕の立つ男が日本にいるってのかい」
と言うわけで、毎度お馴染み技比べの時間となる。
先行のワルツ・リー、気合一閃、手刀で石灯籠の一部を「ダルマ落とし」のように輪切りにして打ち抜く。

鬼勘「見たか、今のがワルツ・リーの技だ」
早川、ギターを木の枝に引っ掛けると、同じ石灯籠に、目にも留まらぬパンチとキックを浴びせ、バラバラに分解し、

それらを上下さかさまに積み上げると言う、珍技を披露する。
これにはさすがのワルツ・リーも鬼勘も、唖然として声も出ない。
早川「ふーっ、ふっ、これが俺の逆さ灯篭さ」
さらに、指を鳴らすと、

逆さの状態のまま、石灯籠が真っ二つに裂けると言う、おまけつき。
珍芸対決の中では屈指のビジュアルだが、別の回で、神社の扁額や石碑を損壊した用心棒に対し、その神も恐れぬ不遜な行為を非難したり、それを元通りにしたりしている早川の神仏に対する敬虔な態度と、矛盾しているようにも見える。
ともあれ、早川の神技に恐れをなしたのか、鬼勘たちはひとまず引き揚げる。
早川たちはみどりさんを誠の家に連れて行き、とりあえず布団に寝かせる。

誠「村の衆はみんな鬼勘に騙されて田地田畑取り上げられた家が三十軒もあるだ」
早川(時代劇かっ!!) と言うのは嘘だが、今回のストーリーがほとんど時代劇の感覚で作られているのは事実である。
誠「だが俺は負けねえ、小さな痩せた土地だが、どんな畑よりも立派な畑にしてみせるだ」
早川「ほぉ」
早川が身支度をするのを見て、
誠「行っちゃうだか」
早川「はは、みどりさんをよろしく頼みます、あ、それから僕が来たことは誰にも言わないでください」
早川はそう釘を差して誠の家を出て行く。
しかし、「誰にも」と言うが、誠がそんなことを話す相手はみどりさん以外にいないので、普通に「みどりさんには言わないで……」で良かったのでは?
鬼勘はまだ土地を持っている村人を博打場にしているお寺に集め、借金のかたに土地を明け渡せと脅す。
鬼勘はもう一度勝負して、勝ったら借金をチャラにしてやると持ち掛け、村人も応じるが、そこにあらわれたのが、黒一色の着流しに白い角帯を粋に締めた、博徒風の早川で、

早川「ああ、いけねえ、いけねえ、こんな博打をしちゃいけねえって、言ってるんだ!!」
壺ふりの対面に座ると、いきなり畳を跳ね上げ、

早川「ヒュウッ、チチチチ、やっぱりいかさまやってら」
床下に潜んだ男が、サイコロの目を細工するという、時代劇でお馴染みの古典的ないかさまをしていたことを暴き出す。

早川、片肌を脱いで大立ち回りを演じるが、これなんかほとんど「遠山の金さん」である。
だが、村人を人質に取られて動きを封じられたところを袋叩きにされ、村人と一緒に牢屋にぶちこまれてしまう。

みどり「空気がとっても美味しいわー」
誠「これ、俺の畑なんだ、誰も見向きもしなかった荒地を5年も掛かってこれまでにしただ……面白くねえかな、こんな話」
みどり「いいえ、誠さんには本当に何から何までお世話になってしまって……」
一方、そんなこととは知らず、だいぶ元気になったみどりは床を出て、誠のトラクターで近所を「ドライブ」していた。
みどり「あたし、明日になったら発ちますから」

誠「ダメだ、その体じゃまだ無理だ、ゆっくりしてってください」
みどりの言葉に、弾かれたように振り向いて引き止める誠ちゃん。
誠「俺、みどりさんみたいな人にそばにいて貰いてえんだ」
さらに、大胆にもプロポーズ同様の台詞を口にするが、

みどり「ええっ?」
良く聞こえなかったのか、みどりさんは怪訝な顔をするだけだった。
せっかくの、シリーズ中唯一のモテ期を迎えたと言うのに、それを棒に振ってしまった。
もし事件解決後も誠が生き長らえていれば、オイルマネーでウッシッシで玉の輿に乗るチャンスが訪れていたかもしれないのに、つくづくツイてないお方だ。
もっとも、早川のことが好きなみどりが、金に目が眩んで誠と結婚する筈がないのだが……
そこへ鬼勘の部下が来て、早川が捕まったことをみどりに教え、後先考えずに早川を助けに行ったところを、待ち伏せしていたワルツ・リーにボコボコにされる。
誠もそのヤクザにぶん殴られるが、ちょうどそこへ通り掛かったオサムに起こされる。
二人が一緒にみどりを探しに行くと、ズタボロになったみどりが倒れていた。

誠「みどりさん、しっかり」
みどり「う……」
顔にアザが出来、右手からは血が垂れていると言う、特撮ヒロインとしても、相当手ひどい目に遭ったみどりの痛々しい姿。
実際、ひとつのエピソードの中で、これだけ何度も悪に痛めつけられた特撮ヒロインと言うのは、他にいないのではあるまいか。
そもそも、病身の女性を本気で殴るなどと言うことが、いくら「悪の組織」とは言え、まずありえない残酷さ&大人気なさである。
二人はみどりを連れ帰り、応急手当をするが、

誠「ダメだ、骨がめちゃくちゃに砕かれてるだ」
オサム「は、早くお医者さんに見せないと」
誠「この村には医者はねえ、病院は車で1時間も飛ばしたところにしか」
オサム「それじゃ早く車で……」
誠「車もねえ」
オサム「……」
自分が迷い込んだ部落が、吉幾三の歌の通りの、想像を絶す未開の地だと知らされたオサム、思わず眩暈を覚える。
誠「村には車は鬼勘一家にしかねえ」
オサム「それじゃ、どうすれば……」
真っ赤なほっぺたを苦しそうに左右に振って苦しがっているみどりさんを見ていた誠は、不意に決然とした目をして、「行ってくる」とだけ言って、家を出て行く。
CM後、いつものように部下の報告をプンプンしながら聞いている首領L。

L「バカモノ、たかが村ひとつの土地がまだ手に入らんのか、その上、一番肝心な誠の土地が手付かずとは、もしも奴らに石油のことを嗅ぎつかれたら、どうするのだ」
鬼勘「首領L、もうちゃーんと手は打ってありやす、誠の奴が権利書を持ってくるのは時間の問題、どうかご安心を」
にしても、相変わらず、物凄い格好してはりますね、Lさん。
ただ、ここであっさり彼らの狙いが地下に眠る石油だということをバラしてしまったのは勿体無い。
これでは、最後に早川が石油を発見した時の驚きを、視聴者が共有できなくなってしまう。
L「貴様も悪の大組織ダッカーの一員なら、目的のためには手段を選ぶな、殺せ、誰だろうと幸せそうな奴らは皆殺しにしてやるのだ!!」
その後、今回の作戦とは全然関係のない、単にモテない奴の恨み言のような台詞を狂ったように喚き散らす、欲求不満のLさんでした。
一方、早川は敵の油断をついて牢を抜け出し、村人たちも逃がす。
夜になって、誠が鬼勘のところへやってくる。

鬼勘「ふっははははははっ、車を貸してくれだと? うんうん、待ってたよ、だが、高くつくぜ」
相手の来意を知った鬼勘は、まるっきり別人のように愛想よく応対する。
なにしろ、絵に描いたような「カモネギ」が来たのだから、無理もない。
言い忘れたが、鬼勘役はプロフェッサー・ドクの高杉玄さん。
誠「欲しいのはこれだろ、おらの土地の権利書だ」
鬼勘「へへへへへ、そうこなくっちゃな、じゃこっち貰っとくぜ」
誠が惜しげもなく差し出した権利書を取ろうとするが、
早川「待ちな!!」
鬼勘「早川、てめえ、どうやってあそこから?」
後ろから声が飛んできたかと思うと、いつものスタイルに着替えた早川がギターを肩に担いで庭に立つ。
早川「そいつを渡しちゃおしまいだ、車を貸すどころか、君の命も危なくなるぜ」
誠「でも、それじゃみどりさんが」
早川「心配するな、誠君、車は私が用意した」
誠「だったらすぐに」
早川、向かってくる手下たちを軽く薙ぎ倒し、誠を連れてその場を離れる。
翌日、どうやって調達したのか不明だが、白いライトバンにみどりさんを乗せ、病院に向かっている早川たち。

みどり「ああ……」
引き続き、苦しそうに呻いているみどりさん。
誠「我慢するだ、みどりさん、怪我はきっと治るだからな」
みどり「ありがとう、誠さん、私のために大事な土地まで……」
と、車の前方にワルツ・リーが立ち塞がる。
正直、そのまま撥ねちゃえば? と思うのだが、常に子供のお手本であらねばならないスーパーヒーローに、そんな無法な真似は出来ないのである。
早川「貴様、みどりさんに大怪我させただけではまだ物足らんのか」
ワルツ・リー「ワチャーッ!!」
早川、ワルツ・リーの挑戦を受けて立ち、激しく打ち合う。
早川「誠君、早く」
誠「みどりさんは必ずこの俺が」
車の一台もない村に住んでる割に免許を持ってる誠ちゃん、早川の代わりにハンドルを握り、走り出す。

早川「でやーっ!!」

ワルツ・リー「うわーーーーっ!!」
早川、V3ばりの強烈なキックを放ち、ワルツ・リーを倒す。
いや、中国人と言う設定なのに、「うわーっ」って……
近道をして自分の畑を突っ切ろうとした誠だったが、そこを待ち伏せていた鬼勘の部下にバズーカ砲(笑)を撃たれ、車から投げ出される。

誠「卑怯もの、撃つなら、俺を撃てーっ!!」

誠の叫びに、「はい喜んで!!」とばかりにバズーカ砲を撃ちまくる戦闘員。

誠「ぐわーっ!!」
至近距離で爆発が起き、血まみれになって倒れる誠。
なおも砲撃を続けようとする血も涙もない戦闘員たちであったが、背後から現れた早川にぶちのめされる。

早川「誠君!!」
誠「早川さん……」
早川「しっかりするんだ」
誠「早川さん、みどりさんの探しているのは(兄を殺した)犯人じゃなかったよ」
早川「喋るんじゃない」
誠「みどりさんが探してるのは……あんただ……」
早川「……」
誠「みどりさんを幸せにして……」
誠、切れ切れに言いながら、がっくりと首を落として絶命する。
80年代の特撮ではまずありえない、壮絶な死に様であった。
それにしても、土地や命まで投げ出して愛する女性を助け、しかもその女性の幸せを願いながら逝った誠、見た目はかなりアレだが、特撮ドラマ史上、最高に男前のキャラだと言えるだろう。
ただ、さすがに殺しちゃうのはやり過ぎじゃないかと言う気がしなくもない。
直前の3話でも、佳那晃子さんが悲劇的な死を遂げたばかりだから、誠は重傷を負いながらも生かすべきだったのではないかと。

早川「誠君……油? そうか、鬼勘一家は石油のためにこの土地を……誠君、石油だよ、君の土地から石油が出たんだ!!」
早川、地面に落ちた誠の手に、黒い液体が付いているのを見て、鬼勘の狙いを見破る。
しかし、前記したように、そのことは既に視聴者に示されているので、いまひとつパンチの弱いシーンとなっている。
それに、既に誠が死んでしまったあとでは石油が出たところで無意味だし、そもそも誠はこの土地を開墾して立派なファーマーになろうとしていたのだから、仮にそのことを誠が知ったとしても、あまり喜ばなかったのではあるまいか。
たとえば、鬼勘一家の仕業によって井戸や川が干上がって田畑が枯れてしまい、他の農家は営農を諦めて、この場所で娯楽施設を作ろうとしている鬼勘に土地を明け渡すが、誠だけはこの場に踏み止まって農家を続けようとしていた……みたいな話だったら、最後に石油ならぬ地下水が湧き、早川がそれを誠の亡骸に告げると言う、感動的なシーンになっていたかもしれない。
早川「誠君、ひとりの力でも鬼勘一家くらい倒せることを見せてやるぜ」
それはともかく、早川は誠の体を抱き締めながら誓い、みどりさんのことはちょうどそこにやってきた東条たちに任せ、怒りのマグマを滾らせながら、鬼勘一家のもとへ向かう。

早川の運転するライトバンが、

バズーカ砲の砲撃を受け、一瞬視界から消えるが、

カーブを抜けて出て来たのが、いつの間にかズバッカーに変わっていると言う、面白い演出。
これは編集ではなく、あらかじめ物陰に待機していたズバッカーが、ライトバンと入れ違いに飛び出して、あたかも一瞬でズバッカーにチェンジしたように見せているのである。

鬼勘「なんだあの車、かまわねえ、ぶっ放せ!!」
それにしても、出入りの格好をしたヤクザの親分と、バズーカ砲を持った戦闘員と言う取り合わせが、物凄い異種格闘技テイストを醸し出している。
この後、名乗り&ラス殺陣となり、事件解決。
無論、鬼勘は飛鳥殺しとは何の関係もなかった。
つーか、鬼勘を飛鳥殺しの犯人と考えるほうがどうかしているのである。

みどり&オサム「早川さーん!!」
ラスト、冒頭と同じく渡し舟の舳先に乗ってギターを掻き鳴らしている早川を、みどりとオサムが追いかけて呼びかけるが、早川は振り向こうともしない。
誠に死ぬ間際にあんなことを言われたのに、早川のみどりさんへの態度があまりに冷た過ぎるように感じられるのが不満である。
ま、これは、今回だけじゃなく、シリーズ全般に言えることだけどね。
みどりさんが元気になったのはめでたいが、人として、最後は誠の墓に手を合わせるシーンで締め括って欲しかった。
以上、みどりさんの出番が多いのは嬉しいが、いささか後味の悪いエピソードであった。
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