第25話「鬼の目に涙・天使の涙・パパ助けに来て」(1983年8月26日)
冒頭、郷原と言う表札の出ている豪邸に、ランドセルを背負ったタケシとルミ子と言う姉弟が息せき切って帰ってくるが、ドアを開けて玄関に入った途端、家の中だというのに稲光が走り、雷鳴が轟く。

ルミ子「……」
ありえない現象に息を飲む、歯っかけルミ子ちゃん。

唖然とする二人の体が、今度は宙に持ち上げられる。
なお、管理人が精査したところ、ちゃんとブルマを着用していたのでご心配なく。
空中に魔王サイコの顔が浮かび、言うまでもなく、それがマドーの仕業であることが示される。
ついで、キャリアウーマンに扮したポルターと、背の高い男が連れ立って、目も眩むばかりの高層ビルを訪ね、とある会社の社長に面会を申し込む。
その社長こそ、さきほどの子供たちの父、郷原であった。

ポルター「これをご覧下さい、これがあなたの借用書です。その金利をまとめたものがこれです」
郷原「何故、たった一晩で利子1000億円なんて……そんなバカな」
ポルター「これはあなたのサインです、あなたは賭けに負けた、そしてお金を借りた」
郷原「警察に訴えてやる!!」
郷原が即座に電話に手を伸ばすが、その電話を男が手刀で粉々に砕いてしまう。
さらに、モニターにルミ子たちとその母親が縛られてビルの屋上に立たされている映像を見せ、脅す。
郷原「待ってくれ、妻や子供にだけは危害を加えないでくれ」
ポルター「では明日までにこの会社の売り渡し契約書に判を押して渡すのです」
郷原「わかった……」
郷原、業腹ではあったが(シャレ)、自分も賭博に手を出したという弱みがあるので、そう答えるしかなかった。
で、郷原が心配のあまりめちゃくちゃな運転で自宅に向かう途中、偶然ぶつかりそうになったのが、偶然にもほどがあると思うが、パトロール中の電であった。
電は何とかハンドルを切ってかわすが、
電「なんて奴だ……」
その場では、信じられないとでも言いたげな顔で見送るだけだった。
しかし、いくら動揺してるからって、酔っ払ってるわけでもあるまいし、そんなに分かりやすくめちゃくちゃな運転になるだろうか?
どうせ、妻や子供たちは人質になっているのだから、急いで自宅に帰る必要もないし、そもそも、大会社の社長なら、運転手付きの車で帰ればいいんである。
電がその足で鈴木モータースへ行くと、ちょうど千秋が友人と一緒に出かけようとしているところだった。

電「お出かけ?」
千秋「ステーキぐらいご馳走するわよ~」
電「バカに景気の良い話だね」
明「アルバイトに行くんだって、泊り込みで」
電「泊り込み?」
千秋「それがねえ、すっごくギャラがいいんだー」
電「どんなバイト?」
千秋「それはー」
友人「ホステスですって」
電「何のホステス?」
千秋「それは内緒、行こ、行こ」
まるで体からキャピキャピと言う擬音が聞こえてきそうな二人は、ボストンバッグを手にいそいそと走り出す。
家族たちは全然心配していないようだったが、「高額」「泊り込み」「ホステス」と言う親として聞き捨てならないことを耳にしながら、父親の勝平がぜんぜん気にしていない様子なのは、いささか不自然に思える。
誰がどう考えって、めちゃくちゃいやらしい仕事に決まってるからね。
電、そのことはそれっきり忘れていたが、その後、リリィからアルバイトの女子大生20名が行方不明になっていると言う事件を知らされ、急に千秋のことが心配になってくる。
鈴木モータースに取って返し、勝平にそのことを伝えるが、

勝平「なぁに、うちの娘に限って、そんな心配ないって」
電「だって、あれから電話一本ないんでしょ?」
勝平「だいじょぶだってば、ふ、うちの千秋に限って間違いない」
電「そうですかぁ?」
勝平は全く取り合わず、心配する素振りも見せなかった。
ちなみに電の口ぶりから、今は、千秋が出かけた日の翌日らしい。
電「うちのうちのってのが危ないんだよなぁ」
だが、家族ではない電には、それ以上どうすることも出来ず、ぼやきながら引き下がるしかなかった。
電、ジープに乗り込もうとすると、後部座席に、新聞紙で覆われた異様な物体が蠢いていた。
てっきりマドーかと思って身構えるが、

小次郎「お、おお、俺だ」
電「小次郎さん!!」
それは、年季の入った浮浪者のような格好をした小次郎さんだった。
とうとう落ちるところまで落ちたかと慨然とする電であったが、そうではなく、
小次郎「いやぁ、電ちゃん、聞いてよ、新しいUFOの機械が買いたくてね、金に困ってたんだよ、そしたらね……」
小次郎、紙袋から黄色いチラシを取り出し、電に見せる。

小次郎「この広告だ」
電「サソリローンズ……無利子・無担保・無保証人、へーっ、こりゃいい条件だ、これだったら僕だって借りたいよ」
そのありえない好条件に、ヒーローらしからぬ声を上げる電。
つーか、電、そんなに金に困ってるのか……
でも、宇宙刑事としての本給に加え、地方赴任手当も出るだろうし、衣食住の心配はないし、たまに鈴木モータースでバイトしてるし、そんなに金が要るとも思えないので、本心からではなく、小次郎さんに調子を合わせただけなのだろう。
それはともかく、小次郎さんは5万借りたが、三日後に25万返せと言われて詰んだらしい。
小次郎「さもなきゃ働けって言われて連れて行かれそうになったんだよ」
電「それでルンペン姿になって逃げてたって訳?」
ちなみにこのサソリローンズもマドーの計画の一部だったのだが、無担保・無保証人はともかく、無利子では、逆に客に怪しまれて失敗しそうな気がするんだけどね。
親切な電は、自分が代わりに話をつけてきてやると、その会社のあるビルに向かうのだが、その直後、小次郎さんはあえなく借金取りに捕まってしまう。
で、例によって例のごとく、サソリローンズを調べに来た電に、ハードビーストの人間態であるさっきの男や社員らしき男たちが襲いかかってきて、ちょっとしたバトルになり、サソリローンズの裏にマドーが潜んでいることを、わざわざ電に教えてやる結果になる。
前回やった22話でも指摘したことだが、この、とりあえず電にちょっかい出すの、やめませんか? 成算もないのにこちらから攻撃を仕掛けるのは、百害あって一利なしですよ。
ともあれ、電はハードビーストたちを撃退し、サソリローンズのオフィスに踏み込むが、既にそこはもぬけの殻だった。
だが、ポルターは意気軒昂で、

ポルター「チェーン店の一軒や二軒潰されても、何の障害も感じません。我がメンバーズクラブゲームには会員になりたくてうずうずしている社長どもが順番を待っている状態です」
と言うことは、マドーはサソリローンズのほかにも、違う名前で無数のサラ金会社を経営しているということなのか?
しかし、まあ、作戦のためとは言え、これだけ経営力のある「悪の組織」って珍しいよね。

ポルター「まずロブスター自動車の田村社長、ロブスター自動車はアメリカやヨーロッパに工場を作り、世界進出を目指す優良会社です」
ガイラー「ペルスウス電子の郷原社長には逃げられてしまったではないか」
江戸っ子なのか、「ペルセウス」を「ペルスウス」と発音してしまうガイラーの懸念にも、
ポルター「郷原の妻子は人質に取ってある、なぁに、今に必ず姿をあらわす」
自信たっぷりに応じるポルター。
どうやら郷原、妻子を見捨ててトンズラしてしまったらしい。
後に改心するとは言え、家族より財産や地位を大事にする、特撮に出てくるキャラとしては珍しい人種であった。
つまり今回のマドーの作戦は、会員制のいかがわしいクラブを運営してそこに大会社の社長を引き摺り込んで賭博にのめりこませ、莫大な借金を背負わせてケツの毛まで毟り取ろうという、「悪の組織」というより、本物の組織暴力団みたいなえげつないものだった。
「悪の組織」が、合法的に……と言うと語弊があるが、詐術を弄してはいても、あくまで人間社会のルールに乗っ取り、その勢力を拡大しようと言うのは、ちょっと他では見たことのない発想である。
一方、信号待ちをしていた電の目に、

郷原の失踪について書かれた週刊誌の見出しがとまり、電は、それがあの、危うくぶつかりかけた無茶な運転をしていた男だということを思い出す。
でも、時系列的には、郷原がポルターに脅された翌日としか思えないのに、もうそんな記事が雑誌に載ってるって、おかしくないか? 新聞ならともかく……
その後、カフェテラスでリリィと待ち合わせをしている電。
ほどなくリリィが、手に資料を持ってやってくる。

リリィ「わかったわよ、色々な事実が……まず郷原社長のペルセウス電子工業は、凄い優良会社よ。超LSIを世界各国に輸出して、ここニ、三年倍々ゲームで業績を伸ばしてるの」
電「しかし、そんな優良会社の社長がどうして失踪しなきゃならないんだ?」
リリィ「それがギャンブルに手を出したらしいの」
電「ギャンブル?」
リリィ「まあ、誰かさんみたいに女児に手を出すよりはマシよねえ~」
電「バ、バカ言うな、最近は出してないぞ!!」
じゃなくて、
リリィ「何でも1000億円の借金を作って会社を乗っ取られたんですって」
電「それで一家で逃げたってわけか」
リリィ「それまた違うのよ、奥さんと子供たちは人質に取られてるらしいの」
電「人質?」
……
どうでもいいが、リリィさん、いくらなんでも優秀過ぎませんか?
今回の話がいまひとつ面白くないのは、事件の謎を調べる楽しみが、朝起きたときの管理人の頭髪のように、ごっそり抜け落ちているからだろう。
あと、既に会社を乗っ取ったのなら、ポルターたちが郷原を探したり、人質を取っておく必要はないと思うのだが……
まあ、この辺は、リリィの情報が不正確で、まだ売り渡し契約書にはサインしていないのだろう。
ナレ「伊賀電は郷原社長の足取りを追った」
と言うナレーションを受けて、電は、山深い森に佇む一軒家に侵入するが、そこがなんなのか、何の説明がないのがもどかしい。
たぶん、郷原家の別荘なのだろう。

郷原「動くな」
電「郷原さん、あなたを助けに来たんです。あなたが何故ギャンブルに手を出し、会社と家庭を危機に陥れてしまったのか、聞かせて欲しい」
そこに潜んでいた郷原にライフル銃を突きつけられる電。
うーん、これも、あまりに簡単過ぎてつまらんなぁ。
マドーでさえ、発見できなかったというのに……

郷原「出て行け」
電「立派な会社と幸せな家庭を持ちながら、何故ギャンブルに走ったのか、その理由が知りたい」
郷原「うるさい」
電「ギャンブルをやったその場所は?」
電、銃を突きつけられても怯まず臆せず、真っ正面から問い質す。
しかし、まあ、これはドラマで、相手が撃たないと分かってるから出来るんであって、普通ならもっとビビりまくるか、すぐに「赤射」してるところだよね。
電「奥さんや子供たちのことを考えたことがあるんですか、今、人質に取られている」
郷原「人質?」
電に言われて家族のことを思い出したのか、郷原は銃を下ろすと、疲れ切ったように安楽椅子に身を沈め、妻や子供たちの姿を思い描く。

電「タケシ君も、ルミ子ちゃんも、奥さんもあなたが助けに来てくれるのを待っている」
郷原「どうだっていいんだ、女房や子供なんかどうなったっていいんだ」
電「なんですって?」
捨て鉢になったように吐き捨てると、グラスの酒をあおる。
しかし、電が、まだ会ったこともない子供のことを、まるで以前からの知り合いのように名前で呼ぶのは、なんか図々しいと言うか、違和感があるなぁ。
ま、電のことだから、パトロール区域の可愛い女児は全てリストアップしており、以前からルミ子に目をつけていたということはありうる(註・うらねえよ)
郷原「君にはわかるまい、会社をあそこまでするにはどんなに苦労したか」
電「家族より会社が大事だって言うんですか。人の命より、金を選ぶというんですか? だったらあなたは人間じゃない!!」
若者らしい真っ直ぐな価値観で、苦悩する大人を一刀両断する電。
無論、現実はそんな簡単に割り切れるものではないのだが、これはドラマ、それも純真なちびっ子向け特撮ドラマなのだから、これで正解なのである!!
電、いきなり郷原の前に手を突くと、

電「教えて下さい、そのギャンブル場は何処にあるんですか?」
郷原「……」
電「助けてあげたいんです、ルミ子ちゃんを、タケシ君を……郷原さん、お願いします!!」
赤の他人のために文字通り土下座して、ひたむきに頼む電の姿に心を揺さぶられたのか、郷原は、家族と過ごした楽しいひと時をありありと思い描く。

無論、管理人が貼るのはルミ子ちゃんだけ。
きっと、天国の上原先生も喜んでくれていると思う。
郷原は不意に立ち上がると、ガマガエルのように這い蹲っている電の横を通り抜け、窓際に立つと、

閉ざされていたカーテンを開き、差し込んでくる木漏れ日に眩しそうに目を細める。
郷原が、安楽だが、腐りかけた自分だけの世界に閉じ篭るのをやめ、険しくも、明るく堂々とした「人の道」を歩き出そうと決意したことを象徴的に描いた、見事な演出である。
郷原「わかった、みんな話す」
次のシーンでは、港に錨泊中の豪華客船が映し出され、そこが賭博場であることが分かる。

電「中に入って様子を見る。まず人質のタケシ君とルミ子ちゃんの救出が第一だ」
さっきから、電に無視されているお母さんがかわいそう……

電は、岸壁と船をつなぎとめている鎖の上を、ひょいひょいと伝って船内に潜り込む。
こういうのを、役者本人がさらりとやってのけられるのは、やはり強みである。
大ちゃんだと、こういうシーンでもいちいちスタントを使わねばならないからね。
下手をすればアニーがやることになるんだから……
電の助けを借りて、リリィも潜入を果たす。

小次郎「ああ、悪いぜにこ借りてしまった……」
見れば、ズタボロの服を着た小次郎さんが、ぶつぶつ独り言を言いながらデッキにモップをかけていた。
しかし、こういう場所ではゴージャスな雰囲気が大事なんだから、いくら下働きだからと言っても、これでは場のイメージを損なうので、経営者はもっとちゃんとした服を貸与すべきだったろう。
だが、ルミ子のことで頭が一杯の電は、ひとまず小次郎さんは後回しにして先に進む。
途中、ボーイと出くわしたので当身を食らわせるが、

電「……」
ボーイが運んでいたグラスに残った液体を口にして、それが青酸カリであることに気付くが、もう手遅れ。
電「あれ……俺、死ぬの?」
と言うのは嘘だが、そう言うこともあるので、得体の知れない飲み物を迂闊に口にするのは危険なのはほんとである。
電の睨んだとおり、その飲み物には人の理性を失わせる麻薬が混入されていた。

電、ボーイの制服とお誂え向きの仮面を拝借して、問題のギャンブルルームに堂々と入り込む。
部屋にはルーレットをはじめとした、各種ゲームが取り揃えてあったが、無論、マドーのことなので必ず胴元が勝つように仕組まれているのだろう(註1)
註1……ま、全てのギャンブルはそうなってるんだけどね!!
そこでは客もホステスも、古代ローマ人のような白いローブと月桂冠のようなものをつけていたが、

千秋「どうぞ」
電(アルバイトってこれだったのか……)
ホステスの中に千秋もいて、楽しそうに客の相手をしていた。
どうせなら、もっと過激に男たちに前から後ろからズッコンバッコンされているシーンが見たかった……って、近所の変態が言ってましたが、ちびっ子向け特撮番組ではこれくらいが限度なのだろう。
……にしても、もうちょっと色気のある、たとえばバニーガールの格好くらいはさせて欲しかったな、と。
もしくは、夏らしくビキニの水着とか。
千秋「かんぱーい」
電(カクテルに酔ってしまっている……ルミ子ちゃんたちは何処へ)
だが、相変わらずルミ子のことで頭が一杯の電は、千秋のこともひとまず放置して、人質の行方を探すことにする。
しかし、考えたら、ギャンブル船に人質が乗せられているという保証はないんだけどね……

ポルター「社長さん、もうおやめになったほうが」
社長(で、でけえ……) じゃなくて、
社長「バカを言え」
物陰からそれを見ていた電は、
電(敵ながら、で、でけえ……) じゃなくて、
電(麻薬の一種だ。一度飲むと理性が麻痺するんだ)
郷原や他の社長たちがギャンブルにのめりこんだのは、提供されている麻薬のせいだったのである(註2)
註2……そんなもん使わなくてもギャンブルにのめりこんだら理性は吹き飛びます。
なお、今回の話でもうひとつ引っかかるのは、そもそもどうやって社長たちをこの場に連れ込んだのか、と言う点である。
見たところ、特にセレブたちをひきつけるような魅力のある場所とも思えず、まさか、ポルターの巨乳だけでこれだけの客を集めたわけではあるまいに、その辺が説明不足のように感じるのである。
お金持ちなんだから、その気になれば海外のカジノに行けば、合法的にギャンブルし放題だしね。
社長「今夜は勝つまでやるんだ、さあ、小切手ならいくらでも書くぞ」
それはともかく、麻薬とポルターの色香のせいですっかりバカになっちゃってる社長(ロブスター社の社長?)は、景気良くその場で1000万の小切手を書くのだった。
ところで、肝心の、サソリローンズから金を借りるシーンがないのは、片手落ちのような気もする。

続いて、余興となり、安い剣闘士みたいな格好をした堀田さんが出てきて、見得を切る。
言い忘れていたが、ハードビーストの人間態を演じるのは、名優・堀田真三さん。
しかし、前回の曽我さんもそうだが、せっかく名優を起用しながら、こんな力任せのキャラを演じさせるだけなのは、いかにも勿体無い。
せめて、堀田さんが、言葉巧みに社長たちをこのギャンブル船に勧誘するシーンなんてのがあったら良かったのだが……
多分、小次郎さんと同じく、後先考えずにサソリローンズで金を借りて首が回らなくなった大学生だろう、駄々っ子のように床に寝転がって戦うのを拒んでいたが、麻薬入りのカクテルを飲まされると、たちまち闘志をむき出しにして堀田さんに戦いを挑む。
どうせなら、同じような目に遭った女子大生たちに……(以下、自主規制)
二人が火花を散らして斬り合うのを、夢中で見物している客たち。
たぶん、この勝敗にも金が賭けられているのだろう。
その隙に、やっと電はギャンブルルームを離れ、人質を探して船内を歩き回り、人気のない機械室に降りる。
都合のいいことに、郷原の家族は縛られた状態で、その場にポンと座らされていた。
人質の扱いにしては、あまりに雑である。

電「ルミ子ちゃん、タケシ君?」
母親「あなたは?」
電「助けに来ました、お父さんに頼まれて」
電、手早くルミ子のいましめを解くと、

電「さ、早く逃げるんです」
夢にまで見たルミ子ちゃんの体を抱いて、そのままどっか行ってしまったと言うが、嘘である。
だが、ポルターもそこまで抜け作ではなく、いつの間にか、ポルター以下、オールスターキャストが狭苦しい機械室に降りていて、先に逃げようとしたルミ子とタケシを捕まえる。

ポルター「引っ掛かったね、餌に」
ガイラー「さあ、どうするシャリバン?」
どうやらポルター、わざと目立つ場所に人質を置いて、電をおびき出す餌に利用したらしい。
ただ、いざとなれば「赤射」できる電に対しては、あまり意味のなさそうな作戦である。
それより、あくまで人質は電の手の届かないところにおいて脅迫したほうが、遥かに有益だったと思われる。
この時、リリィがポルターたちの背後に飛び込んできて、テレビのリモコンのようなメカからビームを放ち、敵を混乱させる。

電「いやっ!!」
その一瞬の隙にポルターを蹴飛ばす電であったが、蹴られたポルターが明らかに笑っているのはNGです。
ま、どうせ暗がりだし、一瞬のことだから構わないだろうと油断したのだろうが、40年近く後に、キャプ職人にねちっこくその顔を抜かれるとは、夢にも思っていなかっただろう。
リリィは郷原一家を連れて先に上がるが、
電「リリィ、小次郎さんを頼んだ」
ちゃんと小次郎さんのことをリリィに頼む優しい電であった。
自分はギャンブルルームに戻り、みんなをせきたてて船から降ろそうとする。

千秋「あらー、電さーん」
電「千秋さん、目を覚ますんだ!!」
まだとろんとしている千秋の顔を思いっきりビンタする電。

千秋「はっ」
電「さ、早く逃げて!!」
そのショックで正気に返る千秋であったが、麻薬でおかしくなってるんだから、ビンタくらいでは元に戻らないと思うんだけどね。
ひとしきり堀田さんと戦った電、乗客が全員脱出したのを見届けて、シャリバンに変身する。

ガイラー「ええい、シャリバン」
ポルター「……」
このポルターの顔が、なんとなく、南海キャンディーズの静ちゃんに見えてしまった管理人であった。
ここから長い長いラス殺陣となり、ハードビーストを倒して事件は解決する。
もっとも、ポルターの言を借りれば、「ギャンブル船の一隻や二隻潰されても、何の障害も感じません」となって、引き続き作戦を行うことも可能だったと思うんだけどね。
何しろ、今まで尋常じゃない大金を巻き上げている筈で、新たな豪華客船を用意することなど、余裕だったろう。
ハードビーストが、作戦に不可欠な役割を果たしていた訳でもないし……
ラスト、郷原一家が豪邸を引き払って引越しすることになり、家族総出で荷物をトラックに積み込んでいる。
ナレ「幸せであったはずの郷原一家にマドーの手が忍び寄り、その生活は崩された。しかし、タケシとルミ子を中心に、郷原一家はまた0から再出発することになった」
でも、郷原は結局マドーに会社は売らなかったのだし、仮に売っていたとしても相手がマドーなんだから無効の筈で、借金だってチャラになってる筈なのに、何もかも失って再出発するというのは、なんか腑に落ちない結末である。
うーん、まあ、借金はともかく、実際に多額の金をギャンブルにつぎ込んだのは事実なので、道義的責任を取って社長の座を退いた、と言うことなのだろう。
あと、「タケシとルミ子を中心に」って言うけど、二人ともまだ小学低学年で、さすがにちょっと無理がないか?
また、それを見ている電とリリィが、

リリィ「頼もしいじゃない、タケシ君も」
電「うん、今度こそ幸せになるさ、きっとね」
社長から、一気にビンボー人になってしまった郷原の前途に、全く何の心配も抱いていないのが、いかにも嘘っぽく響くし、別に郷原は今まで家庭を顧みずに仕事ばかりしていた男ではないんだから、今までだって幸せだったと思うんだけどね。
だから、タイトルにもあるように、郷原が仕事にかまけて家族をないがしろにしていた「鬼」だと言う前提がないと、この結末では納得できないような気がするのである。
以上、魔怪獣の名のとおりハードなストーリーが展開するが、それがいまひとつ面白さに結びついてないように感じられるのが惜しい一本であった。
なんつーか、千秋のこととか小次郎さんのこととか、中途半端に話を広げてしまって、全体の焦点がぼやけてるような気がするんだよね。
- 関連記事
-
スポンサーサイト