第9話「悪魔の音楽隊がやって来た!!」(1975年5月31日)
「ある地方都市に、有名な楽団がやってきた」というナレーションに続いて、

市民ホールのような場所で、白いスーツを着た、ちっちゃなおじさんの指揮によるバンドの演奏が行われている。
わざわざ特別出演とクレジットされている「チャーリー石黒と東京パンチョス」と言う、当時は有名だったらしいバンドである。
ま、今の視聴者にしてみれば、「誰、それ?」の世界だろう。
ひょっとしたら、当時の視聴者も「誰、それ?」だったかもしれないが……
会場には、大勢の観客が詰め掛け、毒にも薬にもならないような軽快な音楽に身を委ねていたが、客席にはタイタンの人間態と、

茂(
この町にそぐわない立派な音楽会……俺はそこにブラックサタンの計画を感じて見張っていた)
自治体に対して割りと失礼なことをモノローグでつぶやいている茂の姿があった。
しかし、その程度のことでいちいちブラックサタンの存在を疑ってたら、身が持ちませんぜ、ダンナ。
第一部はつつがなく終了し、緞帳が下がって15分の休憩となる。
席を離れる観客たちにまじって、タイタンはわざと目立つように白いハンカチを振りながらホールを後にする。
無論、茂をその場からおびき出すためだったが、茂はまんまとそれに引っ掛かる。
ちょうど三階の渡り廊下にユリ子がいたので、
茂「俺はあいつをつける」
ユリ子「ここは私に」
茂「ようし、任せる。しっかり頼むぞ」
ユリ子「OK」
その場をユリ子に任せ、バイクでタイタンの車を追跡する。
一方、バンドが第二部の開始を待っていると、市長が上機嫌で挨拶に訪れる。

チャーリー「市長さんでしたか、私、バンドの責任者の石黒です」
チャーリー、一応芸能人なので、ちゃんと演技もこなします。
しかも、

迷い込んだ蝶が目の前をひらひら飛んでいくのを、なんともいえない異様な目付きで見詰めていたかと思うと、

チャーリー「かおっ、くおっ」
それを両手で掴み、むしゃむしゃと食べてしまう。
特別ゲストになんちゅうことをさすねん、スタッフ!! チャーリーも、そんな仕事受けるなよ。
当然、市長はたじろぐが、チャーリーは平然と、

チャーリー「私はこれが大好物でして」
と、八代駿さんの声になって説明する。
市長「貴様!!」

チャーリー「ぎりぎりぎりっ!!」
両手で頭を押さえるような仕草をして、奇声を発するチャーリー。
ノリが良いなぁ。

チャーリーの耳の穴からサタン虫が這い出て、カマキリ奇械人の姿に変わる。
カマキリ「騒ぐな」
市長「うわっ」

思わずあとずさる市長であったが、

振り向けば、楽団のメンバーも一瞬でピカチュウ戦闘員に変わる。
そう、楽団はとっくの昔にブラックサタンに乗っ取られていたのである。

カマキリ「俺はブラックサタンのカマキリ奇械人だ。俺の正体を見たものは生かしておけぬ」
自分から正体を見せておきながら、それを理由に右手の巨大な鎌で、逃げようとした市長を斬殺する理不尽大王のカマキリ奇械人であった。
で、このデザインが痺れるほどにカッコイイのである。
なんと言うか、カマキリと甲冑と死神が合体したとでも申しましょうか……ドクロ好きのデザイナー、故・韮沢さんが見たら大喜びしそうなデザインである。
そして、右手が鎌、左手が鉄球と言うように、電話や箸が持てない不自由さをあえて甘受した攻撃力偏重の組み合わせも秀逸だ。

カマキリ「今一度人間どもに乗り移るんだ」
戦闘員「キュウッ!!」
しかし、映像を見てると、戦闘員に関しては、人間の中から出てきたというより、戦闘員が人間に化けていたようにしか見えないんだよね。
一方、しつこくタイタンの車を追いかけていた茂はストロンガーに変身し、遂にタイタンを捕捉して戦いを挑むが、

タイタン「ふっふっふっ、まだまだ俺の敵ではない、ブラックサタン特攻隊、出動!!」
ライダー「そうはいかんっ」
タイタン、自分では戦わず、背中にロケット弾を背負った、いささか危ない連中を差し向ける。

4人の戦闘員が一斉にストロンガーに飛びつくが、なんか、ライダーを輪姦してるみたいでヤだなぁ。
その状態で自爆して大爆発を起こし、自らの命と引き換えにストロンガーを抹殺しようとする壮烈さを見せ付けるが、ストロンガーは何事もなかったような顔で立ち上がる。
一応、地中に潜って難を逃れたらしいが、ナレーションによる説明もないので、映像的にはまるっきり戦闘員が犬死したように見えて、不憫でならない。
ライダー「しまった、またしても逃がしたか、今日こそは正体を暴いてやろうと思ったのに」
その間にタイタンは姿を消しており、今回もタイタンの正体を掴めぬままに終わる。
そう、ちょっと意外だが、まだタイタンはストロンガーに対し、はっきりと自己紹介をしたことがないのである。
さて、市民ホールでは第二部の演奏が始まっていたが、急にテンポが速くなったかと思うと、

観客たちが激しい頭痛を覚え、頭を押さえて苦しみ出す。
どうでもいいが、つるピカハゲ丸オヤジが二人並んでるのが、何気にツボである。
あるいは、頭を強く掻き毟ったのでヅラが取れた状態なのかもしれない。
ただ、チャーリーの出す特殊音波は子供たちには効果がないらしく、子供たちはキョトンとして座っているだけであった。
しかし、子供と大人なんて、生物学的に明確な違いはないんだから、大人にだけ作用のある音波と言うのも、考えて見れば変な話ではある。

ユリ子にもその効き目があらわれ、耳を押さえて色っぽく身を捩じらせているのだが、岡田さんは当時16歳で、それこそ大人と子供の中間みたいな年頃なので、このシーンからも、特殊音波の作用の有無が極めて曖昧なものに感じられ、前回の毒薬ほどではないが、見ていてイラッとさせられる設定となっている。
その音楽は、建物の屋上にいる戦闘員によって街中にも流され、暴徒と化した大人たちは競うように子供たちに襲いかかる。
市民が一斉に暴徒と化すと言うのも、前回とまるっきり同じで、あまりに芸がない。
ホールでも、正気を失った大人たちが子供たちに牙を剥き、音楽会どころの騒ぎではなくなってしまう。
その様子を、アジトのモニターで見て上機嫌のタイタン様に、久しぶりに首領が話しかける。
首領「作戦は成功したようだな」
タイタン「はあ」
首領「これを全世界に広げていけば、大人と子供は互いに憎み合い、殺し合ってやがて人類は滅亡する」
その後、色々あって、ユリ子はタックルに変身して電波投げでチャーリーの正体を暴くが、

所詮、カマキリ奇械人の敵ではなく、たちまちピンチに追い込まれる。
ま、そんなことはどうでも良くて、タックルのミニスカから覗く赤いパンツからはみ出た尻肉こそ、管理人の大好物なのである。
もっとも、これは岡田さん本人が演じているのか、良く分からないのだが……
そこへストロンガーがあらわれ、タックルを助けてから、屋外で無駄に長いアクションをこなしてCMです。
CM後、やっとおやっさんがジープに乗ってこの町にやってくるが、大人に対する恐怖心を植えつけられた子供たちは、おやっさんの顔を見るなり一目散に逃げ出してしまう。
立花「……?」
おやっさんが怪訝な顔でなおもジープを走らせていると、道端の雑草の中から、子供二人に左右から抱きつかれた格好のユリ子があらわれ、声を掛けてくる。
ユリ子「おじさーん」
立花「お、ユリ子か」
ユリ子「だいじょうぶよ、こわがんなくたって……このおじさんは何もしないから」
立花「おい、この町の子供たちは一体どうなってんだ?」
ユリ子「わけは後で話すわ、ともかく、この子たちの仲間が隠れているところまで乗せてって頂戴」
道々事情を聞きながら車を走らせていると、鐘の音と共に、モダンなデザインの教会らしき建物が見えてくる。

神父「なんと言う恐ろしいことでしょう、幸い、神のお守りくださるこの教会には悪魔の音楽も聞こえなかったと見えます……さ、安心してくつろいでください、今飲み物でも持ってきましょう」
市街地から離れた場所のせいか、教会の神父は正気を保っており、いかにも有徳そうな笑みを浮かべて、おやっさんやユリ子、市民ホールから避難して来た子供たちに穏やかに語りかける。
神父を演じるのは、名優・岩城力也さん。

立花「いやぁ、良かった、良かった」
ホッと安堵の溜息をつくおやっさんであったが、以前の記事でも書いたように、この左から二番目に座っている可愛らしい女の子こそ、80年代の大映ドラマには欠かせない名優・伊藤かずえさんの幼き日の姿なのである!!
しかし、その記事を書いてる時点では、後に自分がこのブログで、成長した彼女の画像をイヤと言うほど貼ることになろうとは、夢にも思っていなかったんだよなぁ。
それはともかく、飲み物を持ってくると言って別室に下がった神父であったが、

案の定と言うべきか、そこで彼を待っていたのは、典型的な魔法円の中に立つ、マントを着用したタイタン様であった。
タイタン「お前のやることは分かっているだろうな?」

神父「はい」
そう、一見まともそうに見えた神父は、実はブラックサタンの手先だったのである。
神聖な教会の奥に、悪魔崇拝者の巣窟のような部屋がしつらえてあるという、その背徳的な設定が素晴らしい!!
タイタン「これから私は邪魔者を始末しに行く」
タイタン、人間の姿になると、荒野をバイクで爆走している茂を見下ろす丘の上にあらわれ、

タイタン「ブラックサタン、オートバイ部隊、出動!!」
え~っ、またぁ? 前回に続き、またしょうもないバイクチェイスシーンを見せられるのかとげんなりした管理人であったが、スタッフもその迫力のなさを反省したのか、

今回は、ただ安全距離を保って走るだけじゃなく、バイク同士を接触させたり、ジャンプを多用したり、泥水の中に思いっきり突っ込ませたり、かなりの改善が見られた。
ま、どっちにしても、管理人、チェイスシーンなんかには興味がないのだが……
もっとはっきり言えば、管理人、アクションシーン自体に興味がないという、特撮ブログの管理人の風上にも置けないから風下に置いておこう的な、言語道断な感性の持ち主なのである。
いや、興味がないというと語弊があるが、アクションシーンのレビューを書いてもあんまり面白くないので、自然、視聴者としてもアクションシーンを忌避するような性質が身についてしまったのかもしれない。
余談だが、昔、管理人が書いていた「セーラー服反逆同盟」の徹底レビューでは、アクションシーンの事細かな動きまでいちいち画像を貼って説明していたものだが、今考えると、とても正気の沙汰とは思えない。
ストロンガー、しばらくピカチュウたちとじゃれあった後、
ライダー「バッテリーショート!!」 ガチョーン的なポーズで右手を突き出し、激しい電気を放射して、

ナレ「バッテリーショートとは、一瞬のうちにオートバイについている乾電池を破壊する電気エネルギーである」
ピカチュウたちのバイクを走行不能に陥れる。
しかし、これだけ使い道の限定された特撮技って、ちょっと他では見たことがない。
あと、「バッテリーショート」って、これだけ「そのまんま」のネーミングの技も、ちょっと他では思い出せない。
と、同時に、この技を使えばバイクを爆発させずにチェイスシーンを終わらせることが出来る、家計に優しい節約術にもなっているのだ。
再び教会。
おやっさんたちは、神父にグラスに入った牛乳を振舞われていたが、建物の中にトンボが紛れ込んで飛んでいるのに子供たちが気付き、騒ぎ立てる。

神父「……」
神父はそれを、なんともいえない異様な目付きで見詰めていたが、やおらトンボに近付いて、ヒョイと右手で掴む。

何事かと神父の挙動を注視するユリ子姉さん。
……
そうじゃ、貼りたいだけなんじゃ。
まさかと思ったが、

その様子を隠そうともせず、むしろおやっさんたちに見せ付けるようにトンボを頭からガブリと食べてしまう。
蝶に続いてトンボまで……虫嫌いのちびっ子が見たらトラウマになりそうな映像の連打である。
ユリ子は思わず目を背けるが、

神父「それでは皆さんの気が静まるようにオルガンでも弾いてあげましょうか」
神父、何事もなかったように平然とそんなことを言い出し、唖然としている子供たちを尻目にオルガンの前に移動して、曲を弾き始める。

その極めて自然な態度に、おやっさんたちも「今のは夢だったのか知らん?」とでも思ったのか、何も言えずに黙って聞いていたが、ユリ子さんが笑顔まで浮かべて聞き入っているのは、さすがにちょっと変なのでは?
にしても、なんとなく恥ずかしそうに牛乳を飲んでいるこの女の子が、これから10年足らずのうちに、あんなキレッキレの演技をする女優さんになるとは、この場の誰が予想しえただろう?
と、神父の手の動きが急に激しくなり、曲のテンポが速くなる。

ユリ子「この曲、変だわ」
立花「うん?」
いや、ユリ子さん、「この曲」じゃなくて……
市長でさえ、蝶を食べたチャーリーを一発で化け物だと見抜いたのに、ヒーローとして、この鈍さはありえない。
チャーリーの時と同じく、その音楽は人々を狂わせる恐ろしい特殊音波であったが、何故か今回は、大人だけではなく、子供たちまで耳を押さえて苦しみ出している。

耳を塞ぎ、唇を噛み、なんとか意識を保とうとしているユリ子さん。
……
そうじゃ、貼りたいだけなんじゃ。
神父「うわーっはっはっはっ!!」 狂ったように笑いながら鍵盤を叩く岩城さんの演技が強烈なのである!!
カマキリ奇械人のデザインと言い、大人たちが子供を襲うシーンと言い、今回はちびっ子トラウマ劇場と呼びたくなるほど、子供にとってのホラーなシーンが多い。
なんとなく、楳図かずおの恐怖漫画を実写化したようなテイストを感じる……

ユリ子たちの目には、オルガンを弾く神父の姿が、瞬間的にカマキリ奇械人の姿に映る。
ユリ子「あの神父は」
立花「ブラックサタンの奇械人だ」
今更気付いても手遅れで、カマキリ奇械人に操られた子供たちが、おやっさんたちに敵意を剝き出しにして襲い掛かり、二人はあえなく捕まってしまう。
つまり、カマキリ奇械人の音楽は、大人だけを狂わせるものと、子供だけを狂わせるものの二種類あると言うことなのだろう。
カマキリ「さあ子供たち、これから大人に復讐するのだ」
カマキリ奇械人、河原に場所を移して、自ら太鼓を叩いて悪魔のリズムを奏でながら、正気を失った子供たちをけしかける。

十字架の裏表にはりつけられたおやっさんとユリ子の足元に柴を積んで、生きたまま焼き殺そうと言う、これまたちょっと怖いシーン。
ただ、子供たちに二人の周りを踊りながら回らせた挙句、
カマキリ「さあ、二人とも覚悟は良いな、それっ!!」

奇械人の合図で子供たちが手にしたのが、ちょっと大きめの石だったと言うのが、なんか膝カックンなのである。
ま、これは、子供たちに火を扱わせると危険だし、視聴者が真似するといけないからと言う教育的配慮であろう。
それとも、この石を火打石代わりにして燃やそうと言うことなのか?
それにしても、伊藤さん、なかなか男前の顔しとるのう。

二人が観念したように項垂れていると、何処からか口笛の音が聞こえてくる。
背後の崖の上を見上げれば、そこにストロンガーが立っていた。
ま、それは良いのだが、口笛の音と一緒に子供たちが一斉に気絶してその場に倒れてしまうというのは、あまりに都合が良過ぎて、ちょっと納得行かない。
ライダー「カマキリ奇械人」
カマキリ「き、貴様は」
ライダー「エレクトロファイヤー!!」
ストロンガー、その場からエレクトロファイヤーを繰り出し、ユリ子たちのロープを切る。

ライダー「ユリ子、子供たちを頼むぞ」
ユリ子「任せといて」
ストロンガーに答えながら子供を抱き起こすユリ子であったが、こんな時でも、管理人が気になるのは前屈みになったユリ子のブラが見えないかなぁと言うことだけ。

あと、眠っている筈なのに、ユリ子が抱き上げた幼い女の子がつい目を開けてしまうのが、NGなんだけど、実に微笑ましい。
この後、ラス殺陣となり、ストロンガーがカマキリ奇械人を倒して事件は解決する。
え、一行で済ますな?
すいません。

立花「やれやれ、これでこの町も平和に戻ったな」
ユリ子「うん」
立花「それにしても茂、何処行ったんだ?」
ユリ子「うふっ、さあね」
ラスト、改めて行われているチャーリーたちの演奏を、子供たちと一緒に聞いているユリ子とおやっさん。
いや、おやっさん、「平和に戻った」って言うけど、市長が惨殺されてるんですが……のんびり音楽会開催してる場合じゃないと思うんですが……
以上、番組開始以来、初めて面白いと思えるシナリオであった。
なお、今回のブラックサタン、作戦自体は上手く行っていたのに、途中からストロンガーやユリ子たちの抹殺に夢中になって、肝心の作戦が疎かになってしまうという、今まで何度指摘してきたか知れない、バカの一つ覚えの見本のような負け方であった。
あと、言い忘れていたが、せっかくおやっさんたちに毒を盛るチャンスだったのに、牛乳に何の細工もしなかったのは、悪としての怠慢であろう。
ちなみに、9話の予告編には、

1シーンだけ、10話に出てくるハゲタカンの姿が紛れ込んでいると言う、今ではありえないミスがあります。
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