第40話「空を飛ぶ妖怪城!!」(1973年1月5日)
新年一発目の放送に合わせて、いよいよ大魔王サンタ編が始まるのである。
8話しかないけどね!!
せめて1クールきっちりやって欲しかったところだ。
そうすれば、もっと菊さんの活躍が見れたのに。
さて、大魔王サタン編の開始に合わせて、OPのビジュアルがリニューアルされる。
従来は、嵐がハヤブサオーに乗って富士山をバックにパカラパカラ走っている姿に「変身忍者嵐、見参!」と言う南城さんのコールが入っていたが、

新OPでは、大魔王サタンの空飛ぶ船の上に、明らかにスケールがおかしい嵐が立っていて、

その嵐の顔にタイトルが重なり、主題歌のイントロが流れ出すというものになる。
また、「変身忍者嵐、見参!」のコールがなくなり、南城さんの声は完全に聞けなくなる。
タイトルバックでは、OP用に撮られた妖怪たちとのバトルシーンが流れるのだが、

今回の怪人であるインデゴが、その中で嵐に斬り殺されて爆死しているのは、さすがにどうかと思う。
特撮の長い歴史の中でも、登場する前にOPで死んだ怪人と言うのは、このインデゴぐらいではあるまいか。
さて、大魔王サタン編では、基本的に、毎回サタンがその回に登場する怪人を世界各地でスカウトするところから物語が始まるようになっている。

サタン「ワシはこの妖怪城のあるじ、地獄の王者、その名はサタン、大魔王サタン!」
とある火山の噴火口の中に作られた、四角い水晶を積み重ねたような妖怪城の中で、
誰も聞いてないのに音吐朗々と自己紹介をしているサタン。
そう、なにしろ予算がない番組なので、サタンには毎回登場する怪人のほかには、部下と言うものが一人もいないのである。
だから、いわゆる戦闘員と言うものも、サタン編には登場しないのである。
それ以上につらいのが、
妖怪城の間取りが死ぬほど狭い!! と言うことであった。
サタン「今より、世界の各地に眠る妖怪どもを蘇らせ、やつらを手足のごとく動かして日本の国を支配するのだ」
狭いと言うか、もう人が住めるような建物じゃないと思うんだけどね。
なんか、ふと本棚の隙間を見たら、こんなのがいた……みたいな感じで、見てる方も、そのビンボー臭さに涙を催されること必至である。

さらに、動き回るようなスペースもないので、玉座に座ったまま、如何にも人の手が関与していることをうかがわせる、スムーズさに欠けるぎこちない動きで上部に持ち上げられていくサタン。
このシーンの情けなさと言うのは、ちょっと筆舌に尽くしがたいものがある。
しかもそれを演じているのが、死神博士としてショッカーを率いてきた天本さんだけに、なおさら……
ともあれ、サタンは、妖怪城の一番上にある銀色の空飛ぶ円盤の中に移動する。
円盤は、普段は妖怪城のてっぺんにくっついているのだ。

サタン「飛べ、円盤よ、瞬く間に千里の空を駆けて、妖怪の眠るカナダへ行け!」
もっとも、実は円盤の中のほうが玉座より広いので、サタンも、こっちにいる時の方が多いんだけどね。
ともあれ、円盤はあっという間にカナダ上空に到達する。
サタン「インデゴよ、我が、妖原子エネルギーの放射能を浴びて、1000年の眠りより目覚めよ」
サタンの魔力の源である妖原子球から発せられた光を浴びて、巨木で埋め尽くされたカナダの森林の中で眠っていたインデゴと言う怪人が目を覚ます。
にしても、仮にも時代劇なのに、空飛ぶ円盤とか、カナダとか、放射能とか、もうやりたい放題だね。
でも、ある意味、荒唐無稽もここまで来ると立派と言う奴で、中途半端に「時代劇」していた血車党編よりサタン編の方がぶっ飛んでいて面白いかもしれない。
なお、そもそもサタンは一体何者なのか、そして執拗に日本征服を企むのは何故か言う点が気になる読者の方もいらっしゃると思いますが、気にしないほうが身のためです。
しかし、真面目な話、世界中に一瞬で移動できる力があるのに、なんで日本だけを征服しようとするのか、納得し難いのは事実である。
かと言って、それ以外の国を占領してるとも思えないし……
サタンはインデゴを連れて日本に戻ると、

サタン「人間どもの真っ赤な血を吸って、悪魔の領土を広げるのだ」
インデゴ「おほほほほほっ」
こう書くと、まるで金持ちのマダムの笑い方だが、西部劇に出てくるインディアンの掛け声だと思ってもらうと分かりやすい。
平山代官所なる屋敷の中から男の呻き声が聞こえ、怪しい光が炸裂する。
千鳥「お父様、お父様ーっ!」
と、赤い着物を着た可愛らしい女の子が、切迫した様子で、代官である父親の名を呼んで庭の中を走っている。
敷地の中には小さな神社があり、女の子が石段を駆け上がると、そこに父親が立っていた。
代官「千鳥ではないか、どうした?」

千鳥「今、雷の落ちたような音と凄い叫び声が聞こえたんです」
代官「うふん、私も聞いた、裏の木に落雷して山鳥が騒いだのではないかな?」
鈴のような声の、如何にも現代的な顔立ちをした千鳥を演じるのは、約1年前の「魔女先生」でいじっぱりな女の子ハモニカさんを演じていた広瀬隆子さんである。
そして彼女が、「嵐」における、三大ロリロリ美少女ゲストの最後の一人なのである。
そう言えば、「魔女先生」では、カスミの林寛子さんとも共演してるんだよね。

千鳥「ああ、良かった、もしやお父様の身に、もしや何か起こったのじゃないかと思ってドキドキして」
既に父親がインデゴに乗り移られているとも知らず、その胸に抱きついて安堵の表情を見せる千鳥。
しかし、仮にも武家の娘が、こんなに馴れ馴れしく父親にもたれかかると言うのは、かなり違和感があるが、
可愛いから許す!! 一方、たぶん、それからしばらく後のことと思われるが、村道で、若い村人と、大八車に米俵を積んで運んでいる年寄りが立ち話をしている。

村人「ありがてえお代官様だ、年貢は納めねえでいいうえに、米倉から去年の米まで持ち出してよ、わしらに分けてくださるとはな」
村人「そうともよ、いやぁ、おかげでおらも白い米の食い放題、おかげさんで、近頃は体が肥えて、ホラ、この通りじゃ!!」
村人「声と口の動きが全然合ってねえんだよっ!!」 村人「へぶっ!!」
管理人の怒りが乗り移ったのか、初老の村人のメガトンパンチが若い村人の顔面にめり込むが、嘘である。
嘘であるが、声と口の動きが全然合ってなくて、管理人が殺意を覚えたのは事実である。
それはともかく、年貢フリーの上に昔の年貢まで返してくれるという、ほとんどありえないような寛大な措置に、村人たちはホクホク顔であったが、いくらなんでも非常識な話で、その上、村人たちがそれを天からの恵みであるようにあっさり受け入れていると言うのは、いくらなんでもリアリティーがなさ過ぎる。
まあ、当時も飢饉などの際には年貢の免除などの措置が取られることはあっただろうが、村の様子を見る限り、とてもそんな風には見えないし。

ハヤテ「まるで信じられんような話だが……」
で、その村人たちの話をたまたま耳にしたのが、虚無僧に身をやつしたハヤテであった。
何度も言っているように、嵐と月ノ輪が合体してからは、ハヤテの声も市川治さんが吹き替えるようになっており、当然、この台詞も市川さんの声である。
正直、俳優さんに対する冒涜のような気もするが、南城さん自身は、自分が喉を痛めたせいで周りに迷惑をかけたと、さほど気にはしておられなかったらしいが……
さて、老人と別れた、声と口の動きが全然合ってないマンであったが、たちまちインデゴに襲われ、

「北斗の拳」2巻に出てきたサージェントが使っていた吸血ナイフ(?)みたいなのを突き立てられ、存分に血を吸われる。
そう、代官に化けたインデゴの狙いは、村人たちを肥え太らせてからその生き血を吸おうと言う、まさに吸血妖怪にふさわしいものだった。
また、血を吸われた人間はインデゴの操り人形になってしまうので、そうやって村々を支配して行き、やがては日本全土を手に入れようという意図もあったと思われる。
そう言えば、サタンが魔神斎と悪魔道人を使って手に入れようとしていた忍者大秘巻も、サタン編になるとまったく欲しがらなくなるんだよね。

ハヤテ「おい、どうした、どうしたんだ? おい、しっかりしろ」
それはともかく、インデゴが立ち去った後、たまたまハヤテが通り掛かり、村人を揺さぶり起こすと、

村人は死んではおらず、真っ白い顔をしてよたよたと起き上がり、そのまま立ち去ろうとする。
まるっきり、ハイチのゾンビ状態であった。
ハヤテ「おい、待て、どうかしたのではないのか?」
村人「……」
ハヤテ、念の為確かめるが、いちおう意思はあるらしく、振り向いて首を横に振ると、村人は行ってしまう。
続いて今度はあの年寄りの叫び声が聞こえ、ハヤテがそちらに行ってみると、やはり老人が倒れていて、全く同じことが繰り返される。
ハヤテ(なんかムカつく……) とりあえず斬り殺したくなったハヤテだったが、嘘である。
不審を感じたハヤテは、思い切って代官所を訪ねてみる。

代官「なに、この村に妖怪が?」
千鳥「お父様!!」
ハヤテ「私が見た村人たちは明らかに妖怪に血を吸われたものと見受けられます」
代官「うーん、それは容易ならぬことだ」
と、いきなりハヤテが、サイのような武器を天井に向かって投げつける。

イタチ「ううっ!!」
武器は狙い過たず、天井に張り付いていた黒装束の盗賊の顔の横に刺さる。
そう、盗賊が天井に張り付いていたのである!!
……
代官、気付けよ。
よほど天井が高い部屋ならともかく、フツーは部屋に入った時点で気付くよね。
畳に尻餅を突き、逃げようとする盗賊であったが、ハヤテが足に鎖を巻きつけて捕まえる。
すぐに代官の部下たちが駆けつけ、盗賊を取り囲む。

部下「こやつ、イタチ小僧だ!!」
代官「ん?」
盗賊の覆面を剥いだ部下は、たちまちその正体を見破る。
イタチ小僧を演じるのは、ご存知、地獄大使の潮健児さん!!

部下「街道筋を荒らしている泥棒です、人相書きが回っておりました」
で、代官の部下が、ヨロイ元帥の文弥さんなのだった。
つまり、死神博士と地獄大使とヨロイ元帥の豪華三本立てな訳である。
代官「うーむ、盗賊の癖に代官屋敷に忍び込むとは良い度胸だ。あとで厳しく取り調べてやるから、牢へ放り込んでおけ」

イタチ「だって、あたしゃまだ何にも盗っちゃいませんよ、見逃してちょうだいよ、ね?」
イタチ小僧、地獄大使とは似ても似つかぬ卑屈な男で、意地汚くてだらしがなくて肝が小さく、自分が助かるためなら平気で仲間も売るような、トホホなキャラなのである。
この、イチゴみたいな鼻の頭からして、人をコケにするために生まれてきたようにしか見えない。
それでも、どこか憎めないキャラで、サタン編には欠かせないコメディリリーフとして活躍することになる。また、菊容子さんとの掛け合いも、密かな楽しみのひとつである。
ほんと、こんな美味しいキャラを出しておきながら、たった8話で終了とは、勿体無いにもほどがある。

代官「いやぁ、ハヤテ殿とやら、かたじけない」
ハヤテ「やぁ、はっはっはっはっ」
代官「もう日も暮れる。妖怪の調べは明日のこととして、今夜は屋敷に泊まっていかれるが良い。千鳥、ハヤテ殿を離れに案内してあげなさい」
千鳥「はい」
ハヤテ「それではお言葉に甘えて、お世話になります」
千鳥「ハヤテさん、どうぞ」
ロリロリ美少女と同じ屋根の下に泊まれる機会をハヤテが逃す筈もなく、代官の申し出を遠慮なく受け入れるのであった。
夜、イタチ小僧はそっと牢から抜け出し、土蔵の中に忍び込む。
たくさんの樽が積んであるので、てっきり酒でも入っているのかと舌なめずりをするイタチ小僧であったが、そこへ代官が一人で入ってくる。
イタチ小僧は咄嗟に樽の奥に身を潜めるが、

代官「ふっふっふっふっ、血の年貢がだいぶ溜まったな、サタン様、大魔王サタン様」
サタン「インデゴよ、お前が蓄えた人間の生き血、喜んで受けてやるぞ」
代官は、拳で樽をコツコツ叩くと、上空に浮かんでいる円盤の中のサタンに呼びかけ、妖力で樽の中の血を円盤に向かって飛ばす。

その血を、下部の円筒で受けるサタンの円盤。
しかし、夜な夜な円盤が人の生き血を回収しに来るって、完全にB級SF映画の発想だよね。
それにしても、サタンは人間の生き血を集めてどうするつもりなのだろう?
吸血妖怪インデゴが血を欲しがるのは分かるのだが……
それを見たイタチ小僧は思わず声を上げ、代官に見つかってしまう。

代官「おのれ、見たな、よほほほほっ!」
代官、何故かスペシウム光線の構えを取ると、インデゴの姿に変わる。
イタチ「バ、バケモンだぁ、うっ……」
情けなくも、その場で失神してしまうイタチ小僧。
インデゴ、イタチ小僧の血も吸おうとするが、

千鳥「お父様が、バケモノに!」
たまたまそこにあらわれた千鳥の叫びに振り返り、
インデゴ「気がついたか、俺はお前の父に乗り移っていたのだ」
千鳥「助けてーっ!」
当然、千鳥は逃げ出すが、インデゴは瞬間移動して先回りする。
と、そこへ颯爽と駆けつけたのが、忍者装束に身を包んだハヤテであった。

インデゴ「とうとう出て来たな、ハヤテ、ワシははるばるカナダからやってきた、大魔王に仕える吸血妖怪インデゴだ」
千鳥「こはいっ!」
ロリロリ美少女を前にして、いつも以上に気合の入るハヤテ。
ま、普通は
「えっ、カナダって何?」と聞き返すと思うのだが、今回はとにかく尺に余裕がないので、ハヤテもその点には一切触れない。
ハヤテ、ひとまず千鳥を連れてその場を逃れる。
CM後、ハヤテは近くの水車小屋の中に千鳥と一緒に身を隠す。

ハヤテ「さあ、もう大丈夫だ、ここに隠れて朝を待とう」
千鳥「何故?
ロリコンだから?」
あどけない千鳥の問いに、
ハヤテ「うん、夜は奴ら妖怪の世界だ、しかし、朝になって日の光が差せば奴らの魔力は恐れるに足らん」

千鳥「……」
ハヤテの頼もしい言葉に、にっこり微笑んで頷く千鳥。
うう、可愛い……
ハヤテ「さ、俺がついてる、安心して眠るが良い」

ハヤテに促され、素直にハヤテの胸に体を預ける千鳥。
ハヤテ(嗚呼、ヒーローやってて良かったーっ!!) 今までの苦労は無駄ではなかったと心の中で快哉を叫ぶロリコン忍者ハヤテであったが、嘘である。
ハヤテは千鳥に寄り添いながら、水車の回る音を聞きつつ眠りに就くが、

夢の中で、記憶にない筈の母親シノブの面影をありありと思い出す。
農家の縁側に座って綿か何かを紡いでいるシノブのそばには、可愛らしい、5才くらいの双子の兄弟がいた。
ハヤテ「だが、何故いまごろ突然俺はこんな光景を思い出したんだろう? そうか、これは俺と合体した兄、月ノ輪の記憶だ、月ノ輪が俺たち母さんの顔を覚えていたのだ! 母さん! 母さーん!」
と言う訳で、何の伏線もなく、ハヤテの母親が登場して、ハヤテも急にマザコンキャラになってしまうのだが、今まで母親のハの字も口にしなかったのに、いかにも唐突な感じは否めない。
それに、ハヤテたちの母親と言うことは、とりもなおさず血車党の幹部・谷の鬼十の妻でもある訳で、そんな人が住んでるような家には見えないんだけどね。
で、例によって、ハヤテが何故シノブと幼い頃に生き別れになって、現在も生死不明となっているのか、その説明は一切ない。

ハヤテ「朝か……はっ、無邪気だな」
ハヤテ、ニワトリの鳴き声で目を覚ますが、千鳥はハヤテの胸に体を預けたまま、すやすや眠っていた。
無防備なロリロリ美少女と二人きりで一夜を明かしたと言うのに、その体に手も触れようとしなかったハヤテこそ、ロリコン界の貴公子と言えるだろう。

さて、再び捕まったイタチ小僧は、代官所の役人ではなくインデゴのしもべとなった村人たちによって断崖絶壁の上に吊るされ、今まさに処刑されようとしていた。
まあ、どう考えても死にそうにない高さだが、ここは一つ、50メートルくらいの高さがあると脳内変換して頂きたい。
イタチは今までのハヤテの仲間と違ってからっきし意気地がなく、

イタチ「あたしゃ、高所恐怖症なんですよ、インデゴ様、いっそあなたに血を吸っていただいたほうが、どんなに幸せなことか」
恥も外聞もなく命乞いをして、さらには自ら進んでそのしもべになりたいとまで言い出すヘタレぶりをさらけだす。
仮にも善玉なのに、ここまで情けないキャラと言うのも珍しい。
インデゴ「お前なんかの臭い血が吸えるか!」 だが、インデゴはひどい言い草でその申し出を却下し、しもべに、ロープを焼き切るよう命じる。

あ、思わずロープって言っちゃったけど、蝋燭の火にあぶられている綱が、どう見てもホームセンターで売ってるようなザイルにしか見えないのは事実である。
ちなみにインデゴの声は山下啓介さんだが、「仮面ライダー」では、地獄大使の潮さんに散々叱られていたが、ここでその仕返しをしたようにも見えて、微笑ましい。
あと、一応江戸時代なんだから、いくらなんでも
「高所恐怖症」はないんじゃない?
インデゴ「自分を吊った綱が焼き切れて行く様をゆっくり眺めてから死んでいくがいい」
インデゴ、怪人の悪い癖で、自分で処刑を命じておきながら、最後まで見届けることなく、その場を離れてしまう。
イタチ「ひええーっ、綱が切れるぅ、たったっ助けてくれーっ!」
イタチ、見栄やプライドなどというのものは生まれたときに母親の胎内に置き忘れてきたようで、泣きべそを掻きながら必死に助けを求めていたが、

ツユハ「どうする、姉さん」
カゲリ「そうだねえ、ほっとくわけにもいかないし……やるか」
そこにたまたま通り掛かったのが、38話と39話にゲスト出演して、そのままサタン編のレギュラーとなったカゲリとツユハの美人姉妹であった。
そう言えば、彼らの父親である鬼目の源十郎は魔神斎に殺されてしまったのだが、それっきり二人が父親のことを、まるで
最初からいなかったかのように、一切話題にしなくなるのが、ちょっと悲しい。
これでは、娘たちを助けるために命を落とした源ちゃんが浮かばれないではないか。
それはともかく、カゲリ、慌てて綱を切ろうとした男(声と口が全然合ってないマン)の目に手裏剣を突き刺して崖から落とすと、ツユハと共に刀を抜きながら敵の中に突っ込む。

相変わらず、惚れ惚れするような殺陣を魅せる菊さん。
今更言っても仕方ないが、あの事件さえなければ、時代劇でも大活躍できていただろうに……
一方、ツユハの佐伯さんのアクションは相変わらず頼りないが、その頼りなさが、月曜ドラマランド(古うっ!!)の時代劇に出てるアイドルみたいでちょっと可愛い。
二人が村人をザクザク斬り殺していると、綱が切れてイタチの体が垂直落下しそうになるが、切れた綱を掴んでぎりぎりで助けたのが、ハヤテであった。

カゲリ「あっ、ハヤテが来たわ」
ツユハ「ハヤテさーん!」
ハヤテ「おうっ」
ハヤテはロープの端を固定すると、二人のところに舞い降りる。
カゲリ「ハヤテ」
ツユハ「ハヤテさん」
画像は貼らないが、ハヤテに駆け寄りながら刀をくるっと手の中で回して鞘に収める菊さんの所作が、これまた見事なのである。

ハヤテ「君たちはどうしてここへ?」
カゲリ「ツユハがこのふもとの里へ空から怪しく光る球が落ちてくるのを見たの」
ハヤテ「やっぱりそうか、実はゆうべ、俺はあの子が妖怪に襲われるところへ来合わせたんだ」
カゲリ「ええっ」
まるでポニーテールみたいなカゲリの髪型が、菊さんのキリッとした容姿を一層引き立たせている。
少なくとも「魔女先生」後半のおばさんパーマより100倍良い。
紫の地にもみじを散らした着物も良く似合っている。
ハヤテ「おいでーっ」
ハヤテが手招きして呼ぶと、離れたところにいた千鳥が駆けて来る。

ハヤテ「この子の父も吸血妖怪インデゴに生き血を吸われて妖怪になっているのだ」
カゲリ「ハヤテ、これからその村へ行くつもり?」
ハヤテ「うん、インデゴを見付け出して息の根を止めればこの子の父をはじめ、ここに倒れている村人たちも魔力が消えて蘇るのだ」
そう断言して周囲を見回すハヤテの視線の先に、どう考えても完全に死んでるとしか思えない村人たちが死屍累々と言う感じで横たわっているのが、かなりのツボである。
いや、たとえばカゲリは男の目に手裏剣を突き立てていたが、いくら魔力が消えたからって、その傷まで治るとは思えないんだけどね。

千鳥「ほんと、ハヤテさん?」
もっとも、ハヤテに全幅の信頼を寄せている千鳥は笑顔でそう応じる。
ああ、かわええ……
ハヤテ「うん、必ず俺がインデゴを倒して君のお父さんを元通りにして見せる……この子を頼む」
カゲリ「うん」
ツユハ「はい」

ハヤテは千鳥を二人に任せて風のように走り去る。
菊さんと広瀬さん、約一年ぶりの再会だが、お互い懐かしかったんじゃないかと思われ、撮影の合間にどんな会話を交わしていたのかと想像すると、なんか愉しくなってくる。

イタチ「おい、俺のほうは一体どうなってんだよーっ! 助けてくれーっ!」
続いて、きっちりイタチがオチをつけ、このシーンを締め括る。
今回は絡みはないが、この後、イタチ小僧がカゲリに惚れてしまい、芸達者同士の二人の掛け合いが番組の隠し味になるのは、前述したとおりである。
ああ、菊さんも、いっそ潮さんと一緒になれば良かったのに……と思ったけど、当時潮さんは40代後半だから、さすがに年が離れ過ぎてるか。
さて、村に戻ったハヤテは嵐に変身してインデゴと戦ってこれを追い詰め、トドメを刺そうとするが、

サタン「待て、動くな、嵐、ワシは大魔王サタンだ、嵐よ、これを見ろ」
シノブ「うっ、ああ……」
その頭上に飛来した円盤の中に、サタンと共にあらわれたのが、他ならぬハヤテの母シノブであった。
嵐「あっ、母さん!」
サタン「見るが良い、お前の母はワシの魔力によってお前が嵐に変身するたびに死の苦しみを味わうのだ」

嵐「卑怯な……逆変身!」
嵐、特撮では極めて珍しい、ヒーローから人間への変身を見せると、

ハヤテ「お母さーんっ!」
ありったけの声で母親に呼びかける。
シノブ「おお、そなたはわが子ハヤテ……」
ハヤテを見るなりシノブはそう言うのだが、幼い頃に別れたきりの息子の成人した姿を見て、一目で息子だと分かるだろうか?
つーか、ハヤテとフユテは双子なんですけど……なんでハヤテだと分かったの?
ともあれ、迂闊に変身を解いたハヤテはインデゴに攻め立てられるが、

シノブ「ハヤテ、負けてはいけません、この母親に構わず変身するのです、嵐におなり!」
シノブはそんな我が子を叱咤するように励ます。
シノブを演じるのは工藤房子さんと言う人だが、経歴などは不明である。
照明のせいもあるが、なんか、そのまま楳図かずおの漫画に出れそうな顔である。

ハヤテ「お母さん、正義のためです、許してください! 変身!」
ハヤテ、シノブに詫びてから、改めて嵐に変身する。
当然、シノブは地獄の苦しみを味わうのだが、あくまで女優さんの演技に頼っているので、いまひとつ視聴者に伝わりにくい設定である。
いや、そんなまだるっこしいことをせずとも、単に「抵抗したら母親を殺す」と脅せば良いのでは?
それはともかく、嵐、新たな必殺技「ガンビーム」でインデゴを吹き飛ばし、なんとか勝利を収める。
江戸時代なのにビームて……などと今更突っ込むのもアホらしいか。
ハヤテ、足元に梵字のようなものが書かれた鈴が落ちているのを見付けて拾うが、

サタン「そのサタンの鈴を返せ、その鈴をワシに返せば、お前に母親を返してやろう。どうだ、取り引きをせんかな?」
ハヤテ「母さんを?」
サタン、パニくったのか、いきなりハヤテにその鈴を返せと言い出す。
しかもそれと交換にシノブまで返すと言って、その鈴が自分にとってめちゃくちゃ重要なアイテムであることを敵に教えてしまう。
……
見掛けから人を判断しなくなかったので敢えて言わなかったが、
お前アホやろ? が、ハヤテも咄嗟にそこまで考える余裕はなく、その取引に応じそうになるが、
シノブ「いけません、ハヤテ、そのサタンの鈴こそ、妖怪城の謎を解く大切な品、夢にも悪魔の手に返してはなりません」
ハヤテ「えっ、くそーっ」
サタンを押し退けてシノブがハヤテに伝え、なんとか思い止まらせる。
でも、なんでシノブさんはそんなこと知ってるの?
どう見てもついさっきサタンに捕まったばかりのように見えるのに。

サタン「おのれ、こやつめ、よくもワシの秘密を……ええい、ワシの呪いで可愛い我が子の顔の見えぬよう、めくらにしてやるわ!」
怒り狂ったサタン、手にした杖の先でシノブの両目を傷付けると(どこが呪いだ?)、

シノブ「ああっ」
そのまま円盤の上から突き落とすと言う、無慈悲なことをする。
……
いや、人質落としたらあかんやん!! なんか、頭が痛くなってきた。
だが、さすがハヤテたちの母親である。
シノブは円盤から地面に落ちてもピンピンしており、さらに崖の上から転落するのだが、これまたピンピンしていることが次回判明するのである。
そして、代官たちがどうなったのか、千鳥が父親と再会できたのかどうかもさっぱり描かれないまま、母親の行方を必死で探すハヤテの姿を映しつつ、41話へ「つづく」のだった。
以上、はっきり言ってストーリーの詰め込み過ぎで、ほとんど支離滅裂な内容であった。
だからもっと早くサタン編に移行すれば良かったのに……
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